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しおりを挟む「え、諦めるんですか?」
亜紀から聞いている秋斗の好きな人を知っている柑菜は、その片思い相手にそう言った。
「うん、だって秋斗は私のこと好きじゃないでしょ? ただの幼馴染だもん」
「それって本人から聞いたんですか?」
「……聞いてないけど、分かるよ」
柑菜は、もやもやする心を抑えられず「そんなの分からないじゃないですか! 思いは伝えないと伝わらないんです」と年上の美鈴に、まるで説教をしているように言葉を投げかける。
しかし柑菜はすぐに我に返り、「あ、ごめんなさい」と体を縮こませた。
「恋のライバルにそんなこと言うなんて、柑菜ちゃんって面白いのね」
恋のライバル、という言葉を聞いた柑菜は、自分がその土台にすら立てていないと悔しい気持ちになった。
「この夏に伝えようと思ってたから……それにしても双子ってやっぱり似てるわね」
「春樹もなにか美鈴さんに失礼なこと……?」
柑菜は、まださきほどの説教じみた言動を反省していた。
「背中を押してくれただけ」
柑菜は、いつもは他人に無関心で興味を示さない春樹がそんなことをしたことが想像できなくて、内心驚いていた。
そして『背中を押してくれた』と言う美鈴に、心の広さを感じるのだった。
お風呂から上がった4人は、2階の部屋に戻らずにリビングに来る。
すると、すでに春樹と秋斗はアイスを食べながら談笑していた。
「私たちも食べちゃおう」
冷凍庫の扉を開けた瞬間ひやっとした空気が伝わってきて、火照っている身体にちょうどよい冷たさ。
美鈴からアイスを受け取った柑菜は、迷った挙句春樹の隣に座った。
自分なんかが秋斗の隣に座ってしまったら、思い合っている2人に申し訳ないと柑菜は思う。
柑菜は、それならせめて秋斗の姿を見るくらいはと思い、アイスを舐めながら美鈴と話している秋斗の姿を、春樹と話しながら見るのであった。
その視線に気づいたのか、涼は「隣座りたいなら座ればいいだろ」と柑菜に耳打ちをする。
「そういう春樹こそ美鈴さんの隣に座ればいいじゃない」
と、柑菜は意地悪そうな顔をして涼だけに聞こえる大きさでそういう。
それに対して、涼は言葉は発しなかったがじとーっとした視線を柑菜に送るのだった。
柑菜はその視線を感じながらも無視した。
「おーい、お2人さん、2人だけの世界に入らないでください」
そんな亜紀の声が聞こえて柑菜はハッとする。
2人は気づいていなかったが、2人のやりとりをみんなは見ていた。
柑菜は見られていたかと思うと、なぜだか急に恥ずかしくなり、「春樹が変なこと言うから!」とその責任を春樹に押し付けた。
「はあ?!」
それに対し、自分は何も悪くないというように反論する春樹。
「ほらほら、きょうだい喧嘩はここまでね」
と2人の間に美鈴が無理やり入る。
その瞬間、一気に緊張した表情になる春樹、美鈴の腕の肌が自分の肌に直接あたる感覚に、春樹はいろいろと耐え切れずに立ち上がる。
その夜、春樹はその感覚を忘れられずになかなか眠ることができなかった。
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