稲荷印の焼き芋屋

あるちゃいる

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 「これ、偽造してますよね?」

 岐阜の繁華街で深夜に焼き芋を売っていると見廻りの警官に捕まった。

 軽トラに付いてたナンバーが可笑しいと指摘され職務質問を受けていたら、何時の間に沸いたのか、大勢の警官に囲まれていた。
 そして、パトカーに乗せられて運び込まれた後、軽トラに積んでいた商標登録から偽造がバレた。

 そのまま留置所に入れられて運び込まれる寸前、ドアが開いた瞬間を狙って俺は飛び出し、で走って逃げて中津川市の山中から、長野県に住むたぬ吉の事務所へ怒鳴り込んだ。

 「おい! この狸爺! 即効バレたじゃねーかよ!」
 たぬ吉は煙管を吹かしてキョトンとしていた。

 「でも逃げれたんだろう? ならいーじゃねーか」
 煙管の灰を捨てて、新しい煙草を詰め込みながら言うたぬ吉の襟首を掴むとジロリと睨む。
 「そう睨むなよ……先に言ったろ? 効力は弱いからって」
 そう言うと引き出しに入ってた葉っぱを掴んでクルクル回す。

 「それにしたって早すぎるだろ! 一ヶ月しか保たねーじゃねーか!」
 唾を飛ばしながら叫ぶゴンの手を振りほどくとたぬ吉は言う。
 「御先祖様とは妖力が違うんだから、そんなもんだって。何なら本物を取ればいーだろうが?」
 そう言うと一枚の葉をクルクルと回すと転移届と書かれた紙をゴンに渡す。

 「本物を取るなら先にマイナンバーカードを取らなきゃ話にならねーからよ?」
 と、言いながら取り方の説明を始めた。

 たぬ吉が言うには、この転移届を長野市に出せという。
 そこから二十日後に岐阜市に出して、その後東京か大阪に行って同じ様に転移届を出し、住所を漫喫にして登録しろと言う。

 大阪だと西成ならツテがあると言われたが、お勧めは出来ないと言われた。
 何故かと問えば治安が悪いからと言われた。
 何でもたぬ吉の親戚が西成に住んでたが、ウッカリ寝ていた時に狸に戻ってしまって、そこの住民に捕まって狸鍋になったという。

 「お前さんは狐だから撲殺されて毛皮にされるかもな」
 そんな事を言われたら大阪じゃない方を選ぶだろう?
 なので必然的に東京になった。
 取り敢えず岐阜に無事転移届を貰ったら一度顔を出せと言われたので、取り敢えずその紙を持って事務所から出ていこうとしたら、呼び止められた。
 「住所は岐阜市にある俺の息の掛かった家があるからそこを使え」

 そう言われた跡、長野市に転移届を出して暫く長野県側の恵那山を根城にしながら過ごし、たぬ吉が作った転移届の効力が切れて葉っぱに戻る前に岐阜に移動した。

 その後住所を岐阜市にある私塾にしてから、一ヶ月程岐阜側の恵那山を根城にして過ごし、東京へと移動した。

 東京へと行く前にたぬ吉の事務所へ向かうと、転移届を出せという。
 何に使うのかと思ったら、コピー機で複写して今後に活かすのだと言って、情報料だと言いながら現金を貰った。

 「葉っぱじゃねー金も必要だろ?」
 そう言って煙管を吹かしていた。

 中々手広くやってるのか、たぬ吉は本物の金も扱っているらしい。

 その後新幹線に乗ると言ったら、名古屋駅まで見送りに来てくれた。
 「まぁ、毛皮にならない様に気を付けな」と、言ってニタリと笑って餞別だと再び現金を渡された。

 意外と面倒見が良いらしかった狸親父に手を振ると、俺は一路東京を目指し新幹線に乗った。

 東京駅から渋谷に来ると人混みに驚いてしまい、犬の石像の裏で暫くビクビクして過ごした。
 人通りが無くなった深夜に一度狐に戻って何とか平穏を取り戻すと、コンビニへ入ってドックフードを一キロ購入して路地裏で食って寝た。
 早朝と共に起き出して、住所を使って良い満喫を探し、無事に住民登録が出来た。
 暫く過ごす山を探した、しかし東京には山がなかった為に仕方なく満喫に戻って来たが、毎日金が掛かるという事を知った。

 このままでは、マイナンバーカードを取る前に現金が無くなる事を悟った俺はたぬ吉の事務所へと電話をして、どんな仕事があるか聞いてみると、奴は笑いながら
 「歌舞伎町へ行ってホストがお勧めだよ」と、いう。

 ホストが何か分からなかったので、調べる事に成った。
 (酒を飲む仕事……か……)
 俺は先祖代々から続く家訓を思い出していた。

 【酒を飲むなら飲まれるな】

 先祖のひい爺さんは商家の主を化かして居た時、泥酔して姿が戻ってしまった跡、立派な毛皮に成ったんだと親父が言っていた。
 そんな事にならない様に酒は余り人前で呑むなと言われて育っていた。

 たぬ吉にそれも伝えたが未成年なら大丈夫だと言うので、未成年と言おうと心に決めた。
 しかし未成年とはどんな姿をしているのか分からなかった、ようやく十八歳くらいと分かる頃には、手持ちの金は数千円しか残っていなかった。
 
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