お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第207話 ペリルマット迷宮探索

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前人未踏の迷宮。未知と言う言葉程心躍る物はない。

最近生存通過者が大量に居ると判明し、がっかりしたのは内緒の話。

ベルさんでもリタイヤした位の迷宮なら奥に入る人間は俺たちが初めてに違いない!そうと信じてレッツゴー。

ソプランたちはサンコマイズにお買い物。俺とフィーネとクワンの3名で迷宮探索。

狭いのか広いのかも不明なので最少人数構成にて。

ピーカーは案内すると言う限りそれなりの広さが有ると思われる。

迷宮近くに在る砦の手前に転移してから挨拶。守衛に許可証を提出。
「スターレン様御一行…ご夫婦でお越しでしたか」
「ちょっと観光にね」
「国管理の迷宮は滅多に入れないし。楽しまなくちゃ」

「ご連絡は承って居ります。同行はするなと言われて居りますが本当に不要で」
「イチャイチャするからね。望遠鏡で覗こう物なら後で砦全員の眼を潰す。連帯責任で」
「失明したくないなら覗いちゃダメよ」
「わ、解りました。恐ろしい事をサラッと…。どうぞお気を付けて。右手の柵から続く獣道を道なりにお進み下さい」

「どうも。結果はキタン様にもお伝えするから心配しなくていいよ」
「お心遣いに感謝を」

守衛数人と砦の小窓から何人もに見送られ、歩む2人は腕を組んですっかり旅行気分。
「新婚旅行を思い出すな」
「もう1年半。早いねぇ」
「クワッ」
今日も空の旅行鞄の上に鎮座。

クワンの身体も成熟したので肩に留まるよりも楽そうだ。

あの頃より有名人になってしまったがこれからもこの熱々スタイルは変えない。変わらないと思う。


獣道を抜け切ると少し開けた場所に出た。知ってます。
一度来たから。

3つ在る洞窟の中央口に入りランタンに火を灯した。

索敵で付近を確認してから。
「御免下さーい。遊びに来ましたー」
「ピーカーちゃーん。岩塩持って来たよー」
「クワァー」
もう少しで電撃を放つ小動物になってしまいそうな名前だったな。勿論無関係で!

暫く待つと奥の暗闇からコロコロとフワフワ綿玉が転がって俺たちの前でやんわり停止。クルりと前転。
「お久し振りです。スターレン様、フィーネ様、クワンティ様も」
何て丁寧な挨拶。
「元気だったか」
「ママさん怒ってない?」
「クワッ」

「大丈夫です。帰宅時には帰りが遅いとちょっと怒られましたが」
20年だもんな。そりゃ怒る。
「中に入れる?ちょいと相談したい事が有るんだけど」
無理なら帰るしかない。
「はい。今日は隣の入口です。付いて来て下さい」
良かった。使える入口も変動するらしい。

コロコロ転がる綿玉の後ろに付いて洞窟を出て向かい右手の開口部に入り直した。

入口奥は人が4,5人余裕で入れる大きさの鍾乳洞。滑り易い路面に気を配りながら進む。直ぐに道幅が狭く2人分位に変動。天然岩肌剥き出しの石段が続き、鍾乳石がランタンの明かりを反射して照り輝いていた。

ポタポタと滴り落ちる水音。各所の水溜りが奏でる音が反響し実に幻想的な異空間。
「綺麗だなぁ」
「人間が荒らしてないからねぇ」
人間は環境勝手に変えちゃうから。自分も含め。

「明かりを消してみて下さい」
ピーカーに言われるままランタンを消す。すると壁一面が淡く輝き歩く路面だけが消失。自分が宙に浮いてるような錯覚を覚えた。
「光蘚か」
「幻想的ぃ」
「クワァ~」
「光を受けると一定時間輝き続けます。大抵の人間は気付きもしないで進んじゃいますね」
進路ばっか気にする人間の性。

立ち止まればこんなにも美しい景色が在るのに。

ピーカー自身も淡く輝き前進を再開。闇に目が慣れてくると次第に路面も見え始め、歩くには困らなかった。歩調を合わせて早歩き程度。

緩やかな下りが続き天然構造から削り出しの石畳に切り替わった。しかも両サイドに白骨化した屍と古びた武装が点々と10体以上。急にホラー。何かの動物の骨も散乱。

「第一の転移トラップです。横壁に接近すると発動するので近付かないで下さい」
「了解」
「休憩するなら路面上だね」

大人数で来たら一網打尽。勘違いする訳だ。

1つ2つ注意事項を聞きながら休憩を挟まず進む。
「内部全域に自然に出来た転移禁止結界に似た物が張られてますが皆さんなら問題無いですね」
「道具持ってるからな」
古竜の泪様様。

天井が低い通路に差し掛かった。
「第二のトラップです。基本的に壁面に触れさえしなければ問題無しですよ」
「気を付ける」
「大人数だったら中々骨が折れるわね」
頭を低く中腰姿勢で通過。

ポッカリと平場が開け三叉路が現われた。
「右から入れば左の通路。左から来た時は右の通路。中央の場合は時間変動で。僕みたいな案内が居なければ奥に行くのは難しいでしょうね」
「「だね…」」
この三叉路が第三のトラップ。

一応片眼鏡で覗いてみたが何も映さなかった。正解が解らないなら正解引くまで繰り返すしかない。

今日は右から来て左へ。壁に触れないように幾つかの隆起を越えた先。広々空間に切立った水晶壁に景色が切り替わった。

壁全体が光源無しで自然発光する明るい窪地に多くの穴が空いている。その穴からポンポンと大小様々な綿玉が飛び出した。
「皆兄弟家族です。人語を話せるのは僕とママだけなので無反応でも怒らないで下さい」
小さな狼に変化する綿玉たちを前に。
「怒らないよ。皆さん初めまして」
「初めまして。通じてるといいわね」
半信半疑でお辞儀。人間式の挨拶が通じてくれると嬉しいな。

「本に人間を連れてくるとは…」
一番大きな綿玉。それがママさん。
「ママが許可したんですよ。ここなら壁に座っても大丈夫です」
「おぉやっと座れる」
「ちょっと休憩を」
「クワァ~」
壁に気を遣い過ぎて妙に肩が凝ってる。

揉み解しながら各自の水筒を取り出し、岩塩入りの麻袋を片隅に積んだ。
「こことは別の大陸で採れた岩塩。塩の塊です。お口に合うかどうか解りませんが」
「後でご賞味を」
他の綿狼たちも興味津々。
「助かる。それだけ有れば、ざっと百年は持つであろう」
身体小っちゃいもんね。一番大きいママさんでも両手に収まるハンドボールサイズ。

壁を見渡すと所々薄くなっている箇所が見えた。
「壁が全部塩で出来てるんですね」
「昔に比べてな。家族も増えたり減ったり。取り尽くしたら別の場所に移ろうかと考えていた」
塩さえ有れば生きて行けるとは便利だと思うが人間からすると楽しみが少ないように感じる。押し付ける積もりは更々無いけども。

「外に出た家族や嘗ての仲間が何匹も人間に殺され善くは思っていない」
人間は自分より弱い他種族に対して傲慢。弱肉強食と片付けられても相手側は堪ったもんじゃない。言い訳だ。
「代表して謝ります」
「御免なさい」
「謝られても根付いた印象は変わらない。弱き者は淘汰されるのが世の流れ。我らも隠れて居なければ絶滅していただろう」
「何も言えないです」

「して今日は何用でここに来た。塩を運ぶだけではないのだろう」
「僕が外で見ていた物はママや他の者に伝わっています。念話に近い同種族スキルで。なので人間の文化にも多少の理解は有ります。意味不明の物ばかりでしたが」
理解しろってのが無理な話。
「ちょっと相談と言うか…。南部地方に繋がる転移トラップを任意で変更して貰えないかと」
「変更が可能なら」

「ふむ。そんな事か。不可能ではないが…。変更に必要な石が使い果たして手元に無い。それを持って来るなら叶えてやらんでもない」
「どんな石ですか?」
「人間が黄昏の結晶石と呼ぶ外界の特殊な油虫から採れる黄金色の石だ」
…マジッすか…。
「嘘みたいなホントの話!」
「それならここに。先日偶然拾った物が」
金色の宝石をママさんの前に置いた。
「大きいな。これ程大きな物は見たことが無い。これなら欠片で事足りる。塊では使い辛い。砕いてくれぬか」

シュルツの工作セットは借りてないのでフィーネがハンマーで一撃粉砕。

指定された3つの欠片を渡して他は全回収。何かに使えると思っていたがトラップ構築に使うのか。

シトルリンが金ゴキを飼育していたのが気になる。

「他の使い道は鑑定してからだな」
「正しく使わないと天変地異が起きるわね」
冗談抜きで起こりそう。

「南の転移先をどうする。消すのか別の場所に転移させるのか」
「う~ん。ちょい考えます」
「因みに距離的には何処まで伸ばせます?」

「あの設置場所からなら大陸南の海底が限界だ」
それはアウト。
「関係無い義勇兵が水没しちゃうから駄目」
「聞いといて良かった…」

暫くフィーネ、クワンと頭を捻り合い相談タイム。ああでもこうでも協議した結果。

「大陸南東寄りの海岸。限界距離まで。逆路は消して」
「ふむ。二度とここへは戻せなくすれば良いのだな」
「バッチリです」
大陸南部全域はスリーサウジアの領土。領土内でループさせれば疲弊して動けなくなる。異なる部族同士で衝突する可能性は有るがそれは二の次。そこまで面倒は見ない!

「雑作も無い。しばし待って居れ」
石の欠片を2つ咥えて瞬間でママさんが消えた。

その移動力が有るなら大抵の外敵から逃げられるのでは。

転移スキルだとすると緋色の結晶石を持っている可能性が高い。外で狙われた理由が何となく見えた。

転移禁止構造の迷宮でも抜け道は用意してあるようだ。

待っている間にピーカーとお話。
「僕も一緒に連れて行って貰えませんか?もう一度外の世界を勉強したいと」
「うーん。ママさんが許可するならいいけど…」
「お外は危険だらけよ。特に私たちはその危険に自分から飛び込むの」
「クワ」

「成獣の域に達したので許可は不要です。信用出来る人間の傍に居ないと直ぐに殺されてしまいそうで…。
戦闘は不向きですが小型化は出来るので何処でも入れます。収納袋の中でも」
「収納って拡張空間の方?」
「入った事はないけど確か真空状態よ」

「はい。僕らの無属性の特徴の一つで。環境変化の影響を一切受け付けないと言うのが有ります。水中でも無呼吸状態でも極低温や超高温でも死滅しません」
想像以上の高耐久性能!
「す、凄いな…。その能力なら」
「どんな場所でも生きて行けるね」
ご飯も塩だけなので経済的。

シトルリンが狙っていそうな聖獣を外に出す…。
返答に悩んでる間にママさんが戻って来た。
「終わった。ピーカーを外に連れ出すのか」
「どうしたもんかと。世にも珍しい聖獣を俺たちが敵対している団体が狙っていそうで」
「信用してくれるのは嬉しいんだけど…責任が持てない」
「案ずるな。もう二年も時が過ぎればピーカーも転移スキルを習得する。であれば何時でもここへ戻れる」

「そうなのか」
「はい!」可愛いお返事。

結局折れて連れて行く事に決定。
「宜しくな。寿命は人間よりも遙かに長いだろうから先に死んじゃうけど」
「それまでの間。宜しくねピーカー」
「クワッ」
「宜しくお願いします」
同時にクワンの通訳が一匹増えました。

2年間は可能な限り隠し通す方向で定住地はフィーネの収納バッグ(取り敢えず表側)に納まった。
「バッグの表にも岩塩入れておくから好きな時に食べてね」
「外に出たい時は小声でな。それかクワンかグーニャに念話送って」
「はい!色々試します」

そろそろお暇しようとピーカーと家族とのお別れの儀式を端で見届けていた所。ママさんが前に来て無色透明の結石を3個出現させた。
「黄昏とピーカーの世話の礼に持って行け。早死にした仲間の形見石だ。これで貸し借りは無しだぞ」
「え…」

形見石、ならば。手に取り鑑定。

やはり無属性の最上位魔石。無色だと思っていたが本当に無色透明。透明度の高い水晶にも似ているが硬度はダイヤモンドに近い。

「こんな貴重な石を俺なんかに」
「我らには使い道が無い物だ。好きにすると良い。人間の勇者よ。お前には少しだけ期待している」
何をかは解らないが責任に上乗せ。
「可能な限り頑張ります」
「皆で頑張ろー。何かを」
何だろね。




---------------

ラザーリア城下の町並みは来る度に整い綺麗に変貌を遂げる。

丸で過去の穢れた残省を振り払う如き勢いで。

前王族の亡霊は消え去った。柵みから逃れた筈のマッハリア王都。少しずつ主神である女神教の白壁に染まる。

活気も盛況を取り戻しつつ在り新しい商店が増えていた。
詰まる所…。全てを見切る事は非常に困難。

城内事情に付いてはローレンに任せるしかない。
ロルーゼ王都が騒がしく他国に対して不穏な影を撒いていると注意を促し、ローデンマンの存在を私が口にするのは避けた。それはスターレンが伝えるべき物。

マッハリア、ロルーゼ間を往き来する行商を探る上で調査範囲を東部地区に絞った。

冒険者ギルドと商業ギルドは南部地区の城壁寄り。この3カ所を重点的に調べる。

闇雲に歩き回っても時間の浪費。初手は両ギルドで大小キャラバン隊の移動予定と護衛依頼は無いかと掲示板を見に向かった。

初級冒険者への依頼が無い…。当然だった。
もっと早く上げておくべきだったと若干後悔。しかし見るのは無料。

「姉ちゃん。仕事探しかい?」

集中して読み耽り、隣で男の声がしたが多分私ではないと無視をした。

「姉ちゃん。あんただよ。無視すんなって」
肩に手を伸ばされたので横移動で躱した。
「私でしたか。てっきり違う方かと。何か御用でも?」
無精髭が汚い中年男性が声を掛けて来たようだ。

フードの下の顔を見たのか男は目の色を変えた。
「飛び切りの上玉じゃねえか…」
「失礼します」
穢らわしい目で私を見ないで下さいな。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「軟派ならお断りです。私には心に決めた御方が」
「そ、そうじゃないって。男じゃ無理か…。じゃあ仲間の女呼ぶぜ。それなら話聞いてくれるだろ」
しつこい男は好みではない。

「付き纏われては困ります故お話だけなら。通り向かいの茶店に居りますので女性仲間のお連れを」
「ああ解った。待っててくれよ」
どれ程の時間を掛ける積もりなのでしょう。

偏見だが女を待たせる男はモテない。

男が去った後も掲示板の把握に勤しむ。20人前後の小規模案件が2件。30人前後の中規模案件が1件。50人以上の大規模案件は無し。

3件共に食糧品運搬。年末前にロルーゼへ行き来年2月の祭事に合わせ引き返すと言う内容。

商業ギルドにも同じ張り紙が有り護衛と短期従者の募集要項。御者や積荷に関わる仕事ではない。

冒険者は中級以上。商業は後ろ盾の信用度。初級やフリーランスでは応募も不可。私の後ろはスターレン名義なので商人従者としてなら受けられる。

受けませんけども。


茶店に入り紅茶とクッキーを注文。昼下がりでピークは過ぎ去り客入りは疎ら。厨房の方も落ち着いている様子。

一番静かな奥席窓際に陣取った。

結構な時間を掛けた積もりだが未だに来ない。人を呼ぶにも町が広くて時を要すると言う事ですか。

小型化して胸の谷間に隠れているグーニャがモゾモゾ動き出した。

どうしたの?お腹空きました?
「窮屈で姿勢を変えただけですニャ」
接触状態なら念話が使える為、思考の中で会話を。
窮屈でしたか…。
「フワフワで温かくて寝てしまいそうですニャ~」
お昼寝はご自由に。先程の男にも危険は感じませんでしたし。
「そうさせて貰いますニャ」

注文品が届けられ私はフードを下ろして優雅にティータイムに興じる。独特な酸味が鋭い茶だ。お砂糖より蜂蜜がとても合いそうな。

何方も置いてないので出して使うのは店に失礼。自重して茶を啜りプレーンのクッキーを口にした。

少しだけスターレンの様子を垣間見たが無事にピーカーと会えたようで安心した。どうやらスターレンの旅に付いて来るらしい。

可愛い仲間が増えて良かったですね、スターレン。

「それにしても遅いですね…」
思わず口に出す程遅い。仲間内では気は長い方だと思っているが流石に苛立ちを覚えた。

頬杖しながら窓の外の往来を眺める。来年の好景気に向け人々の表情はとても明るい。子供たちも希望に満ちた眼を輝かせ駆け回り忙しい。

和やかな時が流れ、漸く先程の男が新たに男女を連れて店の外に現われた。

「悪いな待たせて」
「綺麗な人…」
連れの女性に褒められた。
「お前が言う美人が美人だったのは初めてだ」
今度は新たな男性にも。
「世辞は良いのでお話を」

連れの男女は身形が整い商人風の出立。女性の方もパンツスタイルで如何にも旅慣れた風体。スリム体型で腕は程良く引き締まってある程度戦闘も出来るようだ。

東大陸から来た上級冒険者の奥様たちのそれではないが先ず先ず。

互いの自己紹介から始め。私はロディカルフィナとギルド登録名で。最初に声を掛けて来た男はレンデルと名乗り、連れの男はトワンクス、女はジョゼとそれぞれ注文を終えて。
「私の事はロディとでも。お仕事内容を伺います」
ジョゼが手を挙げ。
「男が話すと誤解を招くので私から。私はトワンクスの助手で主にマッハリアとロルーゼ間の骨董品の取引商を取り仕切っています」
願ってもない台詞が聞けた。
「良いですね」
「東に興味がお有りと。丁度良かったです。護衛の類は間に合ってますので募集案件はダンサーになります」
「ダンサー?行商の行きすがらに?」
余り良いイメージは浮かばない。
「いえ。卑猥な物を想像されるかも知れませんがそうでは有りません。ロルーゼは昔から芸術に長けた国柄。有名な芸術家何人も輩出しているのはご存じですよね」
「深くはないですがそれなりに」
スタプ以外にも何名か知ってはいる。

「あちらの王都は特に盛んで音楽、声楽、舞台、舞踏、陶磁器、絵画、彫刻と分野は多種多様。中でも最近の流行は舞踏会。高尚な社交会とは別物で生演奏の旋律に乗り激し目のダンスを披露する物となります」
「…男性を悩殺するような際どい衣装を着るとか」
「正直に、露出度は高いです。でもストリップをする訳では有りません」
内容に興味は有っても自分が人前で踊ろうとは思わない。

「私では経験不足で。社交舞踊すら踊った事も皆無。鍛錬するにも今の募集なら来年の祭事に合わせてだと思われますので2ヶ月。時間が足りません。
残念ですがお断りを」
「当然ですね。では準備する側ならどうでしょう。衣装の調達、化粧、フィッティング。着替えの手伝いをする女性の人手と物資の調達が間に合わなくなりそうで…」
「裏方でしたか。でしたら時期次第で受けられ無くは無いかと思います」
先ずは一安心。

「当初はロルーゼ内で調達し人員と一緒に運び込む予定だったのですが。最近取引していた服飾店が丸っとタイラントの貴族に買収されて引っ越ししてしまい…」
あ…あらあら…。心当りが有り過ぎて。
「ロルーゼも揺れていますものね。噂では」
3人共苦笑い。
「揺れる処の騒ぎじゃないです。現政権は半崩壊。王国解体となれば貴族たちが内包する資産の半分が没収。なので今必死で散財や譲渡に走っています。
復興中のマッハリアに取り入り生き残ろうとする一派が居まして。そこからの仕事案件なんです」
「成程。理解しました」

「容姿は然る事乍ら。その落ち着かれた口調。上質なお召し物。聞く迄も無く高貴な御方だとお見受けします。
レンデルから聞いた時はそんな方がギルドを一人でフラフラしてる訳が無いと一蹴してしまいましたが」
「だから何度も言っただろ」
「確かめてみる物ですね。お会い出来て良かった」

「自分が高貴だとは思いませんがお金には困って居りません。褒めちぎられても無償では何も出せませんよ」
「勿論です」

トワンクスに話が移り具体内容の説明。
「ダンス経験がもし有ったらダンサーでスカウトしようとしてました。ではないなら裏方で。ロルーゼと往復なんてまどろっこしい事は無いんでご安心を。
場所はここ。うちらはロルーゼの人間なんで物資を調達出来る伝手を確保出来てないんです」
「その伝手探しのお手伝いするのですね」

「です。時期は一月中旬。それまでにここに入る一団の衣装を一式用意して衣装合わせをする流れです。如何でしょうか」
「良いですね。先に言いますが私はタイラントの人間です。今は観光で友人貴族の屋敷に宿泊中の身。当主の紹介は出来ませんが伝手なら幾つか見付かるでしょう」
「それは好都合だ」
「願ったり叶ったり」
「言った通りだろ。今度酒奢れよぉ」
2人がレンデルに平謝り。関係性は解らないが仲は良い。

「衣装の図案が固まっているなら私が国に持ち帰って発注も可能ですよ。自国の方が伝手も多く製作スピードもラザーリアの職人に劣りません。上質な絹糸も豊富です」
引っ越し組を動かせれば数日で作れる。
「おぉ…。しかしそれは代案ですね。ここで見付からなければ」
「図案は有るには有るのですが…。渡すとなるとお互い信用が足りません。予算の都合も有りますし」
「それもそうですね」

詳しい話は明日の昼に改めて。東部地区の宿の近くの個室付き飲食店でとなった。

今日中にローレンに伺わなくては。

ローデンマンの情報に近付ければと考えていたが意外に遠くはないと予感した。
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