妖の木漏れ日カフェ

みー

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始まりの夏

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 森を抜けると、街が見えて来た。

 街を歩く人たちを見ると、やっぱり頭に動物の耳のようなものがあり、つい凝視してしまう。

 そういえば、妖がなんとかって言っていたような……。

 とすると、あの人たちもこの人も人間ではないということで、本当に私はどこに来てしまったのだろう。

 こんな世界があることを、もちろん今まで全く知らなかった。

「もう少し、手握らせてもらうね」

「あ、はい」

「そういえば、名前、なんて言うの?」

「堺真由です」

「真由ちゃんね。僕はハトリ」

「ハトリ、さん」

 ハトリさんは、柔らかく笑うのが特徴なのかな。

 美しい顔にその柔らかい表情がプラスされて、余計に輝いて見えてしまう。

 妖艶というか、初めて会うタイプの人だから緊張してしまって心臓が早く動く。  





 街に来て10分くらい歩いた時、ある建物の前でハトリさんは歩くのをやめた。

「ここ、入ろうか」

 ウッドハウスの建物に、建てられた看板には『カフェ』と書かれている。

「いらっしゃいませって、ハトリか。と、そいつは?」

「この子、面倒みてあげて」

「はあ? なんで俺が」

「家、余裕があるでしょ? 僕も出来るだけ見に来るから」

 店内は、なにやらいい匂いがする。

 あまり嗅いだことのない匂い。

 それにしても、この人もハトリさんとは違うタイプだけれど顔が整っていて、纏う空気が輝いていて……。

「つか、人間じゃねえか」

「そう。だから、あのハーブティー頼むよ。あの人たちにばれたらあんまり良くないだろう?」

「ったく、仕方ないな」

「ってことで、とりあえずカイのところに泊まるんだよ?」

「は、はい。その、よろしくお願いします」

「分かったけど、ただじゃないぞ? 畑の仕事をしてもらうからな」

「もちろんですっ、なんでもします」

 ふんっとカイさんは鼻を鳴らすと、とりあえずこれを飲めと何やら薄いグリーンのお茶らしきものを渡してきた。

 飲むと、すうっと体に染みて美味しい。

 今までに飲んだことのない味で、ほんのり甘くて飲みやすく、喉も乾いていたせいですぐに飲み干してしまった。

「じゃあ、ハトリちょっと見てて。案内してくるから」

「うん、分かった」

「じゃあ、行くぞ」

「はいっ」
 
 裏の扉から外に出ると、畑が一面に広がっていて奥に日本家屋のようなものが建っていた。

 畑には見たことのない植物が植えられていて、ぼーっとそれを見ていると頭をこんと叩かれる。

「ほら、こっち」

「ごめんなさいっ」

「ぼーっとしてると食われちまうぞ」

「く、食われる?」

 この世界には、なにやら凶暴な生き物でもいるのかしら。そんなのに襲われたら、きっと私なんてすぐに捕まってしまう。

「冗談」

 カイさんは、悪戯っぽい笑顔を浮かべて私の目を見た。

「よかったあ」

「ったく、ほら、入んな」

 言われるままに、家の中へと足を運ぶ。

 それにしても初めて会ったというのに、こうして面倒を見てくれるなんてなんで心優しい人なのだろう。

 不安だった心が、糸が解けるように少しずつ和らいでいく。
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