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11話
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しおりを挟む「では、メリークリスマス!!」
柑菜が言うと、みんなも「メリークリスマス!!」と言い、パーティが始まった。
柑菜と亜紀が作った美味しそうな料理が、テーブルの上に置かれてある。
そして、パティシエである秋斗が作ったクリスマスケーキ。
それは、フランスでも人気のブッシュドノエル。
木のような模様が美しい。
みんなは、各々料理を食べたり話したりしていた。
「春樹さん、ちょっといいですか?」
空は、飲み物を飲みながら料理を見ている春樹に話しかける。
料理でも食べながら、と2人分のお皿を持ち、それには空が選んだものが乗っていた。
2人は、カーテンのひかれた窓のそばに立ち、外側を向いて話を始める。
「単刀直入に言うと…………櫻子のこと、幸せにしてあげてください」
「え?」
「春樹さん、櫻子のこと気になっているでしょ? 見てれば分かります。櫻子は、自分は恋愛しないと言っているけど、きっと誰よりもそれを願っているはず。きっと春樹さんなら櫻子の思い、叶えてあげられます」
空の顔には、切なさが浮かんでいた。
「なんでそんなこと言うの?」
その声は、春樹のものではない女の人のもの。
「…………櫻子」
空と春樹の後ろに、櫻子が立っていたことを2人は気がつかなかった。
櫻子は無表情で空を見ている。
「なんで空が、そんなことを言うの?」
「それは……」
春樹は、2人を残してその場を去る。
櫻子は空を見つめ、空はその視線から目を逸らす。
「私、いいのよこのままで。恋愛はしなくてもいいの」
「でもそれじゃあ、櫻子がかわいそうだ」
「……どうして空がそう思うの? それは、…………空には関係のないことよ」
櫻子の言葉は冷たいが、その言い方は、自分自身が苦しんでいるようにも聞こえた。
「関係ないかもしれない、でも…………好きな子には幸せになってもらいたいだろう」
今は、空は櫻子の目をじっと見ている。
その目からは、冗談だという雰囲気は一切ない。
「好きな子って……だって、いつも他の人を好きだって……」
「それは、櫻子の気を引きたくて……初めて会った時から、櫻子が好きだったんだ」
「空って、バカなのね。でも、柑菜ちゃんのことは? 私の友達なのよ」
「柑菜さんには、本当に惹かれたよ、櫻子のことももう諦めようと思ってる時に彼女に会ったんだ。でも、柑菜さんにはもう大切な人がいたんだね、僕はみんなに振られてばかりだ」
ははっと、空気を漏らす空。
「…………ねえ空。私の初恋は、空なのよ。でも、空はいつも他の子ばかりを見ているから諦めたの」
「え?」
「…………もし、私たちが付き合って結婚したら、私たちの親は許してくれるかしら? 親同士も仲良いし、昔なんて結婚させようかって冗談言ってたわよね」
ふふっと昔を思い出し笑う櫻子は、さきほどまでの冷たい雰囲気はもうなかった。
「うん、きっと許してくれるよ! だから、僕の彼女になって欲しい」
空は、櫻子に手を差し伸べる。
櫻子は、その手を笑顔で握った。
「おめでとう!」
その瞬間、亜紀や柑菜たちが2人に拍手をおくる。
「あら、やだ私、クリスマスパーティだったこと忘れてたわ、ごめんなさい柑菜ちゃん、亜紀ちゃん」
「いいの、櫻子が幸せなんだから。本当に私嬉しいよ!」
柑菜は、嬉しさのあまり櫻子に抱きつく。
恋愛を諦めている櫻子に、どうにかしてそれを味わって欲しかったから。
「そうだよ櫻子。本当におめでとう」
秋斗や美鈴、春樹も2人を笑顔で見つめていた。
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