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5話
しおりを挟む美琴の腕には鳥肌が立っていた。
色取り取りのサンゴ礁を抜けて、海藻が森の様に広がる海底を抜けると、1か所だけ黒い穴の様に深い穴があった。
そこを鳥居が東西南北に4つ置かれていたのだ。
何んの為に鳥居が置かれたのか謎な穴の上に水中ドローンを進めていく美琴。
それを横から沙月が眺める。
「……その中入る?」
「んー、まぁ……探索が今回の目的だし?」
不安そうに尋ねる沙月に目的を再認識させると、美琴はコントローラーを弄ってドローンを下降させる。
深さが50mを超えたあたりでライトを付ける。
周りを確認しながらドローンを降下させていくと70m程で底に着いた。
ドローンを回してライトで周りを確認すると、再び美琴の腕に鳥肌が立ち始め、産毛が逆だった。
「うっわ……ここにも鳥居が……」
「何これ……横穴?」
その鳥居は底の側面にひとつだけ開いていた。
魚も海藻も生えてない海底で砂だけがドローンのプロペラで舞っていく。
誰がこんな場所に鳥居を設置したのか……それは分からなかったが、少なくともここ迄設置しに来れるという事に安堵したのか、美琴は横穴の中へとドローンを進めた。
「何かいる?」
そう何度も聞いてくる沙月には何も答えずに美琴はライトで照らされるゴツゴツとした岩肌を眺め、更に奥へと進める。
穴は徐々に斜めに降っているようだ。
更に深く潜っていく。ドローンが映し出す画像の水深は既に100mを超えた。
この水中ドローンは360mは潜れるやつなので、まだまだ余裕だったのだが、何故か画面が荒れ出した。
「あれ?……なんで……?」
無言で操作に集中していた美琴は唐突に呟いた。
横に居た沙月は動揺する美琴の声に反応し画面に食い入る。
「……ちょ⁉ コントロールが効かない! なのにドンドン下降してってる!」
慌てる美琴に沙月は何も出来ずに握る拳に力が入る。
画面は砂嵐の様にノイズが走り、水深は400mを指していた。
美琴はコントローラーを持ったままひっくり返り、大の字になって呟いた。
「……ロストした……高かったのに……」
そう言ったまま動かなくなった。
☆
「えっと……取り敢えず今日はもう寝よっか……」
水中ドローンを失くしたショックで未だにコントローラーを持ったままうずくまる美琴に優しく声を掛けるが、返事はない。
動かない美琴を他所に、沙月はレポートを書き今日あった事を纏めると、寝袋の準備をする。
「ま、まぁ、落ち込んでても仕方ないしさ? 取り敢えず今日は寝ちゃって明日はもう一つの山を確認して予備の水中ドローンを取りに行こう?」
何とか慰めてそう声を掛けるが、美琴は無言で小さく頷くだけで、コントローラーを握ったまま寝袋へ入ってしまった。
小さくため息を吐くと、沙月も寝袋へ入り、ランタンの灯りを消した。
寝息を立てる2人。美琴の持つコントローラーは既に手が離れていた。
電源は入りっぱなしになっていた為、画面は明るい。
その画面にノイズが走り、映し出された画面に一瞬、金髪の髪と鱗の様な物が映し出された。
しかし、誰も見ているものは居なかった。
そして再び画面は沈黙した。
☆
朝になっても美琴は落ち込んでいた。
毎月コツコツと数千円づつ貯金して、ようやく買った水中ドローンだったのだ。そりゃ落ち込む。それを知っているので沙月も何て声をかけてやれば良いか分からず、砂浜を無言で歩いた。
泉から湧いた水は、既に川となって浜辺まで流れてきていた。
そこを飛び越える。
(そのうちもっと川幅が広がるかも知れないなぁ)と思いながら沙月は、お父さんに橋を作る様に言っとこうと思った。
川を超えて少し歩くと岩壁がその行く手を塞いだので、Uターンはしないで藪の生えてる草原へと躊躇なく歩む。
暫くガサゴソと枯れ葉を踏みながら進むと、砂利道に出た。
この辺は昔の道が残っているようで、チラホラと雑草が生えてるだけだった。
その道をもう一つの山へ向かって歩いて行くと、草を刈り取った跡がある。
草刈りの達人なのか、一夜明けただけで此処まで来た職人が居たようだ。
その刈り取った後を辿って行く。
そして、山の縁まで来て沙月は声を出した。
「うわ……此処にも鳥居があんの⁉」
その声に気が付いたのか美琴も顔を上げる。
そして、その鳥居を一歩山側に入ったまま立ち竦むオジさんが目に入った。
「植木屋さん?」
名前を知らないので、そう声を掛けたが返事は無かった。
肩掛けの草刈り機を抱えたままピクリとも動かないオジさんの肩を叩くも振り向いてもくれない。
名前を呼ばなかったから怒ったのだろうか?と、少し戸惑っていると美琴がオジさんの肩を引っ張った。
「ちょっと! 返事くらいしなさいよ!」
返事も返さないオジサンを見て憤ったのか、美琴は力いっぱいオジさんを掴んで引っ張った。
すると、オジサンは後ろにそのまま美琴と倒れ、うめき声を上げた。
「……有難う、助かったぁ……」と、嗄れた声でオジサンが呟くので、沙月と美琴は顔を合わせて驚き、何をしていたのか聞いてみると、草を刈るのに疲れたので少し日陰に入って休もうと、鳥居の先に一歩足を踏み入れた瞬間体が硬直して動けなくなったのだと、説明してくれた。
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