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10話
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しおりを挟む「柑菜さん?」
考えている柑菜に問いかける秋斗。
「あっ……」
秋斗の声に反応して、彼の目を見る柑菜。
久しぶりすぎて、その瞳に吸い込まれそうになって、柑菜の必死に隠している思いが外に溢れ出しそうになってしまう。
「えっと……ガトーショコラ、2つください……」
それでも柑菜は自分の心を必死に抑える。
こんなところで振られてしまったら、それならまだこうしていたい。
柑菜は今の心地よい時間を壊したくなかった。
「はい、少々お待ちください」
秋斗は柑菜に背を向け、包装をしている。
秋斗の広くがっしりと背中。
その背中を見つめる柑菜は、やっぱり自分が1番好きなのは秋斗だと再確認した。
誰でもない、このケーキ屋で働く秋斗のことを柑菜は好いている。
だから柑菜は勇気を出して、言葉を絞り出した。
「秋斗さん………………クリスマスの日の夜って、空いてますか?」
秋斗は、その言葉を聞くと手を止め柑菜の方を向いた。
「その……僕からもう一度聞いていいですか?」
「え?」
秋斗は頰を染めて柑菜を見ている。
「クリスマスの夜、僕と過ごしてくれませんか?」
それは、柑菜が誰でもなく秋斗から聞きたかった言葉。
だから、それを言われた瞬間に口元が緩んでしまう。
「はいっ、もちろん」
柑菜は、今にも泣き出しそうな潤んだ目をして秋斗を見ている。
もちろんそれは、心の底から湧き出してくる嬉しいと言う涙。
そして、同時に空への罪悪感も生まれてきた。
一度、きちんと言わないといけないと心の中で思う。
やっぱり自分は秋斗が好きだと。
「じゃあ、あとでまたメールします」
「はいっ」
そう約束をすると、秋斗は再び包装をし始めた。
その秋斗の顔には、笑みがこぼれていた。
次の日大学のラウンジで、櫻子と柑菜は2人で話していた。
近頃亜紀は忙しそうで、なかなか2人との予定が合わずにいた。
「それでね、秋斗さんにクリスマス誘われたんだ」
自動販売機で買った100パーセントのオレンジジュースを飲みながら、昨日のことについて語っている。
そのオレンジジュースと同じように、柑菜の恋の話は甘く酸っぱい。
「すごいわ、クリスマスを一緒に過ごすだなんて、恋人みたいだわ」
「でも……渡辺くんにもちゃんと言わないといけないよね」
せっかく自分を好きだと言ってくれた櫻子の幼馴染のことが、柑菜は心から申し訳ないという気持ちでいっぱいだった。
「空は大丈夫よ、気にしないで。彼もきっと分かってるから」
「……うん」
櫻子がそういうと、不思議となぜか安心できる柑菜。
柑菜はあとで、空にメールをしようと誓った。
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