ケーキ屋の彼

みー

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9話

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 芸術性の高い人々が通うこの大学は、その学祭も芸術性強く、どの時間帯に来てもなにかしらのクラシック音楽のコンサートが開かれており、また、廊下にはまるでプロが作ったかのような作品が並べられている。

 モナリザ柄のクッキーがあったり、ときには楽器の一部分が売っていたりと、さすが芸術系の大学だと思わせる。

 それに、音楽も美術もクオリティが非常に高い。

「私喉乾いたから、なにか飲むもの買いたいな」

「それなら、さっきすごく綺麗なブルーの飲み物がどこかで売ってたわ」

 それは櫻子が、歩いているときにたまたま見つけたもの。

 櫻子もそれを見て『飲んでみたいわ』とその時からずっと思っていた。

「そういえば、秋らしい赤色やオレンジ色の飲み物もあったような……」

 柑菜は、きっと色とりどりのカクテルのようなものがあるんだなと想像する。

 人ごみをかき分けながらそのお店を見つけて歩き回る。

 その後無事その売り場を見つけて、あとは特別になにをするわけでもなく2人は学祭を楽しんだ。







「やっぱり貴方だったのね」

 数日後、櫻子の家にいる空。

「あの時はすぐにいなくなったから分からなかったけれど、なんとなく貴方のような気がしたの」

 西音寺家に来慣れているのか、空はあくまでもリラックスをしているようだった。

 空は出された紅茶を飲むと、ふうっと息を吐く。

「西音寺家の紅茶は、いつ飲んでも美味しいね」

「柑菜ちゃんに何の用なのかしら?」

 空の言葉に聞く耳を持たない櫻子は、気がかりであるそのことを空に投げかける。

 櫻子には笑顔がなく、その顔は無。

 しかし、それに怯えることも恐れることもなく空は口角を上げていた。

「彼女に、一目惚れした」

「え?」

「ダメよ、柑菜ちゃんには好きな人がいるのだから」

「でも、付き合ってはいないんだろう?」

 そう言われると何も言えない櫻子は、目で空に威嚇している。

「貴方っていつもそう、好きだと言って告白して、それの繰り返し。そんな貴方のこと、幼馴染だからって信用できると思うかしら?」

「でも、今回は本気なんだ」

 急に真顔になる空の顔は、櫻子が今までにみたことのない真剣な顔だった。

 そのせいで、出かかった言葉は消えてしまう。

「僕は好きな人と結婚したい。決められたものではなく」

 櫻子と同じように、親に決められたレールを歩かなければならない空は、せめて一生を共にする人くらい、自分で見つけたいとこの数年間ずっと思っていた。

「そんなの……私だって一緒よ……」

 空と同じことを思っていても、それを口にすることすらできない臆病な櫻子。

 だから、素直に自分の思いを言葉にする空に嫉妬してしまう。

 だからと言って、柑菜の邪魔をすることは別の話だ。

「だからって、柑菜ちゃんじゃなくてもいいじゃない」
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