妖の木漏れ日カフェ

みー

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終わらない冬

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 シドウさんとも別れて、カフェに戻ってくる。

 結局、キキョウさんには2度会えることはなかった。

 カフェにつくと、そのの中はもう暗くなっていて、そのまま家に帰った。

「ただいま」

「おかえり。夕食、出来てるぞ」

「ありがとうございます、あ、あの……今日、ジンジャークッキーを焼いたんです。ぜひカイさんにも食べて欲しくて」

 恐る恐る、クッキーの入った袋を渡すと、満面の笑みを浮かべてカイさんはそれを受け取ってくれた。

「お、ありがとうな。じゃあ、夕食の後に食べるか」

 カイさんの笑顔を見ると、やっぱり心の温度がじんわりと上がってきて、でもこの気持ち、私知ってる。
 
 家族といる時にも感じる温かさで、それと同じだ。

 でもキキョウさんに対しては違う。さっきの女の子といる姿を見たときに苦しくなった。それは多分……嫉妬。

 私もキキョウさんの隣を歩きたいという欲求が、あの瞬間確かに湧いてきていた。

「あ、今度シドウさんがハーブティーを飲みに来てくれるって言ってたんです。私、またハーブティーの勉強頑張るので、色々教えてくださいっ」

「ああ、もちろんだ」

 





 夕食を食べたあと、早速カイさんの講義に。

「それで、ハーブティーにはいろんな組み合わせがあって、効能ももちろんそれぞれ違う。それは、真由が買ってきたその本に書いてあるかもしれないな」

 組み合わせ……なんだか難しそう。

「そうですね」

「まあ、例えば女の人なんかだと、ハイビスカスとローズヒップのブレンドなんかがいいよな。肌にいいし。見た目も赤色で綺麗だろ?」

「たしかに……」

 そういえば、シドウさんは男の人なのに肌が白くて透明感がすごくて、羨むほど。

 もしかして、毎日こういうのを飲んでいるのかな? なんて思ったり。

「ああ、あとはハーブティーによって蒸す時間が違うからそれも覚えておかないとな」

「そうなんですね」

「明日から、実践してみるか。ハーブを選ぶのは俺がやるから、淹れるのは真由で」

「は、はい」

 前に言われた時は結局災いのことで手一杯で、ほとんどお客様に提供できなかったけど今はこうして余裕のある時間を過ごすことができるから、カフェの仕事をたくさんやりたい。

 もっともっと、自分のできることを増やしたい。




  

 寝る前に、穏やかな夜の空を眺める。こうやって心静かに星を眺めることが出来るのは、なんて贅沢なのだろうと、今この環境に自分がいることにため息をつく。

「あ、なんかいる」

 畑を見ると、小動物のような影が動いていて、ぴょんぴょんと跳ねながらどこかへ行く姿を見ると、ウサギかな、なんて思って、微笑ましいと感じる。

「そろそろ、寝ようかな」

 窓を閉めて部屋を暗くして目を閉じた。

 明日はどんなお客様に会えるかな、自分の淹れるハーブティーは人の心を満たすかな、なんてことを思いながら夢の中へとト飛び立った。
 

 
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