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4章 少年と竜騎士
10話 違和感
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「あれ? ルカ」
ベルを呼んだ後に食堂に戻ると、テラスでルカがパンケーキを食べていた。
テラスは屋根がついているとはいえ、雨の日にわざわざ外に出て食べるって変わってるなぁ。
「外で食べるんだね」
「雨の日は、色んな水の音が聞こえるから」
「へえ……なんだか風流だね」
「それにあの子達も見える」
ルカの視線の先は、4月に植えた鉢植えと、畑に植えたひまわり。どれもかなり育ってきて、もう花が咲きそうな感じだ。
「もうすぐ咲きそうだもんね。楽しみだよね」
「ん……」
ルカは瞳をうるませながらうなづく。
「あの子達、水をあげると、いつもとても嬉しそう」
「そうなんだ。そういうのも分かるなんてすごいね……なんだかもったいないな」
「……何が?」
「ルカって感受性が強そうだから、喜ぶの禁止っていう『光の塾』ってあまり合わない気がして」
種から芽が出たり葉っぱが増えたのを喜んだり、水の音を聴きながら食事したりとか、彼女自身の感受性と『光の塾』の教義は水と油な気がしてならない。
「……そう。でも、わたしはあそこでずっといたから……どうすればいいか分からない。でも戻りたいとも思わなくて……とにかく色々なことを考えてあふれてしまう」
ルカはそう言うとフォークとナイフを持つ手をテーブルに置いてうつむいてしまった。
「そ、そうだよね。ごめん、ヘンなこと言っちゃって」
(しまった……いらないこと言って落ち込ませちゃった……!)
「えっと、じゃあ今は『パンケーキおいしい』という気持ちで満たしてはどうでしょう!」
「……それなら、簡単」
慌ててますます訳のわからないことを言ってしまったけどルカは気を持ち直してくれたようで、パンケーキをムシャムシャと頬張り始めた。
(ほっ……)
◇
――雨音を聴きながら、ルカはパンケーキを10枚くらい食べた。
「相変わらずすっごい食べたね……」
「おいしい」
「うん……」
「レイチェルとジャミルのパンケーキ、おいしい。でもベルのパンケーキは特別にふわふわでおいしい」
「パンケーキ担当だもんねぇ。そういえば、ベル遅いな……」
ベルがクライブさんの所に行ってから小一時間は経っていた。
「わたし、そろそろ部屋に戻る」
「あ、うん。わたしもそろそろ家に帰る用意しようかなぁ、雨もマシになりそうにないし」
階段あたりの所まで歩いてくると近くの隊長室の扉が開き、グレンさん達が出てきた。
「あ、ベル。クライブさんも。……傷は大丈夫ですか?」
「ああ、お陰様で痛みは引いたよ」
「よかった……」
「……改めて、どうもありがとう」
「いいえ。でも回復魔法でも古傷は治せませんから、お力になれたかどうか」
クライブさんにお礼を言われて、真面目な顔で答えるベル。
(ああやってると、やっぱり回復術師って感じだなぁ……)
でも魔法を使ったからか、少し疲れているように見える。
「いや、痛みがあるとやっぱり煩わしいからね。痛みが引いただけでも御の字だよ」
「…………」
そんなやり取りをルカが無言でじーっと見ている。というか、クライブさんを見ているような……。
「ルカ? どうかした?」
「あの人……」
「ええと、君は……?」
まじまじと見られているのに気づいたクライブさんがルカに話しかけてくるが、ルカは無言だ。
「…………」
「ル、ルカ、どうしたの?」
「ああ……っと、ごめん。俺はクライブ・ディクソンといってグレンの……」
「……」
自己紹介をするクライブさんに、ルカは尚も言葉を発さず、クライブさんをただ見つめる。
「あなた…………変」
「へ……」
まさかの返答にあっけに取られるクライブさん。っていうか『変』って!
「ちょ、ルカ! し……失礼だよ」
「そうよ! この人のどこが……」
「……変だもの」
(ひ――!)
わたしとベルが慌ててルカをたしなめるも、ルカは動じず更に更にクライブさんを見据える。
(ま、まさか水をかける気じゃ……)
「……ルカ。ちょっとこっちへ」
――少し緊迫した空気を破ったのはグレンさんだった。ルカはクライブさんをじっと見ながらグレンさんの元へ。
「すみません、クライブさん。あの子ちょっと感性が独特で」
グレンさんは少し離れた所でルカに小声で何か言い聞かせているようだ。
「はは……大丈夫大丈夫。あの子のことはグレンから聞いてはいたけど、いざ相対すると驚くね」
クライブさんはさわやかに笑う。初対面で変とか言われたのに寛大だなぁ。
……とりあえず、水をかけられなくて良かった。
しばらくするとグレンさんと少しむくれたような顔のルカが戻ってきた。
「いやー失礼しました先輩。ちゃんと言い聞かせておいたのでどうか殴らないでやってください」
「ええっ」
「いや、大丈夫だ……って、人聞きの悪いことを言うな、殴るわけないだろう。……それじゃあ、今日はこれで帰るから。また、来週」
「ああ」
◇
「お兄ちゃま。どうして」
クライブさんが帰ったあと、ルカは憮然とした表情でグレンさんに問いただす。
「どうしてもこうしてもない。全部明るみに出す必要はないんだ」
「……?」
わたしとベルは顔を見合わせる。
ルカは多分さっきグレンさんに言われたことに納得いっていないようだけど、『明るみに出す』とかって何のことだろう?
「……だって、あの人――」
「お前が感じたことは事実で、言いたいことは分かる。けどだからって、必ずしも指摘する必要はない。分かったな?」
「…………ん」
いつになく真面目に諭すグレンさんに、ルカは渋々と返事をする。ただ、全然納得はいってなさそうだ。
「それじゃあこの話は終わりだ。……レイチェルはそろそろ帰るんだろ?」
「へっ? あ、はい……」
突然話を振られて、わたしは思わず背筋をビシッと伸ばしてしまう。
「ルカ、転移魔法で送っていってやれ。この雨だしな」
「えっ、でも」
「いい。送っていく」
「あ、うん。それじゃ、お願いしようかな」
(話を逸らすのに使われた気もするけど……せっかくだから送ってもらっちゃお)
ベルを呼んだ後に食堂に戻ると、テラスでルカがパンケーキを食べていた。
テラスは屋根がついているとはいえ、雨の日にわざわざ外に出て食べるって変わってるなぁ。
「外で食べるんだね」
「雨の日は、色んな水の音が聞こえるから」
「へえ……なんだか風流だね」
「それにあの子達も見える」
ルカの視線の先は、4月に植えた鉢植えと、畑に植えたひまわり。どれもかなり育ってきて、もう花が咲きそうな感じだ。
「もうすぐ咲きそうだもんね。楽しみだよね」
「ん……」
ルカは瞳をうるませながらうなづく。
「あの子達、水をあげると、いつもとても嬉しそう」
「そうなんだ。そういうのも分かるなんてすごいね……なんだかもったいないな」
「……何が?」
「ルカって感受性が強そうだから、喜ぶの禁止っていう『光の塾』ってあまり合わない気がして」
種から芽が出たり葉っぱが増えたのを喜んだり、水の音を聴きながら食事したりとか、彼女自身の感受性と『光の塾』の教義は水と油な気がしてならない。
「……そう。でも、わたしはあそこでずっといたから……どうすればいいか分からない。でも戻りたいとも思わなくて……とにかく色々なことを考えてあふれてしまう」
ルカはそう言うとフォークとナイフを持つ手をテーブルに置いてうつむいてしまった。
「そ、そうだよね。ごめん、ヘンなこと言っちゃって」
(しまった……いらないこと言って落ち込ませちゃった……!)
「えっと、じゃあ今は『パンケーキおいしい』という気持ちで満たしてはどうでしょう!」
「……それなら、簡単」
慌ててますます訳のわからないことを言ってしまったけどルカは気を持ち直してくれたようで、パンケーキをムシャムシャと頬張り始めた。
(ほっ……)
◇
――雨音を聴きながら、ルカはパンケーキを10枚くらい食べた。
「相変わらずすっごい食べたね……」
「おいしい」
「うん……」
「レイチェルとジャミルのパンケーキ、おいしい。でもベルのパンケーキは特別にふわふわでおいしい」
「パンケーキ担当だもんねぇ。そういえば、ベル遅いな……」
ベルがクライブさんの所に行ってから小一時間は経っていた。
「わたし、そろそろ部屋に戻る」
「あ、うん。わたしもそろそろ家に帰る用意しようかなぁ、雨もマシになりそうにないし」
階段あたりの所まで歩いてくると近くの隊長室の扉が開き、グレンさん達が出てきた。
「あ、ベル。クライブさんも。……傷は大丈夫ですか?」
「ああ、お陰様で痛みは引いたよ」
「よかった……」
「……改めて、どうもありがとう」
「いいえ。でも回復魔法でも古傷は治せませんから、お力になれたかどうか」
クライブさんにお礼を言われて、真面目な顔で答えるベル。
(ああやってると、やっぱり回復術師って感じだなぁ……)
でも魔法を使ったからか、少し疲れているように見える。
「いや、痛みがあるとやっぱり煩わしいからね。痛みが引いただけでも御の字だよ」
「…………」
そんなやり取りをルカが無言でじーっと見ている。というか、クライブさんを見ているような……。
「ルカ? どうかした?」
「あの人……」
「ええと、君は……?」
まじまじと見られているのに気づいたクライブさんがルカに話しかけてくるが、ルカは無言だ。
「…………」
「ル、ルカ、どうしたの?」
「ああ……っと、ごめん。俺はクライブ・ディクソンといってグレンの……」
「……」
自己紹介をするクライブさんに、ルカは尚も言葉を発さず、クライブさんをただ見つめる。
「あなた…………変」
「へ……」
まさかの返答にあっけに取られるクライブさん。っていうか『変』って!
「ちょ、ルカ! し……失礼だよ」
「そうよ! この人のどこが……」
「……変だもの」
(ひ――!)
わたしとベルが慌ててルカをたしなめるも、ルカは動じず更に更にクライブさんを見据える。
(ま、まさか水をかける気じゃ……)
「……ルカ。ちょっとこっちへ」
――少し緊迫した空気を破ったのはグレンさんだった。ルカはクライブさんをじっと見ながらグレンさんの元へ。
「すみません、クライブさん。あの子ちょっと感性が独特で」
グレンさんは少し離れた所でルカに小声で何か言い聞かせているようだ。
「はは……大丈夫大丈夫。あの子のことはグレンから聞いてはいたけど、いざ相対すると驚くね」
クライブさんはさわやかに笑う。初対面で変とか言われたのに寛大だなぁ。
……とりあえず、水をかけられなくて良かった。
しばらくするとグレンさんと少しむくれたような顔のルカが戻ってきた。
「いやー失礼しました先輩。ちゃんと言い聞かせておいたのでどうか殴らないでやってください」
「ええっ」
「いや、大丈夫だ……って、人聞きの悪いことを言うな、殴るわけないだろう。……それじゃあ、今日はこれで帰るから。また、来週」
「ああ」
◇
「お兄ちゃま。どうして」
クライブさんが帰ったあと、ルカは憮然とした表情でグレンさんに問いただす。
「どうしてもこうしてもない。全部明るみに出す必要はないんだ」
「……?」
わたしとベルは顔を見合わせる。
ルカは多分さっきグレンさんに言われたことに納得いっていないようだけど、『明るみに出す』とかって何のことだろう?
「……だって、あの人――」
「お前が感じたことは事実で、言いたいことは分かる。けどだからって、必ずしも指摘する必要はない。分かったな?」
「…………ん」
いつになく真面目に諭すグレンさんに、ルカは渋々と返事をする。ただ、全然納得はいってなさそうだ。
「それじゃあこの話は終わりだ。……レイチェルはそろそろ帰るんだろ?」
「へっ? あ、はい……」
突然話を振られて、わたしは思わず背筋をビシッと伸ばしてしまう。
「ルカ、転移魔法で送っていってやれ。この雨だしな」
「えっ、でも」
「いい。送っていく」
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