お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第45話 少女のお悩み

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王都パージェント。ロロシュ邸内の一室。

そこには令嬢シュルツと、
メメット隊のゴンザ、ソプラン、カーネギ。
偶々休暇中のライラが居た。

少女は重く口を開く。

「スターレン様とフィーネお姉様のお陰様で。絶賛王都は内政的に大混乱の最中。
お集まり頂き申し訳ありません」

ライラが溜息を吐き出した。
「余り言わないで下さい。今日でも無理矢理休暇を取ったんです。次に何時取れるか解らないので!」

ゴンザがライラを窘め。
「それで。シュルツはどうして俺たちを呼び出したんだ。
ソプランやカーネギはこの邸に用事の序でだとしても」

「ライラさんとは個人的にお話をしたいと思い。
ゴンザさんはメメット隊の所属長として、無理を言って申し訳ないです。

少々今後の個人事業の事で悩んでいまして。
冒険者の経験をお持ちの三人に声を掛けました。

まだ私は魔物、と言う物を目にしていません。

その中で、ジャイアントトードとグエインウルフと呼ばれる魔物の危険性を知りたいと思いまして」

「その二つなら確かに国内に居るし、かなり前だが数回戦った事もある。装備は念入りにするが、単体なら今居る三人だけでも手子摺る相手じゃない」

ソプランが肩を竦める。
「シュルツは、事業に使う材料が欲しいから。今は暇そうな俺たちに狩って来いって言うのかい」

「違います。材料が欲しいのはありますが。
どうして魔物が居ると知っていて、冒険者の皆さんは狩りに行かないのかなと。疑問なのです」

ゴンザが答える。
「この国には他に安定して稼げる仕事が山のようにあるからな。態々危険は冒さない。と言ってしまえば、お前たちは冒険者じゃないのか、と知らない人間には見えるだろうな」

ソプランが答える。
「魔物が集まる場所には必ず存在する物がある。
一つは魔素。一つは氾濫の起爆材になる魔物」

カーネギが答える。
「魔素が、濃い状態で。魔物を全部、討伐すると。とても良くない事が、起こる。それが魔物の氾濫」

再びゴンザ。
「この話は冒険者なら誰でも知ってる常識だ。初期教育で強制的に習うからな。
偶に西国とかの馬鹿な連中が、狩り尽くして氾濫を度々起こすが。この国には居ないな。そんな馬鹿は」


「そうでしたかぁ。因みに、氾濫とはどれ程の危険度があるのでしょう」

「討伐した馬鹿の運次第だ。氾濫時に大抵現われる統率者のキング。それを討伐する時は、安全を見越して中級隊を三隊以上は揃える。
今の武装なら、メメット隊全員とライラ辺りが加われば死なないレベルで可能だと思う。
しかしそれ以上が出て来たら、状況は一変する」

ソプランが代わる。
「キングの上。エンペラー。こいつが出たらとんでもない事が起こる。魔物が持つ属性や特性が魔法になって飛んで来る。更に知能が格段に高い。魔物軍師様の誕生だ。
下々の雑魚でも陣形組まれたら、たった一部隊ではかなり厳しいぜ」

「それは怖いですね」

カーネギは疑問に思う。
「もしかして。お嬢様が、欲しい材料って…」

「はい。そのエンペラー級の材料でした。でも諦めます」


ソプランが鼻で笑った。
「諦めてくれて良かったぜ。
さっきゴンザも言ったが、それは狙って出せるもんじゃないんだ。運悪く、更に上が降臨したら。悪いがこの国は軽く吹き飛ぶ。

オークやトードやウルフの上なんて考えたくもねえ。

無事に生き残れるのは、あの二人位だ。

東の大陸で攻略が進まないのも、そいつを出さない為に慎重に削り倒してるからさ」

「更に上が居るのですか?」

ゴンザが答えた。
「口にもしたくないが。それはゴッズ。神級だ。
シュルツが材料に気付いてるって事は、当然スターレンも知っているだろう。

あのスターレンがそれを知っていても。殆ど魔物討伐をしないのはそう言う理由だ。

危険ってレベルじゃない。

嘗ての魔王を屠った勇者一行クラスの戦力が無いと話にならない。魔素を同時に掻き消す道具と、防御系の上級魔道具も山程な。

悪いなシュルツ。
それだけは欲しいとも思わない方がいい」

ソプランが付け加える。
「エンペラーもゴッズも。今のメメット隊の形になって直ぐの頃だっけな。

マッハリア側の裏街道から東に行った森林地帯で。

マッハリアの軍隊が、魔物最弱って言われてるゴブリン狩りしてたのを偶々見掛けてな。

今ならその理由は解ったが。当時はさっぱりだった。

あれ兵士どれだけ居たっけ」

問われたカーネギは。
「二千騎は居た、と思う」

「そうそう。その軍隊がゴッズ出すまで狩り続けて。

出た途端に、かなり離れてたんだが。
地面が揺れて。ありゃデカかったなぁ。

一緒に出た下の奴も、それまでとは全く違う動き。
ゴッズが腕を振る前から隊列陣形組み立てて。

俺は噂に聞いてた東大陸にでも来ちまったんじゃねえか。
って勘違いする位。壮絶だったな。

当時の俺は、団体行動が苦手で。
ゴンザの指示なんて無視し捲ってたけど。

あれで心を入替えたわ。

あいつらアホだわ。
次元が違う。仕事頑張ろってな」

「頑張り過ぎて。自分で、キング出してた」

ゴンザが懐かしむように言った。
「あーあったな。そんな事も」

「止めてくれ。反省してるって。

それも裏街道付近に在った洞窟に。雨宿りがてら入ったらゴブリンが居て。

最後の一匹だって気付かず倒しちまった。
そしたらドーンてよ。

カーネギが居なかったら多分死んでたわ」

ゴンザが笑う。
「今度。あの時の事をスターレンに話してやろうか」

「勘弁してくれよ。あいつにだけは言うな」


「大変良く解りました。欲深い考えは一切捨てます」

ライラがシュルツの震える手を握る。
「シュルツ様。

私は冒険者ではありませんが。噂ではキング以上の魔物の多くは、自分を引き出した討伐者や首謀者を何処までも追い掛ける習性を持つそうです。

だから悪い人も、魔物で故意に氾濫を起こそうと考える者は滅多に居ないのです。

ご安心を」

「はい。有り難う御座います」

「まあこの大陸のど真ん中に、それを考えそうな人物が約一名居ますが。そいつはスターレン様が倒すって言ってますから大丈夫でしょう。

国王を長らく苦しめていたクインザを、雑魚呼ばわりしてたった一晩で葬っちゃう人ですから」

「安心しました」


シュルツは大きく伸びをして。
「何かスッキリしてしまいました。
先程材料が欲しいと思ったのも。あのお二人に何かお役に立てればと思ったからなのです。
でも、結局私に出来る事なんて無いのだと」

「そうでしょうかね。私的には、あの二人がタイラントへ戻る理由に、シュルツ様が成っていると思いますよ。だから元気で居るだけでいいんです!

二人が行く先々で人助けや世直しをしているのは、どう見てもシュルツ様が王女様になる、と仰ったからではないかと思えて仕方がないですが」

顔が真っ赤になるシュルツ。
「私の…為…」

「まあ全部ではないでしょうが。必ず何処かで思っていると私は思います」


ソプランが笑いながら。
「次はウィンザートの世直しだっ…たり…」

ライラが悲鳴を上げた。
「ソプランさん!それ以上は言わないで下さい!」

ソプランは固まり、ライラは頭を抱え、残りの三人は思う。
「「「…有り得る!」」」
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