三千世界・完全版

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三千世界・終幕(5)

終章 第十話

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 ニルヴァーナ モクシャ・バクティ
 太陽の光のような神々しい白光から、周囲を包み込むように黄金の光が進み続ける空間に漂う岩場に、卵のような薄皮に包まれたクロザキが浮かんでいた。その前には奈野花と四騎士、そしてエメルが立っている。
「これが奈野花様がお作りになられたバロンですか?」
 ペイルライダーが訊ねる。
「そうよ。私が丹精込めて作った、真面目で、エリアルという存在を嫌悪する、あり得ないバロン」
 エメルが恍惚の表情で見つめる。
「はぁぁぁぁぁっ……どんな姿になっても美しいですね、バロンは……」
 ホワイトライダーもまじまじとクロザキを見つめる。
「ほうん……こいつは確かにモテそうだな、いい顔してるぜ」
 ブラックライダーが続く。
「奈野花様……こやつには……今何の力を注ぎ込んでおられるのですか……」
「Chaos社の幹部たちの力、そして杉原のヴァナ・ファキナの力、さっきぶちのめしたアガスティアとプラジャーパティの力、更に四聖典の力を合わせているわ」
 レッドライダーがそれを聞いて心配そうな声を出す。
「それだけの力を掛けては、いくら素体が良くても耐えるんですかのう」
「大丈夫よ、実力はエウレカの方のバロンよりも高いはず。ちゃんと耐えて、ちゃんと死んでくれるはず。この子が死んだら自動的に世界が浄化されるように仕組んであるしね。じゃ、私はここであの子達の相手するから、貴方たちは帰って次の準備をしていなさいな」
 四騎士とエメルは敬礼し、時空を裂いて去っていく。奈野花は振り向き、岩場に続く長い階段を上がるバロンたちを睥睨していた。その視線に気付いたバロンが、階段の一番上を見上げる。
「……母さん……いや、奈野花……!」
「どったのー?」
 急に立ち止まったバロンへホシヒメが疑問を投げ掛ける。
「……いや、なんでもない。もうすぐ決戦だ」
 バロンが歩き出す。背後でネロとルクレツィアとゼナとレイヴンとマイケルとアーシャの間抜けな会話が聞こえてくるが、敢えて無視して登り続ける。登りきり、頂上の岩場に辿り着いた一行は、奈野花と対峙する。
「よく来たわね、みんな」
「……奈野花……!」
 バロンが肩を怒らすと、エリナが前に出て叫ぶ。
「我が王!何ゆえこのようなことを!」
 奈野花ははにかみ、肩を竦める。
「決まっているでしょう?私を縛るこの鎧のためよ」
「鎧だと?」
 レイヴンが疑問を感じる。
「そう、私を縛る鎧が、私に望むのよ。自分を殺してほしいってね。だったら私は、それに従ってあげるだけ」
 ホシヒメが頭を捻る。
「無駄だホシヒメ。お前の頭じゃどれだけ考えてもわからん」
 ゼルがそう言うと、ホシヒメが瞬時に言い返す。
「じゃあゼルはわかるの?」
「俺もわからん」
 奈野花は続ける。
「まあ、私が何がしたいかなんて今はどうでもいいじゃない。バロン、貴方はニルヴァーナで宙核と接触し、worldBを元に戻すために、ホシヒメ、貴方はworldAを元に戻すために、レイヴン、貴方は新生世界を戻すために、そして白金さん。貴方はただ、使命のためにここまで来た」
 奈野花は手元に黒い長槍を召喚する。
「私自ら相手をしたいところだけど、今の貴方たちでは余りにも力不足。だから……」
 踵を返し、黄金の卵に槍を突き立て、その薄皮を引き裂く。
「目覚めなさい。私の愛しい我が子よ。貴方の全てを、使いきりなさい」
 黄金の液体と共に流れ出た裸のクロザキは、爪先から徐々に竜化していき、全身が変化したと同時に意識を取り戻して起き上がる。
「母様……」
 クロザキへ奈野花は微笑み掛ける。
「バロン。貴方に最後のお仕事があるわ。彼らを……この世から消し去りなさい。それだけの力を、貴方に授けた」
「明人様がいらっしゃられるようですが、母様」
「構わないわ。彼は、彼らによって変えられてしまった。もう貴方の知る杉原はどこにもいない」
 クロザキは黒い闘気を発する。
「じゃあ任せたわ、バロン」
 奈野花は光の向こうへ飛び去っていった。一行とクロザキが向かい合う。
「あいつの首を取れば、全て終わるんだな、バロンの大将よ」
 レイヴンがアーシャを剣に変えつつ問う。
「……ああ。これが最後の決戦だ」
 ホシヒメが拳を突き合わす。
「なら全力全霊、私たちの全てを込めて、あの人をぶっ潰す!」
 クロザキの背から二十四枚の翼が展開され、巨大な藍色の剣に加え、グランドゼロで使用した赤い剣と同じデザインの剣が、色違いで九本並んでいた。
「誰であろうと、Chaos社の理想を阻むものは生かしはしない。ここで滅ぼす」
 クロザキは極めて落ち着いた声でそう言う。
「明人様がお望みになられた世界、私がその遺志を継ぎ、全ての世界、次元、時間を消し去り、私自身も消え去ろう!」
 零がその言葉を聞いて明人の方を向く。
「杉原君」
 明人は零と視線を交わす。
「あなたが蒔いた悪意の種の萌芽を見て、せいぜい反省するといい」
 明人は黙ったまま、生唾を飲み込む。
「……決着だ、クロザキ!」
「来るがいい、エウレカ。お前たちが束になろうが、この私に勝てぬことを教えてやる!」
 バロンが光速で突っ込み、それを見切ったクロザキが藍色の剣で叩き落とす。同時に攻撃を仕掛けたホシヒメとアカツキをその身から発するシフルの波動だけで跳ね返し、矢継ぎ早に重ねられるレイヴンたちの攻撃を九本の剣が迎え撃ち、竜化して突っ込んできたゼル目掛けて光速で藍色の剣を振り下ろし、背中の装甲を縦に切断する致命傷を与えて光の波へ突き落とす。
「ゼル!」
 墜落していくゼルに気を取られたホシヒメに、柄が繋がれた緑の剣と赤の剣が高速回転しながら叩きつけられる。咄嗟に右腕でガードするも、次元の違う出力の前に破られて吹き飛ばされる。融合竜化したレイヴンが闘気を極限まで噴出させた一閃をぶつけるが、意にも介さないクロザキの藍色の剣による反撃で甚だしい衝撃を受けつつ吹き飛ばされ、アーシャと共に変身が解ける。
「離れんな、アーシャ!」
 レイヴンは咄嗟にそう叫ぶが、アーシャは気絶しているようだ。
「チッ……!」
 空中で抱き寄せて階段を転がり落ちる。本体へ急接近と共に突きを放とうとしたエリナへクロザキは藍色の剣を手で持ち、真正面から切り付け、剣を粉砕して悪魔化が解けるほどの凄まじいパワーを叩きつけて吹き飛ばす。同時に攻撃を仕掛けようとしたマイケルはその余波でエリナと共に飛ばされ、光の波へ消える。竜化したバロンがクロザキへ肉薄して攻撃を仕掛けようとするも、それよりも早く体勢を立て直したクロザキの反撃を受ける。が、藍色の剣の一閃が届く前にアルバとロータが鎖を生み出して攻撃を受け止める。
「ぐぅっ……!?」
 鎖に叩きつけられた余りの衝撃の大きさに、思わずロータは顔を歪めて苦しむ。
「しっかりしてください……ロータさんっ……!」
 アルバも苦痛の表情を浮かべるが、それでも根性で耐える。クロザキが鎖の防壁を突破しようとする、その隙に頭上を取ったルクレツィアが高速の抜刀攻撃を仕掛けようとする。だが、エルデやネロ、ノウンを仕留め終え、フリーになった九本の剣に串刺しにされ、また光の波に放り投げられる。同時に更に力を増したクロザキによって鎖の防壁が破られ、その影から切りかかる融合竜化したセレナと打ち合う。
「バロン・クロザキッ!あんたを絶対にぶち殺す!」
「その程度の力で大きく出たものだな、雑魚が!」
 セレナの剣を粉々に砕き、竜化の解けたところへ藍色の剣の刺突でセレナは力無く吹き飛ばされる。水の具足で蹴りかかった零へ九本の剣で迎撃するが、零は巧みにそれを躱しながら徐々に近づいていく。同時に黒鋼が鋼の光線を放ち、竜化したロータが急接近してアッパーを重ねる。
「ふん」
 クロザキは石膏のような翼から光を放ち、外殻を外す。
「この力も馴染んできた……そろそろ終わらせてやる!」
 九本の剣が各々の刀身の輝きを放ち、二十四枚の翼全てが更なる輝きを放つ。
「今ここに我らが願いは成就せし!〈九界浄土・三千世界〉!」
 神々しい光が満ち、一気に爆炎となって全員を焼く。空間が歪み色彩が褪せるほどの衝撃が放たれ、時間が停止したような静寂が流れる。爆炎が消え、光が収まると、そこには魔力と鎖と水と氷の四重防壁があった。魔力の壁が消え、リータがへたりこむ。鎖の壁が消え、アルバが倒れる。水の壁が消え、エリアルが膝をつく。氷の壁が消え、零とロータとバロンが荒く肩で息をする。階段に逃れていた明人たちが、遠くからその様子を眺めていた。
「ここまでの手練れが集まって一人に追い詰められてんのかよ……嘘だろ……!」
「まるで勝ち目が見えませんが……」
 トラツグミがそう言っていると、階段を登ってきたレイヴンが横に現れる。
「レイヴン、やつはどうなんだ」
 明人の質問には答えず、レイヴンはアーシャをトラツグミへ預ける。
「その子を頼む。俺は一人で行く」
 階段を駆け上がるレイヴンに、明人は叫ぶ。
「お、おい!二人の方がパワー出るんじゃねえのかよ!?」
 岩場では、しばしの静寂が両者を包んでいた。
「ふん、流石に今のは全力を出しきれていないか」
 ロータがその言葉に驚愕する。
「嘘……でしょ……!ここまでの高出力で、まだ力を隠している……!?」
 その横にレイヴンが並ぶ。アーシャと一体化した大剣ではなく、元々持っていた長剣を手に持っていた。
「兄様……アーシャは……?」
「置いてきた。剣になったあいつは確かに強力だが、壊されればあいつは死ぬ。俺が死ぬどころか、武器まで簡単にぶっ壊しちまうあのパワーに対抗するには、リスクがでかすぎる」
 クロザキは一行を睥睨する。
「私との力量差に諦め、Chaos社のもたらす破壊を受け入れたとしても、お前たちは完膚なきまでに破壊する。出し惜しみ、より苦しんで死にたいのなら勝手だがな」
 バロンが力を入れ直して立ち上がる。
「……そんなことはさせない。僕たちが必ず、お前を倒す!」
「ふん……お前の周りを見てみろ、それでもまだ、私を倒す見込みがあるのか?」
 バロンは岩場を見回す。既に力尽きたエルデ、ノウン、ネロが倒れており、激甚なダメージで吹き飛ばされ、この場にいないホシヒメ、アカツキ、ゼル、エリナ、マイケル、セレナの闘気が僅かに残っている。
「お前たちがどんな思いでここまで来たのかは知らない。知りたくもないがな。だがこれが力の差だ。お前たちはここで死ぬ、己の無力を嘆いてな」
 バロンは再度、残っている面子を見る。だが全員体力を消耗しており、まともに打ち合える余力を残しているものは居ない。
「……ああ、確かに、無力かも知れないな。だが最後まで足掻く。諦めるなどあり得ない」
「愚かな……」
 レイヴンは膝を叩いて大笑いする。
「そうか?俺にはお前も大馬鹿に見えるけどな」
 クロザキはレイヴンに呆れた視線を送る。
「お前も杉原が諦めたことを認められない愚か者だろ?」
「わかっていないようだな」
 クロザキは目を伏せ、そしてやおら見開く。
「人とは人間そのものではなく、その人間が掲げる理想に集うのだ。あくまでも我々Chaos社は明人様のために戦うのではなく、明人様の理想のために戦っているのだ。そこの小僧が明人様の成れの果てであろうと、かつて明人様が我々に示してくれた理想を捨てる気はない!」
「似てる……」
 ロータがぼそっと呟く。レイヴンがその言葉に反応する。
「似てる?お前とあいつが?」
「うん……自分の中で……勝手に祭り上げて……そして暴走して……その偶像にすら牙を剥く……自分が好きになったものが、自分の望む行動以外をするのが気に入らなくてしょうがない……」
 クロザキはロータの言葉に深く頷く。
「確かにその通りだ。私たちは、空の器たる明人様に、我々の思い通りの理想を流し込んでいたに過ぎない。だが、それの何がいけない?物事はいつも、本人の窺い知れぬところで肥大化し、全てを飲み込む。今の明人様が何をどう思おうが、もはや蒔いた種は芽吹き、大輪の花を咲かせた。起きた出来事を消すことは、誰にも出来ない」
 レイヴンが竜化して切りかかるが、瞬時に反応したクロザキに受け止められる。
「遅いな。動きも、思いも。お前のシフルには恐れが見える。それが、お前のシフルを闘気にも、魔力にも、純粋なシフルにさえも、変えることを拒んでいる」
「そりゃどうも。だがあいにく、お前に対する恐怖なんてものは無くてな!」
「確かにな。敵への恐怖はない。だがお前は恐れている。自分を好いてくれる女を。そうだな……お前の根源に由来する何かが、思い人と交わることを極端に恐れている」
「何を言ってやがる……!」
 その時、後方から声が聞こえる。
「兄様、危ないッ!」
 ロータが後ろからレイヴンを突き飛ばし、五本の剣がロータに突き刺さる。
「ほう」
 クロザキが藍色の剣を手元に戻す。リータがそれを見て慟哭する。
「ロータァァァッ!?」
 その絶叫に、レイヴンは剣を掴み直してロータへ駆け寄る。クロザキは身を引き、バロンたちへ向き直る。
「流石のお前でも、その満身創痍の体では助けに来れなかったか。今際の言葉を告げるのを邪魔するほど、私も無粋ではない。見ようではないか、この二人を」
 ロータから剣が引き抜かれ、クロザキの下に戻る。崩れ折れるロータをレイヴンが抱き止める。
「おい!しっかりしろ!」
「大丈夫……まだ戦える……兄様が無事なら……今まともに戦えるのは兄様だけ……」
 ロータは傷を闘気で癒し、竜化しようと力む。
「無理すんな!いくらすぐに傷を癒せても、生命力の限界があるだろ!?」
「だいじょ……ぶ……」
 握りしめた拳が一気に塩となり、砕け散って岩場に零れる。
「お前……体が……」
「クソ……この程度……兄様を守るためなら……」
「俺は……誰も……守れないのか……?」
「兄様は……私も……姉様も……アーシャも……みんなを守ったよ……」
 ロータは力尽き、全身が塩になって砕け散る。レイヴンの腕が空を抱き、レイヴンは立ち上がる。クロザキはそちらへ向く。
「今の攻撃は不用意だった。その小娘はお前のその隙を命を懸けて潰した。お前が愚かではあるが、生物の社会性を現した、素晴らしい――」
 レイヴンがまたも突進し、剣を叩きつける。クロザキは藍色の剣で防ぎ、九本の剣がバロンたちを牽制するように動き回る。
「素晴らしい行動だ。なるほどな、これでわかった。お前の恐れ、それは両親を守れなかったことに起因するのか。故に、大切なものほど守れない、ならば、そもそも大切なものを作らなければいい。そう生きてきたのか」
