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始まりの夏
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「いらっしゃいませ」
とりあえず、お皿洗いや料理のちょっとしたお手伝いをすることになったけれど、家庭とは違って何をとっても量が多くそれなりに大変だった。
それでもなんとかカイさんの役に立ちたいと、体を動かす。
「あら? この子は?」
カウンター席に座った女の人が、私の顔をじいっと見てくる。
「ああ、ちょっと世話見ることになったんだ」
「あら、そうなの」
その人は、ハトリさん同様に美しいという言葉が似合う。
「可愛いわね」
目が合うと、にっこりと私に微笑みをくれて妖艶な声で話し掛けて来た。
「あ、ありがとうございます」
「私、スミレっていうの。あなたは?」
「真由です」
「良い名前ね。ところで、カイに変な事されていない?」
「おいおい、からかうなよ」
「あら、からかってなんかないわ。あ、そうだ。いつものハーブティーよろしく」
「了解」
カイさんは数あるハーブの中から迷うことなく1つを選び、ガラスでできたと透明のティポットでそれを淹れていく。
ラベンダーの香りと共に、奇麗な薄い紫色のハーブが出来あがる。
目を瞑ってその香りをかぐと、心がほっと落ち着いてくる。
まるで、そよ風の吹くラベンダー畑の中を歩いているような気分になる。
「ほい」
「ありがとう。…………ううん、相変わらず良い香り。これを飲まないと1日が始まらないのよ」
ハーブティーを飲む姿も妖艶で、同性の私でもその姿をまじまじと見てしまう。
ずうっと見ていると吸い込まれそうな感覚になって、カイさんに「おい」と話しかけられなければ意識がどこかにいってしまうところだった。
「真由さん、これから時間あるかしら?」
「なんでだ?」
「せっかくだし、一緒に街にでもどうかしらと思ったんだけど。まだこの街に慣れていないでしょう? 女同士で散歩もいいじゃない?」
「まあ、スミレなら大丈夫か」
「あら、信頼してくれてありがとう」
ということで、今日はスミレさんと街を散策することに。
昨日ハトリさんが伝えてくれたおかげで、少しのお小遣いが今日はある。
昨日見かけたあの可愛らしいお菓子なんかを買いたいなと心が弾む。
「真由さんは、人間?」
「え、あ、そうです」
「やっぱり。なんとなく人間っぽいって思ったの、でも、大丈夫よ。私は人間のこと嫌いじゃないから。むしろ好きなの。多分、いい飼い主に飼われていた猫だったのね、私についてる妖は」
「そうなんですね」
「ええ、どこか行きたいところはある?」
「お菓子を、買いに行きたいです」
「ええ、いいわよ」
話をしながら歩いているとすぐにお菓子屋に着いた。昨日も見た芸術作品のようなお菓子が今日も並べられており、見た目だけでも満足してしまいそうになる。
中に入ると、外から見ただけでは分からないほど様々なお菓子が並べられていて、目移りしてしまう。
クッキーのようなものも、キャンディのようなものも、チョコレートのようなものも、そしてケーキのようなものも、全てが美味しそう。
「迷っちゃいます」
「そうだ。私のおすすめを1つプレゼントしてあげる」
とりあえず、お皿洗いや料理のちょっとしたお手伝いをすることになったけれど、家庭とは違って何をとっても量が多くそれなりに大変だった。
それでもなんとかカイさんの役に立ちたいと、体を動かす。
「あら? この子は?」
カウンター席に座った女の人が、私の顔をじいっと見てくる。
「ああ、ちょっと世話見ることになったんだ」
「あら、そうなの」
その人は、ハトリさん同様に美しいという言葉が似合う。
「可愛いわね」
目が合うと、にっこりと私に微笑みをくれて妖艶な声で話し掛けて来た。
「あ、ありがとうございます」
「私、スミレっていうの。あなたは?」
「真由です」
「良い名前ね。ところで、カイに変な事されていない?」
「おいおい、からかうなよ」
「あら、からかってなんかないわ。あ、そうだ。いつものハーブティーよろしく」
「了解」
カイさんは数あるハーブの中から迷うことなく1つを選び、ガラスでできたと透明のティポットでそれを淹れていく。
ラベンダーの香りと共に、奇麗な薄い紫色のハーブが出来あがる。
目を瞑ってその香りをかぐと、心がほっと落ち着いてくる。
まるで、そよ風の吹くラベンダー畑の中を歩いているような気分になる。
「ほい」
「ありがとう。…………ううん、相変わらず良い香り。これを飲まないと1日が始まらないのよ」
ハーブティーを飲む姿も妖艶で、同性の私でもその姿をまじまじと見てしまう。
ずうっと見ていると吸い込まれそうな感覚になって、カイさんに「おい」と話しかけられなければ意識がどこかにいってしまうところだった。
「真由さん、これから時間あるかしら?」
「なんでだ?」
「せっかくだし、一緒に街にでもどうかしらと思ったんだけど。まだこの街に慣れていないでしょう? 女同士で散歩もいいじゃない?」
「まあ、スミレなら大丈夫か」
「あら、信頼してくれてありがとう」
ということで、今日はスミレさんと街を散策することに。
昨日ハトリさんが伝えてくれたおかげで、少しのお小遣いが今日はある。
昨日見かけたあの可愛らしいお菓子なんかを買いたいなと心が弾む。
「真由さんは、人間?」
「え、あ、そうです」
「やっぱり。なんとなく人間っぽいって思ったの、でも、大丈夫よ。私は人間のこと嫌いじゃないから。むしろ好きなの。多分、いい飼い主に飼われていた猫だったのね、私についてる妖は」
「そうなんですね」
「ええ、どこか行きたいところはある?」
「お菓子を、買いに行きたいです」
「ええ、いいわよ」
話をしながら歩いているとすぐにお菓子屋に着いた。昨日も見た芸術作品のようなお菓子が今日も並べられており、見た目だけでも満足してしまいそうになる。
中に入ると、外から見ただけでは分からないほど様々なお菓子が並べられていて、目移りしてしまう。
クッキーのようなものも、キャンディのようなものも、チョコレートのようなものも、そしてケーキのようなものも、全てが美味しそう。
「迷っちゃいます」
「そうだ。私のおすすめを1つプレゼントしてあげる」
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