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進みゆく秋
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「いらっしゃいませ」
夏は終わり、すっかりと秋模様になる。
カフェのメニューも秋仕様になって、栗やさつまいもやカボチャのメニュー中心になる。
今日のご飯は栗ご飯で、黄金に輝く栗が食欲を引き立たせる。
デザートはカボチャのプリンやスイートポテト、モンブランとこちらも秋の装い。
店内は、コスモスやキクなどの秋の造花で彩られている。
「わあ、美味しそう」
料理に対する称賛の言葉が店内のあちこちから聞こえてくるたびに、自分が作ったものではないにも関わらず心が満たされていく。
「すみません、オータムランチセットください」
「はい、かしこまりました」
だいぶ接客にも慣れて、初めの頃はまだ表情も固くて顔が引きつっていた時もあったかもしれないけど、今では笑顔も自然と引き出せるようになった。
お店から見えるお庭を見ると、木が風でさああっと揺れていた。
風が止むと、光が太陽の間から漏れて幻想的な空間を作り出している。金色の筋の木漏れ日。
「いらっしゃいませ」
「あの、最近いつにも増して読書する時間が増えて目が疲れているんです。何か、目にいいハーブティってありますか?」
女の人はとろんとした覇気のない目で、今にも眠ってしまいそうだ。
「それでは、ハイビスカスとビルベリーのブレンドでいかがでしょうか?」
「じゃあ、それ、お願いします」
「かしこまりました」
「あ、あと、オータムランチもお願いします」
「はい。ハーブティはいつお持ちしますか?」
「食前で」
「かしこまりました」
カイさんの知識量には相変わらず驚かされる。
目にいいハーブティを聞かれてそれをすぐに答えられるなんて、本当にカイさんの頭の中にはどれほどの知識が詰め込まれているんだろう。
いいなあ、私もカイさんみたいになりたいなあ、なんてぼんやりと考える。
何か1つの分野に特化して、それを通して人の役に立つ。
カイさんの方を見ると、奇麗な赤色のハーブティが目に入ってくる。宝石みたいに輝いていて、私も一口欲しいなあと思ってしまう。
そういえば……。
ハーブティをカイさんから受け取りお客様の所に来た。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
「あ、あの。本、好きなんですか?」
「はい、好きですよ」
「専門書とかがたくさん置いてある本屋さんとか知ってますか?」
「専門書ですか……それなら、ここが良いと思いますよ」
その人は1枚の紙を私にくれる。
「真由? どうした?」
「あ、今戻ります。……ありがとうございました!」
「いえ、ハーブティ、いただきますね」
「はいっ」
いけないいけない、仕事中にお客様に私用の話をしてしまうなんて、もっと気を引き締めないと。
私は顔に力を入れて口角を上げて元の場所に戻った。
夏は終わり、すっかりと秋模様になる。
カフェのメニューも秋仕様になって、栗やさつまいもやカボチャのメニュー中心になる。
今日のご飯は栗ご飯で、黄金に輝く栗が食欲を引き立たせる。
デザートはカボチャのプリンやスイートポテト、モンブランとこちらも秋の装い。
店内は、コスモスやキクなどの秋の造花で彩られている。
「わあ、美味しそう」
料理に対する称賛の言葉が店内のあちこちから聞こえてくるたびに、自分が作ったものではないにも関わらず心が満たされていく。
「すみません、オータムランチセットください」
「はい、かしこまりました」
だいぶ接客にも慣れて、初めの頃はまだ表情も固くて顔が引きつっていた時もあったかもしれないけど、今では笑顔も自然と引き出せるようになった。
お店から見えるお庭を見ると、木が風でさああっと揺れていた。
風が止むと、光が太陽の間から漏れて幻想的な空間を作り出している。金色の筋の木漏れ日。
「いらっしゃいませ」
「あの、最近いつにも増して読書する時間が増えて目が疲れているんです。何か、目にいいハーブティってありますか?」
女の人はとろんとした覇気のない目で、今にも眠ってしまいそうだ。
「それでは、ハイビスカスとビルベリーのブレンドでいかがでしょうか?」
「じゃあ、それ、お願いします」
「かしこまりました」
「あ、あと、オータムランチもお願いします」
「はい。ハーブティはいつお持ちしますか?」
「食前で」
「かしこまりました」
カイさんの知識量には相変わらず驚かされる。
目にいいハーブティを聞かれてそれをすぐに答えられるなんて、本当にカイさんの頭の中にはどれほどの知識が詰め込まれているんだろう。
いいなあ、私もカイさんみたいになりたいなあ、なんてぼんやりと考える。
何か1つの分野に特化して、それを通して人の役に立つ。
カイさんの方を見ると、奇麗な赤色のハーブティが目に入ってくる。宝石みたいに輝いていて、私も一口欲しいなあと思ってしまう。
そういえば……。
ハーブティをカイさんから受け取りお客様の所に来た。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
「あ、あの。本、好きなんですか?」
「はい、好きですよ」
「専門書とかがたくさん置いてある本屋さんとか知ってますか?」
「専門書ですか……それなら、ここが良いと思いますよ」
その人は1枚の紙を私にくれる。
「真由? どうした?」
「あ、今戻ります。……ありがとうございました!」
「いえ、ハーブティ、いただきますね」
「はいっ」
いけないいけない、仕事中にお客様に私用の話をしてしまうなんて、もっと気を引き締めないと。
私は顔に力を入れて口角を上げて元の場所に戻った。
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