妖の木漏れ日カフェ

みー

文字の大きさ
7 / 74
始まりの夏

6

しおりを挟む
「いらっしゃいませ」

 とりあえず、お皿洗いや料理のちょっとしたお手伝いをすることになったけれど、家庭とは違って何をとっても量が多くそれなりに大変だった。
 
 それでもなんとかカイさんの役に立ちたいと、体を動かす。

「あら? この子は?」

 カウンター席に座った女の人が、私の顔をじいっと見てくる。

「ああ、ちょっと世話見ることになったんだ」

「あら、そうなの」

 その人は、ハトリさん同様に美しいという言葉が似合う。

「可愛いわね」

 目が合うと、にっこりと私に微笑みをくれて妖艶な声で話し掛けて来た。

「あ、ありがとうございます」

「私、スミレっていうの。あなたは?」

「真由です」

「良い名前ね。ところで、カイに変な事されていない?」

「おいおい、からかうなよ」

「あら、からかってなんかないわ。あ、そうだ。いつものハーブティーよろしく」

「了解」

 カイさんは数あるハーブの中から迷うことなく1つを選び、ガラスでできたと透明のティポットでそれを淹れていく。

 ラベンダーの香りと共に、奇麗な薄い紫色のハーブが出来あがる。

 目を瞑ってその香りをかぐと、心がほっと落ち着いてくる。

 まるで、そよ風の吹くラベンダー畑の中を歩いているような気分になる。

「ほい」

「ありがとう。…………ううん、相変わらず良い香り。これを飲まないと1日が始まらないのよ」

 ハーブティーを飲む姿も妖艶で、同性の私でもその姿をまじまじと見てしまう。

 ずうっと見ていると吸い込まれそうな感覚になって、カイさんに「おい」と話しかけられなければ意識がどこかにいってしまうところだった。

「真由さん、これから時間あるかしら?」

「なんでだ?」

「せっかくだし、一緒に街にでもどうかしらと思ったんだけど。まだこの街に慣れていないでしょう? 女同士で散歩もいいじゃない?」

「まあ、スミレなら大丈夫か」

「あら、信頼してくれてありがとう」








 ということで、今日はスミレさんと街を散策することに。

 昨日ハトリさんが伝えてくれたおかげで、少しのお小遣いが今日はある。

 昨日見かけたあの可愛らしいお菓子なんかを買いたいなと心が弾む。

「真由さんは、人間?」

「え、あ、そうです」

「やっぱり。なんとなく人間っぽいって思ったの、でも、大丈夫よ。私は人間のこと嫌いじゃないから。むしろ好きなの。多分、いい飼い主に飼われていた猫だったのね、私についてる妖は」

「そうなんですね」

「ええ、どこか行きたいところはある?」

「お菓子を、買いに行きたいです」

「ええ、いいわよ」

 話をしながら歩いているとすぐにお菓子屋に着いた。昨日も見た芸術作品のようなお菓子が今日も並べられており、見た目だけでも満足してしまいそうになる。

 中に入ると、外から見ただけでは分からないほど様々なお菓子が並べられていて、目移りしてしまう。

 クッキーのようなものも、キャンディのようなものも、チョコレートのようなものも、そしてケーキのようなものも、全てが美味しそう。

「迷っちゃいます」

「そうだ。私のおすすめを1つプレゼントしてあげる」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...