ケーキ屋の彼

みー

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2話

2

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「そうえいば、春樹くんはお元気?」

「うん、相変わらず元気だよ」

 櫻子は、ほんのり顔を赤くしている。

 それはほんの些細な変化で、誰もそれには気がつかない。

 そんな櫻子と春樹が大学内で出会ったことは、たったの一度しかない。

 構内を歩いていた時に、柑菜と春樹が偶然会った時だった。

 あの日は、桜が散り始めて、ちょうど桜の花びらが風によって舞っていた時だった。

 春の美しい日。

 その日が、櫻子にとっては特別な日となった。

「よし、とりあえず、柑菜は一言でもいいから話しかけてみるのが課題」

「そうね、まずはそこからだわ」

 ほんのり赤かった頰は、もうすでに元に戻っていた。

 そして再び、柑菜の恋の行方を本気で考えている。

 櫻子と亜紀から柑菜に与えられた課題は、彼女とっては大きな壁のように感じるものだった。







 柑菜は、家のソファに座りながら考え事をしていた。

 春樹に、恋のことを話すかどうか。

 櫻子と亜紀の提案どうり、もし2人でケーキ屋に行っても、春樹がなにも話しかけなければ2人で行く意味がない。

 でも、好きな人のことを春樹に話してしまうのもどこか躊躇してしまう。

 しばらく考え込んでいると、春樹が帰宅した音が聞こえた。

「お、お帰り」

「ただいま」

 外から帰ってきた春樹は、喉が渇いているのか冷蔵庫からオレンジジュースを取り出して柑菜の隣に座りながらそれを飲む。

 柑菜はその春樹をちらちらと見た。

 分かりやすく横目で見てくるその視線に気づき、柑菜から少し距離を取る春樹。

「なんで逃げるの?」

 逃げる春樹の腕を柑菜は掴んだ。

「ちらちら見てきて気持ち悪いからだろ」

 事実のことに反論できない柑菜は、何も発せずに、じっと春樹の目を見た。

「ねえ、ケーキ屋行った?」

 とりあえず、ケーキ屋に行ったのか行っていないかを確認する。

「まだだけど」

 それを聞いて、一安心する柑菜。

「そう……あのさ…………一緒に行かない?」

「まあ、いいけど」

 ここまでの会話は難度1で、誰でも乗り越えられる。

 問題はここから先の話で、しかし柑菜は未だに春樹に打ち明けるかどうかを悩んでいた。

「ねえ、春樹は……その……好きな、人、いる?」

 歯切れの悪い柑菜を、怪しい目で見る春樹。

「なにいきなり。つか、今までそんなこと聞いてこなかっただろ」

「まあ、そうなんだけれど」

 柑菜は、どうしたらよいか分からずに、黙ってしまう。

 沈黙が、リビングに流れて、なんとも居心地の悪い雰囲気が漂う。

 そのとき、その沈黙を破るように春樹が口を開いた。

「ケーキ屋となんか関係あるわけ?」

「きょ、協力してほしいの!」

「協力?」

 双子の2人の仲は、悪いものではなく、むしろ周りから見たら仲の良い分類に入る。

 それは、当の本人同士もそう感じてはいるし、それに対して嫌悪感を抱くこともない。

 しかし、恋愛が絡む場合それはまた違ってくる。

「多分、そこのケーキ屋のオーナーなんだけど、私まだ話したことなくて、春樹から少しでもいいから世間話してほしいなって、男の人同士なら不自然じゃないでしょ?」

 柑菜は、2人からのアドバイスを自分なりの言葉で春樹に伝えた。

「べつに、男同士じゃなくてもいいと思うけど……」

 春樹はぼそっと面倒臭そうにそう呟いた。

「そうなんだけど、ねっ、お願い」

 そんな春樹に、手を合わせてお願いをする柑菜に、春樹はため息をつきながら渋々返事をした。

「分かったよ」


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