伝説のエクスカリバーを探せと言ったら婆ちゃんがやって来た件

あるちゃいる

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5話

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 敵国の都で王族は全員打ち首となる為、地下牢に入っている。
 一族郎党皆殺しが世の常だった為、致し方ない事ではあったが、幼子も居たので誰が殺るかで少々揉めた。
 すると、血塗れな婆ちゃんがスススとやって来て牢へと向かい問答無用で全員の首を切ってしまったと報告があがった

 それを聴いて将軍も確認に走ったが血の海と化した牢と点々とその場から立ち去った者の足跡が付いていた。

 戦闘民族の生き残りと聞いた後だったが、斯様なまでに容赦の無い民族だったのかと恐れ慄いた。

 その跡、後処理をして王都へと凱旋したのだが、婆ちゃんの姿は何処にもなかった
 ただやたら美しい少女の兵士が後方を歩いてついて来ていたと報告があがっていた
 その者と途中の休憩所で話しかける事ができた

 「お疲れさん疲れたろ?少し休んだ方が良い」
 『ははは、将軍は優しいのぅ。では、少し座ろうかね』

 何処かで聞いたことある声だった。つい最近というか、戦闘中も聴いたような……寧ろ血塗れ婆ちゃんから聴こえて来てたような……
 顎に手をあて頭を捻りあるぅぇ~?と、巻き舌気味に考えていたら、美しい少女に話し掛けられた

 『そう言えば、言ってなかったがこの姿。活性化してしまったので数十年程このままになるが、一応私はエクスカリじゃぞ?』

 「やっぱりそうなのか!!声が似ていたからおかしいと思っていたんだ!!」

 『流石は将軍じゃなぁ、分かっているなら良いのじゃ。それと、戦争終わったから私は地元にこのまま帰るでな、王達に宜しく伝えてくだされ』

 「えっ!?帰るんですか!?」
 『待っている者たちも居るんでな、まぁまた何かあったら馳せ参じるよ』

 「えっ今すぐ!?」

 『達者でな!』

 そう言って婆ちゃんは立ち上がって都へと続く道から外れて去った。
 ものすごくサッパリとあっも言う間に消えてしまった

 「もっと話したかったのに……」

 将軍は一目惚れしてしまった様で、何時までもエクスカリ姉さんに変わった婆ちゃんが去った方向を眺めていた。


◇◇


 『やぁまたせたかい?』

 向かった方向とは別の方向へと移動した元婆ちゃんは森の中で隠れていた人達に声を掛けた。

 「いいえ、大丈夫です勇者様」

 そう言って深々と頭を下げるのは、元敵国の王妃とその侍女、そして生後七ヶ月の娘とその姉の六歳になる娘と、護衛の女性騎士が数名森の影からゾロゾロと出てきて婆ちゃんに頭を下げる

 『では、急ぐかの。私の村は意外と遠いのじゃよ』

 そう言って笑うエクスカリ元婆ちゃん

 「「「はい!」」」

 牢に捕まっていた敵国の王族達は最後の抵抗とばかりに毒の草を燃やそうとしていた。
 地下でその草が燃えれば、生き残った無関係の市民達も巻き添えにして多くの命を失うだろう。
 そこで婆ちゃんが王と約束をした。
 必ず王妃とその子供達は助ける。
 だから無駄な抵抗は辞めて、大人しく首を切らせろといった。
 もしこの話に乗らないのであれば、幼子から順にユックリとお前たちの目の前で殺していくぞ?

 もうどっちが悪役か分からない取引をし始めたエクスカリ姉さんに牢番の兄さん達まで震える始末

 「必ず助かるのなら……」って事で、他の兵士が近づく前に王妃達を逃し、この森の中で落ち合う約束をした後、王達の首をはねた。
 せめてもの救いとの痛みを伴わない様に素早くはねてあげた。

 そして、今に至る。

 「恨むなら恨め、憎むなら憎め、だがその感情は私だけに向けて王国は許せ」

 生き残った王妃達に牢から出したあとそう告げた。

 残された王妃達は複雑な顔をしていたが、感謝はしていたようで、森で落ち合った時には六歳の娘以外は誰も婆ちゃんを睨んだりしていなかった。

 この先禍根を残すとしたらこの娘かなぁ……っと、思いながらも婆ちゃんは王妃達を自分の村民として扱う事にしたのだった。
 
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