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進みゆく秋
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「へえ、それで、その宴でカイの料理を提供することになったんだ」
「ああ、何を考えているのか全く分からん」
朝ご飯をいつものように3人で食べながら昨日の出来事をハトリさんにも共有する。
ハトリさんは「んー」と、カボチャの煮つけを食べながら考えている。
「でもまあ、とりあえず行ってみるしかないよね」
「そうだな」
「真由ちゃん、もし屋敷の中に入ったら絶対にカイから離れちゃだめだよ?」
「はいっ」
今日はお休みを頂いている日と言うことで、菓子屋だけならと、1人で外出する許可を貰った。
今日の空はどんよりとしていて、空全体は白色一色になっている。
天気が悪いとそれにシンクロして気分まで下がる。いっそのこと雨ならば、雫が傘に当たる音を楽しめるのにと今日の天気に不満を抱いてしまう。
多分、この前カフェに来た人がアヤメさんで、とても気さくな感じの人だったのは覚えている。
寄り道をしないで真っすぐに菓子屋に来ると、早速アヤメさんと思われる人の姿が見えた。
「あ、あの」
「ああ、この前の。カフェの子」
「お久しぶりです」
「どうかした?」
「えっと……少し伺いことがありまして……。今更ながらお名前を聞いてもよろしいですか?」
「ああ、そう言えば自己紹介してなかったね、アヤメです」
やっぱり、この人がアヤメさんだ。
「改めてよろしくお願いします。えっと、私は真由です」
どんなふうに話を切り出せばより自然に会話を進ませることが出来るだろうと、脳みそをフル回転させる。
直球に屋敷のことを聞いてしまおうか、それとも世間話から徐々に核心へと迫っていこうか……。
「とりあえず、お茶でも飲む? そこに椅子あるからさ」
「あ、はい。ありがとうございます」
アヤメさんは奥の方にいる誰かに目配せをすると、数分後同じ顔をした人がお茶を持ってきてくれた。そのお茶からは、玄米の香ばしい香りが漂ってくる。
「こんにちは、アヤメの妹のモミジです」
「モミジさん」
奇麗な名前。
「私が洋菓子担当、モミジが和菓子担当なの。双子でここの店をやってるんだ」
「そうだったんですね」
双子でお菓子屋なんて、憧れてしまう。
「それで、聞きたいことって?」
「あ、その……。今度、十五夜の宴でお屋敷を尋ねることになったのですが、事前にそこの人たちのこと聞いておきたいなって」
「ああ、カイさんに頼んだって言ってたの、本当だったんだ」
「はい」
「そうだな……まあ、世間離れしてるというか、どこか掴めないところがあるというか、食に関しては相当こだわっていて……元洋食レストラン経営の専属の料理人がいたような……。それでもカイさんのところに頼むってことは相当あそこの料理気に入ったんだね。とにかく美味しいものが好きなんだよ、あそこの人たちは」
「そうなんですね。あそこの人たちには……その……人間に虐められていた動物の妖が付いているって聞いたんですけど、それで人間が嫌いだとか」
「そうだね、まあ……仕方ないよ。あの人たちだって好きでその妖を選んだわけじゃないし、時々可哀そうに思える。嫌なものって、心に残りやすいじゃない? まあ、あの中でも人間に対して多少の好意を持っている人もいるけどね、ほら、動物だった頃に捨てられたあと心優しい人に引き取られたりしてさ。キキョウっていう真由と同い年くらいの男の子とか」
「アヤメ、喋りすぎよ」
「あ、ごめんごめん。まあ、普通にしてれば別に何ともない人たちだから、いつも通りしてれば大丈夫だよ」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
「ああ、何を考えているのか全く分からん」
朝ご飯をいつものように3人で食べながら昨日の出来事をハトリさんにも共有する。
ハトリさんは「んー」と、カボチャの煮つけを食べながら考えている。
「でもまあ、とりあえず行ってみるしかないよね」
「そうだな」
「真由ちゃん、もし屋敷の中に入ったら絶対にカイから離れちゃだめだよ?」
「はいっ」
今日はお休みを頂いている日と言うことで、菓子屋だけならと、1人で外出する許可を貰った。
今日の空はどんよりとしていて、空全体は白色一色になっている。
天気が悪いとそれにシンクロして気分まで下がる。いっそのこと雨ならば、雫が傘に当たる音を楽しめるのにと今日の天気に不満を抱いてしまう。
多分、この前カフェに来た人がアヤメさんで、とても気さくな感じの人だったのは覚えている。
寄り道をしないで真っすぐに菓子屋に来ると、早速アヤメさんと思われる人の姿が見えた。
「あ、あの」
「ああ、この前の。カフェの子」
「お久しぶりです」
「どうかした?」
「えっと……少し伺いことがありまして……。今更ながらお名前を聞いてもよろしいですか?」
「ああ、そう言えば自己紹介してなかったね、アヤメです」
やっぱり、この人がアヤメさんだ。
「改めてよろしくお願いします。えっと、私は真由です」
どんなふうに話を切り出せばより自然に会話を進ませることが出来るだろうと、脳みそをフル回転させる。
直球に屋敷のことを聞いてしまおうか、それとも世間話から徐々に核心へと迫っていこうか……。
「とりあえず、お茶でも飲む? そこに椅子あるからさ」
「あ、はい。ありがとうございます」
アヤメさんは奥の方にいる誰かに目配せをすると、数分後同じ顔をした人がお茶を持ってきてくれた。そのお茶からは、玄米の香ばしい香りが漂ってくる。
「こんにちは、アヤメの妹のモミジです」
「モミジさん」
奇麗な名前。
「私が洋菓子担当、モミジが和菓子担当なの。双子でここの店をやってるんだ」
「そうだったんですね」
双子でお菓子屋なんて、憧れてしまう。
「それで、聞きたいことって?」
「あ、その……。今度、十五夜の宴でお屋敷を尋ねることになったのですが、事前にそこの人たちのこと聞いておきたいなって」
「ああ、カイさんに頼んだって言ってたの、本当だったんだ」
「はい」
「そうだな……まあ、世間離れしてるというか、どこか掴めないところがあるというか、食に関しては相当こだわっていて……元洋食レストラン経営の専属の料理人がいたような……。それでもカイさんのところに頼むってことは相当あそこの料理気に入ったんだね。とにかく美味しいものが好きなんだよ、あそこの人たちは」
「そうなんですね。あそこの人たちには……その……人間に虐められていた動物の妖が付いているって聞いたんですけど、それで人間が嫌いだとか」
「そうだね、まあ……仕方ないよ。あの人たちだって好きでその妖を選んだわけじゃないし、時々可哀そうに思える。嫌なものって、心に残りやすいじゃない? まあ、あの中でも人間に対して多少の好意を持っている人もいるけどね、ほら、動物だった頃に捨てられたあと心優しい人に引き取られたりしてさ。キキョウっていう真由と同い年くらいの男の子とか」
「アヤメ、喋りすぎよ」
「あ、ごめんごめん。まあ、普通にしてれば別に何ともない人たちだから、いつも通りしてれば大丈夫だよ」
「そうなんですね。教えてくれてありがとうございます」
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