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十五話
しおりを挟む「あれ?なんで知らないんだろーな」
不思議だなぁと首を傾げるシダルに呆気にとられる長男。
「そりゃ顔を見るなって俺が教えたからだよ」
そっぽを向いていた父親がコッチをニヤつきながら見て言った。
「お前の顔が気に入らなくてなぁ?一歳か二歳になる頃に俺の顔を見る度こっちを見るなって教えたのさ。下を向いて生きていって欲しかったからな」
「な、何言ってんだよオヤジそんな……そんな事親のする事じゃねーだろうが!」
胸倉を掴んでぶら下げる長男がなぜ怒っているのかシダルは分からなかった。
自分の為に怒っているのか、それとも自分の子供に重ねて怒っているのか?何方にしてもシダルには分からなかった。
それ程彼にとって家族との絆は、とても脆いものだった。
兄弟であっても片言しか話さなかった
普通では考えられない事ではないだろうか。
小さい時分なら遊び尽くしていた頃だろう。
歳の離れた兄弟であっても小さい頃は遊んだものだ
歳を重ねて憎しみ合う事はあっても、幼少期には下らない事を話したりしてるはずだった。
それがほぼ無かったから起こったシダルの異常な行動や言動は兄弟というよりも他人のそれだった。
次男とはそこまで確執は無かったし、長男とも顔見知り程度には知っていたので、そんなに違和感が無かったが、対父親、対妹に対しては赤の他人を見る様な態度であり、言動だった。
「長男が何に怒っているのかよく分からないけと、依頼の仕事を早めに終わらせたいんだけど、材料は揃ってのかな?」
「おまえ……ハァ……いや、もういーや。材木なら裏手に重ねて置いてあるそれを使ってくれ」
「あいよー、一時間で終わらすぜ」
「はははそんな早く終わるわけねーだろーに」
が、シダルのこの宣言はガチだったりするわけで
父親と妹を連れて実家に戻り、シダルに集ろうとしていた父親と喧嘩して突き飛ばした跡実家を跡にした。
それが大体一時間くらい経っていた。
イライラしてた長男はシダルとも話をしようと裏庭へ回って驚いた。
離れに出来た子供部屋はスッカリ完成していたのだ。
そして、そこで寝泊まりする予定の子供達の前で家の最低限の決まりを教えていた。
「いいか?ここのポッチに毎朝必ず魔力を入れろ。いいか?ここだ、このポッチがあるだろう?そこに誰でも良いから必ず魔力をいれろ、そうすれば、この部屋は汚れもしないし壊れても自然に直る様になってるから、いいな?絶対にわすれるなよ?もし、忘れて壊れても二度と俺は関わらないからな?返事は?」
「「はいっ!」」
「よし、それで良い。兄弟仲良くな?じゃあまたな」
そういうと、懐から甘いお菓子を出して二人の子供達に渡した
「「ありがとうございます!」」
そう言って喜びながらお母さんに見せに行った
そんな姿を長男は笑って見ていた
「なんだ、人が悪いな居たなら言ってくれよ」
「本当に一時間で終わらすとは思ってなくてな、驚いてたら声をかけ忘れたんだよ」
「はは、まぁいーよ。ところで俺達はもう行くよ。村長の所にも寄らないとイケないしね」
「なんだそうなのか?もっとゆっくりしていけば良いのに」
「いや、また寄らせてもらうよ、次男の果樹園とも契約したから遅くても一ヶ月後には来る予定だよ」
「おお!そうなのか?喜んでたろ?試作品が出来たのに中々販路が無くて困ってたからな、いや良かったぁ、後でねぎらいに行ってくるわ」
「ああ、そうしてやってよ」
ホイじゃあまたね!
