我が魂よ最強を求むることなかれ。ただ自由の限界を汲み尽くせ!

横山剛衛門

文字の大きさ
5 / 39
本編

5.仕合の行方

しおりを挟む
 居丈高な男についていくと、木張りの床の道場に通された。街並みは割とヨーロッパっぽいのに、ここはやけに日本ぽい。
 何人かが素振りで訓練していたが、入ってきた男を見て姿勢を正し、脇に並んでスペースを空ける。こいつ、ここの中で偉い方なんだな。

「真剣か鉄剣か、選べ!」

 男はそう問いかけてくる。
 鉄剣て、木刀的な訓練用のやつかな?

「じゃ、鉄剣でお願いします。貸してもらえます?」

「ふん、日和よって」

 お前が勧めたんだろうがい。まあいいや、なんとでも言え。

「ほれ、構えてみぃ」

 放り投げられた鉄剣とやらは、鉄を薄く叩いて作ったごくごく軽いものだった。確かにこれならそんなに危なくない。

「では、お願いします」

 俺と男はお互いにいわゆる正眼の構えを取る。が、俺の方はなんかしっくりこない……こう、かな?

【イヌイは 秘術・無極の構え を身に付けた!】

「な⁉︎ 貴様、マキノ様相手にそんな構えなど、舐めおるか!」

「マキノ様、隙だらけにござる! ご存分に打たれませい!」

 脇で見ていた門弟達が口々に騒ぎ立てる。
 今の俺の構えは、剣を脇にだらりと下げた自然形だ。確かに舐めてるように見えるかもだけど、別にそういうつもりじゃないのよ。こっちの方が自然かなって感じるだけで。
 そもそも俺って素人だから、構えってなんか分からんし、好きにやらせてくれ。

「ーーイヤアアアァ!」

 一方のマキノは、別段感情の乱れもない感じで、気負いもなく思いっきり打ち込んできた。
 あ、やっぱこいつは周りのいかにもモブ的な奴らとはちょっと違うんだ。
 上背のある体格を生かした、脳天唐竹割りってやつが迫ってくる。
 速い。
 速いけど、遅い。
 どういうことかっていうと、スピードってものは相対的なもんだからね。つまり、他の人の目には速いだろうけど、俺にしてみれば遅い、ってわけ。
 なので、スルッと身を横にかわしてそのまま後ろに回る。

【イヌイは 秘術・裏街道抜き を使った】

「⁉︎ どこへ行った?」

 そんな俺の動きが捉えられなかったらしく、マキノはめちゃめちゃ焦っている。そんな大したスピードじゃなかったんだがね。

「ほい、一本。終わりかな?」

 そのままポン、と後頭部を軽く剣で叩く。そういえばルールを聞いてなかったけど、向こうがやろうとしたことをやり返しておけば間違いないでしょ。

 周りで見ている奴らもすっかり黙ってしまった。やめろよ、無言だとなんかどう反応したらいいのか分からんやんけ。

「……完敗にござる。まさかこれほどの腕前とは存じず、大変な失礼をいたしました。何卒お許しを……!」

 当のマキノは、これまでと正反対のおカタい態度で謝ってくる。あ、やっぱりもう終わりね。これ以上はどうしようかと思ってたよ。

「いやいや、鋭い振りでした! 危ないとこでしたよホント。いい勝負をありがとうございました」

「何をおっしゃる。私とて武芸者の端くれ、力の差はよく分かっております。いやはや、どうかもう少し御指南いただけないでしょうか」

 案外素直だし結構グイグイくるのね。そういうの嫌いじゃない。
 第一印象とだいぶ違う性格っぽいけど、いい奴そうだ。というか、逆に俺がかなり常識知らずのことをしてたのかも。ここは穏やかにいきましょうかね。

「ええ、僕にできることならなんでも」

「かたじけない! 申し遅れましたが、私はマキノと申す者。皆もご挨拶せい! ……失礼、先生のお名前は?」

「あ、イヌイと申します。よろしく」

 そんな感じで上手いことお互い仲直りして、しばらく剣の道について話すことになったのだった。

 ***

「なんと、イヌイ殿は本当にすべて自己流と申されるか。にわかには信じられぬことですな」

「ええ、田舎出身なもんで、習ったりするところがなかったんです。いわば自然が我が師……なんつって」

「なるほど、剣の理はあくまで実践の中にありと……いや誠に恐れ入るばかり」

 こんな感じで、どう話してもいい方向に勘違いされるような会話を、かれこれ二、三時間続けている。
 こっちが得た情報としては、ここのような武術の道場は世界中どこにでもあり、武器の種類や流派でいくつも勢力が分かれていて、お互いに競い合っているのだとか。
 で、どこも共通しているのは、戦いに勝つこと、及びそのための技術が一番大事であることらしい。
 そうした奥義とか戦術、又は考え方自体とかをひっくるめて、「テクネ」と呼ぶんだって。中国武術の「気」とか「クンフー」みたいなニュアンスかな。
 流派とかが違っても、とにかく相手のテクネが凄ければ無条件に敬うものらしい。そうしないのは自分のテクネ不足をさらけ出すようなもので、言っちゃえばダサいんだと。
 ここも結構有名らしく、最初の俺の態度はそういう意味で悪く捉えられて、マキノとしては目にもの見せてやろうとしたそうだ。そりゃ悪いことしたな。

「それで、この街には商業ギルドに用があって来たんですけど、他にどんなギルドがあります?」

「もちろん、冒険者ギルドをはじめたいていの所が揃っております。このワウラの街はジャーポン国でも有数の規模の都市ですからな」

 お、冒険者ギルドあるの。
 もう少し話を聞くと、冒険者という仕事はいろんなことにかなり融通を利かせてもらえるようだ。
 じゃ、次はそこ行って、身分証明書を手に入れてみようかな。条件次第だけど。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...