拝啓、死に際の貴方へ。

Q太郎

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「キミ⁈キミが、犯人?」

「えっ?え?」

俺は自分の顔が真っ赤になっているのに気がついた。

キラキラとした目で俺を見つめてくる。

俺は慌てて顔を逸らした。

ま、眩しすぎる。

「ねぇ、キミなんでしょ?」

私にラブレターをくれたのは君?と言うことか?
こんなに喜んでいるのは、もしかして、彼女は元々俺のことが好きで‥。

「待ってたよ!早速さ!いこうよ!」

明間さんは俺の手を引く。

「い、行くってどこへ?」

「え?」

突然のことで全く状況が追いつかない。

明間さんは人差し指を口元に抑え、宙を見て何やら考えている。

その仕草も可愛い。

「あー、そっかそっか。ごめん。キミのやり方があるよねっ」

弾むような声と笑顔で彼女は手を離す。

「それで?どうやるの?」

「ど、どうって」

彼女はキョトンとした顔になり、耳を疑う言葉を吐いた。



「‥‥‥え?」

再び、時が止まった気がした。

俺は、今彼女が吐いた言葉を咀嚼しようとする。

聞き間違い?いや、彼女ははっきりとこう言った。

殺してくれるんでしょ?と。

「え、違うの?」

彼女は俺の隣を通り過ぎ、先ほど落ちた黒い封筒を手に取り中身を無造作に取り出す。

数秒それを見た後、満面の笑顔となり「ほら、やっぱりキミじゃん」と中身を見せてきた。

白い紙に、ワープロで四行ほど打たれた文章が目に飛び込んでくる。

『オマエヲ、ユルサナイ
 アラユルテヲツカッテ
 ゼツボウヲアジワセテヤル
 ソノアト、コロシテヤル』

「ね?」と彼女は楽しそうにそう言ってくる。

なんだよ、これ。

何が起こってんだよ。

俺の顔を見た彼女が、「あれ、もしかして、キミじゃないの?」と残念そうに聞いてきた。

俺は、小さく頷く。

すると彼女はため息をついて「なーんだ。そうなんだ」と言って手紙を持ったまま教室を出て行こうとした。

「待って!」

俺は彼女を呼び止める。

振り向いた彼女は、面倒くさそうに「なに?」と聞いてくる。

「えっと、そのさ、なんか、俺に出来ることないかな?」

気がつくと、そんな言葉を口にしていた。

彼女は、首を傾げ続きを待っているようだった。

「明間さん、本当は困ってるんじゃないの?」

「困ってる?何に?」

「いや、だってさ、そんな手紙、おかしいよ」

ワープロで書かれた手紙に目を落とした彼女は「何が?」と聞いてくる。

あまりの意思疎通の出来なさに、俺はまるで目の前の彼女が異星人と話しているような気さえしてくる。

「脅されてるんだよ?」

「うーん‥これ、脅し?」

「ど、どっからどう見ても脅しでしょ!」

俺がそういうと、彼女は再び「なーんだ」と落胆した。

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