閃き輝く異世界無敵語り/行きて帰りたい物語

横山剛衛門

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「勝利の女神の塔」編

1-2.思いがけない依頼主2

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 やがて、扉が開き、ギルマスとーー知らない女が入ってきた。

「よく来てくれた。早速仕事の話に入ろうと思う」

 入って来た途端、挨拶もそこそこにそう切り出す。禿げ上がった頭と濃い顎髭という見た目のこのギルマスは、いつもただ"ボス"と呼ばれていて、誰も本名は知らないとの噂だ。
 それと、今のように、極端すぎるほど無駄口を叩かない堅物さでも有名だった。

「まずは彼女を紹介しよう。今回の依頼主、アメリア女史だ。みな、名前は聞いたことがあるな?」

 アメリア? あの"黄金の護り手"か? 大国ユーエスエイの皇女の一人ながら、Sランク迷宮を二つも制覇して名を馳せた女騎士。
 他の二人もこの展開を予想していなかったらしく、目を見開いている。

「彼女の依頼は、君達にとってもかつてなく難しいものとなるだろう。説明を始めてくれるかな? アメリア」

 ボスに促されて、アメリアが一歩前に出た。金髪で背が高い彼女は、ひと言で表せば、ただ美しい。美人が多いと噂のエルフ族の中でも、特に際立つ容姿だろう。
 だが、性格は美しいとはいえないらしい。

「諸君、よく来てくれた。わらわが求めるのは、『勝利の女神の塔』の頂上に輝くという黄金の聖杯だ。正直なところ、、今手が空いている者では最高の人選だとこちらのギルマスに言われては、仕方ない。あいにくと時間がなく、背に腹は代えられん」

 この言い草、わざとやってるのか? いきなりのこんなご挨拶だと、普通は面食らってペースを握られるところだ。
 が、俺は他人の評価などどうでもいいし、陽気なヴィエイラは大ウケして馬鹿笑いが止まらなくなり、ホンダは無表情のままだ(そもそも男の獣人の顔は人より獣寄りなので、他種族には感情が読み取りにくい)。
 そうした反応は予期せぬものだったようで、逆にアメリアが戸惑うことになったが、彼女は咳払いを一つ置いて話を続けていく。

「『勝利の女神の塔』の話は聞いたことがあるな? 年に一度、ひと月の間だけ一階の扉が開き、最も早く頂上に到達した者のみが、聖杯の魔宝アーティファクトを得られるという。この聖杯からは、毎夜黄金が水の如く湧くというではないか。まさに私にふさわしい、素晴らしい宝だ」

 アメリアは目を輝かせてこう語った。王女のくせに金が目的とは、意外に俗物なんだな。
 あいにくと俺は、金になど興味はない。が、俺が調べたところ、この宝の真価は他にある。だからこそ、今回の招集に応じたわけだ。

「いいね! そんなお宝があるなら、かなりの強者が集まるだろうしな」

 ヴィエイラは、塔に集まる強敵との勝負が目的か。他のパーティをいかに出し抜くかの競争は、熾烈を極めるだろう。
 もちろん塔の中にいる魔物は強大だろうし、場合によっては、冒険者パーティ同士の戦いだって起こりうる。

「……妖槍・気まぐれ毒蛇があると聞いた」

 ホンダがポツリと呟いた。

「そなた、刀使いではないのか?」

「……我が友が欲していてな。あいにく今は病に臥しているので、それがしが代わりに手に入れて参ると請け負ったのだ」

 アメリアの疑問にはこう答える。

「そうか。まあお前達の目的はなんであろうがどうでもよいが……一応聞いておこうか、そなたは?」

 こちらを向いて問うてきたアメリアに、俺はこう答える。

「どうでもいいんだろ? 好きに想像してくれ。ああ、聖杯の所有権は譲るからよ」

 この返事は、王女たるアメリアにはかなり憤慨ものだったらしい。一気に顔を紅潮させて、叫ぶように言った。

「なるほどな……! だが、この私になんという口の利き方だ。それだけの腕があると思っていいのだろうな? 正式に依頼を始める前に、お前達の実力を見せてもらおう。ついてこい!」
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