生まれ変わっても無能は無能 ~ハードモード~

大味貞世氏

文字の大きさ
23 / 115
第2章 再会、集結

第6話 一息の休息

しおりを挟む
報奨金が気になって、何よりも先にローレンライにやって来た。

豪華な佇まい。お城のミニチュア版のような建造物。
何処となくエッチな、ピンク色の壁。

「これ、何て言うか」
「ホテルだね」

エントランスを抜けてフロントへ。

「タッチー様とヒオシ様ですね。お待ちしておりました」
向こうのお姉さんから声を掛けられた。指名手配のような似顔絵でも回ってるのかな・・・。

悪い事は出来ませんなぁ。別にしようとは思ってないよ。

「アムール様からの勅命で承っております。何泊でも滞在費は無料となっております。我が家のようにご使用下さい。ただ残念な点として、最上階のスイートへのお泊まりは訳あって、国から差し止められております。その点だけはご了承下さい」

書類にサインを書き込みしている最中に、スラスラと説明を受けた。
最上階は、あの6人が使うんだろうねぇ。どんな部屋かは見てみたい。
羨ましくなるだけだから、まぁ置いておくか。

「お夕食までにはまだお時間がありますが、こちらでお召し上がりですか?それとも外食になさいますか?外ですと、こちらからお選び頂けますと無料券を発行可能となっております」

レストラン、飲食店、居酒屋、何らかのフルコース店、高そうなバー。
広げられたカタログには、あらゆるジャンルのお店がズラリと。

「ど、どうする?」
「いやぁ。まずは内店からでしょ」

「こちらでお召し上がりですね。賜りました。時間となったらお呼び致します。お出掛けの際には係の者にお伝え下さい」

まぁエレベーターなんて無いからねぇ。細かい所は人力なのは仕方なし。

「ごゆっくりお寛ぎ下さい。お部屋やサービスに関してご不満な点がございましたら、そちらも係の者へ何なりと。それでは、お客様。お部屋へご案内ー」

ハンドベルをお姉さんが軽く鳴らすと、即座に別のお姉さん。今度はメイドさんかぁ。
僕らの後ろに立って、深々とお辞儀姿勢で構えていた。

「・・・ここって、一泊幾らすんだろ・・・」
「聞くのが怖いから聞かない!」どうやらそれが正解みたい。

建物は5階建てになっていて、階段は東西に幅広の大理石製。東端の一室に通された。

広い!広々フカフカツインベッド。バストイレ別、水洗、ウォシュレット無し。だよねぇ。
バスには液体石鹸、シャンプー&コンディショナー。洗面台には固形石鹸。歯ブラシ無し。
糸ようじと爪楊枝みたいな物はあった。持ち手で擦ればOKさ。

トイレには、念願のトイレットペーパー。ロールではなく置き詰みタイプの紙。柔らかい!ありがとう。

「温水等の供給は魔道具を使用しております。出来る限りの節水にご協力下さい」
消耗品だからね!前より断然、資源は大切に使いますとも!!

北向きの大窓から、下層の居住区が一望出来る。

貧民街が見える所で、馬鹿みたいに贅沢は出来ない。
僕らは王様になった訳でも、遊びに来た訳でもないんだから。

でも先ずは。

「服買いに行かなきゃね・・・」
「だな・・・」

冒険者。どんなに身嗜みに気を付けても、どうしたって衣服は泥だらけ。何かの血だって溺れる位着きます。僕らの服も、例に漏らさず!服もパンツもブーツだって。

リビングルームの中央には、便利な魔道具式の12時間砂時計。

「クローク、クリーニングのサービスは朝6時より、夜0時までの受付となっております。登城用にはこちらでご用意致しましたスーツとシャツ、ブーツをご利用下さい。サイズの調整も何なりと」

おー至れり尽くせり。流石に、こんな汚い格好で城や王宮には行けないわな。

どデカいBOXが手に入ったんだから、私服ぐらいは自分で趣味の物を買えと。

「こちらがアムール様よりのお預かりの御袋です」

ダイアルロックの金庫から出された袋を受け取り、中を確認。
共通金貨が20枚。1人頭だから、全部で300枚くらいになるのか。
思ったより多いな。
不公平があってはいけないので、馬列隊のメンバー全員同額だと思う。

「あの、チップの相場がよく解らないのですが」

「お客様からの供与受取は厳禁となっております。因みに夜のサービスは✕✕✕✕✕✕・・・」
アカーーーン。あかん奴聞こえたーーー。
「別の係の者を呼んで××××××・・・」
2人とも口ポカーン。だらしない。はしたない!
「流石に私1人でお若く逞しい冒険者様を2人同時となりますと××××××・・・」
お姉さんも説明しながら顔真っ赤。聞いてるこっちも顔真っ赤。

「お向かいの部屋もご用意がございます。間取りもほぼ同一ですので、「もしも」の場合は別れてのご利用、お申し付け下さい。その場合は分身は致しかねますので、やはり別の・・・」


「いや、ないないないないな・・・」断言出来るのか?ここまでの事を聞いておいて。
「ないだろ!なしだろ。ないな・・・」
暫し思考停止中。

「そうですか。私ではご不満であれば仕方がございません」
お姉さんが少し残念そう・・・。いいのか?そう見えるのか?そんな目でいいの?

「いや違います。お姉さんはお綺麗で可愛くて、僕なんかじゃ勿体なくて」
「違うんです。嫌ではないんです。俺らはそれぞれ心に決めてる人が居てですね。浮気と言うのか、外で遊ぶ・・・、遊びじゃなくて!」ヒオシ、珍しく饒舌。

「ウフフ・・・。冗談でございますよ。少しだけ試させて頂きました。お客様の中には居るのです。私たち係の者を性の道具として捉える方々が」
深々と礼をするお姉さん。

僕らは試されていた。アタックしないくて良かったぁ・・・。ここ国営店だもんね。
健全第一だよ。良かった良かった。ピンク色だけどラブホじゃない。

「申し遅れました。当宿内でお二人を専属担当を仰せつかりました、ジェシカと申します。所用や睡眠時以外は廊下におります。別の係と交代している場合もございますが、ご用の際はお気軽にお声掛け下さいまし」

それぞれの部屋に交代制の24時間サービス。ホテルマンって大変な職業なんだ。

「暫くの間、よろしくお願いします」
「ジェシカさん。もし良かったら、町中の案内頼めませんか?俺ら揃って田舎者で、王都に着いたばかりで店とかさっぱり解らないんで」
それ名案。

「はい、喜んで。こちらこそ、よろしくお願い致します」

ジェシカさんは、砂時計と窓から見える太陽の位置を確認し、夕刻までには戻りましょうと付け加えた。

僕らは行水でお風呂に入り、用意されていたスーツの袖を通す。
ベルトもブーツも各々ピッタリで調整は不要だった。


魔道具然り、登録証の発券機然り。この世界には近代的な物もあれば、アナログでレトロな物まで色々な物がある。その殆どが魔石で駆動しているとしても。

各所にアンバランスな面も見え隠れする。

まるで誰かが常に僕らを監視していて、調整され続けているような違和感を覚える。


-----

センゼリカ王宮。アムール王子、私室隣の控え室。
窓際で外を眺めながら、ぼんやりと佇む老人が一人。

彼は西の空を向き、顎髭を擦りながら考え込んでいた。

「なかなか面白い事をしてくれますなぁ」
部屋には誰も居ない。単なる老人の独り言。

「神域への介入。アレには流石に肝が冷えましたよ」
小テーブルまで戻り、冷め切った紅茶を啜る。

「さてさて。これからどうなる事やら」

異世界からの召喚者。生き残るは11人。
これ程大量に召喚された事は過去に無い。

老人の姿となって下界に降りて来たはいいものの。
手の届く範囲は限られている。

テコ入れ。介入。手助け。導き。出来る事も限られている。

こちらの世界の住人に出し抜かれ、後手に回ってしまったのは諦めよう。

例え神とて、全てが万能な訳ではないのだから。

11人の内1人は外域へ出てしまった。そちらには手は出しようがない。

「もう少しだけ。見せて貰いますよ。召喚者諸君」

出来る範囲の事はした。後は彼らの行動次第。
彼らの行き先、将来は未だ闇の中。

夕焼けに染まる西の空が、老人の目には少しだけ悲しく見えた。
「何処までも、血を好むのか。愚かな人間よ」

それが誰の何を示していたのかは誰にも解らない。それとも。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...