嗅ぎ煙草

あるちゃいる

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トイレ君side

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 俺はロッカーの中身を懐にしまったまま北口のトイレへと歩いて行った。多分トイレ君が寝ているであろう場所だ。

 夜中仕事して昼間はトイレのあの場所で寝る習慣になっているはずだ。なので、その確認をしてからマンホールの我が家へ戻ろうと思ったのだ

 トイレへ入ると個室の上にある天井に目を向ける
天井には空調用の出入り口があって、そこを開けると中に入れるのさ。

 あまりそんな所を開けて中に忍び込もうとする奴なんて居ないし、居たとしても脚立が無いと入れない様になっている。

 だが予想通りの仕事ならヤツにとって天井など秘密基地みたいなもんだ。なので、その天井の入り口から少し奥に進んだ場所の窓部分の上辺りを睨む

 出入り口を振り返り人の気配が無いことを確認してから、音も無く窓枠に足を器用に引っ掛けて天井に耳を付けて中の音を確認する。

 微かに響く鼾の音が聴こえた。
 その音がするタイミングで窓枠から降りるとなるべく音を立てないように着地する。

 そしてそのままトイレの水を流して、使ってました風を装いながらその場を去った。

 植木の中へ作業してる人の様にゆっくりと周りの人に見付からない様に奥へと入って、しばらく待機する。

 30分程待機して誰も付けてない事を確認した後マンホールへと姿を消した

 部屋へと戻ってきた俺はランタンに火を灯して明るくすると、ロッカーから持ってきた布袋をバラリと広げる。

 「ほらな!やっぱりだ」

 その道具はピッキング道具だった
 ヤツの仕事は空き巣だろう。
 深夜の会社専門の金庫破りを生業とした空き巣だ。

 「あ~面倒な物を持ってきちゃったなぁ」
 好奇心旺盛なのも考えものだな。
 さてどーしようかね……

 前にも言ったが俺は治安の悪化を止める側ではないし、拾った財布は中身を貰って捨てるタイプの人間だ
だから、トイレ君が犯罪者だろうと特に気にしないが、巻き込まれて刺されたり殴られたりするのは勘弁してほしい。

 そうだなぁ……あの50万は貰っておく事にしたから、仕事道具はロッカーへ返したあと、巾着をどっかの茂みへ捨てて置くことにするか……

 如何にも金だけもらったよー風を装って……
 そう考えたら即実行するのが俺流だ。
 サッサとマンホールから出た俺は真っ直ぐロッカーへと向かい仕掛けを外して道具を入れて鍵をかけ。
芯を折れないように差し込むと、昨晩ぶつかった場所から俺が歩いて行った場所の住処とは違うヤブに向かう。

 トイレから出たら直ぐではないが必ず目を向ける場所に捨てた。
 昨晩探したであろう南口ではなく、毎朝乗って来ていたバス停横の藪の中に捨てたのさ。

 まぁ、十中八九拾うだろうよ。大切な仕事道具の入ったロッカーの鍵が入ってるんだからな。

 中身を確認したとき舌打ちくらいはするだろうな、何せ現金は俺が貰ってるからな!

 さて、巾着も捨てたしあと俺がやれる事は無いな、
いつものルーティンへと向かい尊い仕事を熟しますかね。


 ◇


 「ピピっ」となる音で目が覚める。19:00前にセットしていたアラームを切ると、ジャケットを着て下のトイレの中に人がいないかチェックする。

 このトイレは半年間通って確認したが19:00前後になると誰も入ってこない。偶にこの辺に住み着いてる浮浪者が入ってくるくらいだ。

 軽業師の様に天井裏から出ると、洗面所で身支度を整える。そして、時計を確認しながら19:00ジャストで外へと出る。

 ったく、昨晩はウッカリ酔っ払いにぶつかってポケットから落ちた巾着を探すのに手間どったばかりか、結局見つからねーで一晩無駄にしたからなぁ……

 一応ロッカーを確認してから仕事道具を新調しにホームセンターへ向かう予定だった

 しかし、どうもこの駅周辺は余り良く無い気がする。運が無いというか、最初は誰かに見張られている気配がしたし、2回目は巾着落とすし……3回目が来ないことを祈るばかりだ。

 「よし、ロッカーは大丈夫だな……」

 俺は南口の飲み屋街近くのロッカーを確認していた。昔何かの映画かアニメで開けると折れて誰かが着た事が分かる仕掛けをしていたシーンがあった

 それを真似て大事なものはこうしてシャーペンの芯を差し込んでいる。
 だが、確認したところ折れてはいなかった。つまり誰もロッカーは開けてないって事だ。

 巾着を拾ったやつは中身を見て交番に預ける奴も居るだろうが、その交番へ行って確認しなきゃならんし、ロッカーの鍵を調べて中身を確認したいなんて言われたら、後ろに手が回っちまう。

 ここは諦めて新調した方が安全だ。
このまま交番に置いたままでも、どの道半年後にロッカーが調べられれば空き巣道具とバレるからな。危険は避けて通らねーと

 俺は溜息を吐きながら何時ものバス停へと向かった

 その時、巾着が見つかった。
 バス停の管理事務所というか、バスの運ちゃんの休憩所みたいな建物の横の藪に巾着が捨てられていた。

 おれは素早くその巾着を拾うと足早にその場を去った。早く中身を確認したかったが流石に怪しすぎる。

 北口トイレへは向かわずに駅構内にあるトイレへと入って個室に入ると鍵を閉めて巾着の中身を確認する

 案の定現金は無くなっていた。だが、ロッカーの鍵は見付かった。

 「ふー……」

 安心して、深い息を吐いちまったよ……
 何気にこの道具は使いやすかったからなぁ
 失くすのは惜しいと思ってたんだよ
 でも良かったー……同業だったらこの中身で生業がバレてるところだったぜ。

 そしたらせっかく拠点が出来たのにあっさり捨てる所だった。まぁ何にしても、損失は取り戻す。

 たかが50万、されど50万だ。

 俺はトイレから出ると真っ直ぐロッカーのある場所へと向かった。


 まぁ、このときの俺は捜し物が見付かって浮かれていたんだろうなぁ。
 油断もしていたのかもしれない。
まさかこの跡3度目が来るとはなぁ……

 
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