世界異夜~かの館で少女が守る!

一陽吉

文字の大きさ
3 / 7

第3話 戦夜・始ノ時

しおりを挟む
「来ちゃったわね、イブ」
「そうね、ヤエ」

 館のエントランスにて、来客を見ながらイブとヤエが言った。

 外界との扉から現れたのは二体一組の招かざる客。

 どちらも身長が二メートル程度あり、大人の女性といった姿をしているが、両肘両膝の先が大きな翼となっている。

 豊満な胸と股間部は左右から小さな翼が包み、それ以外は裸身という格好だった。

 髪はなく、顔だちも整っているが眼球はなく、口も開くことがない。

 なぜなら、向かって右側は象牙色の、左側は淡灰色の肌をした、硬い石像であるからだ。

 色以外、全て同一である来客、四翼の女像は床から五十センチほど浮いて、立っているような状態だった。

「人にあらず者よ。当館に何用か」

 静かな声でヤエが言った。

「この館にとてつもない力を持ったものがあるでしょう?」
「それをもらいに来たの」

 脳に直接響く念話の声。

 右から左へ言葉を繋いで答えると、右側、象牙色の女像が右腕の翼から桜の花びらを一枚出して見せた。

 淡いピンクの花びらは魔力ともつかぬ神秘的な力を放ち、単純な樹木からのものではないことを表していた。

「なるほど」
「その力を得て、あなたたちは何をするつもり?」

 納得といった表情のヤエから、イブが女像に問いかけた。

「私たち、子供がほしいの」

「子供?」

 揃って答える女像と同じく、揃って反応する少女。

「そうよ。私たち、どんなに愛しあっても肉体ではないし、生殖器もない」
「でもこの力さえあれば、二人の愛の証、子供ができる」

 そう言って下腹部を触る二体。

 お互いがお互いの子を産むつもりのようだ。

「目的は分かったわ」
「だが非ず者よ、精霊でもないあなたたちが存在するには糧となるものが必要になるはず」
「察しはつくが────」

「ええ、人間の命よ」

 ヤエが言い終えるより早く、二体が言った。

「でも安心して。肉を食い散らかすわけではなく、生命力を吸い取るだけ」
「死体はとてもきれいよ」

「……」

 人の命はあくまで食糧であり、そこにある心など女像は気にもとめていない。

 ────すると、館の奥から小さな風が吹き、女像の持つ花びらを飛ばした。

「あら?」
「まあいいじゃない。力さえ手に入れば」

 大したことではないという女像と違い、少女たちの目が鋭くなった。

「非ず者よ、主は悲しんでおられる」
「本来であれば退去の選択肢もあるが、それはない」

 わずかに声を震わせて言うイブとヤエ。

「即刻、消滅せよっ!」

 言い放つと同時にクラシック銃を握った右手を突き出す二人。

 だが、気配を感じた二体はすでに間合いに入っていた。

 左右から挟む横の一閃。

 刃と化して振るわれる翼を、二人は、頭をかたむけ身体をねじるようにして回避した。

 少女の容姿から想像できない、人間離れした反射神経と運動能力。

 それによって首の切断こそ免れたが、イブは右頬みぎほおを、ヤエは左頬ひだりほおをわずかに切った。

 赤い血が空中を舞い、床に────。

「!?」

 落ちることなく、桜の花びらになって散り、消えた。

「ちょっと待ってよ。いまの桜、私が見つけたものと同じじゃない」
「それはつまり……」
「この館にある桜に力があるのではない」
「この館にいる娘が力」

 話していた二体は向き直りイブとヤエを見た。

 少女たちは距離をとり、表情を変えずに構えている。

 頬の傷はすでに跡形もなく消えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写と他もすべて架空です。

処理中です...