妖の木漏れ日カフェ

みー

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進みゆく秋

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「皆さん、今日は珍しいお客様が来ているんですよ」

 シドウさんが、私の腕を掴み愉快な声を出すと、皆の視線が一気に私に向けられた。

 私がこの場にいることを心底楽しんでいるかのようなそのわざとらしい明るい声に緊張が走り、シドウさんの光の灯っていない目を見ると、嫌な予感が頭を過ぎる。

 空気の流れが止まっているかのような沈黙に、誰もがシドウさんの次の言葉を待っている。

「人間ですよ。この子は、人間の女の子ですよ」

 腕を掴む力がより一層強くなって、絶対にここから逃さないという強い意志を感じた。

「人間?」

「やっぱり、ここ最近の地震は……」

「え、やだ。人間だなんて」

 私を否定する言葉が、四方八方から聞こえてくる。やだ……、誰か助けて。両耳を塞ぎたいのに、腕が不自由なせいでそれも出来ない。

 心が折れかけそうな時だった。

「え……?」

 誰かが、私の反対の手を強く握った。

「キキョウさん……」

「あら、キキョウ。お前はまだ宴に参加していい歳じゃないはず。どうしてここに?」

「腕を、離してください」

 シドウさんは、キキョウさんの言葉に素直に従って私の腕を解放した。

「私たちの憎むべき人間、でも私は手荒なことはしたくない。さあ、皆さん。この可愛らしい人間にチャンスを与えるというのはどうでしょう」

 わざとらしく『可愛らしい』という言葉を使い、切れ長の目で私を見る。

 だけど、刃のように鋭い視線のその中に哀しさを同時に感じた。なんだろう……。

 それよりも、きっと初めに会った時から私が人間だと、全てを把握していたんだ。

「チャンス、というのは?」

「キセキバナ、その種を……そうですね、12月31日までに見つけて来れば、真由さんの災いを止めたい、そしてこの街を救いたいという気持ちが本物だとみなし、私はあなたに信頼を差し上げよう。私の信頼は地主の信頼でもある。さあ、どうしましょう、真由さん。まあ、断る理由もないですよね?」

「分かりました。その日までに、必ずキセキバナの種をシドウさんのもとに持ってきます」

「もし出来なかったときには、真由さんの命はない。……しかし、この街を救うためだ、仕方がないこと」

 そのことは私も重々分かっている。私のせいで、皆がこの街を失うなんて絶対あってはいけないこと。

「分かっています。私だって、この街が消滅するのは心苦しいですから」

「楽しみにしていますよ」

 ふふっと、シドウさんは笑う。

「真由さん、行こう」

 キキョウさんに手を引かれ、私はざわつく宴の会場を後にした。





「大丈夫? 真由さん」

「うん……ありがとうございます、助けてくれて」

「嫌な予感がしてたんだ、ずっと」

 キキョウさんの私を握る手が震えていて、私はその手を握られていない別の手で包み込む。温かくて優しい手。きっと、宴の場に来るのだって相当の覚悟が必要だったと思う。

 私の為に来てくれたキキョウさんを、とても愛しく感じる。

「絶対に見付けます。なんとしてでも」

「1つだけ、不確かだけど情報がある。キセキバナの種は当てずっぽうに探しても見つからない。種の在りかを示すものが存在するって。ただ、それがなんなのかが分からないんだ」

「種の在りかを示すもの……」

 なんだろう……全く思いつかない。

「僕ももっと調べてみるよ」

「本当に、ありがとうございます」
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