っと言って馬車に乗り込んで走り去ったシダル達を見送った。
何だかあっと言う間の出来事だったなぁと思っていると、実家から父親がやって来て
「おい、話はしたのか?実家を支援する話と妹の嫁ぎ先を世話する話。ちゃんとしたのか?」
「……してませんよ」
「なっ!?何してんだこの野郎!それでも長男か!」
「自分でしたらどうですか?あなたの息子でしょ?話せない理由でもあるんですか?」
「おまえ!知ってて言うのか!?」
「本当にこんな虐待を受けてたと知っていたらこんな家捨ててたのに……」
二度と話しかけて来ないでくれと伝えて立ち去ろうとした長男に駆け寄り、お前達から金を貰わないと生きられないと泣き言を言い始めた。
「なら働いてくださいよ」
「今更畑仕事は出来ない!」
毎晩酒を飲んでいた父親はもう幾年も生きられない程ボロボロだった
なので長男は子供等が寝ていた納屋の壁に魔法陣があるから、そこに毎日魔力を流せと言った。
それがあんたの仕事だと、そう言ってちゃんと出来てるか調べれば分かるから、出来てたら小遣いはやる、出来てなかったら次男のところで収穫の手伝いをしろと伝えた。
父親は何だそれ?っと不思議そうな顔をしていたが、分かったと了承して帰っていった。
長男がその魔法陣を思い出したのは、さっき自分の子供達にシダルが家の維持する方法を教えていた、その魔法陣に見覚えがあった。
自分の家の玄関の壁に描いてあった絵みたいな奴だった。毎朝そこに手を着いて靴を履いていたので、気付かずに魔力を充填していたようだ。
そして、子供の頃にも寝る場所にその魔法陣に触れていた気がした。
毎朝灯りを付ける場所の壁に描かれていた気がした。そこの壁にも自然と手を着いて明かりを灯してた気がした。
シダルの奴はそうやって自然に魔力を兄弟から奪う事で自分の仕事を軽くしていたのだと、今更ながらに知ったのだった。
◇
「良かったんですか?」
「ん?何が?」
「お父様達のことです」
「ああ、今更でしょ」
「仲直りも何も喧嘩したことも無いよ?頭ごなしに反対はされたけどこっちの話はまるで聞かなかったし、顔すら見ては駄目と教えられてたみたいだしね」
人は三歳ころまでに教えた事は忘れないとも言われている。その頃に英会話なり勉強は楽しいとか教えると覚えているらしい。
英才教育するなら三歳までだったかな?
そんな時に父親の顔を見てはいけないと教えられれば、見なくなるだろう。記憶にさえ無いほど見なかった自分に少し恐怖したシダルだったが、すぐに忘れた。
嫌な事はすぐに忘れるという習慣が身についてしまったようだ。やはりこの村はあまり好きにはなれないシダルだった。
オコジョ馬車はテクテクと山を下り中央広場を通り過ぎて教会に向かっていた。
朝起きて直ぐにサコラは
『先に教会行ってるのじゃ』
っと、告げてユキに会いに行っていた。
教会の広場に馬車を止め、礼拝堂にサリーを置いて村長の部屋に向かう
一応一ヶ月後にまたくるんだが、村を出る前に寄れって事だったので向かう
コンコンコンっとシダルだけが鳴らす3連続ノックに
「開いてるよー」
と、村長が答える
「おはよー」
っと、気軽に挨拶して部屋に来るなりソファにストンと座るまでがシダルの何時もの態度だった。
それを見て立ち上がった村長はクローゼットから一対の縦長の布を抱えてシダルの前に座ると、それをシダルに差し出した。
「なんだいこれ?」
「いいから受け取れよ、免許皆伝の証だからよ」
「ああ、村長って強いんだってね初めて知ったよ」そう言いながらソレを受け取った
「開けてもいーの?」
「ああ、いーよ」
そう言って微笑む村長を訝しげに見たあと
シュルシュルと絹の音を聞きながら取り出す。
「これはまた……業物だね」
「抜いてみろよ」
っという村長に応えるようにシャリンと小気味よい音を出して鞘から剣を抜いてみた。
その剣は全長95cmで刃渡り65センチの片刃の剣だった。チャリっと刃を横にしたり縦にして刃先を見たりしていると
「何これ、もらっちゃっていーの?」
「ああ、直弟子と名乗ってもいいぞ?」
「ははは、本当に?英雄カリオが直弟子のシダルたぁ俺のことよ!とか言っちゃうよ?」
「聞かれたらにしてくれ、恥ずかしかったから」
そう言ってまた笑った。
「そか、それじゃあマダムタッソー連れてもう行くわ」
「何だよ、忙しないな」
「一応商会長なもんでね、また来るからさ」
「ダリルと取引したんだって?」
「誰?ダリルって」
「お前……いや、知らねーのか、果樹園でリリゴ作ってるお前んちの次男だよ」
「へぇ……あの人ダリルって名前だったの?」
「いや、なんで知らねんだよ……」
「名前で呼び合うこと無かったからかな?」
「まったく変わらねーなシダルは」
「早々人間なんて変わるもんじゃないでしょ?」
「まぁ、そうかもな」
「んじゃそういう事でまたねー師匠」
「おう、また来いよ弟子」
腰に帯剣してたのをマジックバッグにしまい、村長から貰った剣を帯剣し直してから部屋をあとにする、サコラとユキの姿は無かったが気にする事なく馬車に向かうと神父様とシスターが馬車の横に立っていて、何故かマダムタッソーは頭を抱えて横たわっていた。
「なになに?何かあったの?」
マダムが寝そべってるなんて珍しいと思って病気かと心配したがただの二日酔いだった。
昨晩は樽ごと一人で呑んだらしく、神父様も苦笑いで佇んでいた。
シスターに一応二樽分の料金を渡してまた来る時用にという名目で受け取って貰った。
「もう行くの?ゆっくりしていけば良いのに。シダルともっとゆっくり話したかったわ」
と、残念がるシスターと包容し、すぐに来るからさっと次男のダリルと取引した事を告げる
「そう、喜んでたでしょ?ダリルくん」
「うん、かなり借金してあの果樹園作ったみたいだったからね、これで返せるし更に倍だ!とか言ってたよ」
「なんだ、あのリリゴそんなに高く売れるのか?だったらもう少し多く畑を広げるか……」
神父様も現金だなぁ……まぁ、色々やり様があるんだろう。
「その辺はよく話し合ってよ、商会としては全て買取る事にはなったからさ、作れば作った分全部買うし」
「ほほう!村長交えて会議するわ」
そう言って神父様は走り去った。
「全くあの人は昔からかわらないんだから!もう!」
そうシスターは怒ってた。
「それじゃあもうソロソロ行くね」
「そう、気を付けてね?風邪とかも引いちゃ駄目よ?アンサリー様どうかシダルを宜しく頼みますね!」
「おまかせ下さい!聖女様」
「フフフ元をつけてくだいね!」
「それじゃあまたねシスター!」
「はいまたねシダル!」
そうして一泊二日で村をあとにしたシダル達はオコジョに道中任せて村を跡にした。
2時間程走って休憩していると、林の方からサコラとユキと黒っぽいのが共にやってきた。
「ようユキ久し振りだな元気だったか?」
『おう、小僧も元気そうだな?ダリルには会ったんだろ?』
「ああ、名前を知ったのはさっきだけどな」
『全くお前の家族嫌いは治らんのぉ名前も知らんとは全く……』
「しかたねーじゃん関わりが本当に薄かったんだから」実際午前中だけしか顔は合わせないし、その午前中も作業で殆ど会わないしで、実質毎日2時間あるかないかくらいだった。
むしろ他の村人と関わってる時間の方が長かった。
『まぁ良いわ、コレからは多く関わりそうじゃしの』
「まぁ、そうだろうね。ところでさっきから気になってるんだけど、その黒いの何?」
『それは妾が説明するのじゃ』
「お?おお、頼むわ」
『黒色綿毛猫じゃ』
「へぇ猫なんだ?」
『そうなのじゃ』
「他の説明なしかよ!で?その猫どうすんの?」
『名前を付けてあげてほしいのじゃ』
「名前ねぇまぁいーけど……じゃあマックロク『それは駄目なのじゃ!!』」
「そなの?じゃあ……たっきゅうび『それが名前は可哀想なのじゃ!!』」
もう面倒だな……
「無難に黒ゴマで」
『む……いやにゃ』
「微妙なのね?そうなのね?」
「おはぎでは如何でしょう?」
「お、サリー命名オハギで!どうよ?」
『おはぎ……ぼくは今日からおはぎなのです!』
しっくり行ったようだ
「じゃあユキ、おはぎまたな!」
『おう小僧また来いよ』
ユキに別れを告げるとユキは去っていった。
そして何故かオハギはシダルのサコラが止まる肩とは反対の肩に乗った。
「いや、おはぎ?俺達帰るんだけど?」
『名付けて置いて放置とか鬼畜か?』
「ええ?またこのパターン?」
そうして旅のお供に一匹増えた一行は王都へ向けて旅立って行った。
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