7 / 20
「勝利の女神の塔」編
1-2.思いがけない依頼主2
しおりを挟む
***
やがて、扉が開き、ギルマスとーー知らない女が入ってきた。
「よく来てくれた。早速仕事の話に入ろうと思う」
入って来た途端、挨拶もそこそこにそう切り出す。禿げ上がった頭と濃い顎髭という見た目のこのギルマスは、いつもただ"ボス"と呼ばれていて、誰も本名は知らないとの噂だ。
それと、今のように、極端すぎるほど無駄口を叩かない堅物さでも有名だった。
「まずは彼女を紹介しよう。今回の依頼主、アメリア女史だ。みな、名前は聞いたことがあるな?」
アメリア? あの"黄金の護り手"か? 大国ユーエスエイの皇女の一人ながら、Sランク迷宮を二つも制覇して名を馳せた女騎士。
他の二人もこの展開を予想していなかったらしく、目を見開いている。
「彼女の依頼は、君達にとってもかつてなく難しいものとなるだろう。説明を始めてくれるかな? アメリア」
ボスに促されて、アメリアが一歩前に出た。金髪で背が高い彼女は、ひと言で表せば、ただ美しい。美人が多いと噂のエルフ族の中でも、特に際立つ容姿だろう。
だが、性格は美しいとはいえないらしい。
「諸君、よく来てくれた。私が求めるのは、『勝利の女神の塔』の頂上に輝くという黄金の聖杯だ。正直なところ、このメンバーの実力では不安が残るが、今手が空いている者では最高の人選だとこちらのギルマスに言われては、仕方ない。あいにくと時間がなく、背に腹は代えられん」
この言い草、わざとやってるのか? いきなりのこんなご挨拶だと、普通は面食らってペースを握られるところだ。
が、俺は他人の評価などどうでもいいし、陽気なヴィエイラは大ウケして馬鹿笑いが止まらなくなり、ホンダは無表情のままだ(そもそも男の獣人の顔は人より獣寄りなので、他種族には感情が読み取りにくい)。
そうした反応は予期せぬものだったようで、逆にアメリアが戸惑うことになったが、彼女は咳払いを一つ置いて話を続けていく。
「『勝利の女神の塔』の話は聞いたことがあるな? 年に一度、ひと月の間だけ一階の扉が開き、最も早く頂上に到達した者のみが、聖杯の魔宝を得られるという。この聖杯からは、毎夜黄金が水の如く湧くというではないか。まさに私にふさわしい、素晴らしい宝だ」
アメリアは目を輝かせてこう語った。王女のくせに金が目的とは、意外に俗物なんだな。
あいにくと俺は、金になど興味はない。が、俺が調べたところ、この宝の真価は他にある。だからこそ、今回の招集に応じたわけだ。
「いいね! そんなお宝があるなら、かなりの強者が集まるだろうしな」
ヴィエイラは、塔に集まる強敵との勝負が目的か。他のパーティをいかに出し抜くかの競争は、熾烈を極めるだろう。
もちろん塔の中にいる魔物は強大だろうし、場合によっては、冒険者パーティ同士の戦いだって起こりうる。
「……妖槍・気まぐれ毒蛇があると聞いた」
ホンダがポツリと呟いた。
「そなた、刀使いではないのか?」
「……我が友が欲していてな。あいにく今は病に臥しているので、某が代わりに手に入れて参ると請け負ったのだ」
アメリアの疑問にはこう答える。
「そうか。まあお前達の目的はなんであろうがどうでもよいが……一応聞いておこうか、そなたは?」
こちらを向いて問うてきたアメリアに、俺はこう答える。
「どうでもいいんだろ? 好きに想像してくれ。ああ、聖杯の所有権は譲るからよ」
この返事は、王女たるアメリアにはかなり憤慨ものだったらしい。一気に顔を紅潮させて、叫ぶように言った。
「なるほどな……! だが、この私になんという口の利き方だ。それだけの腕があると思っていいのだろうな? 正式に依頼を始める前に、お前達の実力を見せてもらおう。ついてこい!」
やがて、扉が開き、ギルマスとーー知らない女が入ってきた。
「よく来てくれた。早速仕事の話に入ろうと思う」
入って来た途端、挨拶もそこそこにそう切り出す。禿げ上がった頭と濃い顎髭という見た目のこのギルマスは、いつもただ"ボス"と呼ばれていて、誰も本名は知らないとの噂だ。
それと、今のように、極端すぎるほど無駄口を叩かない堅物さでも有名だった。
「まずは彼女を紹介しよう。今回の依頼主、アメリア女史だ。みな、名前は聞いたことがあるな?」
アメリア? あの"黄金の護り手"か? 大国ユーエスエイの皇女の一人ながら、Sランク迷宮を二つも制覇して名を馳せた女騎士。
他の二人もこの展開を予想していなかったらしく、目を見開いている。
「彼女の依頼は、君達にとってもかつてなく難しいものとなるだろう。説明を始めてくれるかな? アメリア」
ボスに促されて、アメリアが一歩前に出た。金髪で背が高い彼女は、ひと言で表せば、ただ美しい。美人が多いと噂のエルフ族の中でも、特に際立つ容姿だろう。
だが、性格は美しいとはいえないらしい。
「諸君、よく来てくれた。私が求めるのは、『勝利の女神の塔』の頂上に輝くという黄金の聖杯だ。正直なところ、このメンバーの実力では不安が残るが、今手が空いている者では最高の人選だとこちらのギルマスに言われては、仕方ない。あいにくと時間がなく、背に腹は代えられん」
この言い草、わざとやってるのか? いきなりのこんなご挨拶だと、普通は面食らってペースを握られるところだ。
が、俺は他人の評価などどうでもいいし、陽気なヴィエイラは大ウケして馬鹿笑いが止まらなくなり、ホンダは無表情のままだ(そもそも男の獣人の顔は人より獣寄りなので、他種族には感情が読み取りにくい)。
そうした反応は予期せぬものだったようで、逆にアメリアが戸惑うことになったが、彼女は咳払いを一つ置いて話を続けていく。
「『勝利の女神の塔』の話は聞いたことがあるな? 年に一度、ひと月の間だけ一階の扉が開き、最も早く頂上に到達した者のみが、聖杯の魔宝を得られるという。この聖杯からは、毎夜黄金が水の如く湧くというではないか。まさに私にふさわしい、素晴らしい宝だ」
アメリアは目を輝かせてこう語った。王女のくせに金が目的とは、意外に俗物なんだな。
あいにくと俺は、金になど興味はない。が、俺が調べたところ、この宝の真価は他にある。だからこそ、今回の招集に応じたわけだ。
「いいね! そんなお宝があるなら、かなりの強者が集まるだろうしな」
ヴィエイラは、塔に集まる強敵との勝負が目的か。他のパーティをいかに出し抜くかの競争は、熾烈を極めるだろう。
もちろん塔の中にいる魔物は強大だろうし、場合によっては、冒険者パーティ同士の戦いだって起こりうる。
「……妖槍・気まぐれ毒蛇があると聞いた」
ホンダがポツリと呟いた。
「そなた、刀使いではないのか?」
「……我が友が欲していてな。あいにく今は病に臥しているので、某が代わりに手に入れて参ると請け負ったのだ」
アメリアの疑問にはこう答える。
「そうか。まあお前達の目的はなんであろうがどうでもよいが……一応聞いておこうか、そなたは?」
こちらを向いて問うてきたアメリアに、俺はこう答える。
「どうでもいいんだろ? 好きに想像してくれ。ああ、聖杯の所有権は譲るからよ」
この返事は、王女たるアメリアにはかなり憤慨ものだったらしい。一気に顔を紅潮させて、叫ぶように言った。
「なるほどな……! だが、この私になんという口の利き方だ。それだけの腕があると思っていいのだろうな? 正式に依頼を始める前に、お前達の実力を見せてもらおう。ついてこい!」
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる