5 / 74
始まりの夏
4
しおりを挟む
「ただいま戻りました」
カフェに来ると、魚を焼いたような香ばしい匂いや漬物のような発酵の良い匂いが漂ってきて、ますますお腹が空いてしまう。
「ご飯、2人分頼むよ」
「はいはい」
空いている席に来ると、ハトリさんはわざわざ椅子を引いてくれて私を座らせる。
なんというか、1つ1つの所作に品があって、素敵な大人というものを感じさせるオーラ。
ハトリさんだけじゃなくて、カイさんにも大人な余裕の雰囲気があって、だからかな、こんな知らない土地に来てもどこか落ち着いた気持ちでいられるのは。
「ハトリさんは、なんの仕事をしているんですか?」
「僕は医者だよ。何かあったらいつでも診るから言ってね」
「あ、はいっ」
まさか、お医者さんだっとは。
十数分後。
「はいよっ」
「ありがとうございます」
運ばれてきた料理を見ると、焼き魚に具だくさんのお味噌汁、お浸し、おにぎり、漬物、と和食の定番といったものが並べられていた。
「美味しそうです」
「ここのカフェはね、ハーブティーと和食を出しているんだよ。ヘルシーで女性に人気なんだ」
確かに、店内を見渡すとほとんどが女の人で、中にはカイさんを見て顔をほんのりと染めている人もいた。
「それでは早速、いただきます」
まずはお味噌汁を一口。
豆腐と大根と人参と油揚げが入っていて、大根のシャキシャキした食感が美味しい。味噌の香りにほっとしてしまうのはきっと、日本人だからかな。
お米は色がついていて、穀米が混ざっていて、噛めば噛むほど甘さが増す。中には梅干しが入っていて、その梅干しもほんのりと甘さがあって、お米によく合う。
お魚は鮭、かな?
塩がほんのり効いていて、お魚の素材の味もしっかりとしている。
「本当に美味しいですっ」
「でしょう? ああ見えても、料理はうまいんだよね、カイ」
カイさんを見ると料理に集中していて、私の視線には気が付かない。
「あとは、ハーブティー。食後に飲むこれがまたいいんだよね。あとは朝とか」
「いいですね。……カイさんとハトリさんは、お友達なんですか?」
「うん、そうだねえ。幼い頃からずっと一緒。腐れ縁ってやつかな?」
「いいですね、そういう人がいるって」
「まあ、たまに鬱陶しくも感じる時はあるよ。そんな時は1週間会わないとかもあるし」
カイさんのことを話す時のハトリさんの顔は愛おしそうだった。
もちろんそれは恋愛とかそんなんじゃなくて、家族愛とかそういうもの。
って、私が勝手に感じているものだけれど。
「カイになんかされたらすぐに言うんだよ?」
「そ、そんな」
「ははっ、まあ、そんなことはないだろうけどね」
ハトリさんの話を聞いていると、ふと思い出す自分の家族や友達のこと。
これから1年会えないんだと思うと、急に底無しの空虚感が襲ってくる。
おじいちゃん、元気かな。無理してないかな。
「帰りたい?」
「あ、えっと」
「いいんだよ、分かるから。こんなところに来て不安だよね」
「でも、ハトリさんやカイさんと出会えて良かったです」
この言葉に嘘はない。もしもっと怖い人に見つかっていたら、今頃どうなっていたか。本当に、初めに会ったのがハトリさんで良かった。
「ありがとう」
夜、眠りにつく前に考える。
もしかして、お婆ちゃんが消えたのは同じようにこの世界に来てしまったからではないか、と。
もしそうならば、まだこの世界にお婆ちゃんがいるかもしれない、そう考えると胸が高まって、余計に目が覚めてくる。
でも、もし違ったときのことを考えると余計に落胆してしまいそうだから、過度な期待は持たないようにしないと。
でももしお婆ちゃんに会うことができたら…………もう1度抱きしめて欲しい。
久しぶりにお婆ちゃんの体温を感じたい。
そう思いながら、目を閉じた。
カフェに来ると、魚を焼いたような香ばしい匂いや漬物のような発酵の良い匂いが漂ってきて、ますますお腹が空いてしまう。
「ご飯、2人分頼むよ」
「はいはい」
空いている席に来ると、ハトリさんはわざわざ椅子を引いてくれて私を座らせる。
なんというか、1つ1つの所作に品があって、素敵な大人というものを感じさせるオーラ。
ハトリさんだけじゃなくて、カイさんにも大人な余裕の雰囲気があって、だからかな、こんな知らない土地に来てもどこか落ち着いた気持ちでいられるのは。
「ハトリさんは、なんの仕事をしているんですか?」
「僕は医者だよ。何かあったらいつでも診るから言ってね」
「あ、はいっ」
まさか、お医者さんだっとは。
十数分後。
「はいよっ」
「ありがとうございます」
運ばれてきた料理を見ると、焼き魚に具だくさんのお味噌汁、お浸し、おにぎり、漬物、と和食の定番といったものが並べられていた。
「美味しそうです」
「ここのカフェはね、ハーブティーと和食を出しているんだよ。ヘルシーで女性に人気なんだ」
確かに、店内を見渡すとほとんどが女の人で、中にはカイさんを見て顔をほんのりと染めている人もいた。
「それでは早速、いただきます」
まずはお味噌汁を一口。
豆腐と大根と人参と油揚げが入っていて、大根のシャキシャキした食感が美味しい。味噌の香りにほっとしてしまうのはきっと、日本人だからかな。
お米は色がついていて、穀米が混ざっていて、噛めば噛むほど甘さが増す。中には梅干しが入っていて、その梅干しもほんのりと甘さがあって、お米によく合う。
お魚は鮭、かな?
塩がほんのり効いていて、お魚の素材の味もしっかりとしている。
「本当に美味しいですっ」
「でしょう? ああ見えても、料理はうまいんだよね、カイ」
カイさんを見ると料理に集中していて、私の視線には気が付かない。
「あとは、ハーブティー。食後に飲むこれがまたいいんだよね。あとは朝とか」
「いいですね。……カイさんとハトリさんは、お友達なんですか?」
「うん、そうだねえ。幼い頃からずっと一緒。腐れ縁ってやつかな?」
「いいですね、そういう人がいるって」
「まあ、たまに鬱陶しくも感じる時はあるよ。そんな時は1週間会わないとかもあるし」
カイさんのことを話す時のハトリさんの顔は愛おしそうだった。
もちろんそれは恋愛とかそんなんじゃなくて、家族愛とかそういうもの。
って、私が勝手に感じているものだけれど。
「カイになんかされたらすぐに言うんだよ?」
「そ、そんな」
「ははっ、まあ、そんなことはないだろうけどね」
ハトリさんの話を聞いていると、ふと思い出す自分の家族や友達のこと。
これから1年会えないんだと思うと、急に底無しの空虚感が襲ってくる。
おじいちゃん、元気かな。無理してないかな。
「帰りたい?」
「あ、えっと」
「いいんだよ、分かるから。こんなところに来て不安だよね」
「でも、ハトリさんやカイさんと出会えて良かったです」
この言葉に嘘はない。もしもっと怖い人に見つかっていたら、今頃どうなっていたか。本当に、初めに会ったのがハトリさんで良かった。
「ありがとう」
夜、眠りにつく前に考える。
もしかして、お婆ちゃんが消えたのは同じようにこの世界に来てしまったからではないか、と。
もしそうならば、まだこの世界にお婆ちゃんがいるかもしれない、そう考えると胸が高まって、余計に目が覚めてくる。
でも、もし違ったときのことを考えると余計に落胆してしまいそうだから、過度な期待は持たないようにしないと。
でももしお婆ちゃんに会うことができたら…………もう1度抱きしめて欲しい。
久しぶりにお婆ちゃんの体温を感じたい。
そう思いながら、目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる