お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第238話 最も深き迷宮攻略・1

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南湖畔のコテージでプレマーレとグーニャに再会。

開口一番。
「カットランスを私に下さい!お願いします!」
「気が早いって。入る大きさにカットした石も無いし。固定保護するグリップも作ってない。戦ってる途中で石が外れたら持てなくなるんだぞ」
「はい…」
ションボリ褐色肌がとても悲しげ。

「とりまお茶にしよう。シュルツから全員分のシャツ出来たって連絡来たし」

クワンを回収に飛ばしてスマホ開通。

「漸くプレマーレ様でも着られるインナーが出来ました。
防御性は同等で…。あ、クワンティ。こちらで全部です。配達お願いしますね」
「クワッ」
の後にこちらに帰還。

「浄化性能は消え去りましたが防靱性と耐久性は他の清浄シャツと同等です。
単純に闇魔石の粉を全面に練り込み。ジャイアントフロッグの皮と水海月の皮で包み込みました。
グレー色の物がそれです。レイル様にも試着して頂き悪くないとお墨付きを得られました」
「それで何時もより時間掛かってたんだ」
「はい」

隣に入るレイルの声。
「プレマーレ。人間も魔族も礼節は大切じゃ。何か言う事は無いのかえ」
「忝のぉ御座います!有り難うシュルツさん!」
「いえいえ。迷宮攻略頑張って下さい。皆様の無事と帰還をお祈りして居ります」

生レイルの声を聞きプレマーレのご機嫌も急浮上。

「飽くまでベルさんの本が目標だから完全制覇は二の次。今回は手掛かりを探って終わりかも知れない。期待しないで待っててな」
「はい。また皆様で楽しくお食事をしましょう」
やっべ帰りたくなってきた…。

「必ず皆で帰るから。深海潜水艇の件。まだお爺ちゃんには内緒よ」
とフィーネが加えた。
「はいお姉様!そちらも早く見たいです」
「妾もじゃぞ」
2人の好奇心を煽ってしまった。

そりゃ皆見たいよなぁ。この世界では初物だろうし。

ここはまだ早朝でも準備が有るのでと通話を終えた。

各員シャツを着込んで突入初期装備を整え打ち合わせ。

「スフィンスラーの傾向は。防具性能で敵種別が変動。武具性能で敵数が増加又は強化。序盤で強力過ぎる装備を出してしまうと階層リセットが利かなくなる。
攻略スピードはごり押しすれば上がるけど危険度も上昇する。序盤は手堅く。段階的に引き上げて行くイメージ。

最宮も全く同じ親切設計。なんて甘くはないだろうから慎重に敵の傾向を見て進みましょう。

迷宮第1層の敵が決定されるのは入口を跨いだ瞬間。各員の装備と種族特性が反映される。

恐らく初であろう鳩と魔獣と魔族の突入がどう反映されるかは未知数です。

装備レベルを最低にしても1層目から馬鹿みたいな魔物が出て来たら。少し進んで撤退します。

ヤーチェ隊のご厚意を無駄にしちゃうけどしゃーなし」
「安全第一。焦らない焦らない」

「スフィンスラーでは固有スキル発動の影響は薄い感じがしたから各員の身体的特徴の方が強いんじゃないかって今の所考えてる。
出来るだけ温存するのは変わらないけど身動きが取れなくなったら無理せず使いましょう。
ソプランたちの素早さスキルとかも遠慮せず」
「おぅ」
「肝に銘じて」

「まー人型全員極上のブーツ履いてる時点で。敵めっちゃ素早いだろうけどね」
「そうなるよねぇ」
「「…」」
従者2人ちょと溜息漏れた。

「宝箱は全開けで。本への手掛かり入ってるかも知れないから。1日1層使い捨ての複製体を使うかは状況次第。
余程変な場所じゃなければ白ロープと蔦鞭で開けられるでしょう。俺のロープはどんな形状でも作れるし」
「他の人員は周辺トラップ探る程度で済むだろ」
「私はクワンティとの共有視かな」
「クワッ」

「他何か意見や質問は」
特に無し。
「まだ順番待ちの時間は有るから。何か浮かんだら皆で相談すると。食糧調達はシュルツに注文クワンで配達。
基本的に入ったらクワン以外出ない方針で。女の子の日が来たり普通に体調不良を起こしたら休息を取ります」
全員頷いた。

「ではでは最宮に行く前に。プレマーレ。お手を拝借」
右手を差し出した。
「…何の意味が?」
「バリンの前で愛人宣言しちゃったから迷宮前行くとヤーチェ隊だけじゃなく他からも冷かされる。流石にキスしろって言われたらボコボコにするけど。責めて手位は握れないとね」
「あぁ…。まあ握手位なら」

そっと置かれた手を優しく握り返した。
「頑張れそう?」
「ご心配ですか?」
「信じる信じないじゃなくて。死闘でもないのに1人でも冒険者を殺してしまったら隊長の俺はもう最果ての町に表から入れない。
強引に押し入るしか聖剣が取れなくなる。その心配。冷やかしや冷笑に堪えられる自信は有るのか無いのか。それだけ聞かせて欲しい」

プレマーレは手を思い切り握り返し。
「有ると何度も言っています!」
「イダダダ」
離された右手を振り振り。
「いってぇー。解ったもう聞かない。んじゃ休憩入れてグーニャで乗り付けて度肝抜いてやりますかぁ!」
「ハイニャ!」


兎眷属のモフモフをハグで全力堪能。
「な、にをされているのですか?」
リーダー困惑。
「いやぁ一度やってみたかったんだよぉ。このフニフニモフモフぅ」
「…我らをペット扱いしたのは人間勇者、としては初めてではないかと」

「いいなぁ。私も」
フィーネも雌を見付けて熱い抱擁。
「あ!凄いこの首周りのフニフニ感♡」
「か、変わった…人間夫婦、ですね。く、擽ったい♡」

グーニャが嫉妬。
「我輩が居るニャ!居るニャ~」

アローマも引き寄せられ。
「わ、私も」
ソプランががっしりガード。
「止めとけ。あれに病み付きになったら戻れねえぞ!しっかりするんだ!」
「あぁ…無念。グーニャで堪え凌ぐしか」

アローマに抱っこされながら。
「上位が下位に負けたニャ~」
密かにプレマーレが笑う。
「良い気味」
「聞こえたニャ!次手合わせしたら泣かしてやるニャ~」
「望む所です」

呆れたロイドが。
「はぁ…。何を遊んでいるのですか。大変素敵なモフモフですね♡」
近くの兎を抱いて支離滅裂。

クワンとピーカー君だけが木の上で本気の溜息は吐いていた。


すっかり拗ねてしまったグーニャを説得。
「拗ねんなって。そろそろ行こうぜ」
「拗ねてないニャ…」
フィーネが見かねて。
「グーニャ。今夜一晩中抱っこして寝てあげる」
「今直ぐ行くニャ!出発ニャ!!」
何だこの差は!

最宮入口南部の森に転移。
巨大化グーニャの背に8人収容の屋根無し客室台をリュック型にセット。

全員飛び乗り。
「グーニャゴー!最初はゆっくり徐々にスピードアップ」
「ハイニャ!」

台内は無風無振動。空の雲だけが高速に流れる。

ソプランが空を見上げながら。
「やっべぇ…。もう二度と馬車乗れねえよ」
「椅子も背板もフカフカ。壁は頑丈。私も…駄目かも」
アローマもフニャフニャで可愛い。

「スタン何これ。部分的に強度変えられるの?」
「どうよ俺の本気」
「こんなの蔦じゃ再現出来ないよぉ。一生勝てる気がしないわ」

「これからは敵が知ってそうな物はじゃんじゃん使って行く。手加減なんてしてやらない」
「頼もしいけど。ちょっぴり怖いよ」
「調子に乗り出したら止めてね」
「全力で止める!」

「もう着いちゃうニャ」
「テント群まで500切ったら減速。100手前に停止」
「ハイニャ」

ゆっくり堪能するには短すぎた。それは帰りに。

盛大にザワ付く南側から歩む6人と1羽と1匹。
クワンとグーニャはフィーネの肩と腕中。

走って来たヤーチェとバリンがお出迎え。
「相変わらずやる事なす事ド派手だな」
「目立ちたい訳じゃないんだけどねぇ。久し振り」
「久しいな…。そちらが褐色美人のプレマーレさん…」
最初からプレマーレばかり見てた。

「おうおうヤーチェ君。俺の女に手を出す気かい」
スッと俺の背に隠れるプレマーレにヤーチェたちは正気に戻った。

「じょ、冗談だよ。マジで羨ましいな。
でも褐色肌は珍しい。南東か…それとも南西のスリーサウジア出身?」
全く違う所です。
「内緒。俺が行った国。南西しかないだろ」
「あーあっちかぁ。俺も東出て旅に出るかなぁ」
「隊長。俺も乗るぜ」
ごめんヤーチェ隊。胸が痛えよ。

「頼んだ以外も色々やってくれたみたいでありがと。
バリンから聞いたけど順番どんな感じ?」
「まあ流れだよ流れ。
一昨日二つ前が入ったとこだ。一つ前は最宮初挑戦組だから意外に早いと思う」
「おー早めに来て良かったぁ。報酬はモーランゼア産の高級ブランデーなんてどう?」
「いいねぇ。あちら産なんて飲んだ事無いから楽しみだ」
「旧城で酒盛りしましょうぜ隊長」
「献杯って言え献杯って」

などと駄弁りながらヤーチェ隊のテントにご挨拶。

初見の人も居て冷やかしにも遭ったが思ったよりも軽かった。やっぱり俺の愛人設定が利いているらしい。

ロイドも羨ましがられたが普通レベルの反応。
ヤーチェ隊の嗅覚…恐るべし。

全員の顔合わせと報酬のブランデーボトル3本を進呈。

引き継いだら直ぐに撤収するとの事で俺とヤーチェだけでギルド支店のロッジに向かった。

そのロッジ手前でなんと俺が絡まれた。
「おい!色男。最宮にたった六人とペット連れて嘗めてんのか!」
厳つい目の大男。東に多い濃茶髪の短髪。

多分俺じゃないなと避けて通ろうとすると肩を掴まれそうになったので腕を躱して足払い。

「あ、そうそう。ヤーチェ隊ってクワンジア来る時マッハリアのどの辺通った?」
「あーラザーリア寄って真っ直ぐアッテンハイム領。ちょい遅れ気味だったから」

「この野郎ぉ!無視すんな!」
後ろからタックルが来たので背後に回り込み。腰を掴んで空き地にコロコロ。

「アッテンハイムの北側。あの黒馬の馬車ではキツかったんじゃない?」
「いや南側より橋頑丈に出来てるぜ。魔物強いのが固まってるし」
「あ、そっか。そりゃそうだわ」
お馬鹿な質問をしてしまった。テヘッ。

「うおぉぉぉーーー」
懲りずにタックル。こいつ単細胞か。

一歩下がって腕と首背を掴んでそのままスルー。
豪快に地面へキス&ダイブ。

「黒馬って従馬にすると結界の影響受けないの?」
「結界分厚いとちょっと走力が落ちる。ま、ベースが異常に高いから誤差の範囲だ」
「へぇ~」

顔面血塗れの見覚えの無い大男がハァハァ言いながらロッジの玄関前に立ち塞がった。

「はぁ…はぁ…。話を…聞けや!!」
「えーっと誰?」
「二つ後ろのランバル隊のランバルだな。最宮が大好きで何度も挑戦しては惨敗して来る懲りない奴」
名前は格好良い。

「そのラン…が俺に用事?入れねえじゃん。話なら後で気が向いたら聞いてやるから退け」
「迷宮を!嘗めるんじゃねえ!!」
「全く嘗めてねえよ。俺も初挑戦だから初回は中の様子見て次回本格的に攻略する積もりだ。
女が欲しかったら町で真面目に農業でもやれ。定住安定職の方がモテるぞ」
「言えてるぅ」

「煩せえ!ヤーチェ…。お前ら。こいつに前譲る気か」
「だったら?」
「俺に譲ってくれよ。こいつよりも付き合い長いだろ」
「待て待て。お前らと組んだ事なんざ一度も無いだろ。
酒奢られた記憶も無いし。隊員待たせてんだからさっさと退けや。報酬はもう貰ってる」
「幾らだ」
「金貨八十万相当。お前に払えんのか」

「ぐっ…。クソッ。中級初心者のくせに…」
更新情報は非公開だからな。
「気にするなって。俺たちが死んでも痛くも痒くも無い真っ赤な他人だろ。その親切心は身内の若手育成に使えよ。
女性差別なんて古い古い。隊員皆俺と同等」
生身は一番下かもーーー。紋章もロープも無しでの。
「低層なら守る必要も無いし。危険だと感じたら途中で撤退する。それでいいだろ。ラ…ラーーランブル」
「惜しい。ランバルだ」
しまった!

「…」
無言で自分のテント方面に戻った。

「面倒くさ」
「まあ何人も仲間最宮で犠牲にしてるからな。悪い奴じゃないがお節介だ」
本来ならじっくり経験談を聞きたいが。今はちょい邪魔。

ギルド支部内はカウンターに職員が1人ポツンと。
俺の顔を見るなり両腕を挙げ。
「来た!ホントに来た!最宮前やってて良かったぁ!!」
「落ち着け。声が大きいって。もうバレてるけども」

「あぁ済みません。ようこそスターレン様。今朝方本部から特急便が届きまして。こちらに来られるかもと。
私最宮前支店のイーガルと申します」
「お付き合いが長くなるかは未定だけど宜しく」
軽く握手。した積もりが暫く離して貰えなかった。

「随分丁寧な対応だな」
ヤーチェがそう言うと。
「そりゃヤーチェさん。凄いんですよスターレン様は…。
まあ手紙で読んだだけですが。それはさて置き。
今日は順番待ちの申請ですか?」
「ヤーチェ隊と入替え申請を」
「おお!成程。では…両者ギルドカードを」
目が早く出してと言っている。

見せちゃうかぁ。

俺は新品プラチナ。ヤーチェはゴールド。
「おぉぉ~。これを見られただけで明日死んでもいい!」
「プラ…チナ…」
イーガルは震えながら手を触れ。ヤーチェは隣で目を剥き固まった。

「まあまあ単なる色違いだって。最果て町の近くで飛翔道具使って大型飛竜2体討伐しただけでこうなった」
「だけって…」
「いやぁ見たかったなぁ。最大級飛竜二体同時討伐。上空近接戦する方なんて前代未聞ですよ!
最上…あぁ最上級。済みません。もう一度握手を!」
あーはいはいと。

ヤーチェも腰で手をゴシゴシ拭いて。
「お、俺も握手!」
いやはいはいと。

「手続き早くして。ヤーチェ隊待ってるから」
「いや待ってない!じゃなくて待ってません!
その話詳しく聞かないと町には帰れない。
イーガル!裏の宴会場空いてるだろ!空いてるって言ってくれ」
「バッチリですとも。少ないですがお摘まみも」
逃げられなくなってもた…。

「出来した!俺たちは安宿に退くから。お話聞かせて下さいお願いです!」
ヤーチェの90度お辞儀。
「しゃーないかぁ。順番待ちしてくれたし。その礼で。
だけど隊員以外にバラしたら駄目だよ」
「はい!有り難う御座います!」

必要な手続きを済ませ。テントとコテージを入替え。
お留守番はプレマーレとグーニャとクワンを置いての即席宴会と相成った。

宴会場全面雨戸を閉め切り。俺のプラチナカードの前にヤーチェ隊とギルド職員が平伏す異様な光景。

宗教か!!

俺たちの最果て町での武勇やらヤーチェ隊のクワンジア遠征詳細やら。昼に始めた宴会も終わりはどっぷり夜。

途中でヤーチェに問われた。
「今回で最宮踏破するんですか?」
「踏破は微妙かな。どれ位深いか覗く感じ」

言葉を濁してみたものの信じて貰えず。
いや出来るっしょ。期待してます。遠方で耳を澄ませて待ってますやら。大きなエールを頂いた。

本が欲しいだけなんですが…。


やっと解放されて我らのコテージに帰還。

全員水で休憩タイム。
「いやぁ飲んだね久々に。殆ど持参の酒だったけど。
何か有った?」
反対席のプレマーレに問う。

「特に。遠目から眺めて。良いなぁ~。欲しいなぁ~。
これもう一軒家じゃん。なんでこんなデカい物入れられるんだよ!チクショー!等々の声が多数」
「だよねー」

「昼にスターレン様にロッジ前で絡んでいた男がここをじっと睨み付けていましたね。怒気が籠った眼で」
「何で怒るかなぁ。赤の他人に」

ソプランが。
「面倒だが放置するしかない。その手の輩は真剣抜いて死闘を申し込んで来る。スターレンじゃなく。
一番弱そうな女とかに」

全員の目がアローマを向いた。
「私…でしょうね。はぁ…。何処か手足を折れば良いのでしょうか」
「まーそれ位に留めてあげてよ。異常にお節介な人みたいだから」


しかし3日経ち。1つ前の組が最宮に突入し。俺たちのコテージを迷宮入口前に移動しても。

ランバルは一向に現われず。

更に2日経ち。前組が迷宮から早々に出て。
「初見では厳しいの何の。もう三層途中までが限界です。スターレン隊も精々気を付けて進んで下さいね。
僕らファンなんで」
「死なない程度に頑張るよ」
隊長同士の引き継ぎが交わされた後。

コテージを撤去し。いよいよ入ろうとしたその時。

「待て!!」
抜き身の長剣を担いだランバルが現われた。

「何で今やねん!もう入るとこだぞ!!」
「出て来た後じゃ駄目なのかなー」
フィーネ優しい。

「煩い!俺がお前らを試してやる!」
「俺に手も足も出なかった奴が良く言えたな!」

迷宮前に集まる野次馬。

「うわぁ剣抜いてるぜあいつ」
「どっかで頭でも打ったのか?」
多分皆そう思ってる。

ランバルは大きな声で言ってしまった。
「これは死闘だぁぁぁ!!!」

「突入直前の隊に申し込むとか」
「初めて見るなぁ」
「死ぬ以前にギルド除名されるぜ」
そうなの!?初めて知ったわ。

更にランバルはこちら側を指差して。
「そこの褐色の女!!」
「え?私?」
超意外なご指名に全員戸惑う。

「剣を持って俺とたたか」
「チッ」
舌打ち後に姿が消え。次の瞬間にはランバルの身体は宙を舞った。

鋼鉄鎧の胴当に素手で打ち抜かれた凹みを付けて。

遙か後方で大の字に倒れるランバルに背を向け。
「さあ。最も深き迷宮へと参りましょうか」

野次馬たちの歓喜と祝福を背に受け歩むプレマーレが格好良かった。

「優しいとこ有るじゃん」
「殺さぬ自信は有ります。ヤーチェ隊以外は」
ヤーチェ隊!タイラントには来ちゃ駄目だ!!




--------------

入口前の注意書きは入場条件しか書かれていないので変更は無し。

1層前の長ーい準備層から続く下り坂。

行き成り出てしまったウルフソルジャー。
革鎧とサーベルを装備した2足歩行の狼男。
素早さと跳躍力に長ける。

「あれまぁ。最初から」
「もう公式情報は捨てようか」
ギルドが発表している情報は宛てにならない。

「あの程度なら初期装備で行ける。跳躍してくれたらラッキー。爪牙長剣拳体当たり。まあ当らんよ」
「ここは前衛2人で階層主倒してみる。雑魚より先に倒すとどうなるか。後ろはゆっくり行進。宝箱の位置確認」
「まだまだほんの小手調べか」
「前座にも成りませんね」
従者たちもやる気だ。

後ろは散開と集合を繰り返し。前は先行。
遊撃はお任せ。

階層主は大型1.5倍ソルジャーが4体。
ドロップはサーベル、革鎧、魔石、狼牙が1個ずつ。
倒すと同時に階層内全てのウルフが消えた。

宝箱は特に無し。

1時間も経ってないけど中間層で小休憩。

「階層主は人員の半数。雑魚の数は多め。ざっと見た感じは80体。人員✕10倍計算。
バッグ内のピーカー分は計算に入ってない。
ドロップは主のみ。これはスフィンスラーの初期と同様」
「次で大体の傾向は掴めそうね」


2層の新種はウルフスイーパ。
中型中腰の半2足歩行の狼男。獲物はハンドアクス2本。

1層の主。ソルジャーキングが雑魚に引き継がれ前衛隊列。スイーパが後衛。それぞれ80体が4分割。
40体の小隊を編成。1個小隊が横壁の隙間に入り込み通過者を横から投擲攻撃。

正面通路の3個の中段が左右移動で遊撃。

それぞれの小隊の中に色違いのスイーパが各1体。
討伐と同時に小隊消滅。色違いが主。

前衛は下がり。中衛のロイド、プレマーレペアで敵中段小隊を撃破。最奥の小隊をソプラン、アローマ。
横壁隊をクワンとグーニャ。

宝箱は無し。ドロップはカラースイーパのみ魔石とハンドアクス8本を出した。

ここも小1時間で終了。

迷宮に入ったのが15時過ぎだったので早めの夕食。

「今日はここまで。次の層で確定すると思うけどこの最宮は戦略・戦術系迷宮だと思う。
1層目でこちらの戦力と隊列編成を把握。1層の主がそのまま雑魚敵になってスイーパが追加されて。4個小隊に分裂した」
「頭使う系かぁ」
「多分次の層では遊撃のクワンとグーニャに対応した飛行系か弓手の敵が追加される筈。
飛びながらカラースイーパ倒したから」
「我輩も飛んでしまったニャ…」
「クワンが飛んでる時点で手遅れさ。グーニャは火を吹かなければいい。序盤で炎対策されると厄介だから」
「ハイニャ」

ソプランが唸る。
「次…。常に上乗せされるとジリ貧だな。上位武装出さずに何処まで行けるか」
「うん。手強いね最宮。流石はベルさん。
スフィンスラーでは単体強化がメイン。
こっちでは戦略教育ぽいね。
俺のロープ。フィーネたちのチョーカーと蔦装備。
プレマーレの変身。ロイドの銀翼。とかは外装や形状変更を加えなければ敵勢力は維持出来そう。
個々のスキルは一旦置いて。攻略の鍵は外装と階層主の倒し方かな。
迷宮後半になるに連れ主の数も等比に。終盤では倍化する流れだ。
意地でも上位武装を引っ張り出す為に」

「こっわ。低層に人を残して進んでみるのは?」
「個々の戦力で押し通すと敵がじゃんじゃん強く成ってソプランたちが付いて来られなくなるし。多分次の層の扉が開かなくなる。
本来の迷宮に安全地帯なんて無いよ的な」
「おぉ…」
「厳しいなぁ」
「辛いです」

ロイドが水を一口。
「後半はソプランとアローマを護る。チェス盤ゲーム化する予感がしますね」
プレマーレはグラスワインを飲み干し。
「真に戦略迷宮。これはまた厄介な」
「クワ~」

「まだ大丈夫。ベースの装備やインナーを破られる程の攻撃性は無い。
形態変化を控えて主を同じ倒し方に維持し続ければまだまだ進める。
20層過ぎる前に上位武装出す羽目に陥ったら大人しく離脱しよう」
「悔しいけどそうなったら負けね。クイーンとキングを守りながら戦うのも大切だけど。ここでそれを強いるのはちょっと嫌」
「だね。実戦に置き換えると負傷者を背にして。前方半面離れた所に仲間が点在する戦い方か…。
如何にもベルさんらしい忠告だよ」

思い思いの最宮の夜。
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