「いい加減黙れよ、くそったれが!」
「黙るか。無念が残って無に帰った世界で甦られても困る。お前はここまでの冒険の中で、多くの大切なものを手に入れた。お前は恐れ続けていた。両手から零れ落ちるほどの宝物を、失うのが怖かった。そうだろう?」
 レイヴンは言葉にならない咆哮と共に力を更に加える。
「だがお前は失う。お前の恐れ通りに。だが悔いることもない。お前が予想した通りの未来が来て、お前はそれを実感する。ただそれだけだ」
 藍色の剣の一閃でレイヴンは体勢を崩され、続く刺突を長剣の腹で防ぐも、長剣が粉々に砕けて、体を貫こうとした瞬間、レイヴンは後方の遥か彼方に吹き飛ばされる。
「何……?」
 流石のクロザキも、それには度肝抜かれ、すぐにその原因を認める。
「お前か」
 瀕死のリータが倒れ伏しつつも右手を翳し、魔力を放っていた。リータは微笑むと同時に、力尽きて上体も地面に擲つ。
「バロン、白金零。やはり最後に残ったのはお前たちか」
 クロザキとバロンが視線を合わせる。その傍で、エリアルと零が言葉を交わす。
「白金さん」
「何か?今戦闘が再開しそうなんだけど」
「今のままじゃ勝ち目はないです……でも、私とバロンが宙核に接触してその力を得られれば少しは変わるかもしれないんです」
「なるほど、時間稼ぎの捨て駒になれと。いい。命を捨てるのは慣れてるから」
 零がバロンを手で制して前に出る。そしてエリアルがバロンの手を引いて共に光の渦へ飛び込む。
「何の真似だ」
「見ればわかる。私が時間を稼ぐ」
「それはわかる。だが何をする気だ?急拵えで力をつけるのか?」
「物語で一番重要なことは、ネタバレをせずに最初から最後までを見届けること」
「なるほどな。ならばお前を消し去り、鏡像の力を見定めるとしよう」
 零が竜化して槍を構え、クロザキが藍色の剣を構える。
「まさにラグナロクか。お誂え向きだな、超人類」
「随分あなたは詩と劇が好きらしい。どう?あなたの中で、今この状況はプロットをどれだけ正確になぞっている?」
「過程がどうあれ、結末は変わらない。それだけだ」
 零は九本の剣を器用に避けながら、クロザキに肉薄して攻撃する。藍色の剣に弾かれるが、零は瞬時にトンファーに持ち替え強烈な冷気で九本の剣を往なし、右腕から凄絶な電撃を撃ち放つ。藍色の剣で電撃を弾いた瞬間、零は更に竜化して寂滅へと変わり、その発した純粋なシフルの波で九本の剣が沈黙し、寂滅の拳が藍色の剣と衝突する。
「どういうことだ……白金!」
「どうもこうもない。これが私の力」
 遂に寂滅がクロザキの藍色の剣を押し返し、上から殴り下ろして地面に這いつくばらせる。続けて寂滅は吠え猛り、強烈な冷気を放つ。クロザキは十二枚の片翼で防御して距離を取る。
「今の私の力ではお前に及ばぬか……ならば!」
 九本の剣が藍色の剣に吸収され、大剣を覆っていた藍色の岩のような外殻が崩れ落ち、真黒の刀身が露になる。
「無明の闇……」
 寂滅が薄らに感じたその気配に、自分の思った通りの筋書きが続いていると辟易する。
「白金、お前を葬れば、この世界は終焉を迎える」
「ああ、そう。わかった」
「聞いているのか」
「ええ、聞いている。あなたも所詮は、アルヴァナの駒に過ぎない」
「アルヴァナ……中国の山中の遺跡の話か。まさかお前がそれを知っているとはな」
「まあそんな話はどうでもいい。時間を稼ぎ、少しでもあなたの戦力を削ぐ。それが今の私の使命」
 クロザキと寂滅が再び衝突する。
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