行商人

あるちゃいる

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十七話

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 翌朝、自宅がある商会の屋根裏部屋で身支度をしていると、部屋をノックしながらサリーが来た。
 当然だがサリーも一緒に行くのだ。
 今日のサリーはあの洞窟で拾った装備をしている。
 仕立てが良いものなので、ドレスでは無いが働く女性っぽくて良い感じだった。
 まぁ、サリーは何来ても似合うんだけどっと考えてたら
 『あんた遂に考えてることが口から出るようになったの?サリーの顔が大変なのじゃ』
 えって思って振り向くとピンク色の服と顔が赤くなってるのに加えてラムネ色の髪が合さってこれはこれで綺麗だった。
 『おいおい、本当に声に出てるニャ無意識に考えるの止めた方がいいニャ』
 黒色綿毛猫くろいろわたげねこにまで突っ込まれ、茹でダコの様になってしまったサリーは気を失った。
 「『『あっ……』』」
 その後は膝枕しながら目が覚める様に熱さましの手当を施しながら体を仰いで涼しくさせているんだが、さっきから目が覚めるたびに直ぐに意識が飛んでいってるようで、一向に良くならなかった。
 少し焦ってしまって公爵の馬車が玄関口に来てるのも知らず、可笑しいなぁ? と、不安になった執事が屋根裏部屋まで来ていて一部始終を見守る中首を傾げて居たら
 「申し訳ありませんがシダル様は何もしないでください」
 そう言って肩を掴んできた。
 そこでようやく執事さんが来てた事に気付いたシダルは心配そうな顔でサリーが!サリーが!と騒ぎ出してしまい。収集が付かなくなってきた所でオハギがシダルに雷の極小魔法を撃って黙らせた。
 『はぁ……これは意外と早めに一緒にさせた方が面倒が無くて良いニャ』
 『其処の者よサリー殿の親御に伝えるのじゃ』
 「これは珍しい綿毛兎に綿毛猫とはっ……あ、まぁその今日お呼びしたのはその話し込みなので御座います。シダル様に新居を作らせてソレをプレゼントするから嫁にどうか?って話みたいです」
 (いいのか?それバラして……)ふとサコラは思ったが口には出さなかった。
 『ふむ、それなら話は早い。が、コヤツは春から学園に通うが良いのじゃか?』
 「これだけの商会の長ですからね、問題ないかと」
 『ふむ、ならとっとと連れて行くのじゃ』
 『目が覚めれば話は出来るのニャ』
 意識を失ったままの二人を連れて馬車で運びたし公爵家まで連れてった。
 見る者によっては人攫いだったが、馬車には家紋が入っているので怪しまれなかった。


 「……迎えに行けとは言ったが攫ってこいとは言ってないぞ?ソバスティン?」

 娘とシダル殿が我が家に到着したと言われ玄関まで迎えに行くとお姫様抱っこされた娘と従魔に浮かされながらシダル殿が運ばれてくる途中だった。

 襲い来る頭痛と戦いながら何とか執事のソバスティンに話し掛けた。
 「いえ、実は……」
 と、この状態になった経緯を話して何とか攫ってきた事はお咎め無しとした、が、さてどーしたものか。このまま眠っていられても構わないとしてもだ、明日は王城へ向かわねば成らないしなぁ。
 出来れば起きてもらいたいなぁ……あ、気付け薬がまだあったはずだ。あれを嗅がせれば……

 そそくさと隠し金庫から酸っぱい匂いがする東洋の果物を塩漬けにした物を出す。
 以前来た者が置いていったものだった。
 ソレを持って行って鼻にくっつけた。が、反応は無い。
 あれ?可笑しいなぁ?と思って少し潰してから口に放り込んだ。
 瞬間立ち上がったシダル殿はペッと種を吐いたあと、倒れる様に再び眠ってしまった。
 少し刺激が強すぎたと思って今度は辛子をタップリ口に入れてみたら、やはり立ち上がってゴクリと飲んだ後倒れる様に再び寝てしまって、その度に新しい方法で苦い物から酸っぱい物までどんどん口に放り込んでいき、遂には冷たい物を入れようとしたところで

 「公爵様いい加減にしてください!」

 さっきから青い顔をしたまま観ていたソバスティンはようやく止めた。
 つい調子に乗ってしまったようで悪い事をしたかもしれない。
 もう少しで昼時ってところでようやく起きて、危うくいろんな味のスープを呑んでもらう所だったのに。惜しい事を……いや、運が良いことだ。
 私の可愛い娘をどうにか諦めさせなければ!
 あ、違った。えーっと……まぁ良いわ。
 諦めさせる方向で考えを進めよう。

 「やぁシダル君お目覚めかね?」
 「あ、えーっとこんにちは?」
 「ははは君は愉快な人の様だね、ところでアンサリーナは、まだ眠っているのかな?」
 「起こしに行きましょうか?」
 「え?いやいや何を言ってるのかね?一応彼女は婚約前の娘だよ?其処に若い男を入れたら駄目だよー」
 「はぁ……(今朝はサリーから入って来たからノーカウントだな。よし、大丈夫)」
 「所でシダルくん君に実は頼みごとがあってね?家を一軒新築で建ててほしいんだ。着工から完成までに一週間で頼みたい」
 「え!ーと……着工は何時でも宜しいのですか?」
 (無理難題と思ったが普通の反応だな……よし明日……いや!今日からにしよう!)
 「今から一週間で頼む!」
 「えっ……と、間取りの設計図と材木は準備できていますか?」
 「すべて現地にあるよ!(生えてる奴が)」
 なんかめっちゃニコニコしてる公爵様だった。

 (随分優しい父親の元で育ったんだなぁサリーは
 何となくニコニコ笑う公爵様を見てると此方もそれに応えたくなるよなぁ……よし!今回は丁寧に愛情込めて作ろう)

 挨拶もそこそこに教えてもらった現地へ着くと、さすが公爵の土地だな。真っ直ぐ高く伸びた良質な材木が沢山生えていた。これならすぐに加工できるし、高層建築も夢ではない。
 やるぞっ!っと掛け声を掛けると何処からかやってくる弟子たちと元弟子たち。
 「お館ぁ!手伝いに来やしたぜ!」
 「よし!此処に一世一代の家を建てる!皆!俺に力を貸してくれ!」
 「「おおーーっ!!」」
 っと20人近い職人ドワーフが集まり一斉に木を根元から切っていく。
 ある者は根っ子を取る作業をしながら土を整地していく
 ある者は片っ端から切られた材木を乾燥して走り
 ある者はどんどん乾燥されていく丸太を柱や梁に加工していった
 そのお陰もあり、骨組と屋根だけは夜が来る前に完成した。
 地下二階地上五階建てのこの家屋は王都でも一番に高い高層建築だった。オール全木製の釘いらずで組み立てながら剥がれない式を組み込み魔力を流す。
 複雑な組み方で編み上げるように作られていく建物に弟子達も感動していた。
 見たことの無い工法で作られて行くのを驚いては、更に進化している棟梁に付いて行こうと必死に食らいついていく。
 とんでもない作り方をしていると誰もが思い、盗める技法は盗もうと目をギラつかせて仕事に励んでいった。
 この建築方法は後世に語り継がれる程の伝説となった。
 鉄と木が混ざり合うとまるで一つの芸術作品の様な光を帯びて、強固な柱や骨組みを形成して行った。
 各箇所で重なり積み上げられていく繋ぎ目には魔法陣が描かれ、更に強固に、だが柔軟に、まるで呼吸をする樹木の様に織りなす素材達は最高のポテンシャルを発揮して行った。
 内装にも拘り剥き出しの柱にはまるで宝石を模ったような細工がされて行き、後の装飾品のモデルにまでなった。
 公爵様の笑顔に応えるべく始まった気合の入ったシダルはとてもカッコよかったと通り過ぎるマダム達が口々に噂を流していった
 そして、着工から五日後遂に完成した家屋を公爵様にお目にかけようと、サプライズ的な感じで招待した。
 勿論サプライズの仕掛け人側にサリーも居る。

◇◇

 着工から五日後にサリー経由でシダル殿から話がしたいと伝えられた。
 ふふふ……ようやく降参してくれるようだ。
 可愛いアンサリーナが私の手を離れどこの馬とも知れぬ小僧なんぞと婚約だと?
 そんなもの私が許すはずがないだろう?
 目に入れても痛くない程可愛がってきたし、馬鹿にされないように勉学も身につけさせた。
 少し性格は固くなったが概ね順調だったのに!
 飛ぶ鳥の勢いで繁盛していた商会に入ると言われた日には半日泣いたからなぁ……
 しかも止める間もなく既に就職したとか言われてなぁ……その後家を出られて半月泣いていたっけ……
 今じゃ懐かしい思い出だ。
 今日この時初めてアンサリーナの夢が覚めるのだ!顔は可愛いし声も可愛いけどあくまでも男のシダル殿に娘はやれない!
 今回の話し合いというのも日にちを伸ばしてほしいっていう打診だろう?
 ククククボロを出させてやったぞ!
 なぁにが王国一の棟梁だ
 化けの皮をひん剥いてアンサリーナが商会から出ていくと言い出すまでいたぶってくれる!!

 っと、アンサリーナと共に来てみたんだが……
 はて?あんな所に湖なんてあったかなぁ?
 それに建物の前……何だあの噴水は……
 その真ん中を流れる……泉か?小川か?なんて澄んだ水なんだろう。
 そしてあの高層建築……あんな建物は見たことがなかった。
 一番高い場所は王城に匹敵するんしゃないか?
 間違いなく王都一番だ!断トツに……。
 あまりの建物に感動して打ち震えていると、問題の男が待っていた。
 話はこの建物の中で行うらしい
 しかし外もさることながら中は更に素晴らしい
 もうこの柱なんて芸術作品と言われても信じてしまうだろう。
 それ程素晴らしかった。
 最初に案内されたのは地下にあるワインセラーだった
 其処にはワインが樽で沢山入っていた。
 その後更に地下には冷凍庫なる物があってそこに食料品が入っていた。しかも真冬のように寒かった。この中に食材を仕舞えば長く持つ事だろう。
 感心していると、次の場所はホールだった。
 パーティホールだ、まるで王城にあるダンスホールの様だった。何組も呼べる素晴らしいホールだった。わたしはダンスが好きなので、こんな所で妻と娘と踊りたい欲求に駆られたが、ここでそんな我儘など言えなかった。
 二階、三階、四階とズーッと素晴らしい部屋や場所が続く。そして最後の5階である。
 シダル殿が言うには此処にこの建物の主が居るとのことだった。
 私は服装を整えて軽く咳払いをすると静かに扉を開けた。
 するとそこにはアンサリーナと妻のミシェール
執事のソバスティン、各ギルドのマスターにサブマスターと……王様が何故此処に!? まさかこの建物は王の物か!?っと、一瞬納得仕掛けたが、家主が座る席には誰も座っていなかった。
 恐る恐るシダル殿に状況を聞いてみると
 「お待たせいたしました、約束の家屋完成で御座います!」
 そう言って家主の座る席へと案内された。
 だが、妻から無言の圧力を食らう……
 妻との約束でもし本当に七日以内にシダル殿が建物を建てた場合交際を認め、この家屋の持ち主をシダルとアンサリーナに譲る。と、誓約書に印したのだ……。
 何故か遠い家主席、どんどん遠ざかっていった……私はシダル殿の手を取り、アンサリーナの手も取り、2つの手を取って重ね合わせ

 「二人の交際を認める!この家屋は結婚祝いだ!!」っと、叫んだ。
 ここで私はやらかしたのだ、交際は認めるが結婚は分からないとでも言っとけば良かったのに……

 うっかり結婚まで認めてしまったばっかりに、交際通り過ぎて婚約に進んでしまったのだから……。

 

 

 
 
 
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