平凡な高校生活を送る予定だったのに

空里

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閑話 クリスマス3

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「あ、えっと、趣味とかってあります?」
緊張した様子で問いかける沙羅。
今、彼女と貴史は同じベンチに座り話している。

沙羅の問いに少し迷ってしまう貴史。彼にとって趣味はソフトテニスになるのだろうが、これからの会話のことを考えると出来るだけ別の話題を出したい。

「テニス・・・ですかね」
結局テニス以外思い浮かばずそう答える。
「上手いですもんね。始めたきっかけとかあるんですか?」
「きっかけは本ですね。友人に勧められた本がソフトテニスを題材にしている本でそれに憧れたのがきっかけでしたね」
「そうなんですね。じゃあその友人もテニスを?」
「その友人は根っからの読書家ですからね。やってないですよ。それに、その友人は一時期・・・・・・」
「どうしたんですか?」
「いえ、何でもないです。中野さんはどうしてテニスを?」
「私は元々バドミントンをしてたんです。家族と遊びでみたいな感じでしたけど。それで中学校に入って部活を選ぶときにバドミントンがなかったのでテニスを選んだんです。でも、今ではバドミントンと同じくらいテニスも好きですね」

その言葉の後貴史がなにか言うよりも早く沙羅が次の話題を提示する。
「私の趣味は漫画ですね。最近のお気に入りはコホラですね」
「最近話題ですもんね。アニメ化も決定しましたし」
「もしかして、読んでます?」
「はい、さっきの読書家の友人からおすすめされて読んでからその友人に借りて読んでます」
「私、コホラの布教活動してたんですけど、まだアニメが放映されてない作品は皆読んでくれなくて・・・・・・もし良かったらコネイトの連絡先交換しませんか?」
その沙羅につい笑ってしまう貴史。

「あ、すみません。熱くなっちゃって」
「いや、こっちこそ笑ってすみません。・・・・・・・・・コネイトでしたね、どうぞ」
そう言いながらラケットケースのファスナー付きのポケットからスマホを取りだし、コネイトの連絡先を交換するためのQRコードを表示して差し出す。
「あ、えと、ありがとうございます」



丁度連絡先を交換したところで雨も止み練習試合が再開された。

午後3時を迎えた段階で男子は片付けを始めた。
沙羅はその様子を横目に見ながら先生にジャッチペーパーを渡す。
恐らく先ほどの試合が最後になるのだろう。
女子の練習試合は午後4時までの予定のため、後1時間は審判と休みの繰り返しとなるのだろう。
「広川君助かったよ。今日は本当にありがとう」
「いえ、こちらこそ良い経験になりました。あの・・・・・・女子は何時まで練習試合をするんですか?」
「後1時間位だよ」
「もし良ければこのまま最後まで試合をしても良いですか?」
その言葉に沙羅は驚きを隠せない。

朝から試合をしているため体力的には結構キツいはずだ。
テニスが趣味とは言っていたが、好きだからといって体力が無限に湧いてくるものではない。
それに、女子のボールは男子にとってはそこまで速くなく練習にはあまりならないのではないだろうか。
それらの事から私のために残ろうとしてくれているのではないかという結論に至る。
これは、自意識が過剰なわけではなく色々な情報を組み合わせた結果である。

「良いけど、迎えは大丈夫なのかい?」
「はい、一回説明しに行かないといけませんけど」
「そうかい。親御さんに無理は言わないようにね」
「はい。説明に行ってきます」



「中野、良かったな」
「・・・え?あ、はい」

「さらっち、もしかしてあの人のこと・・・・・・」
「え、何々、恋ばな?」
「見てよ、さらっちの様子いつもと違くない?」
「確かに」
沙羅が先生に話しかけられた後、偶々休んでいた二人の部活仲間が沙羅に話しかけた。
「ち、違うって」
「え~、でもさっき連絡先交換してたじゃん。うちの男子とは交換したことないのに」
「そ、それは・・・・・・」
「なんか図星っぽいね」
「うん、ぽい」
「だから、ちが」
「あ、さらっちの好きな人だ」
自分の言葉を遮るその声に思わず後ろを振り返ってしまう。
「うっそ~、やっぱり好きなんだぁ?」
「でも、あの人確かにかっこよかったもんね」
「まだ、好きとかじゃ・・・・・・」
モジモジとそう言う沙羅に、
「これは確定演出だね」
「だね」
部活仲間たちは確信するのだった。



その後貴史が無事許可を取り帰って来た。
そうして一時間試合をした。

結果は競った試合もあったが全勝。
正規のペアを組んでいても達成できなかったかもしれない結果だった。

「今日はありがとうございました」
「こちらこそ。良い経験が出来ました」
「広川君最後まで付き合ってくれてありがとう。お礼にアイスでも奢るよ」
「あ、先生私たちも」

白髪の先生の言葉に沙羅の部活仲間たちが食いつく。
「はぁ、しょうがない。皆の分買ってあげるからついてきなさい」



貴史は遠慮しつつもアイスを買ってもらい近くの腰をかけられる場所で食べることにした。
迎えの車の中で食べるという選択肢もあったが、他の人たちがすぐに開封して食べ始めたので自分だけ帰るわけにはいかないとそこで食べることにしたのだ。

その近くで沙羅は部活仲間たちから背中を押されていた。
それは実質的なものでもあり、貴史の前まで押し出されてしまう。
「えと、あの隣、良いですか?」
「・・・・・・どうぞ」
貴史は沙羅の後ろから期待の眼差しを感じるのを不思議に思いつつ隣を許可する。
「失礼します」

「食べたら帰るんだぞ?おつかれさん」
白髪の先生が車の窓を開けながらそう言うと車を発進させた。



先生が去ってから沙羅が隣に座ったのは良いものの先ほどのように会話が弾むことはなかった。

少し先に食べ始めていた貴史は気まずさと親を待たせているのもありすぐに立ち上がり、
「今日はありがとうございました。親を待たせているのでこれで」
「えと、あ、ありがとうございました」



貴史が帰った後、
「さらっちが恋する乙女にしか見えなかったよ、さっき」
「それな」
「あの誰にも落とせないと思われてた沙羅がねぇ」
「これもクリスマス効果かな」
部活仲間たちから好き放題言われていた。



家に帰った後沙羅は改めてコネイトでお礼の文章を送ろうと、一時間くらい内容を考えて送ったそうだ。
その悩んでいる様子を沙羅の両親はなにかを悟ったかのように優しく見守っていたという。
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