稲荷印の焼き芋屋

あるちゃいる

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 二日目の開店三十分前になると、店の入り口では長蛇の列が並んでいた。
 先頭は常連のマダムが陣取りその後に続く様に店長の客が並ぶ。

 店の前に設置されたテレビ画面には延々と動画が流され、回るイケメン(ゴン)と、その回りで囃したてる従業員の皆さんが宣伝兼ねて垂れ流されていた。

 常連客はマダム以外はサクラで、前日に店長が自分の客を呼び集めた。
 なので、それ以外で並んでるのは新規さんばかりだったが、前日から来ていた面々なので、好評ではある様だ。

 画面の前にはイベントのやり方が書かれており、その内容は

 【入店したらカリュー君を指名。
 開店から回転を始めるカリュー君がどの時間帯で回転を止めるかを賭けて貰います。

 1BET三千円。
 二時間後と思うなら二時間の場所に1BET。
 三時間なら三時間の場所に1BET賭けてください。
 全時間に賭けても構いません。

 指名料は三千円です。

 見事当たった方は10分間カリュー君を独占出来ます!

 独占タイムが終わったら初めからやり直しますので、指名料が掛かります】

 結構良心的な値段設定だった様で、イベント初めから全員が全時間に賭けた。

 初日と言う事もあり、店長はカリュー(ゴンの源氏名)に六時間くらい回ってから疲れたふりして回転を辞める様に支持を出す。
 そしてその通りにするカリュー
 閉店二時間前にしたのだが、全員が当たっていた為、一人十分の独占タイムとはいえ、残業になった。

 そしてその日のバイト代は五百万円だった。

 僅か10分間しか無い独占タイムで名前を覚えて貰おうとした客達が高い酒を頼んで行ったからだ。
 当然呑むのはカリューの筈だが彼は未成年の為、他の従業員達が呑むことになる。
 閉店時間が過ぎても終わらない独占タイムのお陰で、最後の客が帰る頃には店のフロアでは従業員達が転がっていた。

 死屍累々となったフロアを横目に店長と副店長が売上の計算をした。
 今年初の三千万円超えだった。
 指名料とBET代だけでもかなりの金額になっていた、カリューに半分渡すと五百万円になっていた。

 「て、店長……」

 死屍累々と転がっていた一人が手を上げると

 「やり方を変えてください……」

 一言呟いて再び倒れた。

 とはいえ、如何するかなっと考えた結果対して良い案が浮かぶはずもなく、指名料とBET代の値段を上げることくらいしか出来なかった。

 その日の昼間に死屍累々と転がる従業員達の動画をSNSに投稿して、値段を上げる事を発表。

 これで少しは減るかもと思ったが、全く減らず、開店一時間前には長蛇の列が列なっていた。

 勿論先頭はマダムだったが、他の常連は居なかった。
 その理由は、自分の担当にも会うことが出来なかったからだった。
 席の隅々には客が座り、ホスト達はカリューの回りで待機し、ドリンクの注文があればボーイの様に運ぶだけに徹していた為だ。

 メインがカリューの回転なので、客の大半がカリュー目当ての為、イベント中と言う事もあり、他の担当に会いに来ていた方々も同じ様に扱われた為だ。

 そのお陰でマダム以外の常連客は姿を消した。
 それでもイベント二日目も満員御礼だった為、気にしなかった。

 流石に二日目は新規さんが多かった為、売上が多少落ちたが、カリューに渡す金は一千万円を超えた。
 指名料は一万円、1BET一万円にした為だが、全時間賭けを全員やった為だ。 

 その日の閉店後にも死屍累々と転がる従業員達でフロアは埋まり、店長と副店長は売上の計算をしていたら

 「「「「店長~!」」」」

 死屍累々と転がる従業員全員から提案があると言ってきた。

 「酒瓶を使いまわして中身を水にしませんか?」

 客を騙すことになるが、その提案は通る事になった。
 一人十分で回る為、その場で酒の蓋を開ける手間を省き、最初から抜いてこいというクレームが上がっていた為だ。
 そして、客の誰一人として酒を飲もうとすることも無かった。
 もし、客も呑みたいと言った時だけ本物を出せば良いのでは?って事になり、イベント三日目はフロアで倒れる従業員は居なかった。

 酒瓶の使い回しはかなり売上も良かった為、従業員の給料も口止め料兼ねて上がっていき、当然の様にカリューに渡す手取りも増えていった。

 だが、悪い事をすると、何故か直ぐに広まる様で、酒瓶を使い回して水を呑んでるという噂が広まってしまった。
 そのお陰で、イベントが始まり一週間も過ぎると、新規の客は来なくなり、開店から並ぶ客はマダムしか居なかった。
 当然他の常連も完全に離れていた為、店の中はガラガラだったが、指名料の重ね賭けをし始めたマダムによって30人分の指名料をカリューにして全時間BETしていた。

 その日は開店から閉店まで休みなく回れと指示されて居たが、閉店5分前に失敗してしまい、独占タイム10分☓30人分で300分が独占タイムになってしまった。

 ニンマリと笑うマダムはさながら魔王の様に思え、従業員全員が震え上がる事になった。が、マダムが一つ提案があると言うので、それを受けることになった。

 それは……。

 「この後はカリューくんとアフターって事で如何かしら?」
 「「「「え?」」」」
 「もう閉店だし、他の客も居ないじゃない? それに、お酒頼んでも水を高額で買わされるのもねぇ? 店長?」

 店長は冷や汗を掻きながら頷くしかなく、指名料とBET代の半分をカリューに渡すと店を閉めた。

 マダムはカリューと腕を組んでとあるマンションへと向かう。
 店を出る前にカリューは店長から耳元で囁かれていた。

 「マダムと寝ろ、そしてつなぎ止めろ!」

 と、だがカリューは意味が分から無かった。
 意味が分かったのは、カリュー名義で買ってくれたタワマンの最上階に入り、ベッドの上でマダムが脱ぎだした時だった。

 カリュー……というか、ゴンは狐である。

 そして、当然服は自分の毛皮を化かしてスーツにしているだけである。
 当然脱げない。
 というか、ゴンの性的対象は当然同じ仲間の狐である為、ゴンにとってマダムと寝ると言う事は、獣姦に等しい行為だった……というか、まんま獣姦である。

 ベッドに横たわるマダムを前に冷や汗が止まらなくなったゴンは……取り敢えず睨むことにした。

 「ちょっと……早く脱ぎなさいよ……女に恥をかかす気なの?」
 迫りくるマダム。
 性癖はノーマルなゴンは、嗚咽を抑えつつゆっくりとベッドに膝を載せると……

 目にも止まらぬ早さでマダムの後頭部を叩き眠らせた。
 息を荒くさせ冷や汗を拭くと、マダムのスマホからたぬ吉に電話した。

 「だ、だぬ吉ぃぃ! 助けてくれ! 獣姦させられそうなんだよぉぉっ!」

 耳元で泣き叫ぶゴンを落ち着かせて、たぬ吉は言う。

 「都内に潜む仲間を呼ぶからその場で待ってろ」
 「うう……わがっだ……起きそうになったらどーしよー……」
 「殺さない程度に殴って眠らせろ」
 「うん!……ありがど……たぬ吉」
 「おう」






 狸と狐が友情を芽生えさせていた頃ホストクラブでは……

 「店長……今日の売上は……カリューの指名料とBET代しかないです、全員その日払いを望んでいるので赤字です、それと全員辞めるそうです……あ、俺も今日限りで店辞めるんで……」

 完全に回転するカリューで儲けていたのと、酒瓶の使い回しが拡散された上に、従業員達も辞めてしまい、このホストクラブは潰れた。
 

 

 

 
 
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