ケーキ屋の彼

みー

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6話

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 ぼーっと自分の顔を見る柑菜に一瞬ドキッとする秋斗。

「か、柑菜さん」

 その秋斗の柑菜を呼ぶ声は、いつもより格段に甘く聞こえた。

「あ、はい」

 秋斗に名前を呼ばれて我に返る柑菜。

 そんな柑菜を見て、ふわっと微笑む秋斗。

 その秋斗の顔は、いつもよりもピンクに色づいていた。
 
「ねえ、手を出して」

 秋斗は、ポケットからあるものを取り出した。

 それは、いつも秋斗が疲れた時に食べる物。

「はい、これ」

 秋斗の指の長い綺麗な手には、小さな可愛らしいキャンディが乗っていた。

「ありがとう……ございます」

 ありがとうという言葉と同時に、柑菜は秋斗の目を見る。

 柑菜を見る秋斗の目が今までにないくらい優しい目で、吸い込まれそうになるも柑菜はついそらしてしまった。

 ーーやっぱり、秋斗さんはずるい。

 柑菜はその宝石のようなキャンディを大切にポケットにしまった。






「ねえ、花火しない?」

 空もすっかり暗く、カレーも食べ終えた頃、誰かがそう言葉にする。

「いいね」

 柑菜や櫻子、亜紀は夜になっても疲れていないようで、花火という単語に目を輝かせていた。

 柑菜はさきほど買ってきた花火を持ち、美鈴に続き外に出る。

 外は、ヨーロッパを思わせるお洒落な街灯で照らされていて、またその光が淡いオレンジだということもあり、優しい雰囲気に包まれていた。

 そして、海から吹いているのであろう風は、昼よりも冷たく、過ごしやすくなっている。

 また、夜ということで波の音も一層響いている。

 昼とは違い、どこか寂しげなその波の音。

「夜の海もいいですよね」

 空に浮かぶ月が、海というスクリーンに映し出されていた。

「うん、絵を描くのにもいい題材」

 相変わらずどの場面でも絵のことを考えている美鈴に、柑菜はもはや尊敬の念を抱いていた。

 2人に続いて、4人がぞろぞろと別荘から出てきた。

「じゃあ、ここに蝋燭立てますね」

 火は男の仕事であるというように、春樹は自らその役を引き受ける。

 マッチ箱から一本マッチを取り出し、春樹は慣れたようにそれで火を点ける。

 マッチと箱の擦れる音がその場に響く。

 すると、ぼおっと音を立てて火が誕生した。

 その火を蝋燭の先端に灯すと、街灯よりも小さくて儚い光が辺りを照らす。

「私はこれがいいわ」

 櫻子が選んだものは、情緒ある線香花火。

 切れてしまわないように慎重に1本の線香花火を手に取った。

 ほどよい風が吹くと、その風でそれが揺れる。

 櫻子は蝋燭の火を片手で囲い、花火の先に蝋燭の火をかざすと、それはパチパチと小さく音をたてた。

 その様子を見た柑菜も、櫻子と同じものを選び、櫻子の隣に来る。

「可愛いよね、線香花火」

「ええ、小さいけれど美しいわ」

 2人は、火花を散らしながら小さく弾ける炎をじっと見つめた。
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