32 / 82
5話
8
しおりを挟む「ねえ、見てここから見える景色綺麗だよ」
亜紀は柑菜を励まそうと、木と木の間から見えるピンク色の花を指差した。
それは一面に咲いており、この景色を色付けている。
「柑菜は可愛いんだから、きっともっと素敵な人見つかるよ」
「うん、ありがとう」
励ましてくれる亜紀のために、柑菜は必死に明るく振舞おうとした。
恋は叶わなくても、こうやってそばにいれてくれる仲間がいて、その仲間はこうして心配してくれたり気遣いをしてくれる。
柑菜は、そんな友達がいることに感謝をするのだった。
「みんなのもとに戻ろうか」
「そうだね」
ーーこれから、どんな顔をしたらいいのだろう。
柑菜は、先ほどの買い物のことを思い出す。
秋斗の笑顔や話しかけてくれたこと、今考えるとそれだけで浮かれていた自分が情けないとさえ思う。
チョコレートの件も、それがお世辞だったのだと柑菜は自分を嘲笑った。
「そろそろ行こうか」
柑菜と亜紀が戻ってきたところで、美鈴はみんなにそう呼びかけた。
「そうだね」
そう1番に返事をする秋斗を見て、『やっぱりそうなんだ……』と先ほどの亜紀の言葉をより現実的に感じ取ってしまう柑菜は、わざと秋斗から離れた位置にいることにした。
「柑菜?」
何かを感じ取ったのか、春樹が柑菜の名前を呼ぶも、柑菜は「どうしたの?」と顔色を変えない。
その様子を見て、勘違いだと思った春樹は「いや、なんでも」とただそれだけを言った。
「柑菜ちゃん見て、アゲハ蝶」
柑菜たちの上空を、青いアゲハ蝶が飛んでいた。
黄色のものよりも大人っぽく見せる青色。
自由にどこかに飛んでいく蝶を見て、櫻子はその自由さを羨ましいと感じた。
一本道を進んでいくと、分かれ道にたどり着く。
そこには地図もあり、それぞれの道がどこに繋がっているのかが示されていた。
6人は地図を見ながら話し合う。
「どうする?」
右の道は、この先は花が咲き乱れるゾーンを通り、柑菜と秋斗が行ったスーパーの近くに出るようだ。
左の道は、途中に橋のマークがあるなど、より自然を楽しむコースとなっている。
最後は、駅の横に出るようになっていた。
「じゃあ、どっちに行きたいか指差して決めません?」
櫻子はみんなの顔を見ながらそう言う。
とくにその案に反対する理由もないみんなは、櫻子の「せーの」と言う掛け声に合わせて、自分のより行きたい道を指差した。
「じゃあ、別荘でまたお会いしましょう」
「そうだね」
0
あなたにおすすめの小説
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる