お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第214話 斯くて硬くて

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無人島を訪れてから年越し迄の出来事。

依然としてアッテンハイムのモーツァレラは行方不明。
隠し部屋の類も。

捜査範囲と対象を拡大中とのこと。

昨今の報告を兼ねまして。諸外国からの国賓記録を見せて貰おうとヘルメンちを訪ねた。

後宮から特別会議室に移動してもヘルメンちはご立腹。

上位者が顔を並べる中。
「一昨日。あの夜を照らした紅い光はお前だな」
「どうして確定なんですか。正解です」
「お前以外に誰が居る!!」
めっちゃ怒られた。

ラフドッグとウィンザートの住人には影響は無かったと前置き。

アッテンハイムで起きた教皇グリエル様失踪事件から順に報告した。

「私の南海上空爆破との因果関係は不明です。
しかし偽物グリエルと外務卿モーツァレラが略同時間帯に行方を消しました。モーツァレラ自身が一人二役の拉致監禁犯の可能性も有り。アッテンハイムでは捜索が続けられています。

そちらには関与せず。当国での彼の行動記録が有るなら見せて頂こうと本日」
陛下は一つ唸り。
「先ずは教皇が見付かって何より。それはお手柄だが上位の偽装と隠蔽道具の併用とはまた厄介な…。
さて置き、爆破とは何をどう」

「ラザーリアの式典に向けロルーゼからの不穏な動きを幾つか掴み。対処の糸口とラザーリア側の手引き者に繋がる物は無いかと。城地下施設の埋め立てていなかった部分を再捜索しました。
そこで思わぬ危険物を入手してしまった為。タラティーノがギリングスから運び、海賊船に隠されていた超圧縮広範囲破滅具を上空で使用し危険物を破棄した次第です」

「ちょ…。そんな物の報告は聞いて居らぬ。何故隠した」
「半径5kmの全てを飲み込み圧縮され爆発して消滅する代物でした。
陛下に伝えれば宝物殿に入れようと為さるでしょ?」
「うっかり落として蓋が開くと起動する仕組みです。その様な爆発物は城には置けません」

「むぅ…。どうせ使うなら宝物庫の我楽多も一緒に消せば良いものを」
「壊して溶かすなら私共で遣りますよ?」
「ご遠慮為さらず」

「お前たちは改造しようとするではないか!」
「安全に使えたら勿体ないじゃないですか!」
「落ち着いて」
浮かせた腰を素直に着席。

陛下は咳払い。
「無くなってしまった物は仕方が無い。
アッテンハイムの行方不明事件とロルーゼの動き。その二つに関連が有ると睨んでいるのだな」
「全くの無関係と言い切るには材料不足です。
それぞれの核心に迫れそうな手掛かりは幾つか入手しました。
大きく動くとすれば1月内と2月の式典本番」

「式典は荒れるのか」
「何の手も打たなければ。弟と新王妃は害され。次点のランディスが返り咲きます。旧派閥と旧体制の復活。
ロルーゼから来る高官の何名かがランディスに加担。城内に易々と刺客を送り込もうとしています。
国賓席に座ってしまう私たちは動けず。暗殺は私たちが離れた隙に実行されます。
私やメイザー殿下に偽装するかも知れませんね。
前例も有りますし」
黙してメイザーは顔を顰めた。メルシャンは冷笑。

俺は帝国で。メイザーはこの城に偽物が出現した。

「どう対処する」
「面が割れていない部下をラザーリア城下で動かし父上と合同で予防策を幾重にも重ねます。
モーツァレラがもし敵側だった場合はいったい何を持ち込んで来るのか全く読めません。
本当に偽装道具だったら…大混乱ですね」
「挟撃を避ける上でもモーツァレラの捜索は重要案件。聖女も式典へ出席すると宣言されました。
昨年の攻城戦時よりも更に酷い状況です」

唸りながら顎を掻き。
「そこで行動記録か」
「「はい」」
「理解した。ギルマート。アッテンハイムとロルーゼからの特使の行動記録を遡れるだけ持って参れ」
「ハッ」
即座にギルマートが退出。

「ノイツェ。一時期命じたロルーゼの調査で不審な…不審だらけだが何か新しい情報は有るか」
「ハッ。内容は前回上げた報告と変わり無く。依然王都ベルエイガは孤立状態。加える点は一部で港町チルツンザとの流路が再開。
東大陸から冒険者を傭兵として雇うとするならば。敵戦力は格段に跳ね上がります」
思わず自分が舌打ち。
「忘れてた。そっちの線を」
「1つずつ潰しましょう。大丈夫。まだ時間は有る」
腕に添えられたフィーネの手を握る。
「ああ。俺たちは負けない」

「フィーネの言う通り。焦るな。大半は見えている。
どう敵が動いても収束点はラザーリア。転移具が湯水の如く湧けば別だが城を直接強襲する無法な冒険者は多くはないだろう。陸路で足留め出来れば時間差は作れる」
「熟慮を」
色々手は有る。

運ばれた大量の記録簿を室内全員で読み漁った。

その中でメルシャンが。
「昨年の晩餐会期間。モーツァレラは城の外に出ていたのですか?エリュグンテに宿泊と有りますが」
答えるのは陛下。
「そう言えば今年は出ていないな。ここ数年役職は同じ顔触れだが出ていたのは昨年のみ。
城は窮屈だからとお供を数人連れて出た。当時のスタルフ王に最上階を取られたと愚痴を零していた気がする」
俺がぶち抜きで取ったから。
「真下に居たのか…」
「擦れ違っては…いない筈」
しかし変だ。
「あの頃は知名度が低かったからラウンジで堂々と話し込んでた。見られていても不思議じゃない。
でもどうして会ってもいない弟の名を知っていたんだ…」
「それに他の宿泊者の情報は秘匿」

「女神教の上層だぞ。ホテルの従業者の殆どは同教だ。
無理矢理聞き出す方法は幾らでも…。いや違うな」
「部屋は私の名義で取りました。中に誰が居るかまで把握していたのは極一部」
「私たちが迎えに行かない限り外にも出ていなかった」

町中を自由に散策したのは晩餐会が終わった後。単独で動いていたのは来都時に俺たちの借家を訪ねた時と近場での買い物。接触可能な時間は極少。事前に顔を知っていなければ無理な話。

中流貴族の弟を。

「モーツァレラはラザーリアへも特使として顔を出している。囚われの聖女との兼ね合いも有っただろうが。
フレゼリカから情報を聞いていたか。ここで同教のクインザと接触していたか。情報源は絞れん」
「確かに…」

「ムートンはどうだ」
「城内で挨拶を交わした程度です。深い話は一切。
外に出ていたなら。クインザとの接点は幾らでも。城内、ホテル近郊、教会、エドワンド等」
何処で会っても不思議じゃないし不自然でもない。

「キャルベは隔離していた。モヘッドは」
「当時の我々は別口で。シュトルフ夫妻以外の情報は持っていませんでした。前皇帝とフレゼリカは仲が悪かった事も有り。スタルフ王の存在は晩餐会以降に知りました。
アッテンハイムの人間との接触は有りません」
「私も。モーツァレラや枢機卿と真面に世間話をしたのは今年が初。受けた印象で不自然さは感じませんでした」
とキャルベが付け加えた。

ミラン様とダリアは会議に不参加。
理由は勿論ダリアに予知能力を使わせない為。成熟するまでは大事には巻き込めない。茶会の時は特例。

あの時はロルーゼ内だけの事案だと見誤っていた。

その後も記録簿を読み進めたが結局異質な動きをしていたのは去年のみと結論付けた。

ケイブラハム枢機卿は女神教会往復以外はずっと城内に留まっていたとして嫌疑不充分。

護衛の聖騎士隊や修女はホテルへの送り迎え以外に目立った動きは無し。宿泊は神経質なモーツァレラ単独。毎日数人が早朝挨拶に行っていたらしい。

自由時間は大量。

「昨年城外で何かが起きていた、と見て間違いない。
モーツァレラ本人が黒幕としか余には見えんが」
印象は皆同様。
「要所要所で入れ替わっていたとも考えられます。
攻城戦以降にエル・ペリニャートで会話した時も違和感なく平常な感想。握手もしましたが邪教との繋がりは見ていません。
あの頃は今より鑑定力が低かったのは有りますが」
「決め手に欠けるか。タイラント内で調べるには限度が有るな」

「1月に2度。ペリーニャと聖騎士隊がロロシュ邸に遊びに来るので。それに絡めてもう一度アッテンハイム内の調査をします。
それ以前に隠されたモーツァレラが発見されれば文句無しですがね」
「その折りには余もロロシュ邸に顔を出す。城へ呼ぶと事が大きい。展開も気に成るしな」
珍しい事も有るもんだ。

近くに座るメルシャンがちょっと驚いていた。

「邪魔はせぬからそんな目で私を見るな。
して。モーツァレラが偽物だったと仮定し。本体が生きていると言うその根拠は」

「私の時も。メイザー殿下の時も。グリエル様の時も。
道具かスキルの違いは有れど。擬態する相手の生存が必須条件であると考えられます。
帝国で擬態道具を使おうとしていた鳩狙撃犯も。エンバミル卿を拉致した上で、と証言していました」
「成程。明快な答えだ」

捜索案件の話題は終了。
各員の申し送り事項や細かい報告を発表し。年の瀬緊急報告会は閉会。




---------------

最も深き迷宮。別名は名無しの深淵。
迷宮命名権は初踏破者に栄誉として贈られる。だから未だに無名。

この東大陸に人間が入植する前から存在していたとか噂される意味不明な人工迷宮。

何故人工なのかって?そりゃデッカい大扉が付いてて。
「挑戦者求む。報酬は未知」
て看板が立ってりゃ誰が見ても人工だろうよ。

ギルドが管理してるのは入場者。どっち道入口横に備え付けのプレートに書かれた条件を満たさないと門は開かねえし入っても不正で吐き出される。

なのにギルドが出張って入場料をせしめて小銭を稼いでやがる。ケチ臭え。

条件は難しくない。冒険者登録済みの中級以上。一度に十人までで武装や道具の制限は無し。この大陸内なら七割は条件を満たしてる。


クワンジアで行われた闘技大会で。中央の英雄スターレンから請け負った仕事は見慣れぬ怪しげな連中の調査。

調査対象は広いが常に十人前後で動く上級冒険者の小隊なら限られる。俺たちヤーチェ隊もその一つだから。

おまけに最宮に何度もアタックする酔狂な奴らと来れば迷宮入口を張ってりゃ出会える。楽勝だ。


無人。主を失った物静かなシュライツ様の城の玉座に立派な墓を建てた。

ガラ空きのテラスから吹き抜ける風は冷たく。誰かの帰りを待っているように感じた。

記録は何も無いが過去数百年。シュライツ様がここを長期で離れる事は一度も無い。

「南の海で死んでみる。絶対に探すな。ヤーチェ隊がキモいから」
シュライツ様の残り香が漂う置き手紙。

最初は誰も信じなかったが。日を追う毎に現実味を帯び、定期的に食糧品や衣類を運ぶ行商たちは歓喜した。

危うく殺し掛けた。が俺たちの所為なのは明白だと寸手で自重した。

毎回来る度に。
「帰れ。何度言えば解るのじゃ。もう来るな!!」
懐かしいシュライツ様の美しいお声。
もっともっと罵られたかった。今はもう適わぬ願い

ボロ雑巾にされ投げ捨てられても殺されはしなかった。
お優しいシュライツ様…。臓物を打ち撒けるまで殴って欲しかった。

墓前の前で隊員皆で泣き腫らし、泣きじゃくり、鼻水垂れて縋り付いて謝罪と女王の帰還を叫んでみても。罵声をくれる人は来ない。未来永劫…。

潰れるまで飲み倒し、肉を食らい。町に帰って女を狂ったように抱いた。だが何をどうしても胸に空いた大穴は塞がらず。

重い数日酔いが抜けた頃に立ち上がった。
何かをしたい。そうだ仕事をしよう。罪滅ぼしになるような真っ当な仕事を。

英雄から貰った仕事で仲間たちを誘うと。皆同じ。

城へ向かう時。俺たち用に配備された魔物を駆逐する特殊武装を携え。北部の最宮を目指した。

十月中旬頃で待ちが二十組。かなり多い方。
その理由は順番待ちの顔見知りから直ぐに聞けた。

今現在突入してる十人組が二週間経っても出て来ない。
扉が開かないならまだ中に居る証拠。

粘るな。それとも休憩を多く取ってるのか。

他の組は見知った顔。大陸の有名処が揃う。なら今中に入ってるのが英雄が追ってる奴等。

最後尾に待ち登録を済ませると。急にギルド所員の動きが慌ただしくなった。

「何か有ったのか」
「大陸北西の海域に謎の船団が現われたと本部から」
今頃に海賊?
「そんなもん。何時もみたいに貫かれて終わりだろ」
飛び起きた聖剣に。この大陸に来る者なら誰でも知っている。正気とは思えん。

「それがそうでもない様子で…」
「は?」
何時もと違う?

疑問には思うが様子を見に行くには遠すぎる。

テント群の中心に走った所員が手元の紙を見ながら叫ぶ。
「大陸北西海域に所属不明の船団有り!規模は中型十隻以上!聖剣は動いたが、数隻の破壊に留め帰還!」
途中で帰った…。珍しい、と言うよりも聞いた事が無い。

テントから出て報を聞いた連中も首を捻る。

翌日に配達屋から無記名の手紙を受け取った。
中身には。
「北西の連中には手を出すな。安全第一。命を大事に」
英雄からの手紙だった。

どうやら何か掴んでるらしい。行けと言われても順番待ちに入ったから動きたくない。

隊のメンバーには伝えたがギルドには控えた。


それから数週間が経ってもまだ突入組は出て来ない。

俺たちの後ろに待ちが二組増え。飽きた俺は先頭の隊のリーダーに様子を聞いた。
「一月以上粘るなんて珍しいな。数年振りか」
「あぁ、お前らが来てるのも珍しいがな。相当深い。時間潰してるだけならとっとと帰りゃいいもんを」
「まあな。急に暇になったからよ。どんな奴等だったか見たか?」
「知らねえ連中だ。多分他の大陸から来てる。ここら辺じゃ見ない上物の武装してた」
「ふーん」
どうやら当りだ。

「身体が鈍って仕方ねえ。暇なら手合わせしてくれよ」
「いいのか?今の俺らはかなり荒れてるぞ」
「…あ~。今の無し」
こっちの暇潰しも無くなった。

自テントに戻ろうと足を向けた丁度その時ギルド所員がまた動き出した。
「北西の停泊船団が上陸!上陸後に同士討ちを始め半壊!残存部隊が無人のダンプサイトを占拠!
善良な住民たちは事前に中央部の町へ投降、退避!
シャレイドの町で討伐隊を編成中!
本部から特別報酬有り!参戦希望の隊は直ぐにシャレイドへ向かって下さい!」
と繰り返していた。

出足は鈍かったが俺たちの前後五組が迷宮待ちを諦め撤収作業を始めた。

先頭のリーダーに向き直り。
「どうする?」
「冗談キツいぜ。次だぞ次。今更退けるか。お前らは」
「前が空いたからな。順番詰められるなら動かねーよ」
隊の半分買い出しに行ってるしな。

減ったと言っても前には十七組。多少減るにしても年越しは確定。英雄隊とかち合えば交代してやろうか。

部門優勝と薔薇の香水を譲ってくれた礼に。




---------------

御節作りに余念が無い嫁と侍女衆に追い出され。
無人島でゲットした硬質岩を小脇に抱えて外へ…。

「あ、それ調べるの私も見たーい」
キッチンから嫁の声。
「見たーいって。俺の暇潰し。何すりゃええのよ」
「ん~」
カウンターで見学中のシュルツが振り返り。
「私とポンガしませんか?もう直ぐ切りが良さそうなので」
可愛い妹のお誘いなら仕方が無い。

岩をバッグにぶち込み手を洗ってリビングに着席。

程無くアローマが紅茶を運んでくれたので啜りながら積み木崩しに興じた。
「ミルクお入れしますか?」
「このままで良いよ。ありがと」
「私は欲しいです」
シュルツがタワーを建てつつ。
「畏まりました。直ぐに」

12段4本十字積みのタワー。ルールは至って単純。最上段は取らない。これだけ。

タワーを挟んでシュルツと向い合う。
「折角だし。何か賭ける?欲しい物とか」
お金賭けても無意味。お互いお金持ちだから。
「う~~ん。う~。欲しい物以上の物を何時も沢山頂いてしまっているので~。やりながら考えます。
お兄様は何か」
ソプランとだったらショットの差し合いとかが浮かぶ。
「て聞かれると俺も悩むな。特に無いし。まあ普通にやろうか」
「はい」
他愛ない会話が妙に新鮮。ゲームっていいよねぇ。

………

結果は1勝3敗。俺の惨敗…。
「かぁ~。手先の器用さで負けるとは」
「器用さよりも駆け引きと忍耐力では?」
「両方負けたってことだな」
清々しい敗北。俺の1勝は殆ど運。良い具合に下段がズレてくれて次のシュルツで崩れた。

「お兄様に何をして貰いましょうかねぇ」
クスクス悪戯笑顔が可愛らしい。
「おや?」
普通にやると…。
「やりながら考えると言いましたが?」
「あ…」
確かにそう言うとった。

「カジノ、行かれるのですよね?」
「あ~。夕方迄にソプラン帰って来るから明日かな。てもしかして行きたいとか?」
「はい!」
あらあらおませさん。
「身長は伸びてるけど変装したら入れんし、会員証も作れないぞ。全年齢対象はずっと先だろうし」
「え~~」

アローマがシュルツの後ろで。
「お嬢様。今は我慢の時。後三年のご辛抱を」
「え~~」
最近見なかった子供らしさ全開。椅子に座る足をバタバタさせて。
「可愛くしてもダーメ」
「む~。では岩から何か出たら頂いても良いですか?」
「危険な物じゃなかったらね」
触って鑑定を繰り返しても全く中心部が見えない硬質岩。表層は豊富な鉄分含有としか出ない。まんま鉄鉱石。

「良し出来た」
キッチン方面から嫁のお知らせ。
「全部?」
「仕込みはね。明日2品仕上げれば完成」
甘辛い醤油の香りがそそる。楽しみ~。メニューも増やしたらしいしな。

「んじゃやりますか」
「何処で?」
「毎回無人島行くのも面倒だし。何かと共鳴しそうだし。ここの訓練場借りて壁張ってね」

「ちょっと着替えるから待ってて」
「ほーい」

ロイドはダイニングでミランダと談笑中。フィーネが2階に上がったと同時に、寝室で惰眠を貪っていたレイルが欠伸をしながら下りて来た。
「起きて来たって事は」
「妾も見るに決まっておろうが」
当然顔。
「勢揃いだな。シュルツは反射盾装備でカーネギも呼んどこう」
「はい!私も着替えますね」


女子の着替えは長い!と文句を言っても無駄な足掻き。

訓練場の真ん中で。布陣を整えシュルツの工具でコンコン叩きながらパカッと…。パカッと!
「割れねえ!何だこいつ。マウデリンでもないのに」
岩肌の表面が砕け、一枚下の灰色の下地が露出。しかしそれ以上、何でも割れるハンマーで何度叩いても砕けなかった。欠けもしなければ皹すら入らず。

反射盾の影から様子を見ていたシュルツ。
「パズルだとか。暗証のような合い言葉を唱えるとかではないでしょうか」
「有るかもー」

だがしかし。継ぎ目も無い完全なブラックBOX。球体をしているが真球ではなくラグビーボールのような楕円形。

「パズル…ではないな。指掛けも無いし回せない。合い言葉は全然全く解らん」
「作った人。シトルリンかベルエイガさんぽいよね。関係者の名前とかは?」
嫁の考察が鋭い。
「いいね」

まずベルさんで浮かぶのはたった1人。
「ニーダ・トルレオ!」改名前の本名。
暫く待ったがピクリともせず。
「違うかー。じゃあ…。シトルリンのバカ!アホ!燃え滓!禿げ!お前の母ちゃんでーべーそー」
「スタン…。語彙力」
ピクリともせず!

俺が恥ずかしいわ!!

投げ出した俺の代わりにレイルが球を持ち上げ。
「プレドラ・マウマウ」と唱えた。

何と言うことでしょう。球の真ん中に筋が入り異相回転を始め2つに割れた。

「シトルリンの方じゃったな」
「一発かよ」俺の立場はどっか行った。

嵌め合いネジ式ガチャから出た物は。青い透き通った菱形の宝石と1つの鍵。

「貰ってもいい?」
「好きにせよ。興味は惹かれん。球を持ち帰ったのはお主じゃ」
有り難く頂戴。

青い宝石。

名前:共有石(鳥類)
性能:任意の鳥類と視覚を共有する
特徴:共有する鳥との親密度が大切
   拒絶されると遠く離れて以降は近付かない

「無人島に鳥が居なかったのはこいつの所為か」
「あの施設に。シトルリンが居たのね」
無人島に来ていた。その偶然に驚くより先に。爆発の瞬間に現われた気配は…。

だとしたら。俺が出会った人物の中に、居る。
今世だけとは限らない。前世までを含めて考えよう。
…大量に居すぎて解るかそんなもん。

真鍮製品に似たシンプルな鍵。

名前:大聖堂地下空洞扉の合鍵
特徴:とある工作師が悩み抜いた複製鍵

「これ…ぽくなくなくない?」
「ぽいね!」
モーツァレラの監禁場所。
俺たちでは絶対に入れない大聖堂の地下。

速攻ペリーニャに通話。
「はい。スターレン様」
「今ってグリエル様本館に居る?」
「居ります。年内は療養期間に充てて」
「モーツァレラの手掛かりぽい物こっちで見付けた。グリエル様の許可が無いと入れない場所。多分そこに居る」
「…歓待部屋で。半刻後に!」


今回のお届けはフィーネとペッツのみ。

2人の前に鍵を置き。入手経緯と昨年のモーツァレラの怪しげな行動を説明。
「組織の幹部が立ち寄ったと思われる島の中で発掘しました。モーツァレラ卿が入れ替わっていたとすれば昨年のタイラントの晩餐会前からずっと。道理で俺たちの動きが読まれる訳です。
他人に擬態する条件として本人の生存が必須だと思われます。真犯人がモーツァレラの偽物なら。本体は」
「大聖堂の…地下、だと」

「国内で何処にも居ないとなると、もうそこしか」
「私たちを入れられないならペリーニャ頼みになります。ですが中の状態が丸で解りません。
彼女に取って一番思い出したくない物が在るのかも」
「私は…。グーニャをお借り出来ませんか?」
心細いのは言葉にしなくても明らか。

「グーニャ。ペリーニャを頼むわね」
「ニャ~」
ペリーニャの膝の上に飛び乗った。
「有り難う…グーニャ」

ペリーニャの隣で思案を続けるグリエル様に。
「何か心当りは」
「女神様のお足許に空白を作るとは盲点。断じて許し難い所業。在るとすれば祭事に使う地下祭壇の更に奥。
私は知らない。御告げでも先代からも何も。文献にも残ってはいないだろう。
こうなると昨年に倒れたサファリ祭事長も怪しく思える」
加担していたならローレライとも繋がる三重スパイ。
「どっち付かずでしたからね。敵とも味方とも」

「女神教上層以外入れた前例は無い。ここは一旦我らに任せて貰おう。どうしてもと言う場合は」
「協力は惜しみません。ラザーリアの式典にも関わる案件なので。
ケイブラハム卿は一応タイラント内では白。ですが外遊で密接に行動を共にしています。まだ他にも内通者が居る可能性は捨て切れません。
モーツァレラ卿を発見しても暫く周囲に伏せ。様子を見られた方が宜しいかと」

「屋敷の家族の中にも、か。うむ。慎重を重ね進める」

グーニャを置いて帰り支度を始めた所でペリーニャが。
「竜血薬を。一瓶、頂けないでしょうか」
久々にバッグ覗いたな…。末恐ろしい子。
「いいけど…。モーツァレラ卿に使うの?」
「はい。もし衰弱していても、それなら回復出来るのではと思いまして」

興味を示したグリエル様。
「りゅう…薬?何だねそれは」
「上位竜の生血を混ぜた滋養薬です。軽い風邪や虚弱はぶっ飛びますが人に因っては異常な興奮作用を伴い…。
極低濃度で作ってあるのでショック死はしませんが」
意味深な目を向けると頬をポリポリ掻き。
「そっちか…。私は、控えよう。グラハムが母親から離れんのでな」
お悩み多き多感な時期。見守る親も同様に。

薬瓶を1本置き。
「ペリーニャが管理するならあげる。少しずつね」
「はい。状態を見ながら服用させます」
「自分で試飲したいなら限界まで身体動かしてからね」
フィーネが余計な助言を。
「は…。どうしましょう…」
小声で。飲まないとは言ってない。

後はお任せで帰宅した。




---------------

本棟での夕食後。共有石をどうするかでシュルツと相談。
「今後でフィーネがクワンと共有出来ればかなり使えそうなんだけど…」
「駄目かな?」
出物をあげる約束をしたばっかりに。
「いえいえ駄目だなんて。これはお姉様に相応しく。
私では…見てはいけない物…を見てしまいそうなので要りません」
俺たちを交互に見詰めて受け取り拒否。
「そ、それは恥ずかしいな」
「引き取りまーす」
青い宝石はフィーネの小袋の中へ。

「明日カジノで遊ぶなら何か景品を。大それた物ではなく玩具的な物でも有れば」
シュルツも気分転換用の玩具が欲しいようだ。
「解った。明日は幸運グッズ置いてくから。期待しないで待ってな」
「適度に頑張る。店潰さない程度に」
「はい!」

話題はハイネの様子に移りソプランから報告。
「略ハイネで决まりだな。奥さん連中とガキ共がタツリケ隊の家族と馴染んじまって男親は出る幕無しだ。
もう全員空きの借家に置いて来た。
そのトロイヤとティマーンも実戦部隊と手合わせしてボッコボコ。ティマーンは本調子じゃなかったのも有るが。流石東大陸の上級は一味違うぜ」
「あーそっち見たかったなぁ。タツリケ隊戦ってるとこ間近で見た事無いし」
「今度お願いしてみれば?装備少な目で」
「暇が出来たらそうしよ」

「それからは酒が入ってワイワイやってるよ。奥様方に体術でぶん投げられたりな」
「楽しそー」
「そっちは私かな」

「フィーネは素で強いんだから手加減しろよ」
「解ってるわよ」

ハイネの防衛は鉄壁に成りつつ有る。




---------------

寒空。肌寒さが増した十一月下旬。
標的の先行隊が余裕綽々な顔して出て来やがった。

どんだけ待たせんだ。

一月半以上も迷宮に籠ってた割には顔色が良い。タップリと休息と飯食った顔。嫌味だねぇ。十人全員揃ってるし。

隊長の名前は所員に拝み倒して知った。どうせ踏破したら発表されんだからと。

名はケルツァイル・アドバン。中央大陸西方三国の北メレディスの登録者らしい。

臭そう…。闘技大会の時も臭いのなんの。風呂も入ってなさそうだからそれは間違いない。

周りも興味津々。皆何処まで潜れたか聞きたくて。だがそんな目は無視してギルドのコテージに入った。

ちまちま後を付け回すのは面倒臭えし性分じゃない。直球で質問を打つける。

玄関前で出待ち。まんまと出て来た所で話し掛けた。
「よぉ。こんだけ待たせて何も無しとは随分じゃねえの。何処まで潜れたか位教えろよ」
やっぱ臭え!鼻が!十m以上離れてんのに。

「…誰だお前は」
「ヤーチェだ。こっちじゃまあまあ有名。モーランゼアの闘技大会で優勝もしたしな」
名前だけは一流。
「ああ。噂位は聞いたな。吸血姫の尻を追い掛け回して逃げられたとか何とか」
様を付けろこの糞がぁぁぁ!体臭まで糞。

込み上げる怒りをググッと堪えて。
「ま、まあ遠くはねえさ。で何処までだ」
「何故それを言う必要が有る」
「お前らは礼儀も知らずに最宮に来たのか。中身は兎も角冒険者同士到達層は教え合うもんだぞ」
「…二十五層だ。先を急ぐ」
のんびりしてんなぁ。

「その武装とこの期間でたったの二十五?嘘だろ。中で昼寝でもしてたのか。あぁん」
「知るか。じゃあな」
方向を変えたケツ隊の前を塞ぎ。
「まあ待てよ。疲れてんだろ。良い酒持ってるし…」
金貨百枚入りの麻袋を投げ付け。
「その金で中の話聞かせてくれよ」

袋を掴んで投げ返された。
「金には興味が無い。急ぐと言っている」
顔に似合わず冷静な奴だ。
「なーに急いでんだよ。どうせ転移道具持ってんだろ?
見た感じ収納袋は大したもんじゃねえ。外から食糧運ばねえとこんな長期で入れる訳がねえ。飛べばいいんじゃねえのか」
使用回数限定の転移具か。単純に魔力量が足りないか。

「煩い!退け!」
ちょっと怒ったな。今日の分は使い果たしたようだ。
「いいから聞かせてくれよ。なぁ」
「鬱陶しいな。なら良い事聞かせてやる。吸血姫は生きてるぞ」
「何言ってんだ?」
そんなもん当たり前だろ。
「振られた上に会っても貰えぬ。女物の香水まで着けて。女々しい変態野郎が!退け!!」
プッツリと…なんか弾けた。
「んだとこらぁぁぁーーー」

副長のバリンが投げて寄越した長剣を掴んで鞘から引き抜いた。

「な、何だ。俺たちと遣り合うのか」
狼狽え一歩後退る。
「東のルール知らねえのか」
他の隊員も奇声を上げて走り過ぎ俺より早く斬り込んだ。
「だったら教えてやる。喧嘩売ったら…。即死闘だ田舎者がぁぁぁ」

周りの外野。ギルド所員も出て来てケタケタ笑った。
「あーあ。あいつヤーチェ隊怒らせたぜ」
「馬鹿だなぁ」

自分も遅れて踏み出した。

「ま、待て!吸血姫の居場所。教えてやる」
なんも聞こえねえ。

どんな上等な武具でも、構えなければ役立たず。
どんなに硬い防具でも、着込めば必ず継ぎ目は有る。
どんなに多彩な道具でも、魔力が無ければ使えない。

人間は脆弱だ。だからこそシュライツ様は美しい。

蓄積疲労。反応が鈍いケツの右に潜りガーターベルトの隙間に刃先を浅く差し込んだ。

「ぐあぁ」
ケツは所員を振り返る。
「どうして止めない!」
「死闘、になっちゃいましたからねー」
巻き込まれない距離まで飛び退いた。

刃先を引き抜き、柄を回して悪臭を放つ左脇を突き上げ肩当てまで弾き飛ばした。

「があぁぁ…う、嘘じゃない!」
「右腕残してやったんだ。武器を掴め」
「このぉぉぉ」
膝立ちで後ろの荷物から大剣を掴み取った。

自分が流した血で滑るケツを立って構えるまで待つ。
「あんな婆のど…」
大剣を振り上げた瞬間に距離を詰め。汚い言葉と息を吐き出す口に剣先を差し込んだ。

首背に血飛沫を撒いて崩れるケルツァイルを前に。
「居場所なら知ってる…」

シュライツ様は…英雄の傍に居る。

英雄の役に立てば。何時か会って貰えるかな。
生きてる間に間に合えばいいが。

諸手を挙げ平伏す残りの九人に返された金袋を投げ。
「馬車代だ。荷物持って失せろ。
この大陸は聖剣と黒竜様と。シュライツ様が守った聖域。死ぬ覚悟も無い奴がぁ!足を踏み入れていい場所じゃねえんだよ!!」

二度と来るな、ボケ共。例え、西大陸の魔王だろうとも。
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