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第82話 ラフドッグでの休暇05(水没ダンジョン)
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休暇も残すところ後2日間。
朝食後にフロントで今日は遅くなるかもと伝えて出陣。
ラフドッグの西から大滝手前まで飛んだ。
索敵と双眼鏡を駆使して周辺確認。
100km圏内に接近者は無し。
滝の麓の岩場から瀑布の裏手に回り込み、ダンジョン入口へと入った。
「うわーやっぱり」
「沈んでるね」
「クワァ…」
「しゃーない。フィーネは気を付けて。
ソラリマ装備したからって無敵じゃないから」
「うん。注意する」
軽くキスをして離れた。
今日は予め水色の水着を着用。
服を脱いでライダースーツのパンツだけ履き、
ビスチェとチョーカーマスク、貝殻を装備。
その上から。
「来て、ソラリマ」
『御意に。水没迷宮か。海との違いを知る良い機会だ』
最初から光らせてランタン代わりにした。
「ポーチどうしよっか」
「防水機能は備わってるから。収納内に水がアイテムで現われるまでは大丈夫」
「ちょっと不思議な感じだけど…。違和感を感じたら引き返すね」
「おっけ」
フィーネを見送り滝の外へ出た。
「水没してたらそりゃ知ってたとしても誰も攻略しない訳だよな」
「それもそうよね」
「クワッ」
「クワンティはかなり上で待機。適度に休憩に戻る事。
俺は望遠鏡で南側を重点警戒」
「クワッ!」
飛び上がるクワンを眺めつつ。
望遠鏡で接近者を探る。
魔力量が上がった分、望遠鏡の射程圏も拡大させられる。
川沿いを南に構えた。
時々索敵。ロイドちゃんは地下を見てて貰える?
「賜りました」
望遠鏡は一点収束にも出来る。
広域は…大河の分岐近くまでか。
林業が盛んなのはハイネ。
下だけではなく上からも注意が必要なのか。
望遠鏡を外して滝の上側を見た。
特に異常無し。意味が解らん。
水の流れを変えるダムでも作ろうとしたんだろうか。
「ダムか…」
河の水量は豊富。ダムを設けて分岐させ、ウィンザートと王都の間にもう一つ町を設ける。
昨日ライザーはそれを俺たちに相談したかったとか?
いやそれはない。そんな大事は上に掛け合うべきだ。
益々解らん。
人間ではなく動物か魔物。
ダムを作る動物の代表格と言えば、川獺君。
鋭利な爪を持っていても大木を刻める程じゃない。
分岐から南。東側の左手を辿った。
---------------
単独任務中のフィーネです。
水溜りから突入すると、直ぐ下に大きな空洞が広がっていました。
かなりの広さ。これならソラリマも気にせず振り切れる。
光源はソラリマしか無いが、各方面の壁面の青緑の苔のような翡翠石が光を拡散して視界性は良好。
望遠鏡を出さなくても全容は掴めた。
上下約40m。奥行き不明。
これが3層。
空気溜りは見当たらない。真に水没ダンジョンだった。
余り綺麗だとかうわぁとか口に出すと、これが見えないスタンに申し訳ないので感嘆は述べない。
降り掛かる剣魚が居なければ、全面キラキラと輝き星空の中に漂っているかのような感覚だった。
そう邪魔者さえ居なければ!
剣魚はソラリマを異物と認識したのか群がって突進して来た。四方八方360度。
太刀魚のような長い外装。
何故かは解らないがカジキマグロみたいに犬歯が前面に押し出していた。
何をどう進化すれば、そんな攻撃手段がこんな場所で必要になるの?
それを必要とする難敵が下の層に居る…と考えた方が良さそうね。
剣魚の体長は角も含めて約1m。それが数十の群れを為して全方位から突撃して来る。
初対面時は驚きはしたものの。その単調な攻撃には脅威は全く感じずソラリマを振り乱して斬り刻んだ。
ドロップするアイテムは小さな魔石か細い角。
群れは既に3巡目。取ったアイテムもそれなり。
途中から数えるのも面倒になってポーチに入れる作業を繰り返していた。
ポーチに異常は無い。
防水性は良好。
これまで浸水が怖くて海の中までは持って行かなかったがこれなら問題なさそう。
耐圧力は未知数だから過信は出来ない。
「…」
大群が5巡目が過ぎた時。
突然体長3mを越える剣魚の個体が現われた。
あれが階層主で間違いない。
ただ残念なのは攻撃パターンが一緒。大きいだけで。
そいつが1匹だけだった。
幻影で撹乱し、難無く撃破。
ドロップは大きな魔石と色味が異なる大きな角。
漏れなく頂きます。
更に奥に進むと下へと続く大穴が見えた。
---------------
森林伐採の首謀者と思われる動物?を発見した…。
俺はそいつをレンズ越しに見ている。
そいつもこちらを…木材の皮をバリバリと前歯で貪りながら見ている。
バッチリ目が合ってます。
奴の鼻息は荒い。
そいつは大河の分岐点の中州で…櫓のような物を建築中だった。
クワンも俺の隣に降りて来て、パックから鰹節のおやつを取り出して貪り始めた。
巨大な川獺君に目を戻すと、既に中州に姿は無かった。
ホッとしたのも束の間。
直ぐ南に望遠鏡を移動させると、奴が、グングン接近。
「智哉!あのスピードは」
尋常じゃない。それは見れば解る。
実距離300km以上は離れている筈が、もう200km付近にまで接近しているのだから。
クワンの口から鰹節の欠片がポロリと落ちた。
鳩も俺も豆鉄砲を喰らって静止してしまった。
これは、とても拙い!
大急ぎで女神様の鎧と中剣を取出し、
鎧の装着に取り掛かった。
鉛弾を有りっ丈取り出して。
「クワン!それを上から投げて時間を稼いでくれ!」
「クワッ!!」
鉛弾の数個を鷲掴みに空へと飛んだ。
「なに?どうしたの?」
「丸太を流したと思われる敵と遭遇。
俊敏性だけで軽く3000は越えてる難敵だ。
目も良いし強靱な爪まで持ってる!
愛してるフィーネ。マジで死ぬかも知れない」
「…ふざけた事言わないで!直ぐに戻るわ」
鎧を装備し、右手に中剣を装備しても背中の寒気が収まらない。
そいつはもう肉眼でも見える位置に居た。
接近され首を刈られる。
そんなヴィジョンしか浮かばない。
上空からの鉛弾にも当たらない。確実にクワンの速さを凌駕していた。
敵は正面から向かって来た。
ロープを何重にも重ね合わせ、身の丈3倍以上の大盾を建造して衝突に備えた。
ガツンとした轟音の後。
『その古竜様の髭を寄越せ…』
なん…だと?
奴の狙いは、このロープだった。
「これの所有者は俺だ」
『貴様が死ねば手に入る』
知能が高い。
居るのかは知らないが、こいつはゴッズなのか。
「交渉の余地は?」
『下等生物と交渉?必要あると思うのか』
無いな。殺せばいいんだし。
川獺も鼠の一種。祖先は同じ…。
ハムスターも二十日鼠も同列…。
俺は即興である物体をロープで造り上げた。
---------------
私が地上に戻ると、滝の近くの川辺の平場に…
真っ白な歯車が高速回転していた。
宙に浮いて、後方に暴風を撒き散らしていた。
歯車の脇にはスタンとクワンティが座り、歯車の中央を見上げていた。
「何してるの?」
「川獺も鼠の仲間だと思ってさ。回し車を与えてみたら」
『クソッ。生物としての本能が!本能が!!貴様らなぞ一瞬で狩れるのに!!!』
回し車の下端には巨大な…カワウソ?
「…魔物よね。そしてゴッズなの?」
「怖くて触れないからよく解らない」
双眼鏡を取り出して見てみると…。
名前:ジャンガリアン・カワウソ亜種(古代種)
特徴:元古代竜の眷属
嘗て直属の配下として暗躍
古代竜の部品を追い求めて世界を巡る
「ステータスは、知能が125で。
他は全部5000前後ある。
真面に遣り合ってたら、スタンが言うように全滅してたかも知れないわね」
「なんでそんな訳の解らんもんが中央大陸にって。
このロープを辿って来たのか…」
「多分。丁度お昼だし。身体乾かしてご飯にしよっか」
「いいね。俺片手塞がってるから食べさして」
「当然でしょ。解放したらこっちが死んじゃうし。タイラントが崩壊しちゃうじゃない」
「クワッ」
『本能が!!』
---------------
火の魔石を積み上げて暖を取りながら、お香を焚き、
食事や木陰に移動してトイレやら。
忙しく見守る事8時間。
川獺君は遂に音を上げた。
正しい倒し方が解らなかったので、在庫全ての麻酔薬を投与し昏睡させて巨大な滝壺に簀の子にして沈めた。
かなり暴れたが抵抗虚しく、息絶えてからも1時間は念入りに付け込んだ。
「眠い…」
「滋養酒の強壮剤割でも飲む?」
「3日位寝れなさそうだから…滋養酒のストレートでいいっす」
グイッと一飲み。
もう1時間粘って取出し、死亡確認。
「ジャンガリアンて…」
「今日はもう帰りましょう」
「クワァ」
袋に詰め込んでホテルへと帰還。
そのまま水分補給だけしてベッドに雪崩れ込んだ。
---------------
休暇最終日。
朝早く起きてお風呂を堪能し、朝食をたっぷり食べながら打ち合わせ。
「さあ。地上の脅威は取り敢えず排除出来たものとして
水没ダンジョンはどうでしたか」
「1層は角で突いて来る剣魚の巣窟だった。
他と3倍以上の大きさの階層主を倒して2層へ入った所で地上に戻った。
ドロップしたアイテムは全て拾った。
2層は理解不能だったけど。水蛸がうようよ居たわ」
「イミフぅ。だけど地下は順調だね。
地上は大河の分岐点で川獺君が櫓を組み上げていたので今日はそいつを調べに行って来ます」
「ポーチも問題なかったから、アイテムを調べる前に今日中に3層の状況を確認してみる。
たった3層でも結構深くて広かった。
もう一度1層から見逃しが無いかも確認します」
昨日と変わらず地上班は俺とクワン。
ダンジョンはフィーネにお任せ。
身支度とお酒とドライヤーも頂いて、最後にテラスから朝焼けを堪能してチェックアウト。
「またのお越しを心よりお待ち申し上げます」
「必ずまた来ます」
「また何時か」
フロントと近場のスタッフの一礼を受けて退場。
出店でお弁当と最後の買い物をして帰還報告のお参りをして滝へと飛んだ。
滝の手前でキスして暫しの別れ。
「気を付けて」
「そっちもね」
「クワッ!」
クワンティは先に飛んで行った。
滝に入って行くフィーネを見届け、俺も南へと川沿いに下った。
途中で連絡が入った。
「1層は変わらず。復活もしてない。
2層に突入します」
「鮹なら臭い墨を吐くから注意ね」
「吐かれる前に狩り取る」
約3時間後に分岐前の櫓に到着した。
漂う獣臭。単なる寝床だろうか。
先に来ていたクワンも鼻を背ける臭さ。
索敵した上で。
「周囲には誰も居なかった?」
「クワ」大きく頷いた。
良し。と本流から西側に腰を据えて櫓の解体。
嫌な砂埃が舞い上がった。
丹念に上から、望遠鏡を駆使して崩した。
糞尿塗れの寝床の下から大きな宝箱。
持ち帰るのも汚いし臭い。
その場に宝箱を置き直してロープで開封。
何も起きず。
鼻を押えながら中身を見に渡った。
クワンと一緒に覗き込む。
武装各種や鋏?彫刻刀?裁縫用具?小袋?
色々入っていた物を全回収。
「全部古竜様の遺産だったら凄いぞこれ」
「クワッ」
他に何も無い事を片眼鏡も使って確認後、油を撒いて火を着け逃げ去った。
滝へと飛ぶと、フィーネが全身真っ黒。
懸命に身体を洗っていた。
「失敗したぁ。2層の階層主の大蛸の墨袋破っちゃって。
2層が真っ暗。私も真っ黒」
「俺たちも臭い所行って来たから軽く流そうか」
「クワァ」
服を乾かしながら普段着に着替えて昼食。
焚き火代わりの赤色の魔石は便利だねと笑いながら。
「櫓の中に宝箱があってその場で開けて中身は全部奪ってきた。まだ未鑑定。でも凄そうなのが目白押し」
「いいなぁ。2層の階層主のドロップ、何か光ってたのに取り逃しちゃった」
「倒し切ったなら復活まではその場の付近に落ちてると思うよ」
「よし。ならもう少し頑張ろ」
滋養酒をグイッとしながら、双眼鏡で地下を見ていた。
「墨が抜けるまではもう少しか…」
「便利そうだなぁ。俺も使いたいなぁ。
ちょっと貸してよぉ」
「だーめ。緊急時しか貸せません。スタン絶対女の子の裸覗くもん」
「…否定は出来ない」
「正直者!余計に貸せません」
『発言しても良いか』
ソラリマが発言を求めた。
「何?」
『昨日の大鼠がどの古竜様の物を集めていたのかが気になる』
「どのって?」
『古代竜と一括りにされているが。正確に言えば種別は三つ存在する』
「それは初耳だな」
『地竜の古代種。翼竜の古代種。属性竜の古代種。
我は地竜系の古竜様の…虫歯?
スターレンの髭は属性竜系の古竜様のだ』
「これってソラリマとは別物だったんだ」
『白い輝きを見るに聖属性の古竜様だな』
「これを追って来たなら聖竜様じゃないの?」
『そこが解せない。上手くは言えないが。
気持ちの悪いもどかしさや違和感を感じる』
「うーん。
あいつのお宝全部鑑定すれば何か解るかもな」
『その鑑定も慎重に行った方が良いと思う。
一つずつ取り出して念入りに。そられが新たな強敵を呼び寄せてしまうかも知れない。
場合に依ってはフィーネの箪笥や先日王に渡した黒い鞄に隠すとか…』
「確かに有り得る話だな。でも今更鞄返してって言うのもなぁ」
「代わりにスマホを1台寄越せとか?」
「それは絶対嫌だ。新しい阻害鞄探すか。
渡さなきゃよかったわぁ」
「後悔しても手遅れ」
ガックリ。
「ありがとソラリマ。鑑定は慎重にやるよ」
『礼には及ばぬ』
そして沈黙に戻った。
認識と鑑定阻害の箱や鞄。
これもあの人に聞いてみるか。それともそろそろ闇市に行ってみるか。
ロープで囲いを作り、フィーネが再突入の準備を終えた。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
「クワッ」
フィーネを見送り。
「俺たちも警戒に戻りますか」
「クワッ!」
---------------
体力は問題ない。
魔力もソラリマ延長に使ったのは1回だけで余裕。
綺麗になった1層と2層を渡り、3層へ向かう手前で落とし物を探した。
若干薄く靄が掛かっていても、直ぐにそれは見付かった。
光輝いているのに双眼鏡では何も出ない。
鑑定阻害品か。厚手の布でその金色のV字クリップを拾い上げ麻袋に入れてから収納した。
1層は剣魚。2層は水蛸。果たして3層は。
半透明の浮遊物体。
まん丸頭に無数の触手。
「3層はクラゲ。水海月」
「海月かぁ」
愛する人の声が聞こえるだけでも嬉しい。安心出来る。
よし、集中。
上の魔物と同じく。ソラリマの光に群がり寄って来た。
簡単にイメージ出来る攻撃手段は猛毒と痺れ。
触れられる前に全てを叩き斬った。
振れば当たる。しかし慢心は否。
油断せず幻影を繰り返して徐々に斬り捌いた。
ドロップは魔石と何かの皮状の物質。
それも半透明。海月の皮。何に使うかは解らない。
一群を倒し切ってから回収。
それが7巡。
視界範囲内で殲滅。双眼鏡でも奥に1匹だけ。
行き止まりに辿り着き、下方に横穴を発見した。
その奥には大扉?
「扉?」
その扉のノブに手を掛けようとした時。
スタンの声が飛び込んで来た。
「扉!駄目だフィーネ開けるな!」
寸前で手を引っ込めた。
「どうしたの?」
「天然のダンジョンにそんな造形物は有り得ない。
それは罠だ。最悪入った瞬間に全く別のダンジョンに飛ばされる。お願いだ。引き返してくれ」
あっぶなー。
「解った引き返すね」
「良かった」
そして引き返そうと身を翻した時。
何かに足首を掴まれた。
即座にそれを断ち切り、横穴の入口を振り返る。
入口が狭く…閉じられる!
全力泳力でソラリマを窄まった穴に突き立てた。
ソラリマが弾き返された。
面白いじゃない。私をどうしても扉に入れたいらしい。
「ソラリマ!全開で行くわよ。
最下層なんてぶっ壊してやる」
『御意!』
輝く光りの中にもう1本の黒い螺旋が纏う。
聖魔一体。僅かな隙間に乱撃を繰り出した。
背後に迫る触手諸共木っ端に粉砕して3層に躍り出る。
先程海月を殲滅し尽くした筈の空間に、一際大きな海月が浮遊していた。
扉の向こう側に居るべき個体。
やはり扉は罠だった。有り難うスタン。
私…あなたが居ないと、やっぱり駄目だ!
その巨体に負けないだけソラリマを延長。
繰り出したのは10連撃。
大王海月は触手を伸ばす前に分割された。
ソラリマを元に戻して構えた。
その中心部に在った核の玉。躊躇する事なく。
全力の一閃。淡く輝く玉が2つに割れた。
大王海月は声なき悲鳴を上げて身悶えた。
その海月の中心で回転しながら斬り刻み、海月の頭を突き破った。
3層の天井に張り付き振り返った。
さあどうかしら。
崩れて霧散し水の中へと消えて行く個体。
双眼鏡で確認。敵影は消え去った。
その後にドロップしたのは。一振りの矛。
新しい布を柄に巻いて収納した。
「主は撃破した。ドロップも回収。戻ります」
「やっぱボスだったか。遭遇戦なら仕方なし。
フィーネに早く会いたい」
「私も。全速で帰る」
---------------
無事に戻って来たゼブラ色のフィーネを抱き締めて濃厚なキスをした。
「魔も使ったんだ」
「最後の巨大海月に光だけだと弾かれたから」
彼女の為に温めておいたカップを渡した。
「滋養酒入りのホットワイン。それ飲んだら帰ろう。
ちょっと苦いかも」
一口飲んで。
「丁度良い苦みよ。ありがとスタン」
片付けをしながらアローマに連絡。
「もう少ししたら帰ります。出来れば熱いお茶を。
それと本棟で何か食事を」
「畏まりました。実は…今、シュルツお嬢様と一緒にお料理を拵えています。お口に合えば宜しいのですが」
「お、それは有り難い」
通話を終えて。
「今シュルツとアローマさんが何か作ってくれてるってさ」
「それは楽しみね」
「クワッ」
自宅のリビングに飛ぶと。
「お帰りなさいませ。スターレン様、フィーネ様」
「お帰りなさい」
お茶を用意してくれてニコニコ顔の2人と。
「遅くなった理由。説明してくれんだろーな」
ご立腹のソプランが居た。
「それ今じゃないと駄目?」
「へとへと何ですけどー」
「何で疲れてんのかと。
一昨日ウィンザートに立ち寄った理由だよ。
ライザー殿下が丁度相談したい事があったのにお前らに逃げられたって拗ねてるってよ。
上から問い合わせが俺に来てんだよ!」
「その相談したい事って何か聞いた?」
「良く解らんが。王都とウィンザートの中間辺りで
風の速さで駆け抜ける未知の魔物が出現したとか」
「「あぁ…」」
「クワァ…」
夕食までの間にお茶を飲みながらの尋問タイム。
大河分岐上流の大滝の裏側に水没ダンジョンを発見して、その情報収集の為にウィンザートのギルドに立ち寄った事に加えて、ダンジョン付近でその未知の魔物にも遭遇して溺死させて倒した事を話した。
「水没ダンジョン!?巨大カワウソ!?…ま」
「ホントだって。何なら袋の中に死体入ってるし」
「頭痛え…。
それで王都のギルドにも調べに行かせたのか」
「そうそう。未開のダンジョンは早いもん勝ちだから
誰にも知られたくなかったの」
「全面水没してたから、結局私しか潜れなかったけど。
ちゃんと踏破して来たよ。ついさっき」
「…まあいいや。
ダンジョンは抜きにして偶然討伐したって報告して来る。
夕飯俺も食いに来るからな!」
「はーい。待ってまーす」
舌打ちして走って行った。
シュルツお手製クッキーを食べながら紅茶を頂く、
至福の時。
「お二人の休暇は素直には終わらないとは思っていましたが…未開の迷宮に未知の魔物」
「その魔物はどうやって倒したのですか?」
「俺たちのフル装備の倍位の能力値だったから、
8時間走らせて疲労困憊にさせて。
へばった所に麻酔薬を10本打ち込んで
ロープで縛って滝壺に2時間沈めた」
「…」
「…凡そ従来の魔物退治の方法ではありませんね」
「照れるぜ」
「褒められちゃったね」
「褒めて…るのでしょうか…」
キッチンから漂うクリーミーな香り。
「もう解っちゃったけど。夕食は?」
「お腹鳴りそうな匂い」
「はい。お二人の為にホワイトシチューを。
先程煮込みが終わって火を止めた所です」
「それは楽しみだ。じゃあソプランが戻って来る前に」
「お風呂にしよう」
「クワァ」
「既にご用意しております」
「「流石です」」
「クワッ!」
---------------
お風呂後にサッパリした所に、丁度ソプランが戻り、
5人とクワンでシチューを頂いた。
「おおソーセージ入れたのか。味もフィーネのシチューにそっくりだ」
「うかうかしてるとアローマさんとシュルツに追い越されちゃうなぁ」
照れ笑いしている2人とは裏腹に。
「呑気に受けれてられるのも今の内だぞ。
明日の午前に呼び出しだ。証拠を見せろとよ」
「えぇ~。ゆっくり式の準備しようと思ってたのにぃ」
「予想してたけど。外れて欲しかった…」
「俺に言うな。陛下にまで顔覚えられて…
この先を想像したくねえ…」
「逃げないで下さい。私を捨てるのですか?」
「逃げるかバカ。そもそも逃げ場が何処にもねえ。
気晴らしに水没ダンジョンの話聞かせろよ」
「しょーがないなぁ」
フィーネが水没ダンジョンの詳細を説明し、迷宮主をどう倒したのかも力説した。
「「「……」」」
「はぁ…。何て言うか。
ソラリマも勿論。お嬢のそのマスクも宝具級だな」
「でしょ。水竜様に感謝感謝」
「しっかしよくそんな物が、ノイツェ様の別宅地下に眠ってたよな。俺はそっちの方が信じられん」
「フィーネの手に渡る前は単純に変装するだけの面白グッズだったと思うよ。持つべき人が持てば道具も進化するもんさ」
「ふーん。まあ個人武装を羨んでもどうせお嬢以外使えねえしな。どうでもいいわ」
話も途切れた所で。
「アローマさんにもお土産。割れ物だから注意ね」
新星砂時計を渡した。
「シュルツの分は後で持って行くから」
「はい!」
「この様な物まで。私如きに」
「まあまあそう言わずに。そこまで高い物でもないしさ」
「寝室にでも飾って。1組に1つなので!」
赤面する2人。初々しいねぇ。
シュルツが挙手をして。
「私からも。クワンティに」
新装チョーカーが完成したのか。
クワンがシュルツの前に降り立つ。
その首に巻き付けられた物は。
シルクのチョーカーがバックルベルト化され、白いファーのストライプが特徴の細い首輪。
バックルの手前に小さな羽根も先端だけが飛び出す形で織り込まれている。
「手が込んでるなぁ」
フィーネが出した手鏡の前で胸を張ってニンマリ。
「良かったわね。クワンティ」
「クワッ」
スマホに飛んで行き、有り難う御座いますと短くシュルツに打ち込んだ。
「どう致しまして。
定点式の首輪だと痛いかなと思い、巻き込みタイプにしました。
これなら成長に合せて細かい調整が出来るので。
追加の貴重品ポーチと吊るし紐は来月の出発前にお渡しします。…もう挨拶無しでは行かせませんから」
「ちゃんと挨拶するって」
「まだ根に持ってるの?」
「持ってません!」
損ねてしまったご機嫌を宥める為に。結局その夜はフィーネと寝る事となった。
「ウィンザートで、御母様と御父様には会われたのですか」
「ギルド行った序でにご挨拶だけね」
「元気そうだったよ。シュルツの将来の事もちゃんと考えてたし」
「お父さんも前の件を平謝りで」
「出直しの為に行ったとしても。平和になったウィンザートで何処か落着いてて和やかにしてた」
「…安心しました。少し会いたくなって来ました」
「でも今行くとライザーが居るからなぁ」
「隠れて会うのに苦労したわ」
「それは言わないで下さい。
そう言えば、例の材料ですが」
「あーそれな。ダンジョンでも沢山拾いものしたし。
討伐した魔物も含めて正しく解体してからじゃないと渡せないからさ」
「…確かに。あのまま受け取っても加工すら出来ませんでした」
「王都に解体出来る人居るのかなぁ」
「それも悩みの種だ。明日陛下に相談してみるけど。
望みは薄そう。
ギークやデニスさんも解体専門じゃないし」
「陛下が駄目だったら聞くだけ聞いてみようよ」
「んだねー」
明快な解は見付からず。そのまま就寝。
朝食後にフロントで今日は遅くなるかもと伝えて出陣。
ラフドッグの西から大滝手前まで飛んだ。
索敵と双眼鏡を駆使して周辺確認。
100km圏内に接近者は無し。
滝の麓の岩場から瀑布の裏手に回り込み、ダンジョン入口へと入った。
「うわーやっぱり」
「沈んでるね」
「クワァ…」
「しゃーない。フィーネは気を付けて。
ソラリマ装備したからって無敵じゃないから」
「うん。注意する」
軽くキスをして離れた。
今日は予め水色の水着を着用。
服を脱いでライダースーツのパンツだけ履き、
ビスチェとチョーカーマスク、貝殻を装備。
その上から。
「来て、ソラリマ」
『御意に。水没迷宮か。海との違いを知る良い機会だ』
最初から光らせてランタン代わりにした。
「ポーチどうしよっか」
「防水機能は備わってるから。収納内に水がアイテムで現われるまでは大丈夫」
「ちょっと不思議な感じだけど…。違和感を感じたら引き返すね」
「おっけ」
フィーネを見送り滝の外へ出た。
「水没してたらそりゃ知ってたとしても誰も攻略しない訳だよな」
「それもそうよね」
「クワッ」
「クワンティはかなり上で待機。適度に休憩に戻る事。
俺は望遠鏡で南側を重点警戒」
「クワッ!」
飛び上がるクワンを眺めつつ。
望遠鏡で接近者を探る。
魔力量が上がった分、望遠鏡の射程圏も拡大させられる。
川沿いを南に構えた。
時々索敵。ロイドちゃんは地下を見てて貰える?
「賜りました」
望遠鏡は一点収束にも出来る。
広域は…大河の分岐近くまでか。
林業が盛んなのはハイネ。
下だけではなく上からも注意が必要なのか。
望遠鏡を外して滝の上側を見た。
特に異常無し。意味が解らん。
水の流れを変えるダムでも作ろうとしたんだろうか。
「ダムか…」
河の水量は豊富。ダムを設けて分岐させ、ウィンザートと王都の間にもう一つ町を設ける。
昨日ライザーはそれを俺たちに相談したかったとか?
いやそれはない。そんな大事は上に掛け合うべきだ。
益々解らん。
人間ではなく動物か魔物。
ダムを作る動物の代表格と言えば、川獺君。
鋭利な爪を持っていても大木を刻める程じゃない。
分岐から南。東側の左手を辿った。
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単独任務中のフィーネです。
水溜りから突入すると、直ぐ下に大きな空洞が広がっていました。
かなりの広さ。これならソラリマも気にせず振り切れる。
光源はソラリマしか無いが、各方面の壁面の青緑の苔のような翡翠石が光を拡散して視界性は良好。
望遠鏡を出さなくても全容は掴めた。
上下約40m。奥行き不明。
これが3層。
空気溜りは見当たらない。真に水没ダンジョンだった。
余り綺麗だとかうわぁとか口に出すと、これが見えないスタンに申し訳ないので感嘆は述べない。
降り掛かる剣魚が居なければ、全面キラキラと輝き星空の中に漂っているかのような感覚だった。
そう邪魔者さえ居なければ!
剣魚はソラリマを異物と認識したのか群がって突進して来た。四方八方360度。
太刀魚のような長い外装。
何故かは解らないがカジキマグロみたいに犬歯が前面に押し出していた。
何をどう進化すれば、そんな攻撃手段がこんな場所で必要になるの?
それを必要とする難敵が下の層に居る…と考えた方が良さそうね。
剣魚の体長は角も含めて約1m。それが数十の群れを為して全方位から突撃して来る。
初対面時は驚きはしたものの。その単調な攻撃には脅威は全く感じずソラリマを振り乱して斬り刻んだ。
ドロップするアイテムは小さな魔石か細い角。
群れは既に3巡目。取ったアイテムもそれなり。
途中から数えるのも面倒になってポーチに入れる作業を繰り返していた。
ポーチに異常は無い。
防水性は良好。
これまで浸水が怖くて海の中までは持って行かなかったがこれなら問題なさそう。
耐圧力は未知数だから過信は出来ない。
「…」
大群が5巡目が過ぎた時。
突然体長3mを越える剣魚の個体が現われた。
あれが階層主で間違いない。
ただ残念なのは攻撃パターンが一緒。大きいだけで。
そいつが1匹だけだった。
幻影で撹乱し、難無く撃破。
ドロップは大きな魔石と色味が異なる大きな角。
漏れなく頂きます。
更に奥に進むと下へと続く大穴が見えた。
---------------
森林伐採の首謀者と思われる動物?を発見した…。
俺はそいつをレンズ越しに見ている。
そいつもこちらを…木材の皮をバリバリと前歯で貪りながら見ている。
バッチリ目が合ってます。
奴の鼻息は荒い。
そいつは大河の分岐点の中州で…櫓のような物を建築中だった。
クワンも俺の隣に降りて来て、パックから鰹節のおやつを取り出して貪り始めた。
巨大な川獺君に目を戻すと、既に中州に姿は無かった。
ホッとしたのも束の間。
直ぐ南に望遠鏡を移動させると、奴が、グングン接近。
「智哉!あのスピードは」
尋常じゃない。それは見れば解る。
実距離300km以上は離れている筈が、もう200km付近にまで接近しているのだから。
クワンの口から鰹節の欠片がポロリと落ちた。
鳩も俺も豆鉄砲を喰らって静止してしまった。
これは、とても拙い!
大急ぎで女神様の鎧と中剣を取出し、
鎧の装着に取り掛かった。
鉛弾を有りっ丈取り出して。
「クワン!それを上から投げて時間を稼いでくれ!」
「クワッ!!」
鉛弾の数個を鷲掴みに空へと飛んだ。
「なに?どうしたの?」
「丸太を流したと思われる敵と遭遇。
俊敏性だけで軽く3000は越えてる難敵だ。
目も良いし強靱な爪まで持ってる!
愛してるフィーネ。マジで死ぬかも知れない」
「…ふざけた事言わないで!直ぐに戻るわ」
鎧を装備し、右手に中剣を装備しても背中の寒気が収まらない。
そいつはもう肉眼でも見える位置に居た。
接近され首を刈られる。
そんなヴィジョンしか浮かばない。
上空からの鉛弾にも当たらない。確実にクワンの速さを凌駕していた。
敵は正面から向かって来た。
ロープを何重にも重ね合わせ、身の丈3倍以上の大盾を建造して衝突に備えた。
ガツンとした轟音の後。
『その古竜様の髭を寄越せ…』
なん…だと?
奴の狙いは、このロープだった。
「これの所有者は俺だ」
『貴様が死ねば手に入る』
知能が高い。
居るのかは知らないが、こいつはゴッズなのか。
「交渉の余地は?」
『下等生物と交渉?必要あると思うのか』
無いな。殺せばいいんだし。
川獺も鼠の一種。祖先は同じ…。
ハムスターも二十日鼠も同列…。
俺は即興である物体をロープで造り上げた。
---------------
私が地上に戻ると、滝の近くの川辺の平場に…
真っ白な歯車が高速回転していた。
宙に浮いて、後方に暴風を撒き散らしていた。
歯車の脇にはスタンとクワンティが座り、歯車の中央を見上げていた。
「何してるの?」
「川獺も鼠の仲間だと思ってさ。回し車を与えてみたら」
『クソッ。生物としての本能が!本能が!!貴様らなぞ一瞬で狩れるのに!!!』
回し車の下端には巨大な…カワウソ?
「…魔物よね。そしてゴッズなの?」
「怖くて触れないからよく解らない」
双眼鏡を取り出して見てみると…。
名前:ジャンガリアン・カワウソ亜種(古代種)
特徴:元古代竜の眷属
嘗て直属の配下として暗躍
古代竜の部品を追い求めて世界を巡る
「ステータスは、知能が125で。
他は全部5000前後ある。
真面に遣り合ってたら、スタンが言うように全滅してたかも知れないわね」
「なんでそんな訳の解らんもんが中央大陸にって。
このロープを辿って来たのか…」
「多分。丁度お昼だし。身体乾かしてご飯にしよっか」
「いいね。俺片手塞がってるから食べさして」
「当然でしょ。解放したらこっちが死んじゃうし。タイラントが崩壊しちゃうじゃない」
「クワッ」
『本能が!!』
---------------
火の魔石を積み上げて暖を取りながら、お香を焚き、
食事や木陰に移動してトイレやら。
忙しく見守る事8時間。
川獺君は遂に音を上げた。
正しい倒し方が解らなかったので、在庫全ての麻酔薬を投与し昏睡させて巨大な滝壺に簀の子にして沈めた。
かなり暴れたが抵抗虚しく、息絶えてからも1時間は念入りに付け込んだ。
「眠い…」
「滋養酒の強壮剤割でも飲む?」
「3日位寝れなさそうだから…滋養酒のストレートでいいっす」
グイッと一飲み。
もう1時間粘って取出し、死亡確認。
「ジャンガリアンて…」
「今日はもう帰りましょう」
「クワァ」
袋に詰め込んでホテルへと帰還。
そのまま水分補給だけしてベッドに雪崩れ込んだ。
---------------
休暇最終日。
朝早く起きてお風呂を堪能し、朝食をたっぷり食べながら打ち合わせ。
「さあ。地上の脅威は取り敢えず排除出来たものとして
水没ダンジョンはどうでしたか」
「1層は角で突いて来る剣魚の巣窟だった。
他と3倍以上の大きさの階層主を倒して2層へ入った所で地上に戻った。
ドロップしたアイテムは全て拾った。
2層は理解不能だったけど。水蛸がうようよ居たわ」
「イミフぅ。だけど地下は順調だね。
地上は大河の分岐点で川獺君が櫓を組み上げていたので今日はそいつを調べに行って来ます」
「ポーチも問題なかったから、アイテムを調べる前に今日中に3層の状況を確認してみる。
たった3層でも結構深くて広かった。
もう一度1層から見逃しが無いかも確認します」
昨日と変わらず地上班は俺とクワン。
ダンジョンはフィーネにお任せ。
身支度とお酒とドライヤーも頂いて、最後にテラスから朝焼けを堪能してチェックアウト。
「またのお越しを心よりお待ち申し上げます」
「必ずまた来ます」
「また何時か」
フロントと近場のスタッフの一礼を受けて退場。
出店でお弁当と最後の買い物をして帰還報告のお参りをして滝へと飛んだ。
滝の手前でキスして暫しの別れ。
「気を付けて」
「そっちもね」
「クワッ!」
クワンティは先に飛んで行った。
滝に入って行くフィーネを見届け、俺も南へと川沿いに下った。
途中で連絡が入った。
「1層は変わらず。復活もしてない。
2層に突入します」
「鮹なら臭い墨を吐くから注意ね」
「吐かれる前に狩り取る」
約3時間後に分岐前の櫓に到着した。
漂う獣臭。単なる寝床だろうか。
先に来ていたクワンも鼻を背ける臭さ。
索敵した上で。
「周囲には誰も居なかった?」
「クワ」大きく頷いた。
良し。と本流から西側に腰を据えて櫓の解体。
嫌な砂埃が舞い上がった。
丹念に上から、望遠鏡を駆使して崩した。
糞尿塗れの寝床の下から大きな宝箱。
持ち帰るのも汚いし臭い。
その場に宝箱を置き直してロープで開封。
何も起きず。
鼻を押えながら中身を見に渡った。
クワンと一緒に覗き込む。
武装各種や鋏?彫刻刀?裁縫用具?小袋?
色々入っていた物を全回収。
「全部古竜様の遺産だったら凄いぞこれ」
「クワッ」
他に何も無い事を片眼鏡も使って確認後、油を撒いて火を着け逃げ去った。
滝へと飛ぶと、フィーネが全身真っ黒。
懸命に身体を洗っていた。
「失敗したぁ。2層の階層主の大蛸の墨袋破っちゃって。
2層が真っ暗。私も真っ黒」
「俺たちも臭い所行って来たから軽く流そうか」
「クワァ」
服を乾かしながら普段着に着替えて昼食。
焚き火代わりの赤色の魔石は便利だねと笑いながら。
「櫓の中に宝箱があってその場で開けて中身は全部奪ってきた。まだ未鑑定。でも凄そうなのが目白押し」
「いいなぁ。2層の階層主のドロップ、何か光ってたのに取り逃しちゃった」
「倒し切ったなら復活まではその場の付近に落ちてると思うよ」
「よし。ならもう少し頑張ろ」
滋養酒をグイッとしながら、双眼鏡で地下を見ていた。
「墨が抜けるまではもう少しか…」
「便利そうだなぁ。俺も使いたいなぁ。
ちょっと貸してよぉ」
「だーめ。緊急時しか貸せません。スタン絶対女の子の裸覗くもん」
「…否定は出来ない」
「正直者!余計に貸せません」
『発言しても良いか』
ソラリマが発言を求めた。
「何?」
『昨日の大鼠がどの古竜様の物を集めていたのかが気になる』
「どのって?」
『古代竜と一括りにされているが。正確に言えば種別は三つ存在する』
「それは初耳だな」
『地竜の古代種。翼竜の古代種。属性竜の古代種。
我は地竜系の古竜様の…虫歯?
スターレンの髭は属性竜系の古竜様のだ』
「これってソラリマとは別物だったんだ」
『白い輝きを見るに聖属性の古竜様だな』
「これを追って来たなら聖竜様じゃないの?」
『そこが解せない。上手くは言えないが。
気持ちの悪いもどかしさや違和感を感じる』
「うーん。
あいつのお宝全部鑑定すれば何か解るかもな」
『その鑑定も慎重に行った方が良いと思う。
一つずつ取り出して念入りに。そられが新たな強敵を呼び寄せてしまうかも知れない。
場合に依ってはフィーネの箪笥や先日王に渡した黒い鞄に隠すとか…』
「確かに有り得る話だな。でも今更鞄返してって言うのもなぁ」
「代わりにスマホを1台寄越せとか?」
「それは絶対嫌だ。新しい阻害鞄探すか。
渡さなきゃよかったわぁ」
「後悔しても手遅れ」
ガックリ。
「ありがとソラリマ。鑑定は慎重にやるよ」
『礼には及ばぬ』
そして沈黙に戻った。
認識と鑑定阻害の箱や鞄。
これもあの人に聞いてみるか。それともそろそろ闇市に行ってみるか。
ロープで囲いを作り、フィーネが再突入の準備を終えた。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
「クワッ」
フィーネを見送り。
「俺たちも警戒に戻りますか」
「クワッ!」
---------------
体力は問題ない。
魔力もソラリマ延長に使ったのは1回だけで余裕。
綺麗になった1層と2層を渡り、3層へ向かう手前で落とし物を探した。
若干薄く靄が掛かっていても、直ぐにそれは見付かった。
光輝いているのに双眼鏡では何も出ない。
鑑定阻害品か。厚手の布でその金色のV字クリップを拾い上げ麻袋に入れてから収納した。
1層は剣魚。2層は水蛸。果たして3層は。
半透明の浮遊物体。
まん丸頭に無数の触手。
「3層はクラゲ。水海月」
「海月かぁ」
愛する人の声が聞こえるだけでも嬉しい。安心出来る。
よし、集中。
上の魔物と同じく。ソラリマの光に群がり寄って来た。
簡単にイメージ出来る攻撃手段は猛毒と痺れ。
触れられる前に全てを叩き斬った。
振れば当たる。しかし慢心は否。
油断せず幻影を繰り返して徐々に斬り捌いた。
ドロップは魔石と何かの皮状の物質。
それも半透明。海月の皮。何に使うかは解らない。
一群を倒し切ってから回収。
それが7巡。
視界範囲内で殲滅。双眼鏡でも奥に1匹だけ。
行き止まりに辿り着き、下方に横穴を発見した。
その奥には大扉?
「扉?」
その扉のノブに手を掛けようとした時。
スタンの声が飛び込んで来た。
「扉!駄目だフィーネ開けるな!」
寸前で手を引っ込めた。
「どうしたの?」
「天然のダンジョンにそんな造形物は有り得ない。
それは罠だ。最悪入った瞬間に全く別のダンジョンに飛ばされる。お願いだ。引き返してくれ」
あっぶなー。
「解った引き返すね」
「良かった」
そして引き返そうと身を翻した時。
何かに足首を掴まれた。
即座にそれを断ち切り、横穴の入口を振り返る。
入口が狭く…閉じられる!
全力泳力でソラリマを窄まった穴に突き立てた。
ソラリマが弾き返された。
面白いじゃない。私をどうしても扉に入れたいらしい。
「ソラリマ!全開で行くわよ。
最下層なんてぶっ壊してやる」
『御意!』
輝く光りの中にもう1本の黒い螺旋が纏う。
聖魔一体。僅かな隙間に乱撃を繰り出した。
背後に迫る触手諸共木っ端に粉砕して3層に躍り出る。
先程海月を殲滅し尽くした筈の空間に、一際大きな海月が浮遊していた。
扉の向こう側に居るべき個体。
やはり扉は罠だった。有り難うスタン。
私…あなたが居ないと、やっぱり駄目だ!
その巨体に負けないだけソラリマを延長。
繰り出したのは10連撃。
大王海月は触手を伸ばす前に分割された。
ソラリマを元に戻して構えた。
その中心部に在った核の玉。躊躇する事なく。
全力の一閃。淡く輝く玉が2つに割れた。
大王海月は声なき悲鳴を上げて身悶えた。
その海月の中心で回転しながら斬り刻み、海月の頭を突き破った。
3層の天井に張り付き振り返った。
さあどうかしら。
崩れて霧散し水の中へと消えて行く個体。
双眼鏡で確認。敵影は消え去った。
その後にドロップしたのは。一振りの矛。
新しい布を柄に巻いて収納した。
「主は撃破した。ドロップも回収。戻ります」
「やっぱボスだったか。遭遇戦なら仕方なし。
フィーネに早く会いたい」
「私も。全速で帰る」
---------------
無事に戻って来たゼブラ色のフィーネを抱き締めて濃厚なキスをした。
「魔も使ったんだ」
「最後の巨大海月に光だけだと弾かれたから」
彼女の為に温めておいたカップを渡した。
「滋養酒入りのホットワイン。それ飲んだら帰ろう。
ちょっと苦いかも」
一口飲んで。
「丁度良い苦みよ。ありがとスタン」
片付けをしながらアローマに連絡。
「もう少ししたら帰ります。出来れば熱いお茶を。
それと本棟で何か食事を」
「畏まりました。実は…今、シュルツお嬢様と一緒にお料理を拵えています。お口に合えば宜しいのですが」
「お、それは有り難い」
通話を終えて。
「今シュルツとアローマさんが何か作ってくれてるってさ」
「それは楽しみね」
「クワッ」
自宅のリビングに飛ぶと。
「お帰りなさいませ。スターレン様、フィーネ様」
「お帰りなさい」
お茶を用意してくれてニコニコ顔の2人と。
「遅くなった理由。説明してくれんだろーな」
ご立腹のソプランが居た。
「それ今じゃないと駄目?」
「へとへと何ですけどー」
「何で疲れてんのかと。
一昨日ウィンザートに立ち寄った理由だよ。
ライザー殿下が丁度相談したい事があったのにお前らに逃げられたって拗ねてるってよ。
上から問い合わせが俺に来てんだよ!」
「その相談したい事って何か聞いた?」
「良く解らんが。王都とウィンザートの中間辺りで
風の速さで駆け抜ける未知の魔物が出現したとか」
「「あぁ…」」
「クワァ…」
夕食までの間にお茶を飲みながらの尋問タイム。
大河分岐上流の大滝の裏側に水没ダンジョンを発見して、その情報収集の為にウィンザートのギルドに立ち寄った事に加えて、ダンジョン付近でその未知の魔物にも遭遇して溺死させて倒した事を話した。
「水没ダンジョン!?巨大カワウソ!?…ま」
「ホントだって。何なら袋の中に死体入ってるし」
「頭痛え…。
それで王都のギルドにも調べに行かせたのか」
「そうそう。未開のダンジョンは早いもん勝ちだから
誰にも知られたくなかったの」
「全面水没してたから、結局私しか潜れなかったけど。
ちゃんと踏破して来たよ。ついさっき」
「…まあいいや。
ダンジョンは抜きにして偶然討伐したって報告して来る。
夕飯俺も食いに来るからな!」
「はーい。待ってまーす」
舌打ちして走って行った。
シュルツお手製クッキーを食べながら紅茶を頂く、
至福の時。
「お二人の休暇は素直には終わらないとは思っていましたが…未開の迷宮に未知の魔物」
「その魔物はどうやって倒したのですか?」
「俺たちのフル装備の倍位の能力値だったから、
8時間走らせて疲労困憊にさせて。
へばった所に麻酔薬を10本打ち込んで
ロープで縛って滝壺に2時間沈めた」
「…」
「…凡そ従来の魔物退治の方法ではありませんね」
「照れるぜ」
「褒められちゃったね」
「褒めて…るのでしょうか…」
キッチンから漂うクリーミーな香り。
「もう解っちゃったけど。夕食は?」
「お腹鳴りそうな匂い」
「はい。お二人の為にホワイトシチューを。
先程煮込みが終わって火を止めた所です」
「それは楽しみだ。じゃあソプランが戻って来る前に」
「お風呂にしよう」
「クワァ」
「既にご用意しております」
「「流石です」」
「クワッ!」
---------------
お風呂後にサッパリした所に、丁度ソプランが戻り、
5人とクワンでシチューを頂いた。
「おおソーセージ入れたのか。味もフィーネのシチューにそっくりだ」
「うかうかしてるとアローマさんとシュルツに追い越されちゃうなぁ」
照れ笑いしている2人とは裏腹に。
「呑気に受けれてられるのも今の内だぞ。
明日の午前に呼び出しだ。証拠を見せろとよ」
「えぇ~。ゆっくり式の準備しようと思ってたのにぃ」
「予想してたけど。外れて欲しかった…」
「俺に言うな。陛下にまで顔覚えられて…
この先を想像したくねえ…」
「逃げないで下さい。私を捨てるのですか?」
「逃げるかバカ。そもそも逃げ場が何処にもねえ。
気晴らしに水没ダンジョンの話聞かせろよ」
「しょーがないなぁ」
フィーネが水没ダンジョンの詳細を説明し、迷宮主をどう倒したのかも力説した。
「「「……」」」
「はぁ…。何て言うか。
ソラリマも勿論。お嬢のそのマスクも宝具級だな」
「でしょ。水竜様に感謝感謝」
「しっかしよくそんな物が、ノイツェ様の別宅地下に眠ってたよな。俺はそっちの方が信じられん」
「フィーネの手に渡る前は単純に変装するだけの面白グッズだったと思うよ。持つべき人が持てば道具も進化するもんさ」
「ふーん。まあ個人武装を羨んでもどうせお嬢以外使えねえしな。どうでもいいわ」
話も途切れた所で。
「アローマさんにもお土産。割れ物だから注意ね」
新星砂時計を渡した。
「シュルツの分は後で持って行くから」
「はい!」
「この様な物まで。私如きに」
「まあまあそう言わずに。そこまで高い物でもないしさ」
「寝室にでも飾って。1組に1つなので!」
赤面する2人。初々しいねぇ。
シュルツが挙手をして。
「私からも。クワンティに」
新装チョーカーが完成したのか。
クワンがシュルツの前に降り立つ。
その首に巻き付けられた物は。
シルクのチョーカーがバックルベルト化され、白いファーのストライプが特徴の細い首輪。
バックルの手前に小さな羽根も先端だけが飛び出す形で織り込まれている。
「手が込んでるなぁ」
フィーネが出した手鏡の前で胸を張ってニンマリ。
「良かったわね。クワンティ」
「クワッ」
スマホに飛んで行き、有り難う御座いますと短くシュルツに打ち込んだ。
「どう致しまして。
定点式の首輪だと痛いかなと思い、巻き込みタイプにしました。
これなら成長に合せて細かい調整が出来るので。
追加の貴重品ポーチと吊るし紐は来月の出発前にお渡しします。…もう挨拶無しでは行かせませんから」
「ちゃんと挨拶するって」
「まだ根に持ってるの?」
「持ってません!」
損ねてしまったご機嫌を宥める為に。結局その夜はフィーネと寝る事となった。
「ウィンザートで、御母様と御父様には会われたのですか」
「ギルド行った序でにご挨拶だけね」
「元気そうだったよ。シュルツの将来の事もちゃんと考えてたし」
「お父さんも前の件を平謝りで」
「出直しの為に行ったとしても。平和になったウィンザートで何処か落着いてて和やかにしてた」
「…安心しました。少し会いたくなって来ました」
「でも今行くとライザーが居るからなぁ」
「隠れて会うのに苦労したわ」
「それは言わないで下さい。
そう言えば、例の材料ですが」
「あーそれな。ダンジョンでも沢山拾いものしたし。
討伐した魔物も含めて正しく解体してからじゃないと渡せないからさ」
「…確かに。あのまま受け取っても加工すら出来ませんでした」
「王都に解体出来る人居るのかなぁ」
「それも悩みの種だ。明日陛下に相談してみるけど。
望みは薄そう。
ギークやデニスさんも解体専門じゃないし」
「陛下が駄目だったら聞くだけ聞いてみようよ」
「んだねー」
明快な解は見付からず。そのまま就寝。
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