妖の木漏れ日カフェ

みー

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進みゆく秋

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 ハトリさんの音とは違う、少し高めの下駄が床を叩く音が近付いてくる。

 それは、厨房の前で止まった。

「さあさあ、どのような感じかな?」

 姿を現したのは、怪しく笑うシドウさん。

「やあ、真由さん。……ああ、すごく美味しそうじゃない。これは皆も喜ぶ。料理というよりは芸術……。御膳というのもまたいい」

 言葉の内容は褒めるものだけど、その声質は冷たい。

「御膳は真由のアイディアです。いかに皆さんに料理を楽しんでもらえるか、真由はそのことだけを考えていたんですよ」

「へえ……そうなの。それはありがとう、真由さん。おかげで今年も満足いく宴が開催できそうだよ」

 シドウさんが近づいてきて、彼の長く細い指が頬に触れる。

 キキョウさんの手とは違って、氷のように冷たいその手に、びくっと肩が跳ねた。

「ああ、ごめんね。僕、冷え性で」

「あ、いえ、少し驚いただけで……」

「そう……拒否したわけじゃ、ないんだね?」

 目の奥から伝わってくる、冷たさや残虐性とは違う、哀愁さ。

「はい、本当に、冷たさに体が反応してしまっただけですよ」

 試されている、全ての言動にそう思ってしまう。少しでも拒絶するような態度を見せてしまったらきっと全てが終わってしまう。

 でも、なんだろう、それだけじゃない。

「宴の時、僕の所には真由さんが料理を運んできてくれるかな?」

「はい」

 シドウさんが何を考えているのか、砂が指の間をするすると落ちていくように、全く掴めない。とにかく今は、彼の言葉に一切否定を示さないのが得策。

 満足したのか、シドウさんは厨房から姿を消した。

「真由……大丈夫か?」

「はい」

「あの方は、何を考えているのか本当に分からない。そこが恐ろしくある。決して、無理はしないんだよ?」

 長年近くで見てきたカイさんのお父さんが言うんだから、その言葉は絶対に疎かにしていけない。

「はい、ありがとうございます」








 宴が始まる。

 御膳は全て準備できた。カフェの親しみやすい料理とは違う、高級感の溢れたそれら。

 同じ食材なのに、調子の仕方でこんなにも見せる表情が異なるなんて、料理はすごく奥が深いと思う。

「さあ、それでは宴の始まりです。料理をお運びしましょう」

 着物を着た女の人たちが数人入って来て、一人一膳を持って宴の間に向かう。私もその後についていく。

 カイさんはこの場にはいなくて、漠然とした不安で押しつぶされそうになる。

 この前の場所と同じ……。部屋の中に入ると、そこには雅やかな雰囲気が流れていて、宴に参加している皆は上品さを醸し出している。

「やあ、真由さん。ありがとう」

 一礼をしてシドウさんの前から立ち去ろうとした時だった。
 
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