異世界団地

39話

4人組の一人が喚き出したところでギルド入り口から冒険者が帰ってきたようで、ゾロゾロとワイワイと入って来ては何だ何だ？揉め事か？と喚く男の周りに集り始めました、それを見てニヤリと笑ったのを確認した一樹氏は確信犯で嵌めやがったな？って、顔に成りました。まぁ、しかし私が居る現場で動いてないって事を見て分かる人も多いので大騒ぎには成ってませんが、騒ぎを横目で見ながら私に伝えに来る人も居りまして
「姉さん、あれ大丈夫なの？双子の片割れでしょ？捕まらないよね？」
「大丈夫ですよ、最初から見てましたから」
そう言うと皆さん安心して騒ぎを見学しに行きました
皆さんの心配事が一樹氏の安否なんですから、言い掛かり付ける側としても報われませんわね
まぁ、自業自得でしょうけども……

　さてさて、そらそろ私の出番ですかしら？
心苦しいですが、罪には罰を下さないと示しがつきませんので、あの男は鉱山送りですかね……


「ククク！これでてめぇも俺らと同じ罪人だなぁ？ああ？おめでとさんダッハハハハハッ！」
と、机の角に自らぶつかりに行って頭から血を流して笑いが止まらないお兄さんは、嵌めてやったぞ！的な思いなのでしょうねぇ……

「はいはい、ごめんなさいね退いて頂けるかしら？」

と、受付の姉さんが静かに言うと騒ぎに集まる人波が、モーゼの十戒の如くズサッと2つに別れまして
道が出来ました。絞首台に向かう執行任の如く歩いて行った姉さんはガシッと血達磨に成ってる男の襟首を掴むと瞬間的に簀巻にしました。

　多分あれ本人何されたか分かってませんね
顔が歪んだ笑いのままですから……
得意技が簀巻って姉さん言ってましたからね
その技を目の当たりにした方々から拍手まで貰ってますからね……しかも顔面残したまま頭も血止め兼ねて巻くんですから、もう芸術の域ですね。簀巻なのに……。

　一瞬で簀巻にされた仲間を見捨てて僕達関係ありません！って、顔をする元メンバーも大概ですけど
この場合は仕方ないですね、鉱山送りに付き合ってやる義理はないですからね。身の安全は自ら守らないと誰も守ってくれないのですから

　「……あれ？お、おい何で俺寝てるんだ？あれ？か、体が動かねぇって……あ、あれ？な、何で俺が簀巻にされてんの!?」

　ようやく自分の状況が分かったらしい男は焦りだし、自分の近くに居た受付さんへと目が行きまして……

「おいっ！俺じゃねーだろ？そっちだろ！？どこに目を付けんてんだこのっ醜女婆ぁがっ！」
(((あ、死んだ……)))というのが、皆様の意見で
サササッと距離を開けていく冒険者達と一樹氏

その言葉を聞いた姉さんはにっこり笑顔で簀巻を掴むと地下牢へと歩いて消えました。その後3時間程戻って来ませんでした……

誰も彼も何もなかった様な顔で淡々と業務報告をしたあと足早にギルドから出て行ったあたり、察しが良いですね。無言の笑顔はとばっちり受けたく無いからだと分かりますし、この後少し近寄れませんからね……姉さんには……

このギルドの制服が赤黒いのは返り血を隠すためだという噂もありますから……

簀巻男も無事に鉱山送りになってれば苦しまなくて済んだのに……口は災いのもととはよく言ったものです。さて、私もサッサと自分の仕事を片付けて退避しないと！

では、失礼します！