ケーキ屋の彼

みー

文字の大きさ
44 / 82
7話

2

しおりを挟む
 再びソファに座って、冷え冷えのオレンジの炭酸のジュースを飲みながら、だらーっとしている2人。

「そういえばさ、1日目の散歩してからお前なんか変だぞ」

 疲れて忘れていたことを、柑菜が1番知りたくて、でも1番知りたくなかったことを亜紀から聞いたあの時のことがフラッシュバックされる。

「なんかあったんだろ?」

 なんで、私になんか興味がなさそうなのにいつもいつもお見通しなのよと、柑菜はジュースを飲む春樹を見つめた。

「秋斗さん、…………美鈴さんのことが好きなんだって」

 きっとこれ以上隠したっていつかはばれること、と柑菜は思い春樹に正直に話す。

 その声は、少し震えていた。

「え、それはないだろ」

 しかし返ってきた言葉は、柑菜が予想もしていないものだった。

 柑菜はてっきり、「そうか」や「まあ……な」と罰が悪そうに春樹が言うだろうなと思っていた。

「でも、私そう聞いたよ」

「誰に?」

 柑菜は再び、やっぱりあれは亜紀の嘘だったのかもしれないと思い始めた。

 考えれば、恋愛の話をするほど亜紀と秋斗の2人が仲が良いとは思えない。この前会ったばかりなのだから……。

 でも、亜紀が柑菜に嘘を教える理由が、柑菜には到底思いつかなかった。

「俺は、秋斗さんから直接聞いた。美鈴さんのことは幼馴染として大切に思ってるって」

 春樹は、1日目の温泉の時を思い返す。






 秋斗と春樹は、風を感じながら温泉に浸かっていた。

 女子4人とは違い、こちらは落ち着いていて、2人は空に浮かぶ月を見ていた。

「そういえば、昔夏目漱石は生徒にI love youの訳を聞かれて、月が綺麗ですねと訳せば日本人には伝わると言ったらしいですね」

 秋斗は、月を見ながら春樹にそう話す。

「秋斗さんは、誰か好きな人いるんですか?」

「僕は……気になっている人はいますよ。ーーさんです」

 秋斗が名前を言った瞬間、突然風が吹いてきて、春樹はその名前を聞き取ることができなかった。

 風はすぐにおさまり、再び静寂を取り戻す。

 名前は聞き取れなかったものの、『さん』付けをしているということは美鈴ではないということだけは分かった。

「じゃあ…………美鈴先輩は?」
 
 意を決して、春樹は秋斗にそれを尋ねた。

 本当は、秋斗の好きな人なんてのはどうでもよく、ただそのことを聞きたいだけだった。

「美鈴は、幼馴染として大切に思ってるよ。でも、恋とは違う」

 秋斗は美鈴の思いに気づいているのか、雲に半分隠れた月を見ながら切ない声でそう言った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...