世界異夜~かの館で少女が守る!

一陽吉

文字の大きさ
2 / 7

第2話 入浴と食事

しおりを挟む
「胸が大きくなったかしら、イブ」
「それはないわね、ヤエ」

 浴室でシャワーを浴びながら話す二人。

 浴室といっても十メートル四方の空間があり、天井も高いので無駄に広い印象がある。

 水色の床タイルこそ現代的だが、内装は洋風で、貴族のおたわむれといった雰囲気があった。

 その中央に二人はいるのだが、注がれるシャワーは器具を使わず、浴室からの魔法によって頭上の空中から湯雨を浴びている。

 立ち上がる湯気が霧のようになって裸身を包んでいる。

「私たちは同生体にして固定体。変わることはないわ、ヤエ」
「ええ。希望を言ってみたのよ、イブ」

 そう言ってお互い無表情で見合わせる。

「……」

 髪と瞳の色こそ違うが、身体つきや白い肌は同一である。

「そろそろ出ましょうか、イブ」
「そうね、ヤエ」

 ヤエの意見にイブが同意すると、湯雨は止み、二人は出入口へ歩き出した。

「メニューは何かしらね、イブ」
「楽しみね、ヤエ」

 細やかに装飾された木製両開きの扉に向かいあって立つと、二人は左右それぞれのドアノブを握り、同時に引いた。

 中から光があふれ出し、二人を飲み込んでいく。

 そして、二人の身体を瞬時に乾かし、下着、キャミソール、ソックスと、身につけられ、最終的に黒を基調としたゴシックロリィタの姿になった。

 扉を抜けると浴室と同規模の広さをもったダイニングルームに出た。

 内装はやはり洋風で中央にテーブルと二人分のイスがあった。

 職人の手によるものであろう黒塗りの木製品で、温かさと優雅さが感じられる。

 長方形のテーブル上には真っ白なテーブルクロスが敷かれ、上品なレストランを思わせた。

 二人はそれぞれ両端に移動し、イスに腰を下ろす。

 すると目の前に一人ずつ、大きな皿に盛られた出来立ての明太子スパゲッティと、キラキラ輝く銀製のフォークとスプーンが現れた。

 館が二人のために食神しょくしんを通して用意したものだった。

「とても美味しそうね、イブ」
「そうね、ヤエ」

 表情、声のトーンも変わらないが、見た目と香りが二人の食欲を刺激した。
 
「いただきます」

 手を合わせ、同時に言う二人。

 フォークとスプーンを手に取り、麵を絡めてそっと口へ運ぶ。

「素晴らしいわね、イブ」
「最高ね、ヤエ」

 淡々としているが、最上級の味に、次から次へとスパゲッティが口へ運ばれていく。

 気がつけばあっという間に皿は空になっていた。

「とても美味しかったわね、イブ」
「そうね、ヤエ」

 二人そろってフォークとスプーンを置き、手を合わせ、
「ごちそうさまでした」
 と言いながら軽く頭を下げた。

 すると、食べ終えた皿などはテーブルから消え、かわりに水が注がれたグラスが現れた。

 それを左手に持ち、二人は一口飲んだ。

「ふう……」

 同時に幸せの息をはく二人。

 そして、お互いの顔を見た。

「入浴と食事をすませたけど、どうする、イブ」
「寝る流れだと思うわ、ヤエ」
「じゃあ、そうしましょうか」
「そうしましょう」


 イブの意見にヤエが賛成した。

「寝ると言えば私たちはいつも一緒ね、イブ」
「そうよ、ヤエ」
「さっきの葉っぱさんもそうだけど、ここへ訪れるお客さんは基本的に単体よね」
「そうね」
「いつか、私たちみたいな二人組のお客さんも訪れるのかしら」
「可能性はあると思うわ。ただ……」
「何かしら」
「ここでそんなことを言うと、前フリというやつになりそうね」

「……」

 二人は見つめ合い、肩をすくめた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...