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始まりの夏
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しおりを挟む「はあ、腹いっぱいだぜ」
「そうね。満足だわ」
「よおし、次はスイカ割りだ!」
外に行こうとした時、
「ねえ、見て」
と、ハトリさんはお庭の方を指差した。
見ると空中に光があって、それは気持ちよさそうに空気の中を泳いでいる。
おじいちゃんの家でも毎年見る蛍。蛍を見ると、懐かしい気持ちになる。
「奇麗ですね」
なんだか、久々に思い出す。自分の家族ことを。
「そうだね。儚いからこその美しさがあるよね」
ハトリさんは、どこからか持ってきた扇子で仰いでいる。その姿は、何かの雑誌に載っていても自然なくらい美しい。
蛍が飛び交う外に皆で移動すると、地面にスイカを置いて、まずはヤクモさんが目隠しをした。
木の棒を持って、くるくるとその場で回って立つ。
「もう少し右ね」
スミレさんの言葉に従って少しずつ角度を調整している。
「うん、そこ、真っ直ぐ歩いて」
とは言うものの、だんだんとスイカからズレていく。
「ヤクモさん、左です。左」
「おう」
皆の指示でようやくスイカの目の前に着くと、ヤクモさんは腕を大きく振り被りスイカに目掛けて木の棒を落とした。
かんっと乾いた音が響く。
だけど、スイカは割れない。
ヤクモさんは目隠しを外してその割れていないスイカを見ると「ああっ」と本気で悔しがっている。
「よしっ、俺がいくか」
「カイなら多分真っ二つだねえ」
「任せとけ」
カイさんも同じように目隠しをしてその場で回転して、皆の声を頼りにスイカの前まで来る。
勢いよくスイカに目掛けて木の棒を振り下ろすと、見事にスイカに当たり2つに割れた。
カイさんが割ったスイカを包丁で切り直して、大きな口を開けてがっつく。
「ううん、美味しいです」
スイカのほんのりした甘さが夏の終わりの夜にはちょうどいい。
蛍の儚い光を見ながら食べるひと時は、ノスタルジーだった。
「スイカももう終わりね。次は梨かしら」
「そうですね」
「秋は美味しいものがたくさんできる季節だねえ。さつまいもとか柿とか。楽しみだよ。カイのカフェでも美味しい料理たくさん出るから、真由ちゃんも楽しみにしてて。僕のおすすめは、栗ご飯かな」
「栗ご飯、美味しそうですっ」
スイカを食べ終えて、ようやく花火の時間が訪れる。
蝋燭に火を灯し、そこから花火の火をもらう。
火がつくと音と共に光が舞い、それは赤や緑と様々に変化していく。
「打ち上げ花火もいいけど、手持ちもいいよな」
「そうですね」
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