ケーキ屋の彼

みー

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9話

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 困ったり喜んだり、様々な表情にくるくると変化する空に、柑菜は笑ってしまう。

「初めて笑った顔見た」

 そう言われた柑菜は、なんだか恥ずかしくなり再び表情を硬くした。

「ねえ、友達になってくれる?」

 少々強引だけどどこか憎めない空に、柑菜はその問いに「いや」ということができなかった。

「はい、いいですよ」

「ねえ、タメ語やめない? 友達なんだからさ」

「あ、うん」

 空は、見た目だけじゃなくてその性格もどこか日本人離れをしていて、柑菜は空に対して底抜けの明るさを感じている。

 まだ会って間もないのに、その距離を感じさせない空。

「柑菜ちゃん!」

 離れたところから柑菜を呼ぶ櫻子の声が聞こえた。

「友達?」

 空は遠くに見える櫻子を見て、そう尋ねる。

「うん、そうだよ」

櫻子は、柑菜のもとに寄ってきた。

「そろそろ戻るね」

 空は、櫻子と完全に鉢会う前にその場を後にする。

「え、待っ」

 最後まで聞かずに、空は走って音楽棟のある方まで走っていく。

 櫻子が柑菜の元に来ると「変な人ね」と空の背中を見ながらそう言った。

「うん、たしかに……」

 同じように、空の背中を見ながらそう頷く柑菜は、本当に自分を好きなんだろうかと思う。

 そう思う反面、柑菜は自分が秋斗に一目惚れをした時のことを思い出していた。

「そういえば秋斗さんは、お店があるから来れなくて残念ね」

 櫻子の言う通り、今日は秋斗のお店が開いているため、学祭に来ることはできない。

 秋斗に来て欲しいと思う柑菜だけれど、大学での自分の姿を見られるのも恥ずかしい。

 大学での柑菜は、いい意味で素を出していて、秋斗の前では見せたことのない姿がある。

 べつに、それがいけないことだとかそう言う意味ではないが、プライベートすぎる自分を見せるにはまだまだ気恥ずかしい。

 秋斗の前では、もっと女の子らしくいたい、そう思う柑菜。

 それに、学祭を楽しむ人々を見ると、あまりカップルの姿はなく、中学高校の生徒の団体や同性同士で歩く姿が多く見受けられる。

 中にはもちろんそれらしき人もいるけれど、圧倒的にその数は少ない。

「櫻子がいるし、楽しいよ」

「あら、そう言ってくれると嬉しいわ」

 2人は、今いる場所から移動してなにか飲食物を買うことにした。

 今日はまだ大学に来てから何も食べていない。
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