黒い天使と白い悪魔

木芙蓉

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ショウ

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「起きている時でも、メッセージと言うか電波と言うかそう言った想いを発している人の事を気付いてあげることはできるよ。」シュウの言葉をショウは思い出していた。
    ショウが目覚めると、いつもの様に1階から母親が慌ただしく動く音が聞こえてきた。
「ショウタ、ご飯置いていくからね。行ってきます。」
母親は出掛けて行った。ショウが降りていくとキッチンの机の上に朝食が準備されていた。パンに納豆に味噌汁、相変わらずの組み合わせだ。他に食事もなく、いつもの様にショウはそれを流し込むように食べた。そして学校の準備をして出発する際に
「行ってきまーす。」と声に出して言ってみた。当然返ってくる声はない。
   ショウは電車に乗り自分の通う高校へと向かった。学校に近付くにつれショウと同じ制服を着た人が増えていく。
「また長い1日が始まるんだな。」
ショウにとっては1番嫌いな時間だった。校門を潜り、靴を上履きに履き替えて教室に向かった。その間ショウは誰かと言葉を交わすことはなかった。教室に着くとショウは一目散に自分の席へ向かった。カバンから中身を出して机の中に入れ、カバンを机の脇のフックに引っかけたらショウはそのまま机に突っ伏してそのまま動かなかった。
「早く先生来てくれよな。早く授業を始めてくれ。それまで、この時間は耐えるしかない。」
   ショウのいた教室内はクラスメイト達の笑い声で溢れかえっていた。仲の良いもの同士輪を作り他愛もない話で盛り上がっていた。ショウはどの輪の中にも入れなかった。だから机に突っ伏してただただ時間が過ぎるのを待っていた。毎朝の事だ。それがショウのルーティンだった。


「ユイって子、学校辞めるらしいよ。」
  休み時間、ショウがボーッとして外を眺めていると教室内が騒がしい中、その誰かの声だけが鮮明に聞こえてきた。ユイとはショウのクラスメイトで何ヶ月か前から学校へ来なくなっていた。理由は明かされていなかったが教室内で話されるひそひそ話はショウにも聞こえてきていた。ショウ同様ユイも物静かな子だったのでショウにはユイの印象はもうここ何年かは何も残っていなかった。
   それなのに、「ユイが辞める。いなくなる。」その事実がなぜかショウの心にずっと引っかかっていた。
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