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3話
しおりを挟む王様、宰相、将軍の三人は汗だくになりながらもくんずほぐれつと絡み合い……執事が呆れて止めるまで続いた。
「エクスカリ様申し訳ありません……話し合いは後日行いますので、今日の所はどうかお引き取りを……」
そういって三人の馬鹿者たちを縄で縛って部屋の片隅に纏めた執事は頭を下げて婆ちゃんに謝った
このあと教育という名の再調教を施すらしい
少しそれも見てみたかったが、ここは仕方なく引き下がることにした。
帰り際同類のメイドに後程詳細を伝える様にと言付けると用意された馬車に乗って婆ちゃんは帰っていった。
言付けられたメイドは目に光を宿し足早に屋敷へと戻り、執事の再調教シーンを余す事なく記録する為に何時もの様に屋根裏へと身を潜らせるのであった
そして後日お茶会を開いた婆ちゃんに事のあらましを事細かに伝えたそうな。
その様子はもう淑女が少女に戻ったかのような騒ぎっぷりで、それはそれは楽しそうにしていたそうな。
その内容は……別なお話なので割愛
◇◇
再調教後の三人は一先ず他人様にも見れるまで戻ったと言うことで、戦争の段取りは婆ちゃん抜きで行い、ある程度纏まってから執事経由で知らせる事になった。
ある意味これが本来のあるべき上に立つものの姿なのだが、本物の勇者を前にすると浮かれてしまい自我が保てないらしい。
そして、婆ちゃんに下された命令とは【後方支援】
流石に勇者とはいえ最前線に立ってもらうのは色々と問題があるからっていう事らしい。
どんなに強くとも……どんなに王国一強い力を持つのが婆ちゃんだったとしても、王国の生死が決まる戦いであったとしても、前線で先陣が婆ちゃんというのは戦争に勝ったとしても見聞が悪いとの事だった。
なので戦争に向かう行列も後ろの方から付いてきて欲しいと伝えた。
女性だからと戦争に参加出来なかった過去を思えばかなりの譲歩である。二つ返事で頷くと、それでは用意をして来ますという婆ちゃんを執事は見送った。
武器防具でも揃えてくるのかと思っていた執事は軍で使っていた防具が合わなかった事を申し訳なく思いながら、費用にしてくださいと金貨十数枚を袋に入れて渡して持たせた。
婆ちゃんは感謝しますと一言伝えてその場を去った。が、婆ちゃんは少し勘違いをしていた。だが、その勘違いがこの度の戦争で大きく戦況を変える事になるとは、この時点では誰も思っていなかった。
◇◇
凱旋当日の朝、王と宰相は城に残り戦地へと向かう王国勇者(二千八百人)と召喚勇者(二百人)総勢3000人と婆ちゃんを前に演説を行った。
迎える相手国は二万人とも三万人とも言われていて、とても勝てる人数ではなかった。
たとえ、一兵が勇者の様に強くてもこの戦は負けるかもしれないと国民の間では噂になり、我先にと逃げ出す商人や町人で数日前までごった返していた
だがしかし、ここで真の勇者エクスカリ様が手伝ってくれる事になった。伝説の訓練を乗り越えたった一人生き残った第一期生、デンセ・ツ・エクスカリ
お歳を召していてもあの将軍を瞬殺する程の強さを持っている。
老人ということもあり、前線ではないが後方支援として我らの背中を守ってくださっている!
我らがピンチのときは必ずや馳せ参じてくれると信じている。だから、勇者諸君!思う存分暴れてくれ!
演説も恙無く終わり、さて逝きますかーっと先頭がヤケクソ気味に歩きだし街の門を通り過ぎていく中、一人別の門から乗合馬車に乗って出掛ける人が居た。
エクスカリ婆ちゃんである
この乗合馬車の行き先は隣国国境の非常門という場所だった。戦争に関係の無い商人や町人、村人や冒険者等が通る為の通用門だった。
婆ちゃんも武器代わりの棒を持っているが、普通一般の人からは杖だと思われていたし、防具は鎖帷子を着用していたが、この御時世横で戦争をしているのだから、村娘すら防具を着けて旅をする世界だ。
婆ちゃんの鎖帷子など別に珍しくないから当然素通りだった。
なんの疑いもなく非常門から敵国へ入り、戦場である東門へ向かう乗合馬車に乗れた。
戦場であっても商売する人食事を作る人なども戦地にいるので、婆ちゃん一人向かうのでも誰一人して咎めたり止めたりする人はいなかった
その為にあっさりと戦場の東門が見おろせる高台までたどり着く事ができた婆ちゃん。
手前の三万人の兵士が陣を構え奥側の兵士達と対峙する。
それを高台から見守り聖棒をギュッと握りこむ婆ちゃん
両軍と婆ちゃんは固唾を呑んで今か今かと始まりの合図を待っていた
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