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◇6-7章 幕間:番外編・小話
大人の話
しおりを挟む※4章『夢のシチュエーション!?』も併せてご覧ください。
「あの……カイル」
「ん?」
「あのね……わたし、ずっと聞きたかったことが」
ある夏の日。
わたしは、食堂でお昼を食べているカイルに突撃した。
「何? ……何か深刻な話?」
カイルは自分で作ったホイコーローを食べているところだった。
……辛味マシマシ、これまた自分で作った辛味噌を添えて。
わたしはカイルの向かいに座って、そして意を決して切り出した。
「か、カイルは……『昆布ダシ』か『かつおダシ』か、どっちひゃっ、どっち派っ!?」
「え……ダシ?」
カイルは口あんぐりになっている。
――分かります、分かります!
深刻な感じで何切り出すかと思ったらこんな話。
でも、どうしても。ど――――しても気になって。
「どっち!?」
ずずいとテーブルに身を乗り出してカイルにせまる。
「え、ええ――……?」
わたしの勢いにカイルはイスにもたれかかるように身を引いて、手をアゴに置いて斜め上くらいに視線をやりながらしばしの沈黙。
「そうだな……俺はどっちかというと……カツオかな?」
「カツオかぁ~~~~~!!」
「……ね、熱量がなんかおかしくないか? まあでも、俺はアゴダシが好きだけど」
「そっっっっちなのね!!」
「う……うん。って何の尋問なのこれ……? なんか、おかしい感じになっちゃったねレイチェル……」
「ご、ごめんね。あの、実は……」
ワケがわからない顔をしているカイルに経緯を説明した。
――カイルが『クライブさん』だと思ってた時、グレンさんと二人かっこいい大人がどういう話してるの? って思ってて、いや実はつまらない話をしてるのよ、どっちのダシ派とか……という話を友達としていたのです。
そして、そんな話してると決まったわけでもないのに、クライブさんとグレンさんはどっちのダシ派なのか気になって気になって夜も眠れなかったのです。
だけどクライブさんの正体はカイルだったので気軽に話ができます。
ですからこうやって気になることを思い切って聞くことができたのです……万事解決、めでたしめでたしハッピハッピー。
「と、いうわけなの!! ありがとう!!」
「そ……そう。あの……問題が解決して、よかったね……?」
カイルは終始わたしのハンパない熱量に押されまくっていた。
「……ところで実際、どんな話をしているの?」
「いやまあ……ダシの話ではないけど、実際つまらない話しかしてないけど」
「例えば……?」
「『あのフランツって子、お前の子供?』『そんなわけないだろ殺すぞ』とか」
「……」
ほ、ほんとにつまらない……!
「あとはさあ……『ロレーヌトゲトゲリス』っていう魔物がいるんだけどさ」
「あ、うん、知ってる」
『ロレーヌトゲトゲリス』というのは、ロレーヌ国の森とかに出没するしっぽがトゲトゲのリス型モンスター。
かわいいんだけど、トゲトゲしっぽで殴られるとなかなか痛いらしい。
かわいいからってナメてかかると痛い目に遭うらしい……伝聞だけど。
「あいつ『ロレーヌトゲトゲリス』を『ロレーヌトゲトゲリッス』って呼ぶんだよ」
「リッス……」
「『なんでリッスって言うんだよムカつくからやめろよ』とか……」
「…………そ」
想像以上に、つまらなかった……!!
「しかもあいつリスはリスって呼ぶのにロレーヌトゲトゲリスだけロレーヌトゲトゲリッスって呼んで……レイチェル?」
「……ごめん、ホントにすっごいつまらなくて」
あまりのつまらなさに、わたしは思わず机に突っ伏してしまう。
「えー? でもあれだろ、『意外とつまらない話してる』のご期待には沿えられたんじゃない?」
「そうだね……」
カイルはそのまま、ただでさえ赤くて辛そうなホイコーローに辛味噌を混ぜておいしくいただいていた。
――これも、甘党のグレンさんとつまらない言い合いの種になっているとか、なんとか……。
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