22 / 26
三章 長谷川高介
第6話 挑発
しおりを挟む
翌日。
世界夜における夜の十時過ぎ。
私とジュマ、文姫さんは、高介氏と穂波さんが住んでいるマンションの地下駐車場にいるッス。
それも、停めてある自動車と自動車の間に隠れて。
他の精神体やセキュリティはスルーできても、高介氏には見えてしまうんで、ひっそりとしゃがみ込んでいるわけッス。
────エンジン音。
一台の乗用車が私たちのいる場所の反対側にある位置に停め、ゆっくりとエンジンを切ると、運転していた人物が姿を現す。
高介氏。
白いマスクをつけ、スーツ姿でいかにも仕事帰りってかんじッスね。
お疲れでしょうが、付き合ってもらうッスよ。
ジュマの空間倉庫からスピール・ハローを取り出し、引き金を引く。
装填されているのは空間複写転移魔法。
なんか漢字だらけッスが、ようはこの地下駐車場を丸ごとコピーしてそこに転移するってわけッス。
右から左へ、画面が一ページ移った感覚で、私たちと高介氏はその空間へ。
自動車やコンクリートの壁やら柱はそのままッスが、電気まではコピーできないんで、一気に真っ暗ッスね。
まあ、こっちはお馴染み魔導具のロックグラスで見えるッスが、高介氏は……、姿勢を低くして自分の乗用車に身を隠してるみたいッス。
「彩……」
囁く文姫さん。
すると、高介氏の乗用車からスーツ姿のイケメン、三人が現れたッス。
探理局から逃げてきた時に私たちを追いかけてきた、三体の式神と同じものッス。
その動きが特殊部隊の軍人さんみたい。
まだ見つかるわけにはいかないんで仕留めさせてもらうッス。
ハローはいま、空間を維持している状態なんで使えない。
というわけで空間倉庫からパイソンの登場ッス。
しかも今回は実弾、357マグナムを使用するッス。
前回同様、魔法への抵抗が高いだろうと予想がつくッスが、その場合に備えタタカイノキオクを探ると、一つの対処法があったッス。
────それは、弾丸に意思や感情をのせて撃つ!
両手で構え、引き金を引くと特有の銃声とともの『消滅』の意思がのった弾丸がイケメン式神の額に命中。
被弾したイケメン式神はその衝撃で倒れながら消滅し、元の札に戻ったッス。
強烈な意思・感情は気であって、魔法ではないし、構成する魔法術式を崩すことも可能。
そんな感じで、残りのイケメン式神も消していくッスよ。
二発、三発と、コンクリート製の地下駐車場に銃声が鳴り響き、再び私たちと、高介氏だけになったッス。
まあ、弾丸が貫通して自動車の窓ガラスが割れたり、穴が開いたりしたッスが、コピーなんで問題ないッス。
そうそう、コピーといっても装填された魔力の容量による時間制限はあるッスからね。
ハローの魔力が無くなれば、自動的に世界夜へ帰されるッス。
ふうぅ……。
大きく息をはく私。
────柄にないこと、はじめるッス。
「そこに居るんでしょう? 長谷川高介さん」
壁に囲まれて響く私の声。
更に私は位置を特定されないように魔力で声の反響を調整しながら話しかける。
「私はね、あんたに撃たれて追いやられた覚醒者、野八彩よ」
声を太めに、怒りをにじませて言う。
「今日、ここへ来たのはねえ、あんたに仕返しをするためさ」
反応は見えないッスが、聞いているのは感じられるッス。
「あんたのせいで私は悪者にされて、家族にも会えなくなった」
事実ッス。
「家族に会えないつらさがあんたに分かる? 分かるわけないよね。そばに弟がいるのを分かっていて撃ってるんだからさ」
後半は事実ッス。
「二年間、苦しかったよ、しんどかったよ。そして、いつか必ず復讐してやるって決めたんだ」
これは嘘ッス。
「そして、どうやったらあんたに同じ思いをさせられるか考えた。────あんた、娘がいるんだって?」
高介氏の雰囲気が変わった。
「あんたを痛めつけても私の気は晴れない。私以上の地獄を味あわせなきゃ気が済まない、だから────」
……。
「あんたの大事なものを奪った」
……。
「あんたの娘、いまどうなっているのかねえ」
探理局のときよりも大きくて異様なオーラが高介氏から吹き出しはじめたッス。
それはロックグラスなしでも見えるほどに強大。
ピリピリした殺気が空間に広がっていくッス。
「貴様……。穂波に何をした!」
魔獣の咆哮のような高介氏の叫び。
そして、ついに隠れていたものが姿を現したッス。
夜獣・長谷川高介が。
世界夜における夜の十時過ぎ。
私とジュマ、文姫さんは、高介氏と穂波さんが住んでいるマンションの地下駐車場にいるッス。
それも、停めてある自動車と自動車の間に隠れて。
他の精神体やセキュリティはスルーできても、高介氏には見えてしまうんで、ひっそりとしゃがみ込んでいるわけッス。
────エンジン音。
一台の乗用車が私たちのいる場所の反対側にある位置に停め、ゆっくりとエンジンを切ると、運転していた人物が姿を現す。
高介氏。
白いマスクをつけ、スーツ姿でいかにも仕事帰りってかんじッスね。
お疲れでしょうが、付き合ってもらうッスよ。
ジュマの空間倉庫からスピール・ハローを取り出し、引き金を引く。
装填されているのは空間複写転移魔法。
なんか漢字だらけッスが、ようはこの地下駐車場を丸ごとコピーしてそこに転移するってわけッス。
右から左へ、画面が一ページ移った感覚で、私たちと高介氏はその空間へ。
自動車やコンクリートの壁やら柱はそのままッスが、電気まではコピーできないんで、一気に真っ暗ッスね。
まあ、こっちはお馴染み魔導具のロックグラスで見えるッスが、高介氏は……、姿勢を低くして自分の乗用車に身を隠してるみたいッス。
「彩……」
囁く文姫さん。
すると、高介氏の乗用車からスーツ姿のイケメン、三人が現れたッス。
探理局から逃げてきた時に私たちを追いかけてきた、三体の式神と同じものッス。
その動きが特殊部隊の軍人さんみたい。
まだ見つかるわけにはいかないんで仕留めさせてもらうッス。
ハローはいま、空間を維持している状態なんで使えない。
というわけで空間倉庫からパイソンの登場ッス。
しかも今回は実弾、357マグナムを使用するッス。
前回同様、魔法への抵抗が高いだろうと予想がつくッスが、その場合に備えタタカイノキオクを探ると、一つの対処法があったッス。
────それは、弾丸に意思や感情をのせて撃つ!
両手で構え、引き金を引くと特有の銃声とともの『消滅』の意思がのった弾丸がイケメン式神の額に命中。
被弾したイケメン式神はその衝撃で倒れながら消滅し、元の札に戻ったッス。
強烈な意思・感情は気であって、魔法ではないし、構成する魔法術式を崩すことも可能。
そんな感じで、残りのイケメン式神も消していくッスよ。
二発、三発と、コンクリート製の地下駐車場に銃声が鳴り響き、再び私たちと、高介氏だけになったッス。
まあ、弾丸が貫通して自動車の窓ガラスが割れたり、穴が開いたりしたッスが、コピーなんで問題ないッス。
そうそう、コピーといっても装填された魔力の容量による時間制限はあるッスからね。
ハローの魔力が無くなれば、自動的に世界夜へ帰されるッス。
ふうぅ……。
大きく息をはく私。
────柄にないこと、はじめるッス。
「そこに居るんでしょう? 長谷川高介さん」
壁に囲まれて響く私の声。
更に私は位置を特定されないように魔力で声の反響を調整しながら話しかける。
「私はね、あんたに撃たれて追いやられた覚醒者、野八彩よ」
声を太めに、怒りをにじませて言う。
「今日、ここへ来たのはねえ、あんたに仕返しをするためさ」
反応は見えないッスが、聞いているのは感じられるッス。
「あんたのせいで私は悪者にされて、家族にも会えなくなった」
事実ッス。
「家族に会えないつらさがあんたに分かる? 分かるわけないよね。そばに弟がいるのを分かっていて撃ってるんだからさ」
後半は事実ッス。
「二年間、苦しかったよ、しんどかったよ。そして、いつか必ず復讐してやるって決めたんだ」
これは嘘ッス。
「そして、どうやったらあんたに同じ思いをさせられるか考えた。────あんた、娘がいるんだって?」
高介氏の雰囲気が変わった。
「あんたを痛めつけても私の気は晴れない。私以上の地獄を味あわせなきゃ気が済まない、だから────」
……。
「あんたの大事なものを奪った」
……。
「あんたの娘、いまどうなっているのかねえ」
探理局のときよりも大きくて異様なオーラが高介氏から吹き出しはじめたッス。
それはロックグラスなしでも見えるほどに強大。
ピリピリした殺気が空間に広がっていくッス。
「貴様……。穂波に何をした!」
魔獣の咆哮のような高介氏の叫び。
そして、ついに隠れていたものが姿を現したッス。
夜獣・長谷川高介が。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる