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「異世界の楽園」編
3.二週間後
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俺は今、例の川の魔力を得るべく、その激流の中に身を投じようとしていた。
「今日こそ見つけるのじゃ、よいな! 時間は有限なのじゃぞ」
川岸から、俺の使い魔にして師匠となったビビアナが発破をかけてくる。
先日、反魂の術で復活した彼女に、俺は色々知りたかったことを訊いた。もちろん、この川の魔力を得る方法も。
「そもそもの話からじゃが、人が得られる魔力の色の数は、生まれつきの相性によって決まるのだ。多くは一色、稀に二色の者がおる程度で、三色もあれば伝説に残るわい。じゃが、お主は既に緑、赤、黒の魔力を持っており、見たところまだ器に余裕がありおる。確かにこれならば、青の魔力も得られるであろうな」
へー、そういえばこの体をくれた神様はそんなようなことを言っていたな。だが、そこまでレアだとは聞いてないぞ。
「そして、ワシはあの川の魔力を得る方法も知っておる。教えてやってもよいが……条件がある」
ならばと、とりあえずその条件とやらを聞いてみる。
「青魔力だけでなく、白魔力も得るのだ。そして……その力でワシの魂を解き放ってくれ」
なるほど、これは納得のいく要求だ。俺としても、もとよりそうするつもりだったし、二つ返事で了承する。
「それから、もう一つ。ワシのことは師匠と呼べ!」
「はい、師匠!」
そういうわけで、あれから毎日この川に来て、青魔力を得るべく挑戦を繰り返していた。
師匠が言うには、この川の底のどこかに魔力の塊である石があり、その周囲は魔力の流れの合流によって乱された激流で守られているとのことだった。
川は長く広く、それらしき石を見つけるのには時間がかかり、なんとか見つけてからも、周囲の激流を突破することができずにいるところだ。
そして、こんな時にこそ役立つはずの、俺の特別な力である「閃き」も皆目起こらず、どうすればいいのか分からないでいた。
いくら特別製の体とはいえ、この流れの中を動き回るのは骨が折れる。一度断念して水から上がると、待っていたのは師匠の罵倒である。
「どうした、もう諦めたのか! 情けない、そんなザマでどうする!」
「そうはいっても、なかなか上手くいかなくて……それに、師匠だって、自分ではこの川の魔力を手に入れたわけじゃないでしょ?」
「バカもの! 口答えするでない! だいたい、魔宝使いたるワシには、青魔力など不要じゃ。まったく」
なんでも、師匠の専門は魔力をモノに宿らせる魔宝造りだったそうで、それには特定の色は必要としないらしい。でも、だったら別に青魔力があっても邪魔にはならないのでは? 適性がなかったとかか?
「こほん……よいか! 流れを突破できんのは、お主には進むべきルートが見えておらんからじゃ! 見ることとは、すなわち理解すること。よく目を凝らしてみよ」
見ること。理解すること。ビビアナの言葉を聞いて、俺の頭の中でパッと火花が咲いたような気がした。これがーー「閃き」の真骨頂か!
おそらく、ただ答えを欲するだけでは「閃き」は訪れないのだろう。必要な情報を頭の中に揃えた時、自ずと導き出される思考の輝き。それこそが、この神からの贈り物の正体に違いない。
今ならば、どうすればあの流れを突破できるか分かる気かした。いや、突破できるという確信がある。
俺はやおら立ち上がり、もう一度激流の中に身を投じた。
(見える……見えるぞ……激しい流れの中にあって唯一突き進める通り道が!)
これまでの俺は、ただ目を開けていただけで、そこに何があるのかを見ようともしていなかった。
だが、ビビアナに言われた通りに「見て」「理解する」ようになった今では、目的のために何をすべきかがはっきりと分かる。
そして、それを成すことのできる体を、俺は持っている。
「む……やりおったな」
また水から上がってきた俺を、師匠が目を細めて迎える。俺はわずかに血が流れている手を挙げて、それに応えた。
***
翌日。いよいよ、最後に残った色となる白の魔力を得るべく、俺と師匠は川を越えた先にある平野に来ていた。
あの川を泳いで越えるのは容易ではないため、そこまでは青魔術の「飛行術」を使って空中散歩を楽しんだのだが……
「ひ、広い……いくら魔力の流れが見えても、魔力のへそまで辿り着くこと自体がひと苦労じゃないか」
なんたることか。この平野というのが、島の中とは思えないほどの面積を誇っていた。絶望的とは言わないが、発見にはかなりの苦労が予想される。
「バカもの。これまで何を学んできたのだ。真に賢い者は、過去の経験からだけでなく今目の前にある問題からも学ぶものだぞ」
師匠はそう言って、俺の頭をド突いてくる。
確かに彼女の言う通りだ。やるべきことは分かっているのだから、そうすればいいだけなのだ。
ただし、目的達成にはとんでもない手間がかかる。工夫することで少しでもスムーズに進めるのは大事だが、結局は膨大な努力の末にしか辿り着けないものはある。
結局、数日間隈なく探し回ってようやく、魔力の流れの中心になっていた巨石を見つけ、無事に印を刻むことができたのだった。
***
その夜、ビビアナはこれまでにないほど真剣な表情で、俺に告げた。
「本当に五色の魔力を備えるとは見事じゃ。お主のような者が、『革命者』となるのであろうな」
革命者とはなんぞや、と疑問を挟む隙もなく、ビビアナは語り続ける。
「青の魔力があれば、この島から出て行くことも容易じゃろう。ワシには果たせなんだが、お主ならば、この世界に新たな真理をもたらすこともできると信じておる。ならば、ワシはその手助けをさせてもらおうと思う」
「いやいや、これまでもずいぶん助けてもらいましたけども」
俺への協力に対する彼女の望みは、自らの魂の解放だった。てっきり、早速それをやれと言われるとばかり思っていたのに。勝手に復活させたのに、こんなにまでしてもらって悪いな。感謝しかない。
「構わん。しかし、そのためにはお主にやってもらうことがある。この島の各地形から、それぞれの魔力のへその素材を集めてくるのじゃ。ワシはそれを使って贈り物を用意するつもりでおる」
そのくらいはおやすいご用だ。
早速明日から取りかかることにして、今夜は全魔力を集められたお祝いの晩餐を、二人で楽しむのだった。
「今日こそ見つけるのじゃ、よいな! 時間は有限なのじゃぞ」
川岸から、俺の使い魔にして師匠となったビビアナが発破をかけてくる。
先日、反魂の術で復活した彼女に、俺は色々知りたかったことを訊いた。もちろん、この川の魔力を得る方法も。
「そもそもの話からじゃが、人が得られる魔力の色の数は、生まれつきの相性によって決まるのだ。多くは一色、稀に二色の者がおる程度で、三色もあれば伝説に残るわい。じゃが、お主は既に緑、赤、黒の魔力を持っており、見たところまだ器に余裕がありおる。確かにこれならば、青の魔力も得られるであろうな」
へー、そういえばこの体をくれた神様はそんなようなことを言っていたな。だが、そこまでレアだとは聞いてないぞ。
「そして、ワシはあの川の魔力を得る方法も知っておる。教えてやってもよいが……条件がある」
ならばと、とりあえずその条件とやらを聞いてみる。
「青魔力だけでなく、白魔力も得るのだ。そして……その力でワシの魂を解き放ってくれ」
なるほど、これは納得のいく要求だ。俺としても、もとよりそうするつもりだったし、二つ返事で了承する。
「それから、もう一つ。ワシのことは師匠と呼べ!」
「はい、師匠!」
そういうわけで、あれから毎日この川に来て、青魔力を得るべく挑戦を繰り返していた。
師匠が言うには、この川の底のどこかに魔力の塊である石があり、その周囲は魔力の流れの合流によって乱された激流で守られているとのことだった。
川は長く広く、それらしき石を見つけるのには時間がかかり、なんとか見つけてからも、周囲の激流を突破することができずにいるところだ。
そして、こんな時にこそ役立つはずの、俺の特別な力である「閃き」も皆目起こらず、どうすればいいのか分からないでいた。
いくら特別製の体とはいえ、この流れの中を動き回るのは骨が折れる。一度断念して水から上がると、待っていたのは師匠の罵倒である。
「どうした、もう諦めたのか! 情けない、そんなザマでどうする!」
「そうはいっても、なかなか上手くいかなくて……それに、師匠だって、自分ではこの川の魔力を手に入れたわけじゃないでしょ?」
「バカもの! 口答えするでない! だいたい、魔宝使いたるワシには、青魔力など不要じゃ。まったく」
なんでも、師匠の専門は魔力をモノに宿らせる魔宝造りだったそうで、それには特定の色は必要としないらしい。でも、だったら別に青魔力があっても邪魔にはならないのでは? 適性がなかったとかか?
「こほん……よいか! 流れを突破できんのは、お主には進むべきルートが見えておらんからじゃ! 見ることとは、すなわち理解すること。よく目を凝らしてみよ」
見ること。理解すること。ビビアナの言葉を聞いて、俺の頭の中でパッと火花が咲いたような気がした。これがーー「閃き」の真骨頂か!
おそらく、ただ答えを欲するだけでは「閃き」は訪れないのだろう。必要な情報を頭の中に揃えた時、自ずと導き出される思考の輝き。それこそが、この神からの贈り物の正体に違いない。
今ならば、どうすればあの流れを突破できるか分かる気かした。いや、突破できるという確信がある。
俺はやおら立ち上がり、もう一度激流の中に身を投じた。
(見える……見えるぞ……激しい流れの中にあって唯一突き進める通り道が!)
これまでの俺は、ただ目を開けていただけで、そこに何があるのかを見ようともしていなかった。
だが、ビビアナに言われた通りに「見て」「理解する」ようになった今では、目的のために何をすべきかがはっきりと分かる。
そして、それを成すことのできる体を、俺は持っている。
「む……やりおったな」
また水から上がってきた俺を、師匠が目を細めて迎える。俺はわずかに血が流れている手を挙げて、それに応えた。
***
翌日。いよいよ、最後に残った色となる白の魔力を得るべく、俺と師匠は川を越えた先にある平野に来ていた。
あの川を泳いで越えるのは容易ではないため、そこまでは青魔術の「飛行術」を使って空中散歩を楽しんだのだが……
「ひ、広い……いくら魔力の流れが見えても、魔力のへそまで辿り着くこと自体がひと苦労じゃないか」
なんたることか。この平野というのが、島の中とは思えないほどの面積を誇っていた。絶望的とは言わないが、発見にはかなりの苦労が予想される。
「バカもの。これまで何を学んできたのだ。真に賢い者は、過去の経験からだけでなく今目の前にある問題からも学ぶものだぞ」
師匠はそう言って、俺の頭をド突いてくる。
確かに彼女の言う通りだ。やるべきことは分かっているのだから、そうすればいいだけなのだ。
ただし、目的達成にはとんでもない手間がかかる。工夫することで少しでもスムーズに進めるのは大事だが、結局は膨大な努力の末にしか辿り着けないものはある。
結局、数日間隈なく探し回ってようやく、魔力の流れの中心になっていた巨石を見つけ、無事に印を刻むことができたのだった。
***
その夜、ビビアナはこれまでにないほど真剣な表情で、俺に告げた。
「本当に五色の魔力を備えるとは見事じゃ。お主のような者が、『革命者』となるのであろうな」
革命者とはなんぞや、と疑問を挟む隙もなく、ビビアナは語り続ける。
「青の魔力があれば、この島から出て行くことも容易じゃろう。ワシには果たせなんだが、お主ならば、この世界に新たな真理をもたらすこともできると信じておる。ならば、ワシはその手助けをさせてもらおうと思う」
「いやいや、これまでもずいぶん助けてもらいましたけども」
俺への協力に対する彼女の望みは、自らの魂の解放だった。てっきり、早速それをやれと言われるとばかり思っていたのに。勝手に復活させたのに、こんなにまでしてもらって悪いな。感謝しかない。
「構わん。しかし、そのためにはお主にやってもらうことがある。この島の各地形から、それぞれの魔力のへその素材を集めてくるのじゃ。ワシはそれを使って贈り物を用意するつもりでおる」
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