お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第112話 サンタギーナへの船出

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乱れに乱れた昨晩を乗り越え迎えた朝。
生まれたままの姿の俺たちは、早くにベッドをモゾモゾ抜け出して朝風呂へ直行。

朝食前に酒臭く乱れ切ったリビングのお片付け。

匂い消しに虫除けのお香を焚いて窓や扉を全開にしてとろろ麦飯とお味噌汁、出汁巻き、梅干しと浅漬けとお浸しと言う何とも塩っぱい朝食を元気に食べた。

食べ…はしたが。

「うおっ。酒くせえ…」
「どうされたのですか。お二人共!」

朝から打ち合わせに来たソプランとアローマにはバレてしまった。もうちょいで臭いも抜けたのに…。

朝食の片付けをしてくれたアローマも座って貰い、昨日の出来事を話した。

「…マジで踏破しちまったのか」
「急ぎ過ぎないようにと先日あれ程…」

勢いって大事じゃん。結婚と同じで。

「しかも…」
内心消えていて欲しいと願った二の腕の入れ墨を見せた。
入れてねえよ!浮き出たんだよ。
「試練の迷宮踏破特典でさ…。ボスに止め刺した俺…
勇者になっちゃった」

ソプランが盛大にアイスティーを吹いた。
後で掃除お願いします

「後で清掃します。それよりも」
「じゃああれか。女神教の新興派が探してたもんって」

間違いなくこれだねbと自分の腕を指差し、証拠の品として金の箱を出して見せた。

怒り任せに持ち帰った物である。

「これだけでも結構な価値だぞ。欲しがる奴に売りゃ一生遊んで暮らせる」

「…少し触れさせて頂いても?」
アローマが空箱が気になったらしく。お好きにどうぞと。

中を手探る事数分。アローマが縁に指先を押し込み、底板を引き上げた。
「やはり。下底に何か…笛?でしょうか」

意識が証に奪われて全然気付かなかった。

名前:天馬の呼笛
性能:勇者のみが奏でられる笛
   地上であれば何処からともなく天馬が呼べる
   発動回数:5回
   任意輸送:4回
   固定輸送:1回(とある場所:勇者が指定時)
   同時輸送可能人数:成人最大10名迄
特徴:何処へでも行ったらいいじゃない

「いいじゃない。じゃねえよ!」
何処連れて行く気だよ。

俺以外は双眼鏡を回し見て。
「意味は解らねえが」
「絶対に今はお使いになるのはお止め下さい」

ソプランが俺に双眼鏡を翳して。
「おぉぉ。本物の勇者様だぜ。凄えなお前」
嬉しくない。
「ソプランに見えるって事は。鑑定具持ってる人なら誰にでも身バレする。恥ずかしくてお外歩けない…。
寧ろ歩きたくない。フィーネさんサンタギーナに1人で行って来て」
南国行くのに正装以外に長袖は嫌だ。

「無理でしょ。私は次官なのよ。もう諦めて堂々と歩いたらいいじゃん。私が付いてる。勇気出してよ。何たって勇者様なのだから!」冗談に聞こえません。

思い悩んでいるとアローマが救いの船を。
「シュルツお嬢様にご相談してみては如何ですか?暗黙のクリップも予備品があるのですよね、フィーネ様」

「あれは行商隊のゴンザさんのバッグに取り付ける予定だったの。大至急追加で水没行かないと。シュルツに渡して行って来るわ」
「済まないねぇ」

「相談するだけよ。こればっかは身内以外には口外出来ないし」

「なら俺らはカジノでも見て来る」
「良い物が有ると良いですが…」

みんなええ人やぁ。


一旦解散後にフィーネが連れ帰って来たシュルツにお悩み相談。

フィーネが水没へ出発し、シュルツに二の腕を見せながら事の経緯を説明。

眼鏡をクイクイしながら俺の入れ墨を触診。
「確かにこの眼鏡レベルだと丸見えです。この様な大それた称号をぶら下げていては悪い方々が大挙して押し寄せて来ますね」
「だろぉ。どうにか紋様とステータス両方隠せないかな」

アイスティーを飲んで腕組み。
「クリップ、海月の皮、後何か…」
お願いしますシュルツ様。
「スターレン様。お二人は非常に特殊な布をお持ちでしたね。キッチンで油避けにも使われている」

「あれを使うのか!それならまだ沢山あるよ」

腕回りを覆える分をカットしてシュルツに渡した。

「大全集の末巻があれば別の方法もあるのかも知れませんが。今の私ではこれ以外に思い浮かびません。
繋ぎの無いアームバンドの様な物を目指します」
通るルートとしては東大陸先行が推奨だったんだな。

大全集、聖剣、称号の順で。

「本日中に行商隊向けの製品を終わらせて。何とか明日明後日で仕上げて見せます!」
気合いのガッツポーズ。頼れる!
「無理言ってごめんな。お昼は御馳走するから許して」

「はい!これも温泉郷事業を譲って頂いたお礼です。お気に為さらずゆっくりとお待ち下さい」
「たのんます」

シュルツがミランダに連れられ工房に戻り、リビングには俺とクワンだけとなった。

「お昼何にしようか。クワンは食べたい物ある?」

暫く首を捻った後。
「フワフワ海鮮お好み焼きがいいです。それよりもペリーニャ様への報告は良いのですか?」
おぉそれもあったな。
「もう少し南東の調査を進めてからにしようかと考えてたけど…。今夜にでも一報入れるよ。強攻策じゃない良い方法考案してくれるかも知れないし」
「クワッ」

お礼を告げクワンを撫で回しながら考え中。
フワフワお好みなら長芋入れてみるか。それだけだと芸が無い…。

真蛸の下足買ったのに使ってなかったな。…と来ればもうアレしか無いでしょ。そうですたこ焼きです!

元元関西人の血を引いていた俺。
今でも出来ない筈は無い、と言う暴論を掲げ、スフィンスラーで出た黒鉄の盾を材料にしてやろうと考えた。

無人島の浜辺で石を組み、炎の魔石で盾を溶かし、疣々の棍棒でクルリとたこ焼き用の凹み返しを配置した。

魔石は便利な物で、魔力を遮断するだけで熱まで常温に即座に戻ってしまう。慣れてないと不可能だが道具の扱いに慣れた人なら誰でも出来る。

その発展系が魔導コンロと成る訳です。

ともあれ製造した黒鉄プレートを海に投げ込み冷却。

完成したプレートを小脇に抱えて自宅へ戻ると、早くもフィーネが帰って来ていた。

「お帰り。早かったな」
「只今。もう通い慣れてしまって…その黒いプレートは?」

「流石は我が嫁。お目が高い。この凹みの形で何か浮かびませんか?」
「あ!たこ焼きだ」
「正解。素人様には出せんけど。これで熱々たこ焼きが出来るぜ」

嫁さんとハイタッチ。

「クリップも無事に2つも出たし。さっとお風呂入って私も手伝う。寧ろクルクルやりたい♡」
「食材の準備するから慌てなくていいよー」
「はーい」

自宅ならもんじゃも出来るな。何時かの晩酌に水入らずの時にでもやろう。


何も無かったと嘆くソプランたちも交え。
この世界初(推定)のタコパで俺の荒んだ心も癒された。

「カジノもルールが変わってコインの繰り越しがカード更新無しで出来る様になってた」
「それで上位は全て空になっていまして…」
俺たちの反則技にクレームが入ったか。

「常に俺たちばっかり独り占めじゃ賭博場に遊びに来てる意味が無いしな。他の人」
「今後は純粋に息抜き程度にしましょ」

「スターレン様の対策品なら問題無く作れそうですし。そちらはお任せ下さい」

「俺らも役立てるかと思ってたが…まあ南で頑張るわ」
「私も尽力致す所存です」

「まあそう気合い入れ過ぎなくてもいいよ。大目標の迷宮攻略も終わっちゃったし。新興派の拠点も判明したし。
後はこれを自慢しに行くタイミングだけさ」
「それが一番難しいんだけどね…」

皆して頭を捻っても答えは出ない。
今夜スマホをオープンにしてペリーニャに報告すると伝えて昼の部を解散した。




---------------

夕食後の落着いた時間帯を見計らいペリーニャに連絡。

回線を開いて臨時報告会。

経緯と成果をペリーニャに伝えると。
「こちらからでは良く見えません…。父と私だけにしますので是非一度こちらに来ては頂けませんか?」
そりゃそうだ。
「2人やゼノン隊になら見られても構わないけど。他にはまだ知られたくない。シュルツに今認識阻害の対策品を依頼してるから。それが完成次第にするよ」

「責任重大ですね…。頑張ります!」

「中央大陸に居られるのも後2日。それまでに道具が間に合わなかったらこの件は先延ばしにする。グリエル様には2日後の何処かで伺うって伝えておいて。俺が動けなければフィーネだけで顔見せに行って貰うから」

「承知しました。宜しくお願いします」
ちょっと声に元気が無いな。
「ちゃんと新興派は俺たちが食い止めるから。ペリーニャは心配しないで待ってな」
「最悪スタンの称号を公表すれば、もうペリーニャの声は必要無くなるわ。そしたら外にだって気軽に出歩ける様に成る。元気出して」
「はい…。有り難う御座います」


通話をクローズし。
「フィーネさん。ここで最悪なお知らせが一つ」
「…正直聞きたくないですが。何でしょう、スタンさん」

「俺が勇者の称号を得たと同時に。西の大陸でも魔王様が爆誕してしまいました」
「え…」
「ク…」

「アザゼルが目を覚ましたの?」
「あれは本来150年後に起きる物だから違う。多分前代の魔王様の生まれ変わり。延いてはそれこそが女神様の望み。もう一度この世界で出会う為に。
そして西方三国への干渉が激化したら…少々和平交渉に苦戦すると思われます」

「…友好的な性格である事を祈るばかりね」

後は安全にペリーニャを送り届けてあげるだけか。

それからの事は俺は知りませんよ、女神様。
再び恋に落ちるのか、別々の道を歩むのか。そんなのは本人たちが決める事です。
「…小さく頷いて居られます」




---------------

自宅警備員のスターレンです。
訳有って人の多い場所は出歩けません。

午前にフローラさんの完成連絡が来ても動けず。
全て嫁さんに頼んでしまった引きニートです。

好きでやってるんじゃありません。断じて。

外に遊びに行きたいぜ。
出発前にこんな拘束時間が発生するなんて。

ペリーニャも似たような気持ちなのかな。

自由なようで自由じゃない。


趣味に加えたパズルの続きで暇を潰しつつ。
お昼のピザを焼きながら花壇の観察。

日々の作業はプリタが率先してやってくれている。
観察日記も彼女の仕事。俺は眺めるだけだ。

丈は20cm位。茎が思ったよりも太い。
小さく可愛い葉っぱも付いた。

これは想像以上に大きくなるかもと。今日も水遣りに現われたプリタに話した。
「茎の太さと根張り具合を見ながら植え替えや花壇の拡充を検討してみます。ガンガンやります。隣の窯から超良い匂いがします」
目がキラキラだ。
「後でみんなで食べような」
「ふぁい!」


まったり昼食後に購入品の確認。

クワンのモチーフはクレオメ。
純粋なホワイトプラチナで淡白く発色する。
花言葉は「風に舞う秘密の花」だそうだ。

ペリーニャに贈る物はスプレーマムと言う菊科の花。
ピンクの濃淡が絡み合う艶やかな発色。
花言葉は「清らかな愛」とのこと。

「良かったなクワン」
「ペリーニャにも良いお土産が出来たわ」
「クワッ」


課題は多いが直ぐに出来そうな物は無い。

午後は何をするかで話し合い。スフィンスラーのリトライや物品の再鑑定などの意見を出したが却下を喰らい、明日からは忙しそうだしゆっくりしようよと窘められた。

本棟の祭壇に愚痴を唱え多少気も晴れた所で、自宅書斎でパズルを床に広げて興じた。

嫁は隣室の書庫で雑誌や書籍を読み漁っているようだ。

クワンは軽いお散歩に出掛けた。

休日ってこんな緩い感じで良いのかな。
書斎の使い方としては間違ってる…自覚は有ります。


夕食の献立を考えながら手を動かす。
穏やかで平和な午後だった。




---------------

若干不安視していたがやはりそこは天才少女。
シュルツは宣言通りに出発前日の午前に仕上げてくれた。

工房の作業台に出してくれたのは、人工的な皮膚のような肌色のテロンとした肘まで覆えるアームカバーだった。

「第一に伸縮性。次に防水性と通気性。装着者のお肌の色や質感と同期する機能。そこまでなら難無く出来ましたが肝心の隠蔽効果を付与するのに手子摺りました。
不覚です…次の機会があれば今回の反省を生かします!」
充分で御座いますお嬢様!

「お姉様。大狼様のお爪と合成してみて下さい。それが成功すれば最初の装着者から離れなくなる筈です」
「解ったわ。やってみる」

お爪の欠片を拝借してフィーネに手渡し。作業は一瞬。
見事に爪の欠片がカバーに吸い込まれた。

完了品を手に取った…。
「何も見えないけど?」
「見えてしまってどうするのですか?」
冷静な少女のジト目に。俺はアホなのか!

上半身の服を脱いで右腕に装着。最初に通す時は緩々だったが端を肘まで上げるピタッと張り付いて肌との隙間が完全に消えた。色や質感の境目までも。

厳つい竜の紋様は綺麗に消えた。

「上腕腹裏の小さな黒子を反対の指で触ると緩くなって容易に外せます」言われた通り、脱着もスムーズ。

シュルツの眼鏡とフィーネの双眼鏡でも何も見えず。俺のステから勇者の記述が消え去った。

「自分でも認識出来くなった。…完璧です」
嬉しさ溢れて3人で謎の躍りを天井に捧げた。

傍に控えていたアローマが大きな溜息を吐いていたのが反省点。




---------------

ペリーニャの所へは午後の紅茶タイムに赴く事となった。

浮かれてばかりじゃ居られない。ここで最大級の注意点がある。邪神教の存在だ。

もしも新興派の教祖ローレライと邪神教が闇で繋がっていた場合。グリエル様との話の中でポロッと名前が出てしまったら一大事。

この世界の言語体系は謎が多い。

俺がよく使ってる和製英語の多くも。周囲に使い易いと認識されると、早ければ翌日には周知されていて意味が通じるように転換されているのだ。

数日後には誰彼問わず普通に使っていたりする。

謎ってレベルじゃねえぜ。

そこで俺は真名隠蔽の一環として改名を施す事にした。

「ミレアローゼス」から「ミネストローネ」さんへと改変。
トマト煮込みさん済みません。深くお詫び申し上げる。

邪神の名をミネストローネで流布すれば、真名を知る人物の炙り出しにも繋がり。フィーネとペリーニャに聞かれたり覗かれたりしても認識されずに済む。これで彼女たちとの会話もスムーズに交わせる。俺自身が零さないように心の奧底に沈めてしまえば万事良好。

敵の口からポロリするのは知らん。それを抑えるのは不可能だ。例え神様からの依頼でも、封じる術も道具も与えてくれないなら断じて受け付けない!与えられても無理。
「…それは仕方有りません。善いですね!」
ロイドちゃんも怒ってくれた。
「沈黙されました」都合悪くなると黙っちゃうんだもん。
日頃の感謝を差し置いても遣ってられんよ…。

さ、切替えて参りましょう。


転移先は宿泊に使っていた本館4階の一室。

グリエル様とペリーニャ以外の人物は室内には居ない。

「ご無沙汰しております。グリエル様」
「先日振りです」

「久しいな、ス」
俺はグリエル様の口をロープで塞いでメモ紙を見せた。
「盗聴器を探しますので暫しお待ちを」

2人をゆっくりと立たせて捜索開始。

寝室のベッドやサイドチェストや照明器具。リビングスペースの小棚、椅子、テーブル…。

G色をした焦げ茶色の指先サイズの小さなキューブ。それがテーブル裏の中央に貼り付けられていた。

無抵抗布の切れ端に包み沈黙の箱へ。

念押しにフィーネにサイレントを周囲に掛けて貰い、全員座り直した。

「油断も隙も無い。ペリーニャの目を欺くなんて…。
相当な手練れか、極身近な人物が犯人です。それは後で探しましょう」
「周囲にサイレントも掛けました。ご安心を」

「恥ずかしい限りだ…」

落胆するグリエル様を尻目に。
南東大陸内部でペリーニャの声色で開く試練の迷宮を発見し踏破完了した事から。新興派の拠点の場所と闇商との繋がりまでを話し。最後に迷宮踏破で取得した腕の勇者の証と天馬の笛を見せて説明を終えた。

「もう既にそこまで…」

「かなりの反則技で大陸内部に侵入しましたので。

ローレライが欲していた物が勇者の証なら初代聖剣カタリデが狙い。こちらの天馬の笛なら、これでしか辿り着けない場所が目的地。
グリエル様は何方だと思われますか」

「少し…待ってくれ。頭で整理したい」
震える手で紅茶を飲み、深く目を閉じた。ペリーニャが手を重ねて落着くよう促した。

暫くして目を開き。
「両方では、ないのかね」
「両方…か」何方かではなく。

「嘗ての魔王を屠ったとされる初代聖剣。それを手にして天馬に自らを運ばせようとした。のではないかとな」
「成程」
「確かに…」
呼笛を宝箱に置き忘れて来たら大変な事に成ってたのかもと思うと背筋が寒い。アローマさん有り難う!

「これ以上はローレライに直接問うしかないですね。
…グリエル様。最悪の場合は」
「止むを得ん。黙認する。闇に深く手を染め、心根までも操られているやも知れぬ。充分に注意をしてくれ」

「説得はしてみる積もりです。ですが闇の拠点は木っ端微塵に粉砕します。その時に抵抗されれば」
「諸悪の根源として討伐致します」
ローレライがどの様な思想を抱き、何を求めていたとしても。悪しき道具に冒されいるなら説得は極めて難しい。

「うむ…」
「無念です…」その一言に尽きる。

「明日。俺たちは南西大陸へ向かいます。
南西の滞在中に平行して南東の調査も進める予定です。
第一陣の期間は最大でも来年1月までの4ヶ月間。2月以降は北に呼ばれています」
「この4ヶ月で決着が見込めないなら。次はかなり先へとずれ込みます。何卒ご理解を」

「理解するとも。元々部外者で女神教徒でもない君たちをここまで深く関わらせてしまったのだ。口出しなぞ出来よう筈も無い」
「出来る限り。こちらでも情報を集め。何か掴め次第宝具でご連絡致します」

「無茶はしなくていいからな。ペリーニャが危険な目に遭ったら何の意味も無い」
「はい」

「そうだよ。今日はこの辺りで。盗聴犯捜索の前に。
ペリーニャにこれを」
贈答紙でラップされたスプレーマムのオーナメントをフィーネが差し出した。

ピンク色の発色にペリーニャも瞳を輝かせた。
「これは?」

「少し気が早い誕生月プレゼント。私たちから。
元女神教の敬虔な信者の女の子の力作よ」
「発色は特殊だけど。魔道具でも何でもない装飾品だから安心して。ポーチにでも付けるといい」

「有り難う、御座います…」泣かしちゃった。

興奮したペリーニャが席を勢い良く立ち上がり、グリエル様の目の前で俺に抱き着こうとしたが。

フィーネが割って入って抱き留めた。
「はーい、だめー。スタンは私だけの物。私で我慢」
「ひ、酷いですわ…」
何のこっちゃ。

彼女のテンションが落着いた所で沈黙の箱を開き、反響棒で犯人を探った…。

が、犯人は真下の部屋に居た。索敵すると室内には1人だけしか居なかった。

大きめの白紙に詳細を描き込んでグリエル様に提出。

「では俺たちはこれで。フィーネが消えるとサイレントも解除されるんで。確保は慎重にお願いします」

「了解した。尋問結果は後に。君たちの無事と、南での健闘を一親子として祈る」
「どうぞ、ご無事で」


帰宅後に来た連絡に依れば。盗聴犯は側近修女の1人だったと報告を受けた。

その人は尋問途中で涙を浮べ。何も答えず、全てはペリーニャの為だと叫び。仕込み毒で自殺を図ったそうだ。

何とか一命は取り留めたが。昏睡状態が続き、何時目覚めるかは解らないと言う話だった。

「ペリーニャの…為?」何でだよ…。
「意味不明ね」
「クワァ~」


思考もサッパリで。夕食には偶然アローマたちが作ってくれたさっぱりトマト煮込みを頂いた。

これは…どう取ればいいんだ。許可されたと取っていいんだろうか。
「…周り諄いですね」全くです!



翌朝。早くに4人で自宅に集まり出発準備。
邸内の祭壇。関係者にご挨拶し、陛下へも行って参りますで入国承諾書を受け取った。

ラフドッグで午後一の便にてのんびりと出港した。

前途多難な船出ではあるが責めてサンタギーナではゆっくりしたい。観光して美味しい物を沢山食べて…。

そんな淡い希望は露と消えるとも知らず。
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