妖の木漏れ日カフェ

みー

文字の大きさ
6 / 74
始まりの夏

しおりを挟む
 朝、陽の光が窓から入って来て自然と目が覚めた。

 外からなにやら音が聞こえてきて窓の外を見ると、すでにカイさんは作業をしていた。

 その姿を見て、急いで服を着替えて外に行く。

「カイさん、おはようございます」

「おう、早いな。まだ慣れないだろうし、もっと寝てていいんだぞ?」

 カイさんはそんな優しい言葉をくれるけれど、お世話になっているのにそんなに甘えられる身分じゃない。

「いえ、お手伝いできることがあればお手伝いするのでしますっ」

「それじゃあ、ここからここまでの野菜を収穫してくれないか?」

「はいっ、分かりました」

 真っ赤に輝くトマトや濃い緑色をしたきゅうり、艶々に光っているナスや大きなズッキーニがなっている。

 どの野菜も、当たり前に新鮮できっとすごく美味しいんだろうなと予想が付く。なんとなく、野菜からも生き生きとしたものを感じる。それはきっと、カイさんの育て方がいいからだと思う。

「ここのお野菜で、カフェの料理を作るんですか?」

「ああ、そうだ。ハーブティーのハーブもここで育ててる」

「すごいですね。私のお婆ちゃんもハーブ育ててて、バジルの匂いが好きでした」

 あの時初めて嗅いだバジルの香り、今でも忘れていない。

「あ、あの……前にお婆さんがここの世界に来たことはありませんか?」

「俺も人間全員に会っているわけじゃないからな……それに、……いや、なんでもない」

 カイさんは何かを言いかけて、口をキュッと紡ぐ。なんだろう、私には言い難いことなのかな?

「すまんな……役に立てなくて。あ、毎朝俺が作るハーブティー、飲むの忘れるなよ?」

「はいっ、分かりました」

 1つずつ、カイさんが育てた野菜を丁寧に、傷が付かないように採っていく。

 野菜やハーブを育てて、あんなに美味しい料理も作れて、カイさんはすごい。

 私なんか、サボテンすら枯らしてしまった過去があって、いつもちゃんとやろうやろうと思っているのに失敗してしまうから、時々自分が嫌になってしまう。

「あっ」

 小さく咲く花を踏みそうになってしまう。

「どうした?」

「あ、いえ、なんでも」

「なんかあったら言えよ?」

「ありがとうございます」







「よし、そろそろ朝ご飯にするか」

「はいっ」

 籠一杯に取れた野菜は重くて、だけどこれを自分で収穫したことが嬉しくて、ここに来て初めて何も考えることなく自然と笑顔を浮かべることが出来た。

「お前は、なんか好きな野菜あるのか?」

「そうですね……、夏だったらトマトが好きです」

「なるほどな、じゃあトマトメインの朝ごはんにするか」

「はいっ」

 カイさんは手際良く料理をしていて、私の入る隙はない。無駄な作業が一切なくて、見惚れてしまう。

 その代わり、朝食ができるまでの間に簡単に部屋の掃除をすることに。

 とは言っても、ぱっと見て汚れた箇所はなく、カイさんの性格がこの家からもなんとなく分かるような気がした。

「おーい、出来たぞ」

「はいっ、今行きます」

 部屋に戻ると、さっきまでは何も無かったテーブルの上に、彩りの鮮やかな料理が並べられていた。

「朝だから簡単なものばかりだけど」

「どれも美味しそうです」

 採れたての生トマト、トマトとブロッコリーの炒め物、トマトソースのかかったオムレツ、和のカフェとは違って洋テイストの料理はまた違った良さがある。

「私、カイさんのカフェのお手伝いしたいです」

「うーん…………まあ、いいぞ。別に野菜の手伝いだけでもいいんだけどな」

「ありがとうございます」

 お礼を言うと、カイさんは不思議そうな顔を浮かべて私を見た。

「お前って、変なやつだな」

 
 
 

 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...