お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第181話 継続迷宮と時計作り

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旧王家の弱みを得て迎えたエリュライト滞在最終日前日の夜の打ち合わせ。

もう一つ別の有力情報をモデロンから授かった。

先王ケダムが率いる調査団が全員揃ってロストした未踏破迷宮ペリルマットが有るよと。

場所はサンコマイズから南の町タレンジアドから真っ直ぐ東の山中。先回スリーサウジアとの衝突が勃発した位置の丁度真北辺りだと言う。

その話をする前にサンコマイズの事後処理の話を先に。

フラーメとアローマ(ミルフィン)の父ラハンの遺産配分をどうしようかと。

「そりゃ当然スターレン様に丸投げさ。私らじゃ手に負えないし。大半を失った旧タタラ家を復興させたら私が戻らなくちゃいけなくなるし。最悪、私が大統領選とかに巻き込まれる。んなの冗談じゃないよ」
「同意です。ペカトーレとは縁を切り。タイラントでスターレン様が将来お暇になられた時に。父の夢を再現して頂ければ本望です」
2人共面倒事は沢山です!と言っている。

個人的には女性大統領も面白いんじゃないかと無責任に思っちゃいるが。俺たちはペカトーレの内状は全くの無知なのだから掘り返すだけ損をする。現住民には知らせぬまま去った方が得策だ。お互いの為にも。

「解った。サンコマイズの土地の権利がフラーメに戻ったら全て売却方向で。地下工房はその時に丸っと引き取ってタイラントの何処かへ移設しよう。
中身は空にしたけどあの扉の生体認証機構はじっくり調べたいし。2人の家族の遺産だしな。

潜水艇を完成するにはまだまだ足りない部分も多い。単なる海上船の形ならラフドッグとウィンザート間の連絡船ととかタイラントとペカトーレの直通船としても有用だ。
将来2人の名前から…フラーミル商会で海運業を開いても面白いんじゃない?」

「フラーミル…。その名前は悪くないけど海運業はちょっと嫌。てか無理だって。私はヤンを支えて慎ましく生きるって決めたの。頼むよ。土地の売却金も遺族に返還して全部スターレン様で引き取っておくれ」
「左に同じく。出来ればソプランと…子供たちと一緒に。お二人のお側で働かせて下さい。お願いします」

「責任重大やね。フラーミルは最初の船の屋号にでも使おうか」
「それ良い。2人のご両親もきっと喜ぶわ」
嫁のお墨付きも頂けた。
「ソプランは何か意見有る?自分だけの商会を持ちたいだとか」

「いや特に。会長を張る器でもねえし。アローマの意見と一緒。お前らに付いてった方が断然楽しい。命懸けの面は否めないがそれも後数年の辛抱だと思えば」
「まあソプランとアローマはシュルツの専属も兼ねるから全然楽勝とは思えんけどね」
「「え…」」

「あの話。消えてなかったのかよ」
「俺が何時消えたって言った?」
「あぁ確かに…。聞いてねえわ」
「ソプランの言葉遣いも矯正しませんと…」
「あ…。軽く絶望しそうだぜ」

「先の話は置いといて。モデロンからチラッと聞いた東部の迷宮に付いてどうすんべか」
「どうするもこうするも。冒険者ギルドにも降りない国有の迷宮なんだから。今回は挑戦権だけ貰って帰ろうよ。
勝手に踏破するとレイルもどうして連れて行かなかったんだって怒りそうだし」
有りそう。てか間違い無いな。

「ケダム王含めた二百の兵が飲まれた未踏破天然迷宮って話だったろ。深さも危険度も未知。スフィンスラーも中途半端。今のお前らにそんな余力あんのか?」
「「微塵も無いです」」
ソプラン先生の仰る通りでした。

「タイラントの案件が全部片付いて。年内に時間が取れたら挑戦してみよう」

入口だけ見てお買い物とキノコ狩りして帰りましょう。

「んじゃ明日は入口見て帰る方向で。クワンは入口の場所知ってる?」
一鳴きしてスマホから。
「東部の山中に深い縦穴が有るのは見ました。その近くに砦を構えていたので多分あそこではないかと。他には自然洞窟が幾つか」

「それの何れかかぁ。なら見に行くまでも無く。申請だけ済ませて帰ろう」
「見に行ったら入ろうとするしねぇ。スタンの事だから」
「バレてるぅ…。さてと。俺昨日殆ど寝てないから早めに寝るわ。グーニャ、マッサージよろ。目と肩と腰が凝り捲りでさ」
「お安い御用ニャ!」

ペッツたちの様子を見てフラーメが。
「あんたらのペットは…。ペットと呼べるのかい?人間の言葉を完全に理解して文章まで打てる鳩に。実は言葉を話せる元ゴッズの子猫だなんて」
「深く考えちゃダメよ」
「本邸内でもこの事実を知るのは僅かです。タイラントの上層と深い知人しか知り得ません。口外するような真似をしたら」

「解ってるって。怖い子だねぇ全く。私もさっさと寝るよ」

失った時間は取り戻せない。これからの人生の方が長いんだから焦らずゆっくりと。

2人の姉妹だけに限らず誰にでも当て嵌まる。
家族の時間。




---------------

チェックアウトを済ませ。朝の市場で魚介類を大量購入してから官邸へ。

モデロンに帰りの挨拶と迷宮の立入申請をしてみた所。速攻で首相執務室にお呼ばれした。

「お忙しいでしょうに。お返事は算出書の正式文と一緒で良いですよ」
「忙しさは関係無い。国に取っても私個人にしても重要な案件だ。君は本気でペリルマット迷宮に入るのか」

「だから申請してるのですが?」
「危険な迷宮だとは聞いています。勿論財宝が眠っていたらご報告しますよ?ご遺族の年金にも充てられますし」

「それは嬉しい限りだが…。踏破出来る前提で話されてもな。他国の役人を危険に晒してまで行かせるのには躊躇する。国の面子も有るのだがね」
「自分たちで踏破して財宝を独り占めにしたいと」

「いやそうではない。とも言い切れないが。許可を出す代わりに国からも同行者を付けたい」
お目付役か。
「正直足手纏いで邪魔です。挑むならタイラントから有力者を連れ立ちます。信用も足りません。そこのモデロンなら信用も有り、足手纏いにはならないでしょうが。
お互いに秘密も多く。私らも本気が出せない。だったら許可は不要です。どうしても行きたい場所でもないので」

苦渋の決断。
「むぅ…。君らを信じるしかないのか。良いだろう。立入許可は正式文書と一緒に送ると約束しよう。だが肝心の迷宮内部の情報に付いては皆無だ」
「何も?公開したくないとか?」

「全く信用されてないな…。違う。過去に偵察部隊を何度送っても誰一人生還者が居ないのだ。解っているのは入口の場所のみ。国の歴史を紐解いても中から魔物が這い出した記録は無い。
強欲な兄が兵を引き連れ消息不明となったのが最後。中で何が起きたのかが一切解らない。
砦は構えているが。それは猟師や一般人が中に入り込まぬ様見張っているに過ぎない」
「ほぉ」
そんな高難度な迷宮が隠れてたなんて。

「冒険者を送り込んだ事や。謎の組織が突貫した記録も無いんですか?」
「上級冒険者隊に依頼した履歴は有る。結局生還者は零でギルドからも死亡通知が来た。
組織の連中はどうだか。砦の目を盗み、闇夜に紛れて南部から入ったなら可能性は有るが。それで何かが劇的に変化した記録は無いな。元々西諸島を牛耳ってコソコソやっていた連中だ。内部までは知り得ない。飽くまで表向きで知る限りでは、の話」

「生半可な覚悟で挑むもんでもないか…。解りました。
算出書の内容確認に伺った時に偵察に向かいます。天然迷宮なら外からでも見える筈。何も見えなかったら挑戦自体を取り止めます」
「用事も無いのに危険に首を突っ込んでいる暇も有りませんもので」

「それが賢明だ。私も死にたくないからあれには飛び込まん。もう帰国するのか」

「北部の町で一泊してからサンタギーナ経由で帰国します。それが何か」
キタンがグーニャをじっと見て。
「帰る前に…。その赤毛猫を、抱かせてくれないか」

「構いませんけど。敵意持って触ると腕が千切られますよ」
「私が猫に敵意など向けるものか。咬まれたって平気だ」
下手な脅しには屈しない。強いな。千切られるのは事実なんだが…。

数分。嫌嫌ながらも無表情でグーニャはキタンの膝上で撫でられ続けた。


シェイルビークの町で一泊。毎度通過するばかりで見過ごしていたが市場には海産物と山菜、そしてパイナップルが売られていた。

「パインはいいな」
「少ないけどワラビも売ってるね」
ワラビと聞けば蕨餅を連想してしまうがそこまでの量は買えないようだ。

山菜の一部として購入。

店主さんにリサーチ。
「このワラビって南に自生してたりするの?」
「あぁこれかい?これに目を付けるなんて珍しい行商さんだねぇ。薬膳とか薬に使うとかで南の農園で栽培してるんだよ。大量に欲しいなら直で買いに行った方がいいよ。確か粉にして売ってた気がする」
聞いてみるもんだ。

お礼に他の山菜を多目に買って農夫さんを紹介して貰い買いに走った。

直売所には大量の粉袋が並び。

店番をしていた少年が。
「買ってくれるの?作っても殆ど売れない物なのに?」
「そだよ。これを買いに来たんだ」
「売れないなら沢山買うよ」

「やったー。奥から母ちゃん呼んで来るー」
と言い残して少年は元気良く奥に走って行った。

店頭を放置して…。

他に客が居ないから良いものの。

こちらの心配を余所に直ぐにお腹の大きな若い女性を連れて戻って来た。

店舗と住居が連結していたらしい。

「あらあら。行商さんに直接お越し頂けるなんて。生憎主人は裏の畑に居るもので」
「都合悪いなら明日の朝にでも改めますが」

「いいえぇ。子供に呼びに行かせますから。その間店番を交代します」
「行ってくるー」
また元気に走って行った。

よいしょと広い椅子に腰掛ける御婦人に。
「大変そうですね」
「使用人とか従業員は雇わないんですか?」

「雇いたいのは山々なんですが…。雇える程商品が売れなくて」
「薬師の人が買いに来るのでは」
「確かに定期購入されるお客様は居ます。ですけどこの国の人は滅多に風邪を引かないので…」
「「あぁ…」」
巨人族の血が混じってるなら病気にも強いのかもと妙に納得した。

少年が連れて来たご主人さんと交渉。
「わらび粉の在庫って何時もどれ位余るんですか?」
「今並べてあるのは殆ど廃棄でしょうね。在庫はこれの半分位なんです。ワラビは食べられる山菜として売れるんですが根っこのこっちは全然売れなくて」
「勿体ない」
「店頭の物を全部買い取ります」

「「全部!?」」

「無理でしたら半分でも」
「いえいえ。買い取って頂けるなら幾らでも」

「でしたら俺たちも定期購入に来るんで。納入時期は何時頃ですか?」
「四半期に一度。一月、四月、七月、十月。今有るのが十月収穫分で。翌月に来て頂ければ確実です」
「お幾らですか?」

「ここに有る物合計で…共通金貨十二枚。お纏め購入なら十枚で結構です。しかしどうやってお運びすれば」
「余裕で入る収納袋が有るんで持ち帰ります。倍額の24枚で証文を書いて半分現金を置いて行きます。ギルドに頼んでタイラントのストアレン商会が大量購入したと宣伝して貰えれば。次回から直ぐに在庫は消えますよ」
「そんな…。倍額だなんて」

「初回の気持ちです」
「長男さんもお腹の子供も育ち盛りで何かと要り用でしょうから。予約分は5袋程度取り置きお願いします。直接来られない場合はサンタギーナを拠点とする別の商人を寄越します」

今後の契約書と証文を書いて支払い完了。

「どうしてこんなにお買い上げ頂けるのか。お尋ねしても宜しいでしょうか」
「使い道は薬だけじゃないんです。人を雇えるようになったら教えますよ」
「お楽しみに」

「有り難う御座います!」
「頑張って来た甲斐が有ったわね、あなた」
「おぉ親父の遺言信じて良かった…」
「ありがとうお兄ちゃんお姉ちゃん」

君も店番頑張れよと告げて退店。

宿で他のメンバーと合流後。宿から直接キノコ狩り地点に転移した。

「ここがアローマが言ってたキノコの採取ポイントかぁ」
「タイラントでは手に入らない物ばかりで。お二人の年一のお楽しみなんですよ」

「町民が入って来るまでは取り放題さ」
「特に松茸は今の時期しか取れないもんねぇ。見付かったら無くなっちゃうんだろうけど」

大きな松茸と占地やえのき茸。昨年は未発見の滑子も発見出来た。

「お味噌汁にお吸い物。お鍋もやらなきゃ」
「帰ったら作りたい物が一杯だな」
「皆で協力しながらね。スタンは時計も有るし」

「シュルツが大半終わらせてる予感」
「…否定出来ません」

「あのお嬢様はそんなに凄いのかい」
「スターレン様を除き。道具作りに関しては既にタイラントで一番と言っても過言では有りません」
「へぇ」

「お嬢様の兼任専属かぁ…。苦手な算術も勉強し直しだ。
はぁ、別の意味で頭痛え」
「頑張りましょう。クビにならないように」

「メリリーとかカメノスさんのとことか。5区のミーシャとかも暇そうだったら一時的に雇ってもいいし。先生出来る人材は割と豊富に居る。
フラーメもソプランと一緒に勉強してみれば?」
「え?私も?」

「ヤンの店の店番するなら金勘定は出来ないと。フラーメ結構笊だろ。纏まった金が入って浪費癖が付いたり。苦手だから俺に丸投げしたんだよな」
「…反論出来ない」
「仲間が居た」
「良かったね」
「良くはないですね。このままだと姉さんはヤンさんの方から捨てられます」
「え!?」
「護衛以外何も出来ないのですから当然です。ご自身の身は自分で守れて武器は造り放題。お金も仕事も確約されているような物。周りには若くて可愛く少々打算的な独身女性が大勢。見かねたスターレン様が何方かを紹介でもすれば一挙に!」
「嫌…。嫌だ!やだやだやだ!!」
「帰ったら頑張りましょうね」
「うう!」
最後はアローマの胸でヨシヨシされていた。

完全に姉を掌握した妹がここに。頑張れフラーメ!




---------------

馬車と以前よりも元気で勇まし(解凍したブートストライトを混入した餌を与えて)くなったお馬をシャインジーネで返却。

時間調整のお茶をしながらモメットにペカトーレの出来事を少しだけ話した。

「詳しく聞きたいならあっち行ってからな」
「いいえ、お腹一杯ですぅ。契約の件はお任せを。この国に居れば東西の情報は勝手に入って来ますからぁ」
契約内容の複写と旧ポーチ版の収納袋をその場で渡し。
「東って入った事ないけど、どんな国?」
東のギリングス王国にはまだ一度も入国していなかった。

「気になりますよねぇ。詳しくは…ご自宅で」
周囲を気にしながら小声で。

場所を自宅リビングに移して昼食兼お茶。

ロイドとシュルツも同席でも気にせず。
「南西大陸のギリングス王国は一風変わった国で。女神教が主流にも関わらず陸続きの孤島と呼ばれています。
最低限の交易路を残して半鎖国状態なんです。海側は海賊船が頻繁に現われ貿易も下火。サンタギーナ東端の港町カーラケルトに軍港を構えているのもその為。
陸路流通品の中にお米が僅かに流れてますが低質で管理が悪く略カーラで消化されます。
お二人なら南東に直買いに行かれた方が宜しいかと。変わった特産も無いですし。治安も悪くて良いとこ無しですねぇ」
「海賊を何とかしないと国交正常化も無理か」

「でしょうね。狡猾なサダハ様でさえ手を焼く女王様が国を治めるようになってからかなり改善されはしましたがまだまだ、と言った具合です。
目玉の天然迷宮が二つ有り。出物は出尽くしたとの噂。それでも一攫千金を夢見て冒険者が集まる。在る意味時代に取り残された国ですね」
「へぇ」

「一説では大昔に遙々海を渡って南極大陸にも行ったらしいですが。なーんにも無かったって。僅かな船団が泣きながら帰って来たらしいですよ」
「お。その点だけでも面白そうだな」
「スタン駄目よ。今は無理」
「解ってます。将来の話だよ」


ラフドッグで仲良くなったミランダがモメットを連れてパパが居るお隣と変貌した町中を軽く案内に出掛けた。

少し遅れてやって来たヤンが着席。
席に着くなり鼻をスンスン。
「なんか…。キツめの香水付けてる人居ました?」
「あぁ、さっきまで南大陸で動いて貰ってるモメットが居たんだ。男が大好きな大男だからヤンも気を付けろよ」
「き、気を付けます!」

場を改める前にフィーネがお土産渡しと陛下にペカトーレ案件を報告しに離席。

ヤンを中心にフラーメの結果報告。

「借金を帳消しにする処か…。過去の不正まで暴いて来られたとは」
「あんなのチョロいチョロい。マキシタンが想定以上のお馬鹿だったから。綻び突いて直ぐ崩壊。ご家族の話はアローマ交えて夜にでも。フラーメは隠し癖が有るからな」
「助かります。アローマさん。嘘を言ったら叱ってやって下さい」
「心得ました。厳しーく」
「しなくていいよ!か、隠さないから」


本題の時計の改良。

話をシュルツに振った途端にニッコリと。
「もしかして…終わったとか?」
「大半は。ちゃんと課題は残して有りますよ。お兄様の為にも」
「良かった」
「場所を工房に移しましょう」

フラーメは聞いても解らないからと1人で帰宅。

シュルツとヤンで部品説明。

「歯車は全て総チタン。軽さ、強度、対摩擦性能から採用しました」
「試作段階では金鑢で手削り。繊細な螺旋角をアルマイトで型起し出来れば。理論上は何処まででも縮小化は可能です。お隣のデニーロ師匠のお知恵を拝借すれば事は早く進められそうです」

もう既に掌より小さくなってますが…。

「摩擦を消せる潤滑剤でも有れば。無音の時計も可能。通常品は潤滑油で充分かと」
「その潤滑剤には心当りが有る。だけど試作から入れ込むのは勿体ないし説明出来ないから普通でいいよ」

「後で教えて下さいね。次に心臓部。これは定型の白ダイヤを等比のペラニウムアルミで囲っているだけですので縮小化は簡単です。試作ではお姉様から頂いた水魔石を削り複合型の純ペラニウムで作成しました」
「耐熱性の高い上位魔石でしたので大枠の型枠に金属を流し込み。固まる前に石を投入して終わりでした」
填め込みじゃなく埋め込んでしまった。

これも中型機の半分以下のサイズに。

「心臓部に直結する動力部品。これはマウデリンを十g配合したチタン合金としました。しかし私単独では注入量が足りず。標準器も一秒計しか有りませんのでここはお兄様の御力を。時の概念を持つお兄様なら間違えようが有りません。
それに伴い初動の歯車の歯数は六十設定。直後に半分に減衰する歯車を加えてやれば事足ります」
「初動の歯車と秒刻み間は螺旋角を止め。従来品の垂直型で正確性を。更なる薄型を目指すなら必須ですが小型機まで必要かと言われると疑問です」

「まあねぇ。試作からここまで薄くなっちゃうと…直列で螺旋無しでも余裕だよな。螺旋は螺旋で進めて貰って。小型試作は垂直型の歯車を採用しよう」
螺旋でどやさと豪語した自分がちょっと恥ずかしい。

そう言う高級版が有っても良いのでは。

「最後に調整器。これは複雑極まりない物でした。保護材質はアルミと金剛石の合金。核となっていたのは大粒の水晶が七個。全て正六面体のキューブ。中心核が六。交差する中点と並列に並べられた外周石は一の対比の大きさで寸分の狂い無く同軸垂平位置。正確無比な六方向。
お城の工房の技術力の高さが窺えますね」
「保護材の比重を確かめようと一つ溶かしてみた所。石の部分が煤となって失敗しました。各容器に封入されていた油に引火して爆ぜてボン、です」
「あぶな。怪我は無かった?」

「運良く無事です。お嬢様を工房に入れなくて正解でした」
「見たかったのですがロイド様や皆にも止められまして」
「そりゃそうだよ。鍛冶工房の中は立入禁止」
「はーい…」

「ネックはやっぱり調整器の自作小型化か…。よし。現状品で組み立ててみよう。アローマ。今日は時間が半端だから夕食は本棟で。フィーネにも伝えてゆっくりして来なって伝えて」
「畏まりました」

どの道あれを作るには仕込みに一晩掛かる。

………

木枠オンリーで拵えた急造の試作品。

大きな調整器が頭から突き出て格好悪い。それでも中の動きは良く解る。

トータルで中型の半分のサイズ。時差も上手く他の見本時計と合致。試作と見れば現状で成功とも言えた。

「うーん」
「調整器が邪魔ですね」

「試作としてモーランゼアの職人に見せるだけなら外観を整えれば済む。でも部品説明をする時にチタン使ってますなんて言えないし。遣り過ぎちゃったな。
ヤン。多少分厚くなってもいいから歯車をアルミに変えられる?」
「可能ですが。試作品はこのサイズで良いと?」

「見せる物だけはね。モーランゼアの国家事業を横取りした形だから商品化して販売する積もりはない。主眼は自走車への技術転用。言ってしまうと時計の小型化は俺の趣味の副産物だ」
「販売権を得るのではなくて、ですか?」

「販売権を得る為にはモーランゼアの営業免許の取得。特許権の使用料とかが掛かるから。結局高額な商品に化けちゃうんだ。ざっと見積もっても金貨で千枚以上。そんな高額商品が庶民に買えると思う?」
「無理…ですね」

「商品化を目指すなら金貨で1枚。頑張れば誰でも買える値段で一家に一台が理想。だから売る積もりは無い。
ヤンへの報酬は当然払うけど。今の所そこまでしか考えてないんだ」
「報酬は既に頂いています。フラーメを救って貰って」

「それはそれ。これはこれ。フラーメの件は旅費とお土産代が掛かっただけさ。自走車よりももっと大きな案件拾って来たし。それはフラーメたちから聞いてな」
「は…はい」
もっと大きいと聞いて怖くなった様子。
「違う違う。金銭的な大きさじゃないからさ。そっちは俺が表に立つ。必要な人材含めて。もっと先のお話だ」
「そ、そうですか。安心しました」

「さて。残った課題は外装の考案と表示板の自作。マウデリンやペラニウムの希少金属の撤廃。調整器の独自改良かな」
「逆展開をして価格を抑えるのですね。サイズ感は解ったので外装と表示板は私にお任せを」
「任せた。デザインも好きなように。女の子ぽくなってもフィーネの発案だって言い張るから」
「はい!」

それから夕食までの間。3人で席を離して図面作りに没頭した。




---------------

ロロシュ邸での夕食会を終えて。ヤン工房の裏に建つ自宅住居に帰った二人。そしてソプランとアローマの姿があった。

ヤン以外の三人は軽くお酒を入れながらペカトーレの出来事を詳細に語り聞かせた。

「そんな事が…。スターレン様が仰った大きな案件とはその潜水艇の造船」
「そう。私ら姉妹の名前を取ってね」

「フラーミル号…」

「あいつの展望は読めねえが。潜水艇にするのは次の段階で。ラフドッグとウィンザートを繋ぐ豪華客船でも造る気なんだと思う」
「その船の主幹部品にヤンさんの技術を取り入れようとなさっているのだと」

「はぁ…。物凄い重圧だ。でも遣り甲斐は有る」
「私もあんたも逃す気は無いってさ」

「こっちに来ちまった以上は逃げ場はねえぜ」
「逃げませんよ。ここで逃げたら金属加工職人の名折れです。フラーメを娶る夫としても」
「ちょっと…二人の前で」
酒の所為も手伝い。フラーメは顔を真っ赤に染めた。

「見届け人が居ないと何時もはぐらかすじゃないか」
「それはまあ…恥ずかしくて」

ヤンは椅子を除けてフラーメの隣に跪いた。
「俺と、結婚してくれ。フラーメ」
「あぁもう。私から言う積もりだったのに」

「姉さんからだと何時になったのやら」
「む…」

「さっさと受けろよ。見届けたら帰るから」

「お受けします。生涯賭けて店とヤンを。子供を授かれたら子供たちも。二人で一緒に、守りましょう」
「有り難う」

手を取り合って立ち上がり。誓いのキスを交した。

ソプランとアローマで祝福の拍手を贈る。
「良く考えると…義理の姉夫婦に成るのか」
「ヤンさんをお義兄さんと呼ばなくてはいけませんね」

「止めて下さい。これまで通りで。初対面が無様を晒したアッテンハイムなんですから」
「その話聞きたかったんだ。聞かせてよ」
「えぇ…」

直ぐに帰ると言ったソプランたちも悪乗りしてアッテンハイムの思い出話やフラーメとスターレンがマッハリアで対峙した時の話で盛り上がった。

「私なんて下着姿まで剥かれて森の中に放置よ。それに比べたらヤンのは恥ずかしくも何とも無いじゃないさ」
「ちょっと待て…。どんな状況だ」

「標的が誰かも知らずに引き受けた傭兵仕事さ。捕えるだけで金五百。それに釣られたんだから。犯されたって殺されたって文句は言えない。見事に返り討ちに遭って服を脱がされたってだけ。仲間内で一番に起こしてくれたし。
スターレン様がお優しい人で助かったよ」
「そうだったのか」

「そりゃ幸運だったな。あいつは敵対する者に容赦はしない。今じゃ拷問だろうと何だろうとお嬢が傍に居なかったら平気でする。何時からああなったのかは解らねえが」
「昨年の中頃に。お二人で新婚旅行に出掛けられた後でしょうか。一段と厳しくなられたのは」
「それ位だったか。まあアッテンハイムに行く途中かどっかで何かが有ったんだろうよ」

「情報持ってなくて良かったぁ…」
「ホントにな」

ソプランとアローマは隣に寄って別の店で飲み直すと言って帰宅した。

「ねえ。どっちで式挙げるの?」
「フラーメの希望が無ければ女神教の教会かな。スターレン様もここは信仰が自由の国だから宗派まで変える必要は無いって言ってくれたし。水竜教に入りたいのか」

「無宗派で貫いて来たけどね。実家は海寄りの町で妹も私も何となく水竜様に助けて貰っていた気がして。入信してみたいなって」
「それは感謝を捧げないとな。様式も似ているし。ここは総本山だ。ドレスは女神教には無い黒も自由に選べる。
手続きが済んだら水竜教の教会を予約してみよう」

「夫婦で分けてもいいの?…第二夫人とか」
「そんな事を気にしていたのか。俺はフラーメ以外は愛せない。それなら尚更水竜様に誓いを立てないと。入信してくれた方がフラーメの浮気が罪になって俺も安心だ」

「まーだ根に持ってる」
「一生忘れん。俺が何れだけ傷付いたかも知らないで。ケラケラ笑いやがって」
「御免。本気で。ああ言えば私を求めてくれるかなってさ」
「完全に逆効果だ」
「御免なさい…」

「もう寝よう。明日も朝からシュルツ様の工房にお邪魔して図面作りだ。店も暫く休業。その間にしっかりと苦手な料理と算術の勉強をしてくれ」
「うへぇ…」

「それから午後にお暇を頂いて。総本堂へ手続きに行こう」
「うん、行こう。私も頑張る」

随分と余計な遠回りをして迎えた一組の夫婦の始まり。




---------------

フラーメは侍女長とアローマが付きっきりで本棟の厨房を間借りしてお料理の勉強。

ソプランは何とゼファー先生が直々に算術を教えて貰える事になった。他の人では怠けるからと。良くご存じで。

嫁さんは朝から買い出しに行き。ミランダと一緒に豚骨スープ作りに入った。明日が楽しみ~。

本気を出せば鶏ガラ塩、醤油、白湯スープも着手出来るのだが…察して欲しい所。

家には泣いてしまう子が居るんで。


さて置き今日は時計作りに専念だ。

心臓部の台座からペラニウムを省くのは難しくない。動力部と元から伝達効率の良いアルミ材で連結してしまえば終わる。歯車までの形は効率重視で改めて考える。

動力部からマウデリンを抜く代用品。それ即ち電池式。
低位の雷魔石は昨年のスフィンスラーで大量ゲットしているので価格も抑えられる。低位の石だと上手く魔力が入らず粉砕する懸念が有る。

2秒計の作成。振り子の振れ幅を2倍にすれば良い。と思ったら大間違い。僅かなズレでも標準器とは言えなくなるので慎重に。

最難関は調整器。密閉容器の中身をスキャンするのにも手間取った。何故キューブ型なのか。何故大きさが6対1なのか。どうして油漬けなのか。この3点を解かなければ意味を踏み外してしまう。

配置に関してはモーランゼア城の指針増幅器の配列と同一と見て良い。

しかし大きさの対比は合わない。

配列は良いとして。外周の6個は中心核に向けて面を向けた状態。面と面で合っているのは南北を示す上下面のみ。他は角から15度の軸ズレが有る。

6分割で1角4時間…。拾える精度を上げる為?何か違和感を覚える。

油の必要性。情報漏洩の為だけではない。衝撃吸収の為と考えた方がいいのだろうか。金属で固定化したのでは移動には耐えられない。激しい運動を考慮して…。

双眼鏡でスキャンしながら調整器を傾けたり振ってみた。

中の水晶体は僅かに揺れ、やがて静止した。

「あぁ…。傾きと深度計も兼ねてるのか。成程凄いな」
隣で外装のデザインを考えていたシュルツが期待の目を。
「何か解ったのですか?」

笑顔で応え白紙に7個の丸を書いて宙に浮かせて見せた。
「教わった調整器の役割は時差調整と距離計。据え置き型の時計ならその認識で充分。でも移動を前提とした手持ち型だと認識不足。
外周の6個の玉で4時間割の精度向上だけじゃなく。調整器本体の傾き角。方角。深度まで見てるんだ」
「成程…だから同軸配列なのですね。でも油に浸されている意味は」

「油の特性を生かした衝撃吸収と簡易的な深度計に必要だったのさ。
水よりも比重の軽い油の中に同じ質量の物体を大小で同時に沈めた場合。どちらが早く沈む?」
「大きくて重い方が先に…。あ!その差で深度を」

「正解。強い衝撃が中まで伝わって内壁と衝突しても。柔らかい素材のアルミを更に柔らかくした金剛石を配合しておけば油と合せて吸収出来るって仕組み。だからこそ密閉容器にしてあるんだ」
「最初から移動を前提に考えられていたのですね」

「これで自走車に抜けていた穴が1つ埋まったな」
「はい!」

反対隣のヤンは。
「済みません…。話に付いて行けません」
諸手を挙げて降参。他のプリタや見物に来ていたロイドまでも。

「ごめんごめん。2人で盛り上がっちゃった。自走車の大きな課題の1つが各車輪の同期。今作ろうとしているのは車輪の回転数を操縦者が直接動かすタイプ。
車輪が4本以上の車で全部バラバラの動きをしてしまったらどうなる?」
「真面に…前に走りません。あぁ、だから調整器で」

「その通り。同じ調整器を車輪2本毎に連結して行けば。最前列の稼働車輪を動かすイメージだけで後ろの車輪も全て同じ回転数になる訳さ」
「傾きや深度まで測れるなら。途中の脱輪にも対応可能で車両本体を分割して数珠繋ぎにも出来ますね」
真に連動軸の不要な列車だ。

「はぁ…。何となく想像が付きました」

「ヤンは魔石の硬度に歪まない限界配合の割り出しも追加で依頼したい」
「はい。どの道アルミは溶かすので。配合を変えた板を作り石の落下試験を重ねてみます」

「お願い。そこまで出来れば小部屋の位置と形を確定させるだけで小型版の調整器が作れる」
「形まで変えるのですか?」
「同じ構造で同形状だと必ず特許に引っ掛かるからね」
「あ…。そうでしたね。つい」

「こう言うのも慣れだな。使用用途と形状と材質を変えてやれば大概通るもんさ。それは申請してみれば解る」
「はい。流石はお兄様です」
珍しくシュルツの方から頬にキスをくれた。
「お姉様には内緒です」

「ハハッ。言いたくても言えない」
ふとロイドとプリタを見ると。
「「何も見てません」」
深く目を閉じていた。

「丁度昼だし一息入れようか…。フラーメってそんな料理下手なの?」
「ええ。俺より酷い物を自信満々に出してくれる強者です。胡椒や塩は入れ過ぎ掛け過ぎ。焼けば焦すは当たり前。簡単な煮込みでも焦げ付かせて真っ黒に」

「逆に興味が湧くな」
「きっと後悔しますよ。スターレン様」

直ぐにヤンの指摘通りに後悔する事となった。何事も経験と努力と根性です!




---------------

時計作りも順調で今日は1日オフにした。

調整器のキューブ型も昨日の最後に真球体の水魔石を考案してフィーネに作成して貰った。

体積比で6:1。これを保てば行けると踏んでヤンの配分割り出し待ち。実に楽しみだ。

一晩中寸胴鍋でグーニャに温度管理され煮込まれ続けた豚骨スープは朝にはトロットロ。

枕木の間に潜り込むグーニュにご挨拶。
「お勤めご苦労グーニャ」
「お疲れ様」
「ニャン!」

「昨日から思ってたけど意外に臭わないね」
あの豚骨独特の臭み。
「臭い消しにブートストライトの葉を入れてみたの。香草だと何か違うなぁ、て。豚骨味の角も取れて円やかに。見事に嵌ったわ」

「ナイスです。昨日の昼に塩分大量ゲットしたから薄味で試食してみよう」
「良いですねぇ。あれは酷かった…。10倍に牛乳で薄めたシチューが塩分に負けるなんて」

「どうしてスプーンで計らずに手掴みで行くのか不思議だったなぁ」
「そもそもチーズやバター入ってる時点でお塩は要らないのよ。根本からして可笑しいわ」
高血圧な御老体や動物には食わせられない食物兵器。

隣にお出掛け中の昼で良かった。

胡椒とパセリで調えて若い衆で何とか捻じ伏せ、胃袋に納めきったんです。

2人で批評をしながら卵繋ぎ麺の生地をコネコネ。

「直ぐに食べるから麺にも塩要らんよな」
「要らないです」
伸びは悪くなるが短め太麺にしてスープが絡む筈だ。

10分寝かせて広いまな板の上で打ち込み開始。

麺に腰を増産中にロイドが起きて来た。
「ごめん。煩かった?」
「いいえ。そろそろ起きる時間でしたので」

「カルもやってみる?弾力が有って楽しいよ」
「やってみます。その前に手洗いと洗顔を」

3人でローテしていると。
『何をしておるのじゃぁ!だそうだ』
常に見張ってんのかよ。

「昼にラメル君に豚バラブロック焼いて貰って完成だからまだ試食だよ。薄める用の出汁も作ってないし」

『そうか。待つとしよう』
退いてくれたようだ。

口に合わなかったらどうする積もりなんだろう。

打ち上がった麺を3mm幅で4分割。2つの鍋で茹で上げて再分割。木耳と自家製メンマをトッピング。ペッツたちには1人前を半々小皿に。殆ど塩分は使ってないから動物にも安心。

「「んん~」」
「クレコーマインで食べた物より濃厚なのに円やかで上品ですね」
「クワッ!!」
「美味しいニャ~」

「濃厚でクリーミー。真にこれ」
「頑張った甲斐が有りました。どんな名店にも負けないわ。塩気は出汁で充分ね」
「クワンとグーニャの小さな口には丁度良いホロホロ麺。人間にはちと物足りない。塩分代わりに苦汁を加えて。出汁は魚介とキノコで取るのは如何かな」
「名案だと思われます。余った分はそのまま別のスープにもなるしね」

スープは出汁で割れば百杯分は有る。麺はフォークに掛けやすい太さで百を越える分量を。招待客は昼夕の二部制に。城へは…次にしよう。

手分けして材料集めていざ作成。

「ラフドッグで海苔と予備の包丁セット買って婆ちゃんに酢漬け渡して来る。フィーネはどうする?」
「あぁ…。私もご挨拶行くわ。ちょっと怖い人だからアローマも一緒に来て」
「畏まりました。が…フィーネ様が怖い?」

「子供の頃に口の達者な近所のお婆ちゃんによーく怒られたのよ。見ての通り昔からやんちゃだったし。それからガミガミ言うお婆ちゃんが苦手なの」
「その様な過去が。解りました。今日はお塩を掴もうとする姉の腕をへし折る予定でしたが他の者に任せます」
スパルタ教育官がここに。フラーメが矯正される日も遠くない。

本棟で朝から項垂れるソプランに声を掛けてラフドッグへ。

連れて行ってくれるのかの期待の眼差しが違うのか!の絶望に変わるのも一瞬だった。
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