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6章 最後の1枚
3話 気がかり
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準備をする時間をもらい、足早に自室に戻る。
扉を開けると、ちょうどトモミチが風呂から出てきたところだった。
「おかえり~」
「うん。……朝食と水、持ってきた」
「ありがとー」
食事をテーブルに置いたところで、図書館で借りた本が置きっぱなしになっていることに気付く。
内心焦りながら本を手に取り、小脇に抱える。
「それ、昨日借りてきた本? もう返すん?」
「……うん」
――しくじった。
本の中には、屍霊術師について書かれた物語が含まれている。
ホロウの定義など直接的な説明や描写がされているわけではないが、トモミチに見せるのは危険だ。
しかし今の口ぶりからして、彼はまだ本を読んでいないようだ――安堵しつつ、再度口を開く。
「……急ぎの用事ができて、今からまたザビーネのところに行くんだ。そのついでに本も返す」
「急ぎの用事?」
「昨日、トミーという奴の話をしたと思うんだけど」
トミーの名を出すと、トモミチは一瞬怪訝な顔をして「うん」と返してきた。
何か誤解をされている気がする。
急いで出かけなければいけないが、ちゃんと説明はしていきたい。
「実は今日、そいつが……」
――トモミチに事情を説明した。
簡潔に、順序立てて、きちんと伝わるように。
「……なるほど。緊急事態ってことか」
「そうなんだ。だから」
「……なんでロラン君が行く必要あんねやろ?」
「えっ……?」
思わぬ反応に言葉を失ってしまう。
トモミチの表情は真剣だ。怒っているというわけではなさそうだが、何に引っかかりを覚えているのだろう?
「アンソニーさんが行くのは分かるよ。ガタイいいし、強そうやし。けど……ロラン君は? ヤバいヤツら相手に何ができるん」
「僕は、……魔法で」
「魔法? 火ぃ出したりとか?」
「そう。アンソニー達を後方から支援する。攻撃の他に風や土の術で相手を牽制、捕縛することもできるし、それに」
「……すごいな。色々できんねや」
「? ……うん……」
僕の返事を聞いたトモミチが睫毛を伏せ、ため息をつく。
「……ゴメンな。オレ、暴力とか戦いとか全然縁遠いとこで生きてたからさ。身近な人間が『友達がヤバいヤツらに襲われてるから助けに行く』とか言い出したら、『やめとけよ』って気持ちが先に立ってまう。……危ない目ぇ、遭ってほしない。ケガしたらどうすん、って。……そんなん、警察とか消防の仕事やし」
「トモミチ……」
「ホンマは行ってほしくない。けど……ロラン君が、自分で『行きたい』って思って行こうとしてんねやんな?」
その言葉に首肯を返すとトモミチは苦い顔をして笑い、僕を抱きしめてきた。
背中に手を回すと彼はさらに力を込め、僕をぎゅっと抱きすくめる――。
(トモミチ……)
事情を理解してもらえてよかった――僕はずっと、気持ちも事情も〝ないもの〟にされてきたから。
『なぜ行く必要がある』『お前に何ができる』――同じ内容でも、トモミチの発した言葉に侮蔑の意図はない。
彼は彼の世界の物差しで〝危険〟を判定して、僕を心配してくれていたんだ。
彼の内心を知り、分かり合えたことが嬉しい。そうした上で、抱きしめ合えることも。
……が、ずっとこうしてはいられない――。
「……もう、行かないと」
「分かった。ゴメン、引き留めてもうて」
そう言って身を離し、それと同時に唇を重ねてくる。
「……行ってらっしゃい。気ぃつけて」
扉を開けると、ちょうどトモミチが風呂から出てきたところだった。
「おかえり~」
「うん。……朝食と水、持ってきた」
「ありがとー」
食事をテーブルに置いたところで、図書館で借りた本が置きっぱなしになっていることに気付く。
内心焦りながら本を手に取り、小脇に抱える。
「それ、昨日借りてきた本? もう返すん?」
「……うん」
――しくじった。
本の中には、屍霊術師について書かれた物語が含まれている。
ホロウの定義など直接的な説明や描写がされているわけではないが、トモミチに見せるのは危険だ。
しかし今の口ぶりからして、彼はまだ本を読んでいないようだ――安堵しつつ、再度口を開く。
「……急ぎの用事ができて、今からまたザビーネのところに行くんだ。そのついでに本も返す」
「急ぎの用事?」
「昨日、トミーという奴の話をしたと思うんだけど」
トミーの名を出すと、トモミチは一瞬怪訝な顔をして「うん」と返してきた。
何か誤解をされている気がする。
急いで出かけなければいけないが、ちゃんと説明はしていきたい。
「実は今日、そいつが……」
――トモミチに事情を説明した。
簡潔に、順序立てて、きちんと伝わるように。
「……なるほど。緊急事態ってことか」
「そうなんだ。だから」
「……なんでロラン君が行く必要あんねやろ?」
「えっ……?」
思わぬ反応に言葉を失ってしまう。
トモミチの表情は真剣だ。怒っているというわけではなさそうだが、何に引っかかりを覚えているのだろう?
「アンソニーさんが行くのは分かるよ。ガタイいいし、強そうやし。けど……ロラン君は? ヤバいヤツら相手に何ができるん」
「僕は、……魔法で」
「魔法? 火ぃ出したりとか?」
「そう。アンソニー達を後方から支援する。攻撃の他に風や土の術で相手を牽制、捕縛することもできるし、それに」
「……すごいな。色々できんねや」
「? ……うん……」
僕の返事を聞いたトモミチが睫毛を伏せ、ため息をつく。
「……ゴメンな。オレ、暴力とか戦いとか全然縁遠いとこで生きてたからさ。身近な人間が『友達がヤバいヤツらに襲われてるから助けに行く』とか言い出したら、『やめとけよ』って気持ちが先に立ってまう。……危ない目ぇ、遭ってほしない。ケガしたらどうすん、って。……そんなん、警察とか消防の仕事やし」
「トモミチ……」
「ホンマは行ってほしくない。けど……ロラン君が、自分で『行きたい』って思って行こうとしてんねやんな?」
その言葉に首肯を返すとトモミチは苦い顔をして笑い、僕を抱きしめてきた。
背中に手を回すと彼はさらに力を込め、僕をぎゅっと抱きすくめる――。
(トモミチ……)
事情を理解してもらえてよかった――僕はずっと、気持ちも事情も〝ないもの〟にされてきたから。
『なぜ行く必要がある』『お前に何ができる』――同じ内容でも、トモミチの発した言葉に侮蔑の意図はない。
彼は彼の世界の物差しで〝危険〟を判定して、僕を心配してくれていたんだ。
彼の内心を知り、分かり合えたことが嬉しい。そうした上で、抱きしめ合えることも。
……が、ずっとこうしてはいられない――。
「……もう、行かないと」
「分かった。ゴメン、引き留めてもうて」
そう言って身を離し、それと同時に唇を重ねてくる。
「……行ってらっしゃい。気ぃつけて」
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