行商人

あるちゃいる

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十六話

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 村を出て四日目
 「み、見えましたよ!王都へ着いちゃいました!うわー!信じられません……」

 オコジョに全て任せた結果あっさりと王都へ着いてしまった。
 夜も走れるというオコジョにじゃあ試しにっと言ったところ嬉々として走り抜け
 4日目の昼過ぎには王都の城壁が見える位置まで走ってきたのだった。
 取り敢えず王都へ入る前に馬車の中を片付けたい気持ちで一杯になってたシダル達は最後の休憩地へと入っていった。
 揺れない馬車にするにはどうしたらよいかを考えながら屋台を回るシダル。サリーとマダムは泉の縁に座って休んでいる。
 兎に角早かったのは良かったんだけど、段差や窪地などにタイヤが入り、その都度馬車は跳ね廻っていた。そのお陰で酔に酔ったシダル達は半分寝て過ごしていた。
 ゲロを吐くたびに生活魔法で洗い乾かしを繰り返してきたお陰で生活魔法の掃除バージョンだけサリーもマダムもうまく使えるようになった。
 オコジョおまかせツアーで良かったのはそれだけだった。
 露店は行きにも寄ったが、一軒店が増えていて、甘オリ(栗みたいな)という木の実が売ってる店だった。量り売りが変わってるらしく見ていると、天秤は使っていないようだった。
 台の上に机が付いていてそこの上に品物を乗っけて、その数値が500なら500ガラム1000なら1ギリなのだそうた。
【※1グラム=1ガラム、一キロ=一ギリ】
 そこでその測りとやらを見せてもらった。
 勿論有料だ。
 すると台座と板の間にはクルクルとした棒が嵌っていた。仕組みはいまいち分からなかったが、くるくる回った棒の他の使いみちを想像していた。
 そして、思い描いた通りに完成すれば馬車の揺れを軽減出来ると考えた。
 この世界でスプリングを使ったサスペンションが完成するその一歩が、シダルの頭脳の中で浮かんだのだった。そのアイデアは瞬く間に馬車という馬車に取り付けられていくことになる。

 必要は発明の母とは誰が言った言葉だったか。
 正しくその通りだった。

 甘オリをパクつきながら泉の縁にいるサリーにも渡す。モムモムと暫く食べていたらマダムの調子もようやく回復してきたので、オコジョ馬車に戻り王都へと向かった。

 門の前で止められると行きと違う生き物が馬車を引いていると言う事で、再登録する事になった。
 その際馬車を降りたら門番に
 「その肩に止まってるのはアクセサリーかい?アクセサリーなら何処でう「ギルドで登録します」はい、お願いしますね」
 全く同じセリフを桃色綿毛兎の時にされたので食い気味に返事を返した。
 向こうも仕事なのは分かっているが、せめて吐くセリフは変えろよと思う。
 マダムタッソーも居たので比較的すんなりオコジョの登録を済ませられたのは良かった。
 力の無いはずのオコジョが馬車を引いてるのが珍しかったのか、人だかりは出来てしまったが。
 そんなこんなで片道一ヶ月の筈が往復で約10日くらいだろうか、そんなスピードで帰ったもんだからギルマスが慌てて武装して出てきた。
 「何か無きゃお前達の戦力でこんなに早く帰ってくることなんか無いだろ!?言え!何があった!?スタンピードか!?」
 「だぁから違うって!ちゃんと村まで行ったよ、ほらこの剣見ろってカリオにもらった卒業の証だよ」
 そう言って剣を見せた。
 ジーッと見ていたギルマスは
 「なぁ……これってカリオの愛刀じゃないのか?ほら!この鞘の模様と家紋!」
 そんな事をマダムと話している横でサリーは
 「御父様!?」
 っと、モーカント公爵が娘の帰りを待っていて抱擁していた。
 (ありゃ、連れ帰ろうとしに来たのかな……)
 っと不安そうに眺めていたら
 こちらの視線に気がついたモーカント公爵は
 「お初にお目にかかります、アンサリーナの父でクーデリィート・モーカントと申します、お見知りおきを棟梁シダルくん」
少し咳払いしたあとに続けて
 「安心してほしい娘を連れて行ったりはしないよ?ただ少し依頼を聞いてほしかったんだが、旅の疲れもある様だから明日、我が家へ来てもらっても良いかな?」
 「はい、では明日必ず伺います!」
 「ではなアンサリーナまた明日」
 「はい御父様」
 そして馬車に乗って帰っていった。
 そんなやり取りを見ていたギルマスは
 「あの人やっぱり貴族だったのだな」
 っと、今頃になって冷や汗が止まらなくなったのかカクカクしていたので落とす前に剣を返してもらった。
 「っていうか、シダルお前師匠の剣を見たことないのか?」
 「あるわけ無いじゃん、そもそも持ってる事すら知らなかったよ?ズーッと木刀で訓練だったし村長だったしね」
 「お前はもう少し周りの人間をよく見た方が良い気がする……」
 そんな事を言っても困るとマダムタッソーに告げるが、その辺も学園に入ってから養えば?っと言われ、ため息まじりに了承するシダルだった。

 「っというか、学園と言うところは勉学以外に常識と人間観察なんかを教えているのか?」
 っと、商会に向かう道すがらサリーに聞いてみると、教師が居ると言う訳ではなく友達付き合いしてる貴族とかと話をしていると自然に覚えるらしい。

 (まぁ行くまでもう少し時間があるので、バネの試作品作りに時間を割いて合間にダリルのところに顔を出しつつ回収して……あれ?意外と時間ないのか?)
 少し焦って来たが、まぁ明日も用事が出来てしまったし、出掛けるのは次にしようと考えた。
 商会に着けば着いたで弟子達の腕を見る事になり、二人ほど合格ラインだったので金庫から前に打っといた金槌とヤットコを渡した。
 独り立ちするのかと思っていたが、先輩弟子達と共にこの商会に残るというので、許可して給料の話を事務として来るように言って送り出す。
 残りの弟子は13人になった。
 ようやく減り始めたなぁと喜んでいると、玄関口に土下座したまま動かない人が!!と叫びながら事務員が飛んできた。
 (え~またぁ?)と嫌そうな顔で玄関口に行くと
 三男がボロボロの装備で座ってた。
 「えーっと……行き倒れ?」と、呼びに来た事務員も付いてきてたので聞いてみた
 「あれ?先程まで両手を前に付いて跪いていたのてますが……」
 「それって前のめりに倒れたのを手で支えてただけでは?」
 そう言ってみると
 「そう……かも知れません」
 何か落ち込んでしまったので懐から飴を取り出して口に放り込むと、お礼と焦らず対処する術も身につけなさいと諭した。
 「はい!これから気をつけます!」
 っとにこやかな表情で机に戻って行った。
 落ち込んでもいなそうだったので少しホッとしたてると

 「何だよシダル……ちゃんと商会長してるんだな覚えてるか?俺だよ俺」
 三男の名前は知らないので
 「覚えてるよ、どしたの?冒険者になったって聞いたけど?……挫折?」

 「いや、挫折っておま、酷いな……相変わらず扱いが雑だよな」
 雑じゃない、というかこれが2番目に仲が良い相手という認識の三男に対する扱い方だった。
 (雑じゃないんだよ?人間扱いしてるだけマシなんだよ?)結構まともに対応した筈だったシダルはズーッと心の中で叫ぶのだった。

 「取り敢えず立ってよ兄ちゃん立てないなら転がして運ぶけど?」
 「いや!立つよ立てるよ?やめてよ天下の往来で羞恥で明日から街を歩けなくなるからね?」
 そう言うと急いで立ち上がった三男
 さて、どうしよう……
 少し考えているとサリーが事務員服に着替えてやって来て、応接室でお茶など如何ですか?っと誘ってくれたので二つ返事で頼む。
 「何だシダル結婚したのか?話は聞いたことないから婚約か?羨ましいなこんな可愛い子と」
 っと、後ろから背中をドンドン叩く三男
 「なぜ皆結婚したのか聴くんですかね?彼女はうちの秘書です」
 「付き合ってもないの?なら俺が口説いてもいいってわけだな?」
 「良いですけどその子、公爵様の娘さんですよ?」
 「おお!良いとこの娘さんな!いいじゃねーか!オジサンの様に逆玉の輿じゃん!気合はいるね!」
 (あ、わかってネーナこれ)っと思ったので
 「モーカント公爵ね」
 「モーカント公爵?あれ?どっかで聴いたような……」
 多分門番で聞く話って冒険者でも聞いてるよなぁっと思って二つ名を口にしてみる
 「赤服のモーカント」
 「アッ!!思い出した!!戦闘狂じゃねーかよ!そこのお嬢様!?」
 さっきまで意気揚々としてたのに、裸で冬山に飛び込んだかのように震え始めた三男
 「寒いなら温めようか?」
 「直火で暖めないでね?火傷するから。てか、したから」
 過去を思い返せば返すほど末っ子のシダルに散々な目に合わされてきた三男は冗談とも取れる言動がガチで実行してくる事を知っていた。

 寒いと言ったら
 温めてあげるよーといいなが生活魔法の火を使って燃やされそうになった。服の一部が燃えかすとなり、肌が少し焼けたようでヒリヒリと痛かったのが一番記憶に残っていた。
 村長との鍛錬の跡、動けないといったら
 じゃあ転がすねーっと言われ、生活魔法の洗濯の応用を使って三男を廻して転がしながら教会から家まで運ばれた事もあった。
 下手にコイツに頼むと碌でもないことに成るのを身体で知った三男だった。

 応接室に通されると高そうなソファがあり、そこに座るように促され、ビクビクしながら端っこに座ると
 「広いんだから真ん中に座りなよ兄ちゃん、動けないなら…「すぐ動けます!」」
 最初に動けないから運んでっていうお願いを聞いてあげた日から、こんな感じで素直に聞いてくれる事が多くなった兄ちゃん。
 言葉使い的に弟の相手をしているようで、結構楽だった(扱いが)
 程なく紅茶が出て来て少し呑んでから
 「それで?何か用だったの?」
 「お、俺結婚するんだよ!」
 「おおっ!それは……それはおめでたいが、さっきの口説くとかなんとかって下りは?」
 「冗談に決まってるだろ?お前が焦ると思っただけだよ」
 (えーもう焦りましたけど何か?)
 そう思っているが、この兄ちゃんは俺の顔から察する事はできない筈だった。
 が、シダルはミスをおかす。
 この部屋にはサリーも居るのだ。
 そして常に主であるシダルを見ているわけで、そして話の内容から口説こうとしたのはサリー本人で間違いなく、結果耳まで真っ赤になったサリーが出来上がった。
 それに気が付いたシダルだったがとき既に遅しでシダルまで顔を赤くする事態に……

 それを部屋の片隅で観ていたサコラとオハギは呆れていたという。散々村長とシスターを揶揄っていたのにそのまんま同じ事をしていたから。
 「あれ?シダルどうした顔赤いけど風邪か?」
 「いや、大丈夫!少しお茶が喉につまっただけだよ!」
 「それは本当に大丈夫なのか!?陸の上で溺れた奴は見たことないぞ!?」
 「ははは、気を付けるよ。で、結婚するから家でも建てるのか?」
 「ああ!そうなんだ!家はあるんだけど、その……修繕しないといけなくてな?えと……やり方を知らないんだ」
 (あーうん、そうだろうね。すべて丸投げだったしね。別にいんだけどさ)
 「やり方を教えればいーの?すべてやっちゃっていーなら楽だからそっちのが良いな」
 シダルにとって実は手ずから教えるのは苦手だった。弟子にも見て覚えろ!っと言っていたし、説明しながらやるのは本当に面倒だったのだ。
 「出来ればやってもらいたい!けど、修繕は覚えないと……壊れたら直せない」
 「ああ、それなら大丈夫。 魔法陣書いとくからそこに毎日魔力注いでよ、したら勝手に直すからさ」
 「何その便利魔法!!」
 「明日……は行けないから、どーすっかな。んー適当にやっちゃって良いなら場所だけ教えてよ」
 帰ってくるまでに終わらせておくからって言う言葉はそのままの言葉だと理解している三男は二つ返事でお願いした。
 場所を聞く限りだと学園の近くらしい事が分かった。学園近くのパン屋の娘さんと結婚すると照れながら言う三男に

 「マリヤさんですか?」
 「あれ?知り合いですか?」
 「学生時代よく行きましたからね、あそこのパン屋少しだけアルバイトもした事あるんですよ!」
 「へぇ!マリヤが聴いたら喜びますよ!やぁ、良い土産話が出来たなぁ」
 お店も引き継いでパン屋をやりながら暮らすそうだ、そして三男も冒険者を引退してパン屋の修行をするんだとさ。
 なんだかんだで軽くお祝いでもするかとなったが、長男とダリル意外とは会いたくないらしい。
 まぁ俺もそうだから安心してくれと伝えた。
 長女がオークになってた下りを話すと鼻水出して笑ってた。まぁ、都合が合えば連れてくるけどっと伝えて、日にちは適当でよいからって事になり三男との話は終わったのだった。